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M&Aの渦中の年末・年越し、買収完了の一方、続く入札駆け引き

新年、2016年を迎え、晴天に恵まれて暖かい出だしとなっている。半導体業界のこの新年はどうなるか?8月にはリオデジャネイロオリンピックが開催され、新興経済圏が一層のこと活性化されると、いつもの出だしで進めたいところであるが、今年の場合は、昨年来吹き荒れたM&Aの嵐が年越し状態でさらにその勢いが増すのではないかという見方も出てきている。モバイル機器の減速、IoT、wearableはじめ新分野などへの目配りとともに、M&Aの動きがどのように落ち着いていくか、見守らざるを得ない現況がある。

≪方々、波乱含み≫

2016年をどう見るか?M&Aの動きのさらなる高まりとその余波のあらわれにまず向いている1つの見方である。

◇8 Predictions for 2016-A look ahead to the semiconductor industry in 2016 (12月30日付け EE Times/Blog)
→EE TimesのSilicon Valley Bureau Chief、Rick Merritt氏。
merger-and-acquisition(M&A)の動きが慌ただしかった1年の後、半導体業界の2016年は同じ状況がさらに度を増す様相、そのような大型合併はかなりのレイオフを生じると見る旨。augmented/virtual realityおよびInternet of things(IoT)が2016年の半導体の伸びを引っ張ると指摘する専門筋があるが、懐疑的である旨。

大型M&Aが続いた昨年であるが、注目される1つのIntelによるFPGAのAltera買収完了が年末も終わりに発表されている。今後Alteraは、そのブランドを用いてIntel傘下のProgrammable Solutions Group(PSG)として活動していくとのこと。今までのAlteraのトップは退任して交代している。

◇Intel Seals $16.7 Billion Altera Deal (12月28日付け EE Times)
→Intel社(Santa Clara, Calif.)が月曜28日、同社最大の買収であるprogrammableロジックベンダー、Altera社の$16.7 billion買収取引の終結を発表、AlteraはIntelの中で、新事業部門、Programmable Solutions Group(PSG)として活動する旨。

◇Intel Completes Acquisition of Altera-$16.7 billion deal underscores Intel CEO’s plan to expand chip maker's business-Intel wraps $16.7B purchase of Altera, its largest deal ever (12月28日付け The Wall Street Journal)
→Intelが月曜28日、Alteraの$16.7 billion買収を完了、同社史上最大の買収を終えた旨。該Altera事業部門は引き続き世界中でそのブランドを用いる一方、Intelは自社XeonプロセッサおよびAlteraのfield-programmable gate arrays(FPGAs)を1つのパッケージに統合する旨。

◇New chief for Intel's FPGA operation-Altera's CEO John Daane won't be heading up the operation now that Intel has finalised its takeover.-Altera CEO departs following Intel acquisition; FPGA group VP/GM named (12月29日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Alteraのembedded systems group、vpであったDan Macnamara氏が、今やIntelのProgrammable Systems Groupと呼ばれるAltera事業を指揮する旨。

◇Intel completes acquisition of Altera (12月29日付け DIGITIMES)
→Intelが12月28日、field-programmable gate array(FPGA)技術のプロバイダー、Alteraの買収完了を発表、約$16.7 billion相当の該取引は6月1日に発表された旨。

◇Intel-Altera acquisition finally reaches conclusion (12月30日付け EE Times India)

台湾で注目される実装&テスト業界での1件であるが、SPILは、ASEによる全株式買収提案を評価検討していく流れとなっている。中国のTsinghua Unigroupとの連携の方はいったん棚上げの扱い方に見える。今月16日には総統選を控えて、成り行きが注目されるところである。

◇SPIL to evaluate ASE acquisition proposal (12月28日付け DIGITIMES)
→台湾のSiliconware Precision Industries(SPIL)が、予定していた中国のTsinghua Unigroupとの連携計画への承認を求める臨時株主総会をキャンセル、そしてライバルのAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)がSPIL株式すべてを買収するように提出した提案の評価に同意した旨。にも拘わらずSPILは、ASEの事業継承提案への評価を始められるためには2つの条件が必要と指摘の旨。

◇ASE says bid for more SPIL shares to take place as scheduled -ASE goes ahead with tender offer for SPIL shares (12月29日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、株式公開買付によりSPILにおける追加の24.71% stakeを買収する計画を予定通り実行することを主張の旨。ASEはステートメントの中で、「SPIL株主の権利と利益を守るために、ASEは以前に発表の通り2015年12月29日に該株式公開買付を合法的に始める」としている旨。SPILは12月28日、2つの条件、すなわち、ASEのさらなるSPIL株式に向けた来る株式公開買付の終結、および相互に合意した条項ベースで構築される交渉、が満たされるときだけ、同社役員会がASEの事業継承提案に同意する、としている旨。

ASEには次の買収の噂が出ているが、火消しの反応となっている。

◇ASE dismisses speculation about Ardentec acquisition (12月28日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、Ardentecを次の買収ターゲットとしているとする中国語・Commercial Timesの記事を却下の旨。
Texas Instruments(TI)およびNXP Semiconductorsなど国際的IDMsから受注を得ているIC testing specialist、Ardentec(台湾・HsinChu County)が、ASEにより買収に向け狙われているという噂が、機関投資家の間で広まっている旨。

半導体の老舗、Fairchildを巡る買収の件について、中国側から踏み上げた入札オファーが見られている。Fairchildは、ON Semiconductorとの合併を依然望む受け取り方となっている模様である。

◇Fairchild Gets New Takeover Offer in Escalated Bidding War (12月29日付け EE Times)
→Fairchild Semiconductor International社が、China Resources Microelectronics(CR Micro)を代表するグループから事業継承オファー改定版を受け取った旨。CR Microに代わる該Party G Groupは、regulatory承認が該取引について得られない場合にはtermination feesについての新しい条件を含む入札を行っている旨。

◇China Resources Said to Revise Offer Terms for Fairchild Bid-Chinese firms reportedly make new bid for Fairchild (12月29日付け Bloomberg)
→本件事情通発。Hua Capital ManagementおよびChina Resources Holdingが率いるグループが、Fairchild Semiconductor Internationalに向けた新しいオファーを提出、今度は$2.46 billion, すなわち$21.70/株と価値づけている旨。しかしながらFairchildのboardは、ON Semiconductorとの合併提案を依然支持している旨。

それぞれ半導体業界の景観をいろいろな切り口で大きく変える動きであるだけに、落ち着きを取り戻していく過程を注視していかざるを得ないところがある。


≪市場実態PickUp≫

【中国市場重点化】

独占的なビジネス慣行で中国から10億ドル近い罰金を科されて支払ったQualcommであるが、中国のNational Development and Reform Commissionに提出した是正計画に則って、以下の通り2件、特許ライセンス契約に調印している。

◇Qualcomm and QiKu sign 3G/4G patent license agreement (12月30日付け DIGITIMES)
→Qualcommが、QihuとCoolpadの合弁、QiKu Internet Network Scientific (Shenzhen)との3Gおよび4G中国特許license合意に入った旨。ロイヤリティ関係合意条項のもと、Qualcommは、QiKuに対し中国で用いる3G WCDMAおよびCDMA2000(EV-DOを含む), および4G LTE(3-mode GSM, TD-SCDMAおよびLTE-TDDを含む)加入者ユニットを開発、製造および販売するための特許licenseを認めている旨。QiKuにより支払われるロイヤリティは、Qualcommが中国のNational Development and Reform Commissionに提出した修正計画に沿っている旨。

◇Qualcomm signs more patent license deals in China (12月31日付け DIGITIMES)
→Qualcommが、中国のHaier GroupおよびBeijing Tianyu Communication Equipment Co.との2つのlicense取引を披露、両社はスマートフォンなどモバイル機器製造に向けてQualcommの3Gおよび4Gワイヤレス技術を用いるのにロイヤリティを支払う旨。該ロイヤリティは、Qualcommが中国のNational Development and Reform Commission(NDRC)に提出した修正計画に沿っている旨。

そのQualcomm, そしてMediaTekおよび中国の半導体設計メーカーに対抗して数年間モバイル用デバイス市場で競っているものの、シェアアップが困難な状況が続いているインテル。こんどは中国のXiaomiへの特別な肩入れ策を以下の通り展開している。Qualcommとインテル、ともに2016年の特に中国市場での存在感の飛躍如何に注目である。

◇Intel gives Xiaomi special deal on notebook processors-Sources: Xiaomi gets a deal on notebook, tablet chips from Intel (12月31日付け DIGITIMES)
→上流supply chain筋発。モバイル機器市場における中国のXiaomiとの連携を強めるために、IntelがXiaomiに対して特別な取引の提供、Xiaomiが購入するすべてのnotebookプロセッサについて無料のタブレットプロセッサを贈っている旨。大型発注のclientsへの優先的なpricingに加えて、Intelはまた、Rockchipと協力、およびSpreadtrumに出資してプレゼンス拡大を図っている旨。

【Samsungの"バイオ・プロセッサ"】

Samsung Electronicsが、wearables市場の中核、ヘルスケア市場に重点化したプロセッサの量産を始めている。biometric信号を処理するall-in-one先端システムロジック半導体であるこの"Bio-Processor"も、2016年の注目材料の1つになると思われる。

◇Samsung Elec says sells new chip for health-focused wearables-Samsung offers "bio-processor" for wearable health gadgets (12月28日付け Reuters)
→Samsung Electronicsが、健康志向wearable electronics用のプロセッサの量産を開始、出荷は2016年前半に始まる旨。該半導体は、digital signal processor(DSP), フラッシュメモリ, microcontroller(MCU)およびpower managementなどbiometric信号を処理する5つのアナログfront-endsを統合している旨。

◇Samsung's ‘bio-processor’.-Samsung says it is in volume production of a ‘bio-processor’ which measures and processes five biometric signals. (12月29日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇Samsung Launches Chip for Health-Related Wearables (12月30日付け EE Times)

◇Samsung starts mass production of bio-processors for health-oriented wearables (12月30日付け DIGITIMES)
→Samsung Electronicsが、健康志向wearables市場に向けたall-in-one先端システムロジック半導体、Bio-Processorの量産を発表、analog front ends(AFE), microcontroller unit(MCU), power management IC, digital signal processor(DSP)およびeFlash memoryを統合して、SamsungのBio-Processorは、外部の処理partsの必要なく自体が測定するbio-signalsを処理できる旨。

【IoT市場の見方、備え】

IoT市場の今後の展開はどうなるか?microcontroller unit(MCU)半導体を大きく引っ張ると以下1つの見方である。

◇IoT market to boost MCU shipments, says ABI Research (12月30日付け DIGITIMES)
→ABI Research発。IoT市場から2015年に150 million個のmulticore microcontroller unit(MCU)半導体が出荷され、その数は2020年までに1.3 billion個に増大する旨。industrial IoT, wearablesおよびsmart homeが現状の重要な市場の牽引役であり、今後の伸びの大方はsmart home業界から出てきて、2020年までにmulticore MCU出荷全体のうち450 million個を占め36%の市場シェアとなる旨。

このように予想される活況から、台湾のIC設計メーカーの備える動きである。

◇Taiwan IC design houses gearing up for IoT boom (12月30日付け DIGITIMES)
→業界筋発。IoT-関連製品の活発な受注から、2016年にMCUs, power management ICsおよびワイヤレス伝送半導体に特化するいくつかの台湾のIC design housesの業績が高められる見込み、Elan Microelectronics, Holtek Semiconductor, Nuvoton Technology, Pixart Imaging, Sonix Technology, Weltrend SemiconductorおよびUltraChipなどがそれに入る旨。

【2016年への読み】

世界半導体販売高について、アップデートされた見方が以下の通り表わされている。確定はまだこれからであるが、昨年、2015年は辛うじて0.2%増の史上最高更新、続く2016年、そして2017年も1.4%、3.1%と伸びていく読みとなっている。

◇Better year for semis in 2016-WSTS sees greater chip-market growth in 2016, 2017 (12月28日付け Electronics Weekly (U.K.))
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) program発。2015年のグローバル半導体市場は$336.4 billionで0.2%の伸びに留まり、2014年の9.9%増から大きく低下の旨。2015年の伸びの低迷は、Asia-Pacの3.9%の伸びをJapanの10.3%減およびEuropeの8.2%減が打ち消すことによる旨。WSTSは、該市場の来年、2016年は1.4%増の$341 billion、2017年は3.1%増の$351.6 billionとなり、2016年はAmericas地域が伸びを引っ張ると予測している旨。

モバイル機器用半導体で大きく伸びてきた台湾のMediaTekも、2016年は次に控える新興市場での伸びに期待をかけている。

◇MediaTek looks to emerging markets for 2016 growth-MediaTek counts on continued gains in Latin America, other markets (12月29日付け DIGITIMES)
→MediaTekが、今年の力強い伸びに立って2016年にLatin America, インド, 東南アジアおよび中東で4Gモバイル機器をさらに伸ばす期待、グローバルに2016年のhandsetsに10%の伸びを見込んでいる旨。


≪グローバル雑学王−391≫

世界全体の石油・天然ガス埋蔵量の半分近くを占めて古くから世界の供給基地として知られる中東は、成長著しい発展途上国としての新しい側面を兼ね備えていて、両方に対応するエネルギー政策が求められる状況を、

『国際エネルギー情勢と日本』
 (小山 堅・久谷 一朗 著:エネルギーフォーラム新書 034) …2015年9月11日 第一刷発行

より辿っていく。何より不安定な政情の歴史があって、今も「イスラム国」の攻勢にさらされる渦中にある。まずは、世界に供給する基地としての中東と、世界のエネルギー市場に大きな影響を与えてきた供給懸念の推移を追っている。


第五章 中東の古い顔と新しい顔 =2分の1=

・中東の新旧両方の側面
 →中東は古くから世界の石油供給基地
 →成長著しい発展途上国としての新しい顔

■世界の石油・天然ガス供給基地としての中東
【中東の石油・天然ガスの可採埋蔵量と生産量】
・全世界で採掘できる石油埋蔵量は、1兆6879億バレル(現在の消費量で約53年分)
 →このうち中東が8085億バレル(世界の47.9%)
・石油生産は、2013年で世界で8681万バレル
 →中東からは全体の約3分の1にあたる日量2800万バレルあまり
・全世界で採掘できる天然ガス埋蔵量は、185.7兆立方メートル(現在の消費量で約55年分)
 →このうち中東が80.3立方メートル(世界の43.2%)
・天然ガス生産は、2013年で世界で3兆3900億立方メートル
 →中東からは約5700立方メートル(世界の生産量に対して約17%)
【中東の石油・天然ガスの輸出先】
・石油の輸出先は、アジア向けが拡大傾向、近年では総輸出量の70%超
・LNGについては、2013年には1990年の輸出量の30倍近くまで拡大
 →近年ではアジア向けの輸出が76%
・中東にとってアジアは、輸出確保がエネルギー安全保障
・世界やアジアにとっての中東は、世界のエネルギー需給をバランスさせるために極めて重要な供給元

■地政学的不安定さに起因する供給懸念
・中東では、1948年から1973年までの間に4度の大きな衝突
 →そのたびに、世界のエネルギー市場には大きな影響
【度重なる中東戦争】
・1973年の第四次中東戦争では、アラブ各国が、イスラエルを支援する西側諸国に対して石油供給を停止
 →原油の輸出価格を1バレルあたり3.01ドルから5.12ドル、さらに11.65ドルへ引き上げ
  …第一次石油危機
【イラン革命とイラン・イラク戦争(第一次湾岸戦争)】
・1980年から1988年までの第一次湾岸戦争
 →イラン革命に対するアラブ周辺国と欧米による「干渉戦争」とも
・期を同じく、OPECも1979年から原油価格を4段階に分けて14.5%値上げを決定
【イラクのクウェート侵攻に始まった第二次湾岸戦争】
・イランとの間の長年の戦争によって疲弊したイラク
 →サダム・フセイン懐柔がうまくいかず、1990年8月1日にイラクはクウェートに侵攻
 →1991年1月17日から第二次湾岸戦争が始まる
・イラクには長期間にわたって国際社会から経済制裁
 →生産量の回復に7年を要した
【アラブ諸国の民主化運動】
・2010年12月18日のチュニジアでの暴動に端を発した民主化運動(通称アラブの春)
 →共通する背景
  *長期独裁政権および腐敗
  *国民の発言・行動に対する政権による抑制
  *独裁政権側近と一般国民との貧富の差
 →世界のエネルギー供給に影響
・今でも比較的平穏な産油国はカタールとアラブ首長国連邦くらいしか
【過激派武装集団の台頭】
・2014年6月10日、アルカイダ系スンニ派の過激派武装集団「イラクとレバントのイスラム国(ISIL、その後「イスラム国」)」が、イラク第2の都市、モスルとティクリートを掌握、首都、バグダッドに向け攻勢
 →イラク、そして隣国のシリアと敵対、この地域の混乱に拍車を掛けかねない存在
・イラクは、国際石油資本も巻き込んだ開発が進んでいた矢先、また先行きが不透明に
・中東地域における不安定な状況
 →需給の逼迫に対する懸念から原油価格は何度も高騰
【中東情勢が石油・天然ガス市場に与える影響と対策】
・中東地域の安定化は日本のエネルギー安全保障にとって非常に重要な問題
 →安定化に向けた支援を行っていくことが必要
・産油国と輸入国の関係では、とかく対立点ばかりが注目されがち
 →しかし、利害を共通にする点も多く

■中東のエネルギー事情の変化
【増加を続けるエネルギー需要】
・中東は近年、エネルギー消費も急速に拡大
 →2013年に7億8530万石油換算トン、1965年の約14倍
【増加の要因】
・エネルギー消費量が増加する主な要因
 →1.人口の増加     …1980年の約3000万人程度から、2013年には1億人を突破
  2.経済活動の進展
  3.安いエネルギー価格 …取引販売価格ではなく、「コスト相当」で利用可能
【エネルギー需要の増加がもたらす影響】
・中東産油国の多くは、国家の歳入を確保するために、国内のエネルギー需要はできるだけ天然ガスで賄って、石油の消費を抑制、輸出に回すという政策
 →その反動として、すでに天然ガスの純輸入国になっている中東産油国も
  …アラブ首長国連邦とクウェート

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