Semiconductor Portal

» ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

Moore's Law後のcomputing加速継続に向けたロードマップの取り組み

前回の≪市場実態PickUp≫にて、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会[米国電気電子技術者協会])のもと新たにスタートする【国際デバイス&システムロードマップ】を取り上げたが、米国SIA(Semiconductor Industry Association)がまとめたNational Technology Roadmap for Semiconductorsを目にしたのが1990年代の前半と記憶している。90年代後半から国際半導体技術ロードマップ(International Technology Roadmap for Semiconductors:ITRS)として続いてきた経緯であるが、止められないcomputing性能向上を追及して引き続く取り組みに以下改めて注目しているところである。

≪時代に合わせた先の読み方≫

International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)での包括的なシリコンbenchmarkingではなく、市場分野のシステム別に異なる指標が求められるという時代背景に合わせていくという今回の動きには、次の記事で目に止めている。

◇Chip Roadmap Reboots Under New Management-IEEE expands ITRS to include systems-IEEE takes over, renames ITRS plan for chips and systems (5月4日付け EE Times)
→IEEEが、半導体の業界ロードマップを定める伝統的なプロセスを引き受けて、computingすべてを含めて拡大する旨。1965年に最初に発行されたInternational Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)が、International Roadmap for Devices and Systems(IRDS)として5月12日に新たにスタート、Belgiumで最初のメンバー会合が行われる旨。この新たな活動は、computingのニーズ全般を広範に捉えることを目指し、computerシステム、アーキテクチャー、ソフトウェア、並びにそれらに用いられる半導体はじめコンポーネントなどのロードマップissuesに対応する旨。

関連する内容が以下の通り続いている。個々の市場ごとに技術ロードマップを考えて描いていく重みが強調されている。

◇Why This Roadmap Matters-The IEEE's plan to add structure for individual markets is an important step. (5月5日付け Semiconductor Engineering)

◇After Moore's Law: Predicting The Future Beyond Silicon Chips (5月5日付け NPR)
→Institute of Electrical and Electronics Engineers(IEEE)にてMoore's lawがもはやあてはまらない後のcomputingを引き続き加速するために新しいbenchmarksを描いているscientistsの1人、Georgia Tech教授、Tom Conte氏とのQ&A。

今回の動きについてもう少し細かくということで、国際デバイス&システムロードマップ(International Roadmap for Devices and Systems:IRDS)の発表内容を見つけ出して、以下の通りである。

〓〓〓〓〓↓↓↓
◯IEEE Rebooting Computing Initiative, IEEE Standards Association, およびIEEE Computer Societyが、End-to-End Computingに向けた針路を定めるために、デバイスおよびシステムの新しい国際ロードマップを投入 (5月4日付け BUSINESS WIRE)

人類のための技術推進に専心する世界最大の技術professional機関、IEEEが本日、International Roadmap for Devices and Systems(IRDS)の打ち上げを発表、IEEE Rebooting Computing(IEEE RC) InitiativeがIEEE Computer Societyと相談して後援する新しいIEEE Standards Association(IEEE-SA) Industry Connections(IC)プログラムである。一緒になってこのグループは、computer業界の関連技術すべてに向けて流れを同定、ロードマップを展開するためにある範囲の関係者にわたっての整合およびコンセンサスを確実なものにする。

このIRDSは、IEEE RC InitiativeとInternational Technology Roadmap for Semiconductors 2.0(ITRS 2.0)の間の連携で始まった作業の次の段階となる。IRDSプログラムの打ち上げをもってIEEEは、デバイス、コンポーネント、システム、アーキテクチャーおよびソフトウェアなどcomputing ecosystemの包括的なend-to-end viewの構築を主導していく。ITRSおよびITRS 2.0により開発されたgovernance, レポート, および戦略的ロードマップのやり方は、IEEE-SA ICプログラムの中でIRDSに知らせる。

「computer業界は、1965年に最初に発行されて以来ロードマップから恩恵を得ている。」とIEEE Fellow、Thomas M. Conte氏は言う。同氏は、IEEE Computer Societyの2015年president、IEEE Rebooting Computing Initiativeのco-chair、およびGeorgia Institute of Technology(GIT)のSchools of Computer Science, and Electrical and Computer Engineeringの教授を務めている。「IRDSをIEEE傘下にもってくることで、computer性能の新しいMoore's lawなるものが作り出され、新規computing技術の市場開拓が加速される。」

「基礎技術からシステムおよびアーキテクチャーまで及ぶIRDSの広範な守備範囲で、既知の末端要求が科学技術のソリューションを引っ張る環境が作り出され、取り入れるtime to marketが短縮されて、究極には新しいMoore's lawなるものが作り出される。」とIEEE FellowでIEEE Future DirectionsのSenior Director, William R. Tonti氏が付け加える。「IRDSの作業のIEEEへの統合およびIEEE Rebooting Computing Initiativeを通しての半導体からシステムのロードマップの統治により、革新的なend-to-end computingソリューションへの門戸が開かれる。」

「ここ10年にわたって、electronics業界の構造および要請は、半導体の業界要請をかなり超えて進化している。新しいelectronics ecosystemにおける変化に一致させて、IRDSは、過去の基礎土台に立脚、課題を同定しあり得るソリューション推奨を入れてレベルを引き上げる。」とIEEE FellowでIRDSのchairman、Paolo A. Gargini氏は言う。「IRDSは、システムおよびデバイスを包含する15-年ビジョンを届けて、半導体、通信、IoEおよびcomputer業界の今後について新たな方向付けを行う。」

IRDSの参加者は、2016年5月12-13日にLeuven, Belgiumで会合を開く。2日間のworkshopにわたって、Focus Teams(FT)およびInternational Technology Working Groups(ITWG)のロードマップ活動が見直され、2016年の追加の活動に向けた計画が提示される。討議の分野として、System Integration, Heterogeneous Integration, Connectivity, Future IC DevicesおよびFactory Integrationなどがある。

IEEE Rebooting Computing Initiativeは、IEEE Future Directions Committeeのプログラムであり、新規途上技術に向けた教育的ツール、イベントおよびコンテンツを開発、共有するために設計されている。

IEEE-SAのIndustry Connections Programは、新しい標準および関連する製品およびサービスの生み出しを助け、機関および個人の間のコラボを促進、急速に変化する技術に立って考え方を磨き、精製している。
〓〓〓〓〓↑↑↑

上記にあるベルギーでの会合の結果に今後注目していくことになる。

そもそもInternational Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)とIEEE Rebooting Computingのつながりはどうなっているのか、ということで目に入ってきたのが、昨年、2015年7月11-12日に米国Stanford Universityで開催のITRS/RC Summer Meetingの総括レポートである。上記の発表に展開していく背景が表わされていると思っている。

〓〓〓〓〓↓↓↓
International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)は、半導体の国際ロードマップであり、世界の半導体業界に向けてロードマップを用意する長らく独立した機関である。伝統的にMoore's Lawに従ってデバイスscalingに重点化しているが、このscalingの終わりを認識して、ITRSは最近ITRS 2.0を作り出している。これは、今後の技術開発に向けた牽引役となる応用およびシステム統合により広範に重点化している。

最近、ITRSはIEEE Rebooting Computingとの戦略的連携も行ってきており、ITRS/RC Summer Meetingは従来のロードマップ展開と今後のcomputingに向けた計画を結びつけたものである。これは2015年7月11-12日の週末にStanford Universityで開催されている。ITRSのChairman、Paolo Gargini氏によるintroductionの後、土曜にはいろいろなFocus TeamsおよびTechnology Working Groups(TWGs or ITWGs)のbreakout meetingsが、それらの間の調整および相互の働きかけをもって行われている。日曜の午前は、7つのFocus Teams各々の代表によるsummaryプレゼンが行われ、年末までの新しいロードマップの展開につなげられている。

日曜の午後は、RC重点化がさらに行われ、今後のcomputingに向けた新規アプローチの4つのoverviewsに続いて、ロジック、メモリおよびアーキテクチャーに向けた途上のリサーチデバイスについていくつかのプレゼンが行なわれている。
〓〓〓〓〓↑↑↑

ITRSそしてITRS 2.0に拡がっていく流れは、以下の記述を見い出している。

…ITRSは、International Roadmap Committee(IRC)の後援で米国、韓国、台湾、日本および欧州の半導体業界の代表から構成される。当初のロードマップは、17のTWGsを軸に展開され、その領域としてはEmerging Research Materials, Emerging Research Devices, Assembly & Packaging, Test & Metrology, RF Technologies, Lithography, およびYield Enhancementなどである。これらのTWGsは依然活動しているが、新しいITRS 2.0ロードマップの構成は、システムアプローチを伴った以下の7つのFocus Topicsが軸となっている。
 System Integration
  Overall System Connectivity
  Heterogeneous Integration
  Heterogeneous Components
  Beyond CMOS
  More Moore
  Factory Integration

しばらくご無沙汰している間に半導体ロードマップがデバイス&システムロードマップに代わっていくということで、関係する経緯の内容を追ったところである。引き続き理解を深める必要を感じている。


≪市場実態PickUp≫

【MediaTek関連】

台湾のIC design house、MediaTekが、TSMC、UMCそしてASEといずれも4月売上げを大きく落とすなか、最高を記録している。

◇MediaTek posts record April revenues-MediaTek has a record-breaking month of April (5月9日付け DIGITIMES)
→IC design house、MediaTekの2016年4月の連結売上げがNT$23.02 billion($710.9 million)、前月比7.9%増、前年同月比52.3%増、スマートフォン需要の上昇が引っ張って最高を記録の旨。2016年1-4月累計がNT$78.93 billion、前年同期比約26%増。

中国のスマートフォンベンダーの攻勢が後押ししている背景が、以下の通りである。

◇Chip orders from China smartphone vendors to boost MediaTek 2Q16 revenues (5月11日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国のOppo, GioneeおよびVivoによる発注で、スマートフォン向け半導体プロバイダー、MediaTekの2016年第二四半期の売上げが高まる見込み、前四半期比30%以上増えそうな旨。

◇アップル・サムスンのスマホ2強、2016年は初の出荷減 −中国メーカーの台頭で (5月10日付け 日経 電子版)
→世界のスマートフォン市場の2強、米アップルと韓国サムスン電子の年間出荷台数が2016年に初めて減少に転じる見通し、技術が成熟して機能面の違いが出しにくくなるなか、低価格を特徴とする中国のスマホメーカーがシェアを伸ばす旨。日本の部品メーカーも中国勢への売り込みを強めており、スマホ市場の競争環境が大きく変わろうとしている旨。

スマートフォンだけにも頼れないということか、MediaTekは、車載向け市場を狙って中国のカーナビゲーション向け地図情報の大手との戦略的に組む動きを以下の通り進めている。

◇MediaTek announces sale of auto IC subsidiary to China firm -MediaTek to sell car IC unit to NavInfo (5月13日付け DIGITIMES)
→台湾のIC design house、MediaTekが、中国のディジタルmappingサービスプロバイダー、NavInfo(北京四維図新科技)との戦略的協力枠組み合意調印を発表、NavInfoは、MediaTekが82.9% stakeをもつAutoChipsを総額$600 millionで買収する旨。MediaTekは、$100 millionを出資してNavInfoとの戦略的連携を形成する旨。

◇台湾メディアテック、中台連合で脱スマホ、車向け開拓 (5月14日付け 日経 電子版)
→「低価格スマートフォンの仕掛け人」とされる台湾半導体大手、聯発科技(メディアテック)がスマホ依存からの脱却を加速する旨。13日、車載向け市場開拓で中国のカーナビゲーション向け地図情報の大手、北京四維図新科技企業と提携すると発表、最大1億ドル(約110億円)の出資などを検討する旨。スマホ需要の減速を受けて中台連合で新市場を目指すが、中国頼みの成長にはリスクもにじむ旨。

【2015年の車載用半導体市場】

Strategy Analyticsより2015年の車載用半導体市場のデータが表わされ、Freescale Semiconductorを買収したNXPが足して伸ばして、No.1サプライヤに躍り出ている。

◇NXP tops auto semiconductor vendor rankings, says Strategy Analytics (5月9日付け DIGITIMES)
→Strategy Analytics発。2015年の車載用半導体市場は$27.4 billion、Freescale Semiconductorを買収したNXPがともに主要車載半導体サプライヤで、合わせて$3.9 billionの販売高、シェア14.2%でトップの旨。2位はInfineonでシェア10.4%、3位は2014年首位のRenesasでシェア10.3%。

◇NXP takes No.1 auto IC slot-NXP is now the No.1 supplier of auto ICs, says Strategy Analytics, following its take-over of Freescale.-NXP + Freescale = No. 1 in auto chips (5月11日付け Electronics Weekly (U.K.))

【車載electronicシステム】

車載用半導体が今後に向けての注目の1つであるが、車載用のICs、コンポーネントそしてシステムそのものも価格要求が厳しく、車載electronicシステムというものは世界electronicシステム市場全体から見ると、2015年で8.9%程度であり、車載用ICs市場を大きく高めるものではないというIC Insightsの見方である。

◇Automotive electronics system demand fails to boost automotive IC market in 2015 (5月10日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsは、車載用ICsおよびelectronicシステムへの価格圧力から車載end-use応用が、2019年までelectronicシステム販売高全体の現在の比率よりずっと高く占めることはない、と見ている旨。

◇Automotive electronics system demand fails to boost auto IC market in 2015, says IC Insights (5月12日付け DIGITIMES)
→新しいelectronicシステムが近年自動車に加えられて、この分野がグローバルelectronicシステム販売高の大きな比率を占めると見てもっともではあるが、単純にはそうではなく、IC Insightsによると、車載electronicsは2015年世界electronicシステム市場全体、$1.42 trillionの8.9%ほどであり、2014年から8.6%増止まりである旨。

【2016年第一四半期の半導体サプライヤランキング】

IC Insightsから2016年第一四半期の半導体サプライヤランキングが表わされており、市場の減速を映し出してトップ20サプライヤの販売高合計が前年同期比6%減となっている。Qualcomm, Micron, およびSK Hynixは25%以上と目立つ落ち込み幅を示している。

◇Seven Top-20 1Q16 Semiconductor Suppliers Show Double-Digit Declines -Qualcomm, Micron, and SK Hynix registered more than 25% drops, with total top-20 sales off by 6%. (5月12日付け IC Insights)

◇Seven Top-20 semiconductor suppliers show double-digit declines (5月12日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsが今月後半リリースするMay Update to the 2016 McClean Report発。2016年第一四半期の世界半導体(ICおよびO S D[optoelectronic, sensor, and discrete]:ファウンドリー含む)販売高ランキングトップ20、下記参照。
http://electroiq.com/wp-content/uploads/2016/05/top-20-fig-1.png
トップ20の2016年第一四半期販売高合計が$62.440 billion、前年同期比6%減。

【2D材料】

柔軟性、超高効率など桁違いの性能を持つデバイスが続々と登場する可能性が出てきている原子1〜3層の厚みしかない“2次元(2D)材料”への注目、取り組みの高まりを感じており、パッと目につく範囲、以下の通りである。

◇Bending behaviour of single layer molybdenum disulfide-Researchers simulate bending single-layer molybdenum disulfide (5月9日付け NanotechWeb.org (U.K.))
→Peking University(China)のdepartment of mechanics and engineering science、associated professor、Guoxin Cao氏記事。分子力学シミュレーションを用いて、2D材料、single-layer molybdenum disulfide(MoS2)のbending capabilitiesに注目、該材料を曲げる3つの方法を調査、"tube method"が最も効果的と見い出している旨。

◇Gold substrate boosts efficiency substantially-Researchers tout efficiency boost with gold substrates (5月9日付け New Electronics)
→National University of Singaporeの研究。gold基板の真上の遷移金属dichalcogenide、tungsten diselenideをもってずっと大きなphotoluminescence効果が得られ、該2D材料の応用の可能性として、flexibleロジック回路, photodetectors, センサおよび薄膜solar cellsなどがある旨。

◇Breakthrough Boosts 2D Semiconductor Photoluminescence (5月12日付け EE Times)
→National University of Singapore(NUS)の研究。2D半導体、tungsten diselenideのphotoluminescence効率を高める技法を発案、該発見により、先端optoelectronicおよびphotonicデバイスにおける半導体応用への道が照らされる可能性の旨。tungsten diselenideは、単一分子厚の半導体であり、transition metal dichalcogenides(TMDCs)と呼ばれる新規途上の材料の一部、光を電気に、そしてその逆の変換能力があり、強力な有望候補となっている旨。


≪グローバル雑学王−410≫

M&Aの成否を決める中核となる企業価値評価について、2回に分けて、

『M&Aの「新」潮流』
 (山本 貴之 著:エネルギーフォーラム新書 036) …2016年1月15日 第一刷発行

より見ていく前半である。企業価値評価の位置付けそして具体的手法が、以下表わされている。そもそもM&Aの目的、妥当性はじめ事業の発展的伸びに向けて確認する指標、バロメーターについて、それぞれの意味合いを改めて考えるところである。


第4章 企業価値評価 =前半=

【企業価値評価の位置付け】

・企業価値評価は、M&Aプロセスにおいて中核的な役割
・M&Aの取引価格が対象企業の企業価値と同等または有利な水準で取引するという経済面においても成果を上げることが、M&Aの成功の条件
 →その尺度を提供するのが企業価値評価
・一方がM&Aにより利益を得れば、他方はその利益の分だけ損失を被る
 →これを解決する主な要因が「事業の見通しに関する見解の差異」と「シナジー効果」
・M&Aの目的である企業価値向上を実現するため
 →M&Aの取引価格の妥当性を企業価値評価によって確認することが必須

【企業価値評価の具体的手法】

■企業価値評価の考え方と留意点
・価値評価の対象
 →企業価値 …事業価値に余剰現預金、遊休不動産、投資目的の有価証券等の非事業用資産を加えたもの
        →会社全体の価値
 →株式価値 …企業価値から有利子負債を控除した株主に帰属する額
 →事業価値 …事業が生み出す経済的なキャッシュ・フローや利益の総額
・企業価値の評価手法
 →マーケット・アプローチ …市場での評価に基づく
 →インカム・アプローチ …企業の将来のキャッシュ・フローや利益予測に基づく評価
 →コスト・アプローチ …その企業の資産・負債を調達するための必要額に基づく評価
・M&Aの意思決定にあたって行われる主要な財務的分析
 →EPS(Earnings Per Share:一株当たり利益)分析
 →IRR(internal rate of return:内部収益率)分析
 →プレミアム分析

■市場株価法
 …株式市場で形成されている対象企業の株価に基づく企業価値の評価手法
・最も客観化された企業価値を示す指標とも
・主なメリット:「客観性の高さ」「評価手法のシンプルさ・明瞭さ」

■類似企業比較法
 …対象企業と類似する企業の株価に基づく企業価値の評価手法
・類似企業として、事業内容(特に業種)、事業規模、財務内容等が対象企業と類似する企業を複数選定して株価倍率を計算、その中央値または平均値を用いる
・主なメリット:「企業価値評価に客観性の高い株価を反映することができる」「評価手法が比較的シンプルかつ明瞭である」「対象企業が非上場企業の場合にも採用が可能である」

■類似取引事例法
 …対象企業と類似する企業のM&Aの取引価格に基づく企業価値の評価手法
・主なメリット:「他社のM&Aの取引価格を参考としており説得力が高い」「経営権の異動が反映されている」「評価手法が比較的シンプルかつ明瞭である」「対象企業が非上場企業の場合にも採用が可能である」

■DCF法
 …Discount Cash Flow:現在のM&A実務において、最も重視される評価手法
・3〜5年程度の事業計画から対象企業のキャッシュ・フローを予測、そのキャッシュ・フローを割引率で割り戻すことで算出
・割引率としては、WACC(Weighted Average Cost of Capital:加重平均資本コスト)を使用
 →その前提となる資本コストは、CAPM(Capital Asset Pricing Model)から算出されることが一般的
・主なメリット:「業界平均と異なる対象企業独自の成長性やリスク等を反映できる」「経営権の異動を反映することができる」「M&Aに伴うスタンド・アローン・イシューの影響とシナジー効果及びディス・シナジー効果を反映できる」「対象企業が非上場企業の場合にも採用が可能である」
・実務面における最大のポイントは、事業計画の策定にあり、「確からしさ」をどのように高めていくか

■時価純資産法
 …対象企業の時価評価した資産・負債の差額である純資産をもって企業価値とする評価手法
・主なメリット:「評価手法が比較的シンプルかつ明瞭である」「対象企業が非上場企業の場合にも採用が可能である」
・非上場のオーナー企業間のM&Aにおいては、幅広く用いられている

■EPS分析、IRR分析、プレミアム分析
 …M&Aの意思決定における重要な財務上の分析
・EPS分析では、取得者の連結決算での事業計画に、M&Aによる子会社の異動や借入金利の発生等の影響を反映
 →M&Aの実施前と実施後における取得者のEPSを比較するという手順
 →M&A取引価格の上限を定める効果
・IRR分析は、M&Aに投下した資金の収益率を計算する方法
 →上場企業では、投資判断の基準として、目標IRRの水準を設定
・プレミアム分析は、市場株価に対する価格の上乗せ額に関する分析

ご意見・ご感想