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1月の世界半導体販売高は鈍いスタート、新たな路線への動き&模索

米国Semiconductor Industry Association(SIA)から恒例の月次世界半導体販売高のデータが発表され、今回は本年の出だし1月についてである。年初から世界的な同時株安、原油価格低下が影を落とし、中国の経済成長の減速、さらにはアップルiPhoneの減産など半導体を取り巻く市場環境の鈍化基調を反映して、1月の世界半導体販売高は、前月比2.7%減、前年同月比5.8%減と鈍いスタートとなっている。昨年からのM&A関連の動きが世界各地で続くとともに、新市場、新路線に向けた戦略的な動きや模索が活発化してきている。

≪1月の世界半導体販売高≫

米SIAからの発表内容が、以下の通りである。

◯2016年のグローバル半導体販売高が鈍いスタートを切る−1月の販売高が前年同月比5.8%減、前月比2.7%減 …3月3日付け SIAプレスリリース

半導体製造、設計および研究の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2016年1月の世界半導体販売高が$26.9 billionに達し、前月の$27.6 billionを2.7%下回り、前年同月、2015年1月の$28.5 billionから5.8%下回った、と発表した。Americas地域での販売高が特に不振で、前月比5.9%、前年同月比16.9%減少している。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「1月のグローバル半導体販売高は、ほとんどの地域市場および製品カテゴリーにわたって減っており、大方は需要軟化および長引くマクロ経済の逆風によるものである。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、John Neuffer氏は言う。「このような難局にも拘らず、穏やかな市場の伸びが2016年に向けて見通されており、実質的に昨年並みの販売高の見方になっている。」

地域別ではほとんどで販売高が減少しており、China(前月比-0.4%/前年同月比+4.3%), Europe(-1.7%/-7.7%), Japan(-3.3%/-5.1%), Asia Pacific/All Other(-2.8%/-6.5%), およびAmericas(-5.9%/-16.9%)とそれぞれ表わされる。

                         【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Jan 2015
Dec 2015
Jan 2016
前年同月比
前月比
========
Americas
6.51
5.75
5.41
-16.9
-5.9
Europe
2.95
2.77
2.72
-7.7
-1.7
Japan
2.62
2.57
2.48
-5.1
-3.3
China
8.07
8.45
8.41
4.3
-0.4
Asia Pacific/All Other
8.40
8.08
7.85
-6.5
-2.8
$28.55 B
$27.62 B
$26.88 B
-5.8 %
-2.7 %

--------------------------------------
市場地域
8-10月平均
11- 1月平均
change
Americas
6.05
5.41
-10.6
Europe
2.91
2.72
-6.4
Japan
2.70
2.48
-7.8
China
8.58
8.41
-1.9
Asia Pacific/All Other
8.75
7.85
-10.2
$28.97 B
$26.88 B
-7.2 %

-------------------------------------

販売高はまた、ほとんどの主要半導体製品カテゴリーにわたって減っており、目立つ例外としてmicroprocessors(MPUs)があって前年同月比2.1%増となっている。

※1月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/January%202016%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた業界紙の取り上げである。

◇Chip Sales Off to Slow Start to 2016 (3月4日付け EE Times)

◇Global semiconductor sales off to sluggish start in 2016 (3月4日付け ELECTROIQ)

半導体市場に大きく響くアップルのiPhoneの減産が、高いシェアを占める日本の電子部品メーカーの12月出荷に次の通り影響しており、1月の世界半導体販売高に通じるところと受け止めている。

◇日本勢の電子部品出荷、12月5.6%マイナス、2年10カ月ぶり減 (3月1日付け 日経)
→電子情報技術産業協会(JEITA)が29日、2015年12月の日本メーカーによる電子部品の世界出荷額が、前年同月に比べ5.6%減の3166億円になったと発表、前年実績を割り込んだのは2013年2月以来、2年10カ月ぶりの旨。米アップルが2016年1〜3月に、日本の先端部品を数多く使う「iPhone」の減産に踏み切るなどスマートフォンの成長鈍化が響いた旨。

市場の次に向けた地殻変動を引き起こすキーワードとしてInternet of Things(IoT)が方々で取り上げられており、半導体業界のこれからの道を開として備えが謳われている。

◇Getting Ready For The IoT-Preparing for the next seismic shift in the semiconductor industry.-IoT growth stays on a growth path (2月29日付け Semiconductor Engineering)
→Internet of Things(IoT)が、半導体業界におけるいくつかの移行に道を開いている旨。Gartnerは、2015年に用いられたconnected thingsは4.9 billion台で2014年から30%増、2020年までに25 billion台に伸びると見ている旨。

半導体業界は次の成長に向けて、新しいビジネスモデルを必要とするというGSAおよびRambusがまとめた提言が見られている。

◇Chip Makers Need New Business Models-White paper: Why the chip industry needs to shift (3月2日付け EE Times/Blog)
→Global Semiconductor Alliance(GSA)とRambusが協力してまとめたwhite paper。半導体業界は、次の伸長段階を牽引するために、open sourceハードウェア, re-programmable siliconおよびFeatures-as-a-Serviceに基づく新しいビジネスモデルを考える必要がある旨。

electronic design automation(EDA)業界からは、セキュリティ&安全が強調される新時代に向けて半導体設計・検証の重みが謳われている。

◇Rhines Reviews Four Decades of Design and Verification-Mentor Graphics chief presses chip design, verification importance (3月2日付け ELECTROIQ)
→DVCon U.S.(DESIGN AND VERIFICATION Conference & Exhibition:
United States:2016年2月29日〜3月3日:San Jose, Calif.)にて、Mentor Graphicsのchairman and chief executive officer(CEO)、Wally Rhines氏基調講演。electronic design automation(EDA)業界は、“Applications Age”からセキュリティ&安全が注目を引いてくるield-programmable gate array(FPGA) prototypingの新しい時代に進んできている旨。

収まらないM&A関連の動きであるが、AvagoとBroadcomが一緒になった新生Broadcomのスタート早々の取り組みが以下の通りである。

◇Broadcom Identifies $300M Cuts-Post Avago, many small divisions created-Broadcom cuts 1,900 jobs, reorganizes after merger (3月3日付け EE Times)
→半導体業界史上最大の$37 billion取引でAvago Technologies LimitedがBroadcom Limitedを買収、この2月1日以降新生Broadcom Corp.のChief Executive Officer(CEO)に就任のHock Tan氏が、新たな定義づけにたくさんの進展、高いレベルでは約24のprofit/loss部門に組織化、該新会社のコア事業と目される旨。

◇Broadcom to cut 1,900 jobs globally (3月3日付け Reuters)
→AvagoとBroadcomの合併に伴って作られた半導体メーカー、Broadcom Ltdが、グローバルに約1,900 jobsを削減する旨。Broadcomはまた、第一四半期の売上げが4%減の$1.77 billionと発表の旨。

SamsungおよびQualcommという最大手を軸とするM&Aの動きがまた1つ出てくるのではないか、と新たな段階を予想する見方である。

◇Samsung, Qualcomm Under Pressure to Enter Chipmaker Deal Frenzy-Analysis: Will Samsung and Qualcomm get in the M&A game? (3月3日付け Bloomberg)
→QualcommおよびSamsung Electronicsはmergers and acquisitions(M&As)に乗り出せる資金力があるが、半導体関連の取引が最高記録を呈した2015年の間は抑えていた旨。「もう1つの統合の波がある。両社は資金、cash flowがあり、動かしても構わない。」(Topeka Capital Marketsのアナリスト、Suji DeSilva氏)


≪市場実態PickUp≫

【Cisco関連の動き】

立て続けに見られる中から、まずはMobile World Congress(MWC)でのトッププレゼンである。

◇Cisco Explains 5G Auto Potential -5G debate shifts to network slicing, virtualization (2月26日付け EE Times)
→半年前にCiscoのCEOに就いたChuck Robbins氏が、今週のMobile World Congress(BARCELONA)にて5Gについて。その価値は、connectivityではなく、データおよび洞察にある旨。

最先端16-nm ASICs、スイッチ半導体の発表が続いている。

◇Cisco Rolls 16nm ASICs-Switch chips chop Broadcom Tomahawk-Cisco ships first 16nm ASICS (3月1日付け EE Times)
→Cisco Systemsが、本日発表した新しいデータセンター製品の一部であるスイッチにおいて同社初の16-nm ASICsを出荷、該ASICsは、Ciscoおよびその競合が作っているスイッチの広範囲で28-nm半導体が用いられているBroadcom社によるfeaturesを飛び越えている旨。

そして、hybrid-cloudサービス、networking半導体と2件の買収が打ち出されている。

◇Cisco is buying CliQr for $260M to expand its hybrid cloud management solutions-Cisco to boost hybrid-cloud services with CliQr purchase (3月1日付け TechCrunch)
→Ciscoが、CliQr(San Jose, CA)を$260 millionで買収、同社hybrid-cloud offeringsに加えていく旨。第三四半期に完了する該取引ですでに確立された連携が拡大、CiscoはCliQrを同社データセンター部門に入れるとしている旨。

◇Cisco Announces $320 Million Deal for Israeli Chip Maker -Deal follows Tuesday's $260 million acquisition of CliQr Technologies (3月2日付け The Wall Street Journal)

◇Cisco to Acquire Israeli Network IC Vendor for $320M (3月3日付け EE Times)
→Cisco Systems社が水曜2日、ファブレスnetworking半導体ベンダー、Leaba Semiconductor(Israel)を$320 millionで買収する旨。

【IoT関連】

Internet of Things(IoT)ネットワークスに向けた標準化を図る各陣営の動きについては、前回もMobile World Congress(MWC)関連で触れているが、補足する内容、まとめとして次の通りである。

◇Singtel, Ericsson to Test 5G Mid-2016 (2月29日付け EE Times)
→シンガポールの電話会社、Singtelが先週の月曜、スウェーデンの通信技術メーカー、Ericssonとの取引契約の一環として2016年後半にNarrow Band Internet of Things(NB-IoT)の試運転を実行していくことを明らかにしている旨。

◇IoTの基盤、主導権争い、家電や車…ネット接続の通信手段、3陣営、150兆円市場にらむ (3月1日付け 日経)
→腕時計から家電、自動車、産業機械まであらゆるモノがインターネットにつながる「IoT」。その普及のカギとなる通信方式を巡る競争が激しくなってきた旨。世界の携帯電話会社や通信機器メーカー、ベンチャーなどが3つの陣営(仏シグフォックス:米半導体大手セムテックが主導する「ローラ・アライアンス」:スウェーデンのエリクソンや中国の華為技術[ファーウェイ]などが主導する「NB-IoT」)を形成、2019年に150兆円近くに達するとの試算もある巨大市場の主導権を握ろうと、しのぎを削っている旨。2月下旬、スペイン・バルセロナで開かれた世界最大の携帯電話見本市「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」。最新のスマートフォンや周辺機器と並んで関係者の関心を集めたのが「スマホの次」と期待されるIoTの基盤となる通信技術の動向の旨。

IoTのデータの膨大さとインパクトが表わされている。

◇Preparing For The IoT Data Tsunami-As the number of interconnected devices increases, technology challenges grow.-Analysis: How to get ready for all that IoT data (2月29日付け Semiconductor Engineering)
→Internet of Things(IoT)は、世界中で処理されるデータ量を大きく増やす見込みであり、半導体設計、computingおよびnetworkingに変化をもたらす事柄の旨。

IoTセンサプラットフォームの取り組みが見られている。

◇ON Semiconductor and RFMicron to unveil IoT platform (3月1日付け ELECTROIQ)
→ON Semiconductor Corporation(Phoenix, Arizona)がRFMicron社(Austin, TX)と連携、battery-free動作をサポートする多面的Internet of Things(IoT)センサプラットフォーム、SENSORRFGEVKを披露する旨。

【半導体fab capacityの地域別比率】

2015年12月時点の半導体fab capacityの地域別比率が、IC Insightsにより表わされている。メモリ生産でリードする韓国を、ファウンドリー主体の台湾が追い抜いてトップに浮上している。台湾、韓国、日本および中国を含むアジアで世界全体の約7割と改めて認識するとともに、150-mm以下では我が国がトップと時間経過を映し出している。

◇Taiwan Tops South Korea in Fab Capacity, IC Insights Says-Taiwan bests South Korea in fab capacity (3月1日付け EE Times)
→IC Insights発。2015年の半導体fab capacityについて、台湾、韓国、日本および中国を含むアジアは全体の69.2%を占め前年の69.7%から低下、北米も14.2%で前年の14.4%から下がった旨。

◇Taiwan passes South Korea to become #1 in total IC wafer fab capacity (3月1日付け ELECTROIQ)
→IC Insights発。2015年12月時点の地域別ウェーハcapacity比率:
 台湾 21.7%
 韓国 20.5%
 日本 17.3%
 北米 14.2%
 中国  9.7%
 欧州  6.4%
 その他 10.2%

◇Taiwan passes South Korea to become No.1 in total IC wafer fab capacity, says IC Insights (3月1日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。2015年12月時点で台湾が、世界IC capacityの約22%を占めてすべての国・地域をリードしている旨。台湾は、2011年に日本を追い越した後2015年に韓国を上回って最大のcapacity holderとなっている旨。ウェーハ径での内訳:
 150-mm以下 日本がトップ
 200-mm   台湾および日本
 300-mm   韓国、続いて台湾

【アップル対FBI】

米連邦捜査局(FBI)が米アップルに対してSan Bernardino, CAでの銃乱射事件の犯人が使っていた「iPhone」のロック解除を求めている問題が、RSA Conferenceそして米下院委員会で議論されている。

◇10 Views of Security at RSA (3月2日付け EE Times/Slideshow)
→annual RSA Conference(2016年2月29日〜3月4日:SAN FRANCISCO)にて、政府、業界および技術のトップリーダーが、FBI vs. Appleの件が引き起こす議論に加わった旨。以下の項目:
 Attorney General tough on Apple
 What keeps the NSA(National Security Agency) awake at night
 Security expert says Apple “goofed”
 Cryptographers win computing's Nobel
 The future of cryptography, Part 1
 The future of cryptography, Part 2
 Cyber politics goes international
 Microsoft praises Apple, Google
 Shortage of security professionals cited

◇FBI Request Exceeds ‘Just 1 iPhone’-Judiciary Committee hearing brings Apple, FBI, experts to table (3月2日付け EE Times)
→米下院Judiciary Committeeにおける火曜1日の5時間の証言の後、スマートフォンのプライバシーに対する国家セキュリティを投げかけているApple vs. FBIの議論は依然"暗号化の危険な情況"にある旨。

グーグル、AT&Tなど産業界からはアップル支持の意見書が提出される現下の事態となっている。

◇グーグルなどアップル支持の意見書、セキュリティー解除問題 (3月4日付け 日経 電子版)
→米連邦捜査局(FBI)が米アップルに「iPhone」のセキュリティー解除を求めている問題で、グーグル、AT&Tなど米主要IT・通信企業と法学者などが3日、共同で連邦地裁の担当判事にアップルを支持するよう求める正式な意見書を出した旨。セキュリティーを意図的に弱めようとする政府の動きに対し、産業界がまとまった反論の動きをみせている旨。

【中国の半導体&製造強国への道のり】

半導体自立化へ向けて国家計画の推進を図っている中国。巨額のM&A戦略が注目を浴びているが、なかなかうまく進んでいない現状の分析が行われている。

◇Setbacks don't derail China's semiconductor ambitions-Analysts note spike in formal and informal Chinese takeover offers-Chinese firms find it hard to deal with CFIUS, study says (2月28日付け South China Morning Post (Hong Kong))
→中国の会社による米国の会社の買収提案がしばしばだめになっており、買い手が取引の国家セキュリティ関連を慮る連邦諸機関body、Committee on Foreign Investment in the United States(CFIUS)の扱いに不慣れなことがある旨。このような挫折は海外半導体資産におけるvaluation premiumsの低下を生み出し、Semiconductor Manufacturing International Corp.(SMIC)のようなより分別のあるメーカーにopportunitiesが作り出される旨。

半導体、エレクトロニクスはじめ産業の高度化が宣言されてからも1年、外見と中身のかい離の実態に目が注がれている。

◇中国「製造強国」なお遠く、首相「宣言」1年、変わらぬ現場、研究開発軽視、補助金頼み (2月29日付け 日経産業)
→「中国は製造大国から製造強国へ転換する」――。全国人民代表大会(全人代)で李克強首相がこう述べたのは1年前。従来の「世界の工場」の役割から脱皮し、今後は自らイノベーションを起こすなどして産業を高度化するとの強い意思を示したものだった旨。だが「言うはやすく行うは難し」。1年後の今も前途はあまりに厳しい旨。1月6日、米ラスベガス。毎年、年明けに開かれる世界最大の家電見本市「CES」で今年、存在感を見せ付けたのは中国企業。出展数は昨年の2倍、1300社にも上り、出展企業全体の3割以上も占めた旨。数だけを見れば、勢いがあるかに見える。だが派手なショーから一転、中国の製造現場に目を転じれば、全く違う中国の現実が顔をのぞかせる旨。・・・景気減速が顕著になってきた中国。焦る気持ちを抑え、今後どこまで本気で腰を据えて産業の高度化に取り組めるのか。製造大国としての覚悟が今こそ問われている旨。


≪グローバル雑学王−400≫

2020年に向けた「働き方」を考える後半は、高度成長期の常識が通用しなくなって「まさかこうなるとは」とバブル崩壊以後いろいろ直面した思いの経緯がある今時点、

『大変化 経済学が教える2020年の日本と世界』
 (竹中 平蔵 著:PHP新書 1023) …2016年1月5日 第一版第一刷

より「自由な働き方」を目指したあるべき姿を表わしている。専門性を磨く自己研鑽を何より求めており、時間ではなく成果で評価される今の時代の価値観が繰り返されている。


第3章 「正社員」より「自由な働き方」を目指す時代 =後半=

3 多様な働き方の先にあるものは

■正社員礼賛の固定観念は昭和の遺物?
・全労働者の3分の1を占めている非正規労働者
 →内訳としては、パート・アルバイト、契約社員の方がずっと多い
 →派遣社員として働いている人は、すべての労働者中のわずか2%
・雇用で重要なのは多様性と柔軟性
 →正社員礼賛の固定観念こそ、払拭すべき

■「労働時間で給与を支払う」の問題点
・一時期、「ホワイトカラー・エグゼンプション」の是非が話題に
 →残業代を払うという概念からホワイトカラーを除こうというもの
・時間によって賃金を払うのは、主としてブルーカラーの労働において
 →年々増えているホワイトカラーの仕事は、成果を時間だけでは測れないことが多い
・実際、すでに多くの国では、ホワイトカラーに残業代は支払われていない
 →ブルーカラーと同じように支払われているのは、日本の特徴
 →よく日本のホワイトカラーの生産性は低いと言われるが、原因の一端はここに
・職種によっては、当然に残業代を支払うべき
 →専門性の高い仕事については、成果で評価されるべき

■海外からゲストワーカーを受け入れれば、女性の働き方が一変する
・日本の生産年齢人口(15〜65才)
 →総人口は2008年をピークに減少、生産年齢人口はその10年以上も前から減り続けている
・日本には移民に関して強いアレルギー
 →ゲストワーカーなら受け入れられるのでは
・女性労働力のM字型の凹みが解消されたら、それだけで日本のGDPは15%も高くなるとも
・ゲストワーカーとして来てもらいたいのは、メイドさんばかりではない
 →例えば外資系企業の日本支社はもっとあってもいい
 →外国人家族も安心して住めるような環境を整える必要

4 「プロ」ならいつでも、どこでも生きていける

■世界に通用する大学教育とは
・大学も終身雇用・年功序列の世界
 →じっくり自分の好きな分野を研究するにはいい環境だが、時代の要請に対応することは不得手
・今の工学部には古いエンジニアの先生たちが居座っている
 →デジタルの技術者の育成が大幅に遅れている
・アメリカの大学の場合、いわゆるテニュア(終身教授)はたいへん狭き門
 →結果として、大学教員の流動性は必然的に高くなる
・大学、政府、政策シンクタンク、企業の企画部門など経験する人、「policy intellectual」
 →要するに政策専門家、アメリカではこういう人材がたいへん豊富
・日本では、問題なのは大学だけではない
 →学校教育全体の制度も見直す必要
 →小学生にインターネットについて教えるとしても、現役の先生方には無理な注文
・第一次安倍政権時の2007年、社会人を教育現場で活用するとりあえずの一歩

■どの会社に勤めているかではなく、どういう専門性を持っているか
・(著者)自身、大学や政府、政策シンクタンクなど職場はさまざまに変わった
 →ずっと大学の中にいたとしたら、霞が関や永田町の実態はわからなかった
・これからの世の中は、よりいっそう「プロフェッショナリティ」、つまり専門性が評価される時代になる
・テレビのワイドショーなどで政策について語るコメンテーター
 →実際に政策に関わった経験のある人はほとんどいない
 →多くは「床屋政談」の域を出ていないと思う
・最近では、日本でも少数ながら「プロCEO」が誕生
 →社内の叩き上げではなく、トップとして企業を転々

■「残業するほど暇じゃない」と言える日々を送ろう
・じつは今まで、日本人は非常に柔軟に変化に対応してきた
 →典型例が、エネルギーの主力が石炭から石油に切り替わった1960年代
 →炭坑で働いていた大量の人々は、一斉に職を失った
 →全員が少しずつ努力をして職種をシフトしていった…「パンピング」
・自分の役割を認識し、資格を取得したりスキルアップしたりして、少しだけ高みを目指すことが重要では
・かつて、あるテレビCMで、「残業するほど暇じゃない」というコピー
 →目の前の仕事にかじりついて残業するのは、じつは「もっとも楽な選択」

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