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アップル13年ぶり減収、iPhone初の減少、加速する基軸の転換

パソコンの低迷を受けてインテルから人員削減、新分野への舵の切り換え加速が打ち出されたばかりのところに、モバイル機器を引っ張るアップルから13年ぶり減収、そしてiPhone初の減少という2016年1〜3月期連結決算が発表されて、中国はじめ新興経済圏の減速あるいは不透明感の中、業界および各社から事業戦略の基軸をリスク回避に向けて転換、あるいは補強する動きが相次いでいる。明らかになった大きな市場の転換点の発表直後でまだ序章に過ぎず、経済状況を踏まえた今後の推移に注目を要するところである。

≪それぞれのリスク回避≫

アップルからの13年ぶり減収、iPhone初の減少という発表内容が、以下の通りとなっている。足元の4〜6月期もさらに売上高の落ち込みが続く見方が表わされている。

◇Apple iPhone Sales Slide 16%-Forecast is weaker than expected (4月26日付け EE Times)
→Apple iPhonesの販売台数が前年同期比16%減、今までで初めての減少。向こう3ヶ月は予想より弱含み、しかしながらiPhoneについては引き続き特に新興市場においてAndroidユーザおよび初めてのスマートフォン購入者を引きつけるとして依然強気の旨。

◇アップル、1〜3月13年ぶり減収、iPhone減速響く (4月27日付け 日経 電子版)
→米アップルが26日発表した2016年1〜3月期決算。売上高が前年同期比13%減の$50.557 billion(約5兆6300億円)、減収は13年ぶり、最終利益は同22%減の$10.516 billion。iPhoneの販売台数は同16%減の5119万台、パソコン「Mac」は同12%減の403万台、昨秋に大型モデル投入でてこ入れを図ったタブレット「iPad」も不振が続き、同19%減の1025万台。腕時計型端末「アップルウオッチ」や、「アップルTV」などを含むその他の売上高は同30%増、ソフト・サービスの売上高も同20%増と好調が続いている旨。
2016年4〜6月期の売上高予想は同13〜17%減とした旨。

◇アップル、「中国リスク」露呈、4〜6月も減収へ (4月27日付け 日経 電子版)
→米アップルが抱える「中国リスク」が露呈、26日に発表した2016年1〜3月期連結決算は中国における端末販売の不振などから前年同期比で2003年1〜3月期以来、13年ぶりの減収となった旨。中国では一部のサービスが遮断されるといった報道もあり、別の不安材料も浮上、アップルにとって米国に次ぐ、2番目に大きい市場に成長してきた中国だが、その経済や政策の読みにくさが今後の経営のリスクとなりそうな旨。

調査会社からもこの第一四半期でのスマホ出荷初めての低下が表わされている。

◇Smartphone Shipments Down for First Time (4月29日付け EE Times)
→Strategy Analyticsの4月28日レポート。約10年に及ぶ歴史で初めてのこと、スマートフォンの出荷が初めて低下、2016年第一四半期において335 million台、前年同期比3%減の旨。

この大きな変わり目を受けて、直接あるいは間接に、リスク回避に向けた業界および各社の動きが伺われている。TSMCでは、ビジネス戦略の人材強化が見られている。

◇TSMC hires Merrill Lynch senior analyst, says report (4月25日付け DIGITIMES)
→台湾・Central News Agency(CNA)発。TSMCが、Merrill Lynchのseniorアナリスト、Daniel Heyler氏をビジネス戦略senior directorとして採用、TSMCのビジネス戦略展開の一役を担う旨。

半導体業界の先端プロセスについての先陣争いが、ビジネスのさらなる獲得に向けて一層熱を帯びていくという見方が続いている。

◇Competition in advanced process technologies market to heat up (4月25日付け DIGITIMES)
→業界筋発。半導体先端プロセス技術に向けた市場における競合が熱を帯びてくる見込み、Samsung ElectronicsおよびTSMCが、より先端のプロセスに飛躍する動きを高めてファブレス分野のより多くのビジネス獲得に励んでいる旨。

◇As tide turns against chip industry, Samsung forges ahead of rivals (4月26日付け Reuters)
→世界の半導体業界の多くに暗い影がかかろうとする可能性があるが、Samsung Electronics Co Ltdは、力強い科学技術の先端から大方よりは良く適合する見込み、いくつかのカギとなる製品について市場シェアを高め、売上げを増すことも可能にしている旨。

2015年を改めて振り返るデータであるが、アップルが顧客としてTSMCの販売高の増加を如何に引っ張ったか、以下の通り表わされている。

◇Apple drove entire foundry sales increase at TSMC in 2015 (4月26日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsのApril Update to the 2016 McClean Report発。TSMCの昨年、2015年のファウンドリー販売高が$1,464 millionの増加、一方、同社のApple向け販売高が$1,990 million増えて、増分全体の100%以上となっている旨。結果として、AppleなしではTSMCのファウンドリー販売高は昨年2%減少、Appleを含めて集計した6%増より8ポイント落としている旨。

◇Apple drives entire foundry sales increase at TSMC in 2015 says IC Insights (4月27日付け DIGITIMES)

インテルの軸足切り換えが、改めて示されている。

◇Intel CEO Details Priorities Beyond PCs -Brian Krzanich said cloud computing is the most important trend that will shape the company’s future-Krzanich looks to data centers, other areas for growth (4月26日付け The Wall Street Journal)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏が火曜26日、blog postにて。データセンターおよびInternet of Things(IoT)および関連技術カテゴリーが、post-PC世界でのIntelの成長を支える旨。先端メモリ半導体、5G connectivityおよびMoore's Lawの維持が、他の優先順位として表わされている旨。

変わり目を受けた率直な心情にも似た表現が見られる以下の内容である。

◇The Day After the iPhone Fell (4月27日付け EE Times/Blog)
→永久に減じることなく伸び続けられるものはなく、Moore's law然り、iPhoneの売上げもそうである旨。AppleのiPhone低迷は、半導体業界が牽引役を探していく新たな時期を示している旨。

◇Rhines Expounds on the Deconsolidation of the Semiconductor Industry (4月27日付け ELECTROIQ)
→Mentor GraphicsのU2U user conference(Santa Clara, Calif.)にて、同社chairman and chief executive officer(CEO)、Wally Rhines氏の基調プレゼン、“Merger Mania”。「2020年までに我々はみんな同じ会社で働こうとしている」旨。

シリコンバレーのCypress Semiconductor社から、創業者でトップを続けてきたT.J. Rodgers氏の退任、およびBroadcomのInternet of Things(IoT)事業買収が、折も折このタイミングで発表されている。ただし、Rodgers氏は会社には残って重要技術プロジェクトリーダーとして取り組むとのこと。変わり目に対応する動きを伺わせている。

◇T.J. Rodgers Steps Down at Cypress (4月28日付け EE Times)
→Cypress Semiconductor社のCEO、T.J. Rodgers氏が、34年前に同氏が設立した同社で維持したトップの座から今週退任する旨。同氏は、Cypressを去らずにCypress Boardに重要技術プロジェクトに取り組むプロジェクトリーダーとして残る旨。

◇Cypress to Pay $550 Million for Broadcom's IoT Business (4月28日付け EE Times)
→Cypress Semiconductor社(San Jose, Calif.)が、木曜28日に発表の最終合意のもと、Broadcom社のWireless Internet of Things(IoT)事業を$550 millionで買収する旨。Cypressは、BroadcomのWi-Fi, BluetoothおよびZigbee IoT製品ラインおよびintellectual property(IP)を買収、BroadcomのWICED brandおよび開発者ecosystemも含まれる旨。退任を発表したCypressのPresident and CEO、T.J. Rodgers氏はステートメントを通して、CypressのPSoC system-on-chip技術とBroadcomのIoT事業の組み合わせがCypressにIoTにおける力となり、新しい市場を開いていく旨。

◇Cypress CEO to step down (4月28日付け ELECTROIQ)

◇Cypress to acquire Broadcom’s Wireless of Internet of Things business (4月28日付け ELECTROIQ)

◇Cypress Semi to buy Broadcom's Internet of Things business-Cypress to acquire IoT unit from Broadcom for $550M (4月28日付け Reuters)
→Cypress Semiconductorが、BroadcomのInternet of Things(IoT)事業を$550 million in cashで買収、該取引は第三四半期に完了予定の旨。

今回の締めになるが、アップルと並んでスマホを引っ張るサムスンからは、市場が縮む中で儲けを高める手立て、工夫が表わされている。

◇サムスン、縮むスマホで稼ぐ、1〜3月部門増益 (4月29日付け 日経 電子版)
→サムスン電子のスマートフォン事業が復調している旨。28日に発表した2016年1〜3月期の部門営業利益は前年同期比42%増と3四半期連続で前年実績を上回った旨。米アップルの13年ぶり減収が象徴するようにスマホの事業環境は厳しいが、サムスンは機種数絞り込みによるコスト削減や新製品の早期投入など、スマホが縮む中でも稼げる仕組みの確立へ苦心の処方を繰り出している旨。


≪市場実態PickUp≫

【NXP Semiconductorsの業況】

Freescale Semiconductor社を$12 billionで買収したNXP Semiconductorsの第一四半期の業績が発表され、車載用半導体が力強く売上げを押し上げて好調な内容となっている。M&Aがすでに結実とコメントされている。

◇NXP Forecasts Sales Climbing on Higher Car-Chip Demand-NXP Semiconductors expects to overachieve in Q2 (4月26日付け Bloomberg)
→Bloombergデータ発。NXP Semiconductorsが、第二四半期の売上げを$2.3 billion〜$2.4 billionと予測、平均評価の$2.34 billionを越えている旨。

◇NXP Bullish on Future With Freescale in Fold (4月27日付け EE Times)
→NXP Semiconductors NV(Eindhoven, the Netherlands)の第一四半期販売高が$2.2 billion、前四半期比38%増、前年同期比52%増。第二四半期は$2.3 billion〜$2.4 billionの見込み、アナリストの予想consensusは$2.34 billion、車載製品の力強い売上げが押し上げの旨。Freescale Semiconductor社の$12 billion買収はすでに実を結んでいる旨。

◇Apple chipmaker NXP looks to autos to outpace rivals' growth-NXP's Freescale acquisition to help company grow 5% to 7% a year (4月28日付け Reuters)

【SK Hynixの業況】

対してメモリメーカー、SK Hynixの第一四半期業績は、パソコンの低迷、スマホの減速の影響があらわれて大きく落ち込む内容となっている。数量ではなく技術の質を強化するとして、設備投資を全体では減らしている。

◇SK Hynix Sees Improvement After Profit Drops to 3-Year Low-SK Hynix expects rebound in memory chip shipments (4月26日付け Bloomberg)
→SK Hynixが、2016年第一四半期の落ち込みの後、第二四半期ではDRAM出荷が15%戻すと見ている旨。

◇SK Hynix posts revenue and profit decreases in 1Q16 (4月26日付け DIGITIMES)
→SK Hynixの2016年第一四半期の売上げがKRW3.66 trillion、前四半期比17%減、前年同期比24%減。net profitsがKRW448 billion、前四半期比49%減、前年同期比65%減。末端市場需要が弱く、メモリ価格が低下している旨。

◇SK hynix's Q1 net plunges on weaker demand (4月26日付け Yonhap News Agency (South Korea))

◇SK to cut investment in memory chips-SK Hynix to reduce capital spending in favor of memory chips (4月26日付け The Korea Times (Seoul))
→メモリ市場の供給過剰および需要弱含みから、SK Hynixがメモリデバイスへの設備投資を減らしている旨。「優先順位を市場シェア拡大ではなく技術移行の強化に置くため、今年の投資は削減する」と同社President、Kim Joon-ho氏。

【中国のウェーハfab現況】

中国における半導体分野への投資の急速な増加が続いているが、地元中国にTSMCはじめ台湾勢が加わって展開している、それも12-インチウェーハfabsの状況が、韓国から発信されている。

◇Nearing Threat-Investment in Chinese Semiconductor Sector on a Rapid Increase -Billions being invested for wafer fabs in China (4月25日付け BusinessKorea magazine online)
→中国において半導体メーカーが新しいウェーハfab拠点に約$66 billionを投資しており、XMC, TSMC, Powerchip TechnologyおよびUMCがすべて12-インチウェーハfabsを建設している旨。artificial intelligence(AI)およびソフトウェア開発のDkema(香港)は、Huai'an, China(江蘇省淮安)で12-インチウェーハfabラインに$2 billion投資している旨。


【中国・Tsinghuaに対する台湾のスタンス】

中国の半導体M&Aを引っ張るTsinghua Unigroupによる台湾への攻勢について、台湾からの連日の反応である。まず、半導体テスト&実装のSPILは、台湾新政権の政策がはっきりするまで凍結するとしている。

◇Taiwan's Siliconware Precision freezes $1.76 bln stake sale to China's Tsinghua Unigroup (4月26日付け Reuters)
→台湾の半導体テスト&実装メーカー、Siliconware Precision Industries Co(SPIL)が、中国の国家支援conglomerate、Tsinghua Unigroupに約$2 billion stakeを売却する計画を、入れ替わるこんどの台北政府が中国からの投資についての政策を明確にするまで凍結する旨。

Powertechは、台湾政府がTsinghuaの出資を認めるかどうかに拘らず、今年には影響はないとの見方である。

◇Tsinghua investment will not affect PTI 2016 operations (4月27日付け DIGITIMES)
→Powertech Technology(PTI)発。Tsinghua Unigroupによる出資提案が台湾の公正取引当局の承認を得ようとそうでなかろうと、2016年の間には同社のoperationsには影響を与えない旨。

上で凍結としたSPILであるが、2日後の役員会でTsinghuaとの合意を終了させる決議を行っている。

◇SPIL decides to terminate stake deal with Tsinghua Unigroup (4月28日付け DIGITIMES)
→台湾のIC packager、Siliconware Precision Industries(SPIL)、28日発。同社役員会が、中国の国有Tsinghua Unigroupとの戦略的アライアンス合意および株式引き受け合意を終了させる決議を行った旨。2015年12月に達した合意条項の下ではTsinghua Unigroupは、該取引後SPILの24.9%を所有するようSPILの新株をNT$55/unitで引き受ける計画であった旨。

【中国・Xiaomiの内製プロセッサ】

中国のスマホメーカー、Xiaomiが、外部から購入しているapplicationプロセッサについて内製化を図っていたが、来月から低価格スマホに入れていくとのこと、その名も"ライフル"とQualcommなどに対抗する感覚が窺える。

◇Xiaomi to take on Qualcomm, Samsung in processor chips-Xiaomi to debut an app processor, challenging Qualcomm and Samsung (4月25日付け The Korea Times (Seoul))
→業界筋発。Xiaomiが来月、budget(低価格)スマートフォンに向けた同社"Rifle" applicationプロセッサを投入、モバイルプロセッサにおけるQualcommおよびSamsung Electronicsに対する競合に加わってくる旨。同社は以前、QualcommのSnapdragon半導体を用いており、コスト節減対策として内製APの設計開始を決めていた旨。

◇Xiaomi AP -Xiaomi Is About To Come Up with Self-developed Mobile Application Processor (4月25日付け BusinessKorea magazine online)


≪グローバル雑学王−408≫

具体的なM&A(企業の合併買収)の実行プロセスを2回に分けて、

『M&Aの「新」潮流』
 (山本 貴之 著:エネルギーフォーラム新書 036) …2016年1月15日 第一刷発行

より見ていく前半である。事前調査からターゲット企業へのアプローチ、それから基本合意をとりつけるまでのセットアップ段階である。買う側、売る側と利害が交錯するなかでの要所のポイントに、改めて注目している。


第3章 M&Aの実行プロセス =前半=

【M&Aプロセスの全体像】

・M&Aの一般的なディールプロセス
 → FA(フィナンシャルアドバイザー)選定(〜事前調査)
      ↓
   ターゲット企業へのアプローチ
      ↓
   エグゼキューション
    ↓
   M&Aファイナンス PMI(ポスト・マージャ―・インテグレーション/経営統合)

【FA(フィナンシャルアドバイザー)選定】

■FAの必要性および選定のポイント
1)FAの機能および必要性
 →M&Aプロセスの初期段階における以下のトータルのステージをコーディネートするのがFAの役割
  …対象企業の発掘・選定
   候補企業に対する情報の収集と提供
   買収スキームの策定
   対象企業の事業分析
   買収価格の評価
   契約交渉
   各種DD(デューディリジェンス)
   最終契約書調印
   クロージング
2)FA選定のポイント
 →当該分野におけるトラックレコード
  メンバーの経歴・経験
  ターゲット(買収サイドの場合)へのアクセスにおけるネットワークの広さ
  人的つながりの強さ 等

■アドバイザリー契約の締結
1)アドバイザリー契約締結に至るプロセス
 →まずは、FAと秘密保持契約を締結し対象会社等の情報を共有するところからスタート
2)アドバイザリー手数料体系
 →通常のアドバイザリー手数料体系
  →月次あたり最低の活動コスト見合いとして請求するリテイナーフィーと、成約時に請求するサクセスフィー

【ターゲット企業へのアプローチ】

・バイ(buy)サイドの場合
 →買収ターゲット企業をFAがリストアップ、10〜20社目処
  …通常「ロングリスト」
 →更にクライアントと協議の上、搾り込み、5〜10社程度
  …通常「ショートリスト」
・セル(sell)サイドの場合
 →高く評価してくれる会社かどうか、複数の選定基準を定め、FAが同様に候補企業をリストアップ
・FAがクライアントとアドバイザリー契約を締結、本格的に活動を開始してから、最終的に案件の成約(最終契約調印まで)に至る期間
 →通常は半年〜1年

【基本合意】

■概要
・当該合意事項について、法的拘束力のない形で基本合意書を締結することが一般的

■基本合意の一般的構成条文
・以下の項目が一般的
 1)買収対象(買収事業の範囲)、買収スキーム(事業譲渡、株式譲渡、合併・株式交換等)
 2)買収価格、出資比率等
 3)役員、従業員の雇用条件
 4)デューディリジェンスの条件
 5)秘密保持
 6)優先交渉権の付与
 7)最終契約書締結までの期間

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