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同時株安、原油安で始まった2016年初、半導体関係の展望、取り組み

新年、2016年早々、世界的な同時株安、そして低下、低迷傾向が止まらない原油価格に見舞われているなか、半導体・エレクトロニクス関係の先を見た展望、取り組みがいろいろな切り口で表されている。昨年、2015年の世界半導体販売高が史上最高の2014年を上回るかどうか、現時点では難しいとする見方が強い雰囲気であるが、それを反映して、2016年については一ケタの下の方のプラス、マイナスが入り混じる見方となっている。世界経済の動向をしっかり見ながらの新技術・新製品の市場展開への注目ということと思う。

≪2016年に向けての見方諸々≫

半導体製造装置・材料業界での2016年展望が、次のようにあらわされている。

◇Viewpoints: 2016 outlook (1月11日付け ELECTROIQ)
→今年の展望について、各社の見方、見解:
 New technologies will fuel pockets of growth in 2016 …Rudolph Technologies社
 The Internet of Things, and concerns about fab safety and environmental impact will be driving forces in the coming year …Edwards
 Greater process control essential to enable future scaling …Lam Research社
 Test will be front and center for semiconductors in 2016-2017 …Presto Engineering社
 TECHCET’s outlook for 2016 for semiconductor process materials …TECHCET Group
 Linx Consulting and Hilltop Economics - Outlook for 2016

米国については、半導体設備投資の比較的積極的な今後の伸びの見方が見られ、期待を担う米国市場の趣きが感じられる。

◇Semiconductor capital spending market in the US to reach over $31B by 2019 (1月11日付け ELECTROIQ)
→Technavioの見方。米国での半導体capital spending市場が、2015年から2019年にかけて約9%のCAGRで伸びていく旨。

昨年、2015年の世界半導体販売高が2014年から1.9%減少とすでに見方を表しているGartnerであるが、2016年は半導体製造装置についても厳しい環境を予想している。

◇Semiconductor Industry Readies for Tough Year: Gartner-Gartner forecasts a harsh year for chips, chipmaking gear (1月11日付け eWeek)
→Gartner発。アナログ半導体、application-specific半導体, nonopticalセンサおよびoptoelectronicsがすべて2015年は健全な伸びを示す一方、メモリ半導体からの売上げは0.6%減って、全半導体売上げ$333.7 billionにつながり、2014年から1.9%減となっている旨。同社は半導体製造装置にとって2016年は厳しい年と予想している旨。

具体的にGartnerは、2016年の世界半導体capital spendingについて4.7%減と見込んでいる。

◇Semiconductor capital spending to decline 4.7% in 2016, according to Gartner (1月12日付け ELECTROIQ)
→Gartner社発。2016年の世界半導体capital spendingが4.7%減の$59.4 billionと見込む旨。同社が前四半期に予測した3.3%増から下方修正の旨。

◇Worldwide semiconductor capital spending to decline 4.7% in 2016,says Gartner (1月13日付け DIGITIMES)

欧州の研究機関、Imecからは、flexible半導体の大きな市場化進展が予想されている。

◇Predictions 2016: flexible chip tech gets real - Imec-Imec exec predicts wider adoption of flexible chips in 2016 (1月12日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Imec research centre(Belgium)のlarge-area electronics、technology director、Paul Heremans氏。5年の時間で何が必要とされるか決めることが大きな課題となる旨。

年初恒例のISS 2016(Industry Strategy Symposium:1月10-13日:Half Moon Bay, CA)から、本年の展開に向けたいくつかの重要な注目である。まずは、半導体販売高について入り混じる予測である。

◇Chip Forecasts, Drivers Diverge-2016 predictions span -3 to +4 percent-Analysts differ on chip forecasts as smartphones skid (1月12日付け EE Times)
→ISS 2016(Industry Strategy Symposium:1月10-13日:Half Moon Bay, CA)にて、2016年の半導体売上げ予測、そして牽引していきそうなのは何か、アナリストの間で以下の通り広く変わっている旨。中国がカギの要因となろうが、予測がほとんど不可能なものの旨。
2016年の売上げの伸びの予測:
IC Insights  +4%
International Business Strategies(IBS) −1.5%
Gartner  +1.9%

◇Growth and a changing ecosystem at SEMI ISS 2016 (1月13日付け ELECTROIQ)

次に、注目される新技術について、取り組みのプレゼンが行われており、IntelおよびMicronが進めている3D XPointメモリが次のように表されている。

◇3D XPoint Steps Into the Light-Memory materials, fab issues discussed -IM Flash co-CEO talks 3D XPoint memories (1月14日付け EE Times)
→ISS 2016(Industry Strategy Symposium:1月10-13日:Half Moon Bay, CA)にて、IM Flashのco-CEO、Guy Blalock氏。3D XPointメモリ半導体が研究段階から抜け出てfabへ入っており、該新規メモリ技術のさらに詳細、そのロードマップおよび作る上での困難さを説明の旨。
IntelおよびMicronは昨年7月、新規メモリアーキテクチャーとしての3D XPoint定義づけを発表、DRAMとフラッシュの間を埋めて、NANDのような密度を大きく性能を上げlatencyを下げて実現する旨。Chalcogenide材料およびOvonyxスイッチがこの技術の魔法の部分であり、取っ掛かりは1960年代に遡る旨。XPointの量産化には12-18ヶ月かかる可能性、同氏はこれら半導体並びに3D NANDデバイスを作る上でのいくつかの課題に特に言及、共に両社合弁、IM FlashのLehi, Utah fabにて取り組んでいる旨。

Intelが、2.5Dおよび3D packaging技術をサーバ用プロセッサに積極的に導入していくと、以下の表し方となっている。

◇Thinking Outside The Chip-Intel joins AMD, IBM on advanced packaging; performance is the key driver.-Intel embraces 2.5D, 3D chip packaging (1月14日付け Semiconductor Engineering)
→Intelが、IBMおよびAMDの先行に続いて2.5Dおよび3D packagingを自社プロセッサに取り入れを開始、新しい実装アプローチが性能改善および電力低減に肝要との認識の旨。今週のSEMI Industry Strategy Symposium(ISS)にて、Intelのvice presidentで組立&テスト技術director、Babek Sabi氏が、Intelは2016年に2.5Dおよび3D IC実装を積極的に採用、サーバ向けとなる旨。


≪市場実態PickUp≫

【4年連続縮小のPC市場】

2015年の世界PC出荷データが、IDCおよびGartnerから以下の通り表わされている。4年連続の落ち込み、2008年以来の3億台割れ、と半導体市場を長きにわたってリードしてきたPC市場の時代の移り行きが鮮明になっている。

◇PC Shipments Fall For 4th Straight Year (1月13日付け EE Times)
→市場調査会社によると、グローバルPC出荷が2015年にまた減少、半導体業界にとって伝統的に最も重要な市場が4年連続の縮小の旨。
International Data Corp.(IDC)によると、2015年に出荷されたPCは276.2 million台に留まり、300 millionの大台を割るとともに、4年連続のPCs出荷減少の旨。
IDCとPC出荷の計算が僅かに異なるGartnerでは、2015年の出荷PCsが288.7 million台、2014年から8%減。

◇Gartner reports worldwide PC shipments declined 8.3% in fourth quarter of 2015 (1月13日付け ELECTROIQ)

◇2015年の世界パソコン出荷、10.4%減、過去最大の落ち込み幅 (1月13日付け 日経 電子版)
→米調査会社、IDCが12日、2015年のパソコン(PC)の世界出荷数が前年比10.4%減の2億7621万台、過去最大の落ち込み幅となったと発表、3億台を下回ったのは2008年以来の旨。買い替えサイクルが延びたうえ、大型スマートフォンやタブレットなどに市場の一部を奪われた旨。上位5社のなかでは米アップルだけが販売を伸ばした旨。

【年末締め業績】

半導体ランキングの上位にある各社の2015年がどう締まったか、気になるところであるが、まずは台湾のdesign house、MediaTek。年間売り上げは横這いとなっている。

◇MediaTek December sales fall 12%-MediaTek reports Dec. sales were down 11.6% from Nov. (1月11日付け DIGITIMES)
→IC design house、MediaTekの2015年12月連結売上げがNT$18.52 billion($553.7 million)、前月比11.6%減、前年同月比8.5%増。2015年第四四半期売上げはNT$61.7 billionとなり、前四半期比8.3%増、同社ガイドのNT$57-60.4 billionを上回っている旨。MediaTekの2015年間売上げはNT$213.26 billion、前年比ほぼ横這いの旨。

ファウンドリー最大手、TSMCの10-12月業績は減少しており、2016年の売上げ見込みもトーンが下がり気味の以下の内容である。

◇TSMC reports 4Q15 EPS of NT$2.81 (1月14日付け DIGITIMES)
→TSMCの2015年第四四半期連結売上げが$6.24 billion(NT$203.52 billion)、前四半期比6.4%減、前年同期比13.7%減。

◇TSMC 2016 revenues to rise 5-10%, says co-CEO (1月14日付け DIGITIMES)
→TSMCのco-CEO、Mark Liu氏。2016年のグローバルICファウンドリー市場分野は5%増の一方、半導体市場全体は2%の伸びに留まると見る旨。TSMCの2016年の売上げの伸びは5-10%としているが、同氏が以前予想した少なくとも二桁増からは下回っている旨。

最大手のIntelについて、いろいろなタイトル表現が見られているが、10〜12月期は四半期ベース過去最高の売上げと盛り返している。しかし、2015年間売上げは1%と僅かながらの減少となっている。

◇Intel's Earnings Fall in Fourth Quarter, but Beat Expectations (1月14日付け The New York Times)

◇Slowing data center revenue growth dims Intel's profit beat (1月14日付け Reuters)

◇Intel Meets Expectations Despite Sagging PC Market (1月15日付け EE Times)

◇Intel Posts Mixed Results for Q4, 2015 (1月15日付け ELECTROIQ)
→Intelの2015年12月26日締め年間売り上げが$55.4 billion、net incomeが$11.4 billion、2014年はそれぞれ$55.9 billion、$11.7 billionの旨。

◇米インテルの売上高最高、10〜12月期1%増、純利益は1%減 (1月15日付け 日経 電子版)
→米インテルが14日発表した2015年10〜12月期決算。売上高が前年同期比1%増の$14.914 billion(約1兆7600億円)で四半期ベース過去最高を更新、純利益は同1%減の$3.613 billion、データセンターのサーバー向け製品の伸びが牽引の旨。
2015年通期の売上高は前年比1%減の$55.35 billion、純利益は同2%減の$11.42 billionの減収減益。
2016年1〜3月期の売上高予想は$13.5〜$14.5 billion(前年同期は$12.7 billion)、2016年通期の売上高は「1桁台半ばから後半」の伸びを見込む旨。設備投資は$9.5 billionを計画しており、2015年を上回る見通しの旨。

2015年の半導体業界年間販売高が史上最高の2014年を上回るかどうか、依然微妙であり苦し目の色合いが濃くなっている。

【International CESから】

International CES(1月6-9日:Las Vegas)については前回も示しているが、余韻の伝わる話題に注目して以下の通りである。IoT interoperability、自動運転、健康・医療関連、そしてcrowdfundingと、今の分野のキーワードが表されるところである。

◇AllSeen, OIC Bring IoT Interoperability Efforts to CES-IoT interoperability, standards get boost from AllSeen, OIC groups (1月8日付け eWeek)
→AllSeenが最初のAllJoyn-certified製品および14の新メンバーを発表する一方、OIC(Open Interconnect Consortium)はULE(Ultra Low Energyワイヤレス技術) Allianceとの取り組みを披露の旨。

◇Intel shows how this button-sized chip could revolutionize live sports-Intel shows off Curie chip for sports at CES (1月10日付け Business Insider)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏が、CESの基調講演にて、同社のwearable electronics用Curieモジュールを劇的に披露、いろいろなスポーツで如何に使うことができるか、示している旨。「Curieをもって、スポーツの世界を変えようとしているものを作り出したと思う」旨。

◇Mobileye, Nvidia (and Others) Spar over Cars-Mobileye's mapping scheme can 'lock you in' (1月11日付け EE Times)
→今年のInternational Consumer Electronics Show(CES)では自動運転技術の分野が相当な拡大、急に込み入ってきている旨。自動運転関連半導体分野だけで、Nvidia, Mobileye, NXPおよびTexas Instrumentsなど従来からのプレーヤーとは別に、Ceva, あるIPベンダー, IntelおよびQualcommという多くの新参プレーヤーがいままた該市場を突破しようとしている旨。

◇Ultra-Thin Sensors Flex for Medicine (1月12日付け EE Times)
→wearableのMC10(Massachusetts)がInternational CESにて、いくつかの柔軟性があって身体につけるセンサを発表、その1つは人間の髪の毛の半分以下の厚さの旨。

◇All Aboard the Hardware Startup Train (1月13日付け EE Times)
→International CES(1月6-9日)にて、crowdfundingサイト、Indiegogoのメンバー発。ソフトウェア-ベース出資および退屈な展開の数年を経て、crowdfundingの潮流がハードウェアに向かっている旨。半導体およびgadget ecosystem全体におよぶメーカーが乗り組んできている旨。

【Qualcommの奮起】

2015年は苦しい材料が目立ったQualcommの奮起の動きに注目である。まずは、ライセンス契約更新を図って中国市場での競争力を取り戻している以下の内容である。

◇Qualcomm regains competitive edge in China solution market (1月11日付け DIGITIMES)
→台湾のhandset業界筋発。Qualcommが、いくつかの中国のhandsetベンダーとのlicensing合意の更新を行って、中国のスマートフォンソリューション市場での競争力を取り戻している旨。Xiaomi Technology, Huawei,ZTE, Qiku, Haier, K-TouchおよびTCLなど中国のスマートフォンベンダーが、安価な方の半導体価格でのロイヤルティ支払い削減を求めるなか、Qualcommとの新しいlicensing合意に最近すべて調印の旨。

次に、TDKとの合弁で高周波半導体合弁をシンガポールに設立している。かなり大型規模で業界紙も以下の取り上げとなっている。

◇Qualcomm, TDK Join Forces in $3 Billion Radio-Chip Venture-Qualcomm forms RF-chip joint venture with TDK (1月13日付け Bloomberg)
→QualcommとTDKが、合弁、RF360 Holdings(シンガポール)を設立、自動車,drones, handsetsおよびrobotics向けのワイヤレスコンポーネントを開発する旨。Qualcommが該radio-frequency半導体合弁の51%の一方、TDKの子会社が49%をもつ旨。両社は一緒に該合弁に最大$3 billion出資する旨。

◇Qualcomm, TDK Forming Wireless-Components Joint Venture-U.S. company says deal could cost as much as $3 billion over three years (1月13日付け The Wall Street Journal)

◇Qualcomm, TDK Prep $3bn RF Joint Venture (1月14日付け EE Times)

◇Qualcomm and TDK announce joint venture (1月14日付け ELECTROIQ)

◇Qualcomm, TDK form JV to provide RF front-end solutions for mobile devices (1月14日付け DIGITIMES)

◇TDK、クアルコムに事業譲渡、スマホ部品の一部、シンガポールに合弁 (1月14日付け 日経)
→TDKが13日、スマートフォンなどモバイル機器向け部品事業の一部を米半導体大手、クアルコムに譲渡すると発表、TDK子会社の一部事業を切り出す形で、クアルコムとシンガポールに合弁会社を設立する旨。クアルコムが将来、TDK側が持つ合弁会社の株式を取得する権利を持たせており、権利を行使した場合のTDKの売却額は約3600億円になる見込みの旨。TDK子会社で、モバイル機器の無線通信に欠かせない高周波モジュールを手掛ける独エプコスの事業の一部を切り出す旨。その上で、クアルコムの子会社と「RF360・ホールディングス・シンガポール」を設立、出資比率はクアルコム側が51%、TDK側が49%の旨。

【2015年米国特許】

米国特許の2015年出願データが発表されている。件数が7年ぶりの僅かながらも減少、一方、IBMの長年にわたる首位の座変わりなくにも注目させられている。

◇Patent Awards Down, IBM Still No. 1 (1月13日付け EE Times)
→2015年の米国特許出願が298,407件、7年ぶりとなる1%減少、7,355件でリードしている長きにわたるリーダーIBMも2014年から僅かに落としている旨。ここ数年は3%-4%増できているだけに1%減少は大きく、これにはソフトウェアpatentabilityにおける変化、および各社にリサーチ関係を削減させている"sour economy"が効いている様相の旨。
トップ10社、次の通り:
 1.International Business Machines Corp  7,355 件
 2.Samsung Electronics Co Ltd       5,072
 3.Canon KK                4,134
 4.Qualcomm                2,900
 5.Google                 2,835
 6.Toshiba Corp              2,627
 7.Sony Corp                2,455
 8.LG Electronics Inc           2,242
 9.Intel Corp               2,048
 10.Microsoft Technology Licensing LLC   1,956


≪グローバル雑学王−393≫

こんどは欧州におけるエネルギー政策、その課題、そして我が国の政策へ示唆するものを2回に分けて、

『国際エネルギー情勢と日本』
 (小山 堅・久谷 一朗 著:エネルギーフォーラム新書 034) …2015年9月11日 第一刷発行

より見ていく前半である。経済問題はじめ、ウクライナ紛争を巡るロシアとの関係、そして今まさに難民への対応で揺れる欧州、その中核の欧州連合(EU)は、エネルギー政策に関しても基本はあっても各国、個々の対応は変わってくるという巨大な地域集合体としての取り組みと難しさというものを改めて認識させられるところがある。


第六章 欧州から学べること=2分の1=

・悲惨な第二次世界大戦の教訓をもとに欧州連合(European Union:EU)を作り出した欧州
→地域の特性を活かした特徴的かつ先駆的な試みがたくさん行われているエネルギー安全保障

■欧州の概要
・国の集合体として条約によって設立された欧州連合(EU)
→現在28ヶ国が参加
→うち18ヶ国で共通通貨ユーロ使用
→25ヶ国は国境検査を撤廃するというシェンゲン協定(Schengen agreement)に署名
→スイス、ノルウェー、アイスランドの3ヶ国はEUには加盟しないという独自の道

■欧州のエネルギー政策
・EU内には域内のエネルギー需要を賄うだけのエネルギー資源は無い
→エネルギー安全保障の確保はEUにとって最大の課題
→EU域外へのエネルギー依存度をどのように低減していくかという点がポイントの1つ
・EUは意欲的な温室効果ガス削減目標を掲げ、地球温暖化に関わる国際交渉をリード、地球温暖化対策に積極的に取り組んでいる
・EUではエネルギーに関する3つの基本方針 …エネルギー安全保障と地球
温暖化対策の両立
→「エネルギー自給率の向上と安定供給の確保」
「新しいエネルギー・経済システムの構築」
「環境と成長の調和」
→同じEUのエネルギーに関する基本方針であっても加盟各国によって「選択」が異なってくるのが欧州の特徴
・「エネルギー自給率の向上と安定供給の確保」
→フランスは「原子力の利用」を選択、原子力発電の割合は現在70%超
→ドイツでは2022年までに原子力発電を段階的に廃止する脱原発方針、風力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーに注力
・具体的なEUのエネルギー政策のいくつかから
→「電力ガス市場の自由化」
「地球温暖化対策」
「エネルギー安全保障の強化」
・電力ガス市場の自由化
→1987年、EU域内のエネルギー市場の統合に向けた構想の発表
→電力とガスの小売り市場は全面自由化、一般家庭を含む消費者が自由に電力とガスの供給会社を選ぶことが可能に
→輸送インフラに関しては従来の電力会社やガス会社から分離、一括管理して誰でも使えるようにしようというのがEUの方針
→将来的には欧州全体でひとつの送電網、ガス輸送パイプライン網を作ることを目標に
→自由化されたエネルギー市場を監視する機関が各国政府により作られた
→EU全体で統合、欧州全体で統一した基準で運用しようという目的で作られた欧州エネルギー規制機関(ACER:Agency for the Cooperation of Energy Regulators)
→以上のようなエネルギー市場制度改革の根底には、「自由なエネルギーの取引がエネルギーの安定供給に資する」という考え
 →イギリスやスペインはこの考え方を徹底的に追及した市場原理主義の考え方で国内のエネルギー市場の自由化を達成
→フランス、ドイツなどでは、エネルギー供給にはある程度国の関与を残すべきとの方針、エネルギー市場の自由化を徐々に
・EUの地球温暖化対策
→欧州は2020年までに温室効果ガスを1990年と比べて20%削減するという目標
→2015年1月には2030年にEU全体で40%の温室効果ガス削減を目指す新たな目標
→2050年には80%以上の温室効果ガス削減を目指す
→省エネルギー投資の財源として、排出権取引市場における温室効果ガス排出枠の取引収入を活用する考え方
→排出権取引市場は、各企業に温室効果ガスの排出枠を設定、企業に温室効果ガスの排出量をこの排出枠以下となるように義務づけるもの
→欧州連合域内排出量取引制度(通称:EU-ETS[European Union Emission Trading Scheme])は、2005年運用開始
・エネルギー安全保障の強化
→エネルギー供給源の多様化
→2005年にはロシアとウクライナのガス価格を巡る紛争
→EUとしては天然ガスの調達先の多様化に取り組んでいる
→ノルウェーやアルジェリアからも輸入
→液化天然ガス(LNG)を船で運ぶことにより、中東、アフリカ、中米などの遠隔地からの輸入が可能に
→ロシアからの供給ルート自体も多様化
→ウクライナを経由しない新しいパイプラインの建設
→欧州の北方では、ロシアとドイツを結ぶノルド・ストリームパイプラインが完成
→南方では、中央アジア諸国のガスをトルコ、ギリシアを経由してイタリアまで運ぶTANAP[Trans Anatolian Pipeline]-TAP[Trans Adriatic Pipeline]パイプラインの建設開始
→ロシアとウクライナのガスをめぐる紛争
→ウクライナでは親EU政権が樹立、これに対しロシアがウクライナにエネルギー価格に関し圧力
→西欧諸国並みの価格でガスを買うように強く求めるように
→ウクライナは従来の価格でのガス代金しか支払わず、ロシアとの間で価格をめぐる紛争に
→2006年にはガスプロム社がウクライナ向けのガス供給を停止する事態
→EU諸国向けの供給量からウクライナ向けの供給量の30%を削減する形で実施
→ウクライナ側は、無視する形でガスの取得を続行
→パイプライン末端にある欧州連合諸国へ提供されるガス圧は低下、EU各国は大混乱に
・EUでは欧州のエネルギー市場の完全統合に向けた「エネルギー同盟構想」を2015年2月に発表
→交渉を共同で行うことで、より有利な供給条件を得ることを目的
→交渉力を強化する具体的な方法
→第一:EU域内のエネルギーインフラの強化
…EU域内のエネルギーの融通を円滑化するために、EU域内の障害を取り除いていくことが必要不可欠
→第二:規制の枠組みの改善
…各国の規制機関の権限をACERに移管する方向
→第三:エネルギー競争の促進
…規制価格を撤廃、エネルギー供給事業者間で自由な競争を

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