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激動の中国市場と台湾半導体ベンダーを巡って憶測を呼ぶ動き

モバイル機器市場活況の中、史上最高の業績発表をここのところ毎月のように目にしている感じ方があるTSMC、MediaTekなど台湾の半導体メーカーと、世界の工場から世界の市場に躍進し半導体の輸入依存から自立化を図っている渦中にあって激動が続く中国市場を巡って、駆け引きに富んだ動きが相次いでいる。特に、台湾の半導体設計、MediaTekの動きについて、中国のスマートフォンメーカー、Xiaomiとの関係距離、上海の半導体業界向けファンド向けの出資に注目している。

≪目まぐるしい駆け引き≫ 

まずは、中国勢の中での半導体関連の買収が次の通り見られている。

◇PDSTI completes acquisition of Montage (11月24日付け ELECTROIQ)
→Shanghai Pudong Science and Technology Investment Co., Ltd.("PDSTI")とChina Electronics Investment Holdings Limited("CEC Investment")が共同で設立したentity、Montage Technology Global Holdings, Ltd.が、ホームentertainmentおよびcloud computing市場に対するアナログおよびmixed-signal半導体ソリューションのグローバルファブレスプロバイダー、Montage Technology Group Limited(上海)の買収を完了の旨。

台湾ではTSMCが、米国のQualcommから買収した工場を先端実装技術開発の拠点に充てていくという動きが、香港の筋から発信されている。

◇TSMC to turn new plant into packaging facility, says analyst (11月24日付け The China Post)
→香港の機関投資家発。TSMCは、最近Qualcommから買収した工場を先端integrated fan-out wafer-level packaging(InFO-WLP)技術の開発に専念する拠点にしていく旨。

ここで台湾のMediaTekを巡る動きであるが、中国・上海の半導体投資ファンドに出資する計画が以下の通り発表されている。

◇MediaTek Plans $49 Million Investment in China's Chip Fund (11月25日付け EE Times)

◇MediaTek participates in government-led fund in Shanghai (11月25日付け DIGITIMES)
→MediaTekが、上海の現地IC業界の展開を高めることを目指す中国政府主導の投資ファンドに約CNY300 million($49 million)を出資する計画を発表、上海市政府および中国のventure capital会社、Summitview Capitalが起こしている該ファンドは、当初段階で約CNY3 billionを調達する見積り、次第に総額CNY10 billionに達していく旨。

◇MediaTek investing in Chinese technology fund-MediaTek will invest in Shanghai tech fund (11月25日付け The Taipei Times (Taiwan))
→MediaTekが、中国の半導体業界を高めることを狙って上海市政府およびSummitview Capitalが設立したハイテクファンドに$48.9 millionを出資することに合意、該ファンドには、Knight Capital, Semiconductor Manufacturing International(SMIC), Shanghai Jiading Venture Capital FundおよびTsinghua Holdingsも出資している旨。

この出資計画について、中国の半導体業界自立化を図る動きの中での立居振る舞いと次の見方がある。

◇Commentary: MediaTek offers food for thought about investing in China (11月27日付け DIGITIMES)
→SummitView Capitalおよび上海市政府が主導するprivate equity fundに出資するというMediaTekによる発表は、MediaTekが中国の自国半導体業界を推進する活動からの圧力をうまく避けようとしていることを示している旨。

一方では、MediaTekが、中国のスマートフォンメーカー、Xiaomiがライバルとなる中国現地のSoCサプライヤ、Leadcore Technologyに出資する動きを受けて、Xiaomiへの供給関係を中止するという報道が駆け巡って、火消しに躍起の体がうかがえる以下の内容である。

◇MediaTek And Xiaomi Rumored To Have Split [Updated]-Reports differ on MediaTek's relations with Xiaomi (11月25日付け Ubergizmo.com)
→Tencent発によると、スマートフォンメーカー、XiaomiがLeadcore Technologyへの出資を行った後、MediaTekが、Xiaomiとの供給関係を終わらせている旨。MediaTekは、特定顧客について話さないとしてこの報道へのコメントを控えている旨。一方、Xiaomiは同社Sina Weibo microblogのステートメントを出して、主要半導体サプライヤの1つであるMediaTekとの断絶の報道を否定している旨。

◇MediaTek reportedly no longer supplies chips to Xiaomi (11月26日付け DIGITIMES)

→中国メディアoutletsが最近、MediaTekがXiaomiのスマートフォン向け半導体供給の一時中止を決めている、と報じている旨。これに応じてMediaTekは、ある特定顧客についてコメントしないとしている旨。中国語Tencentによると、Xiaomiが最近SoCサプライヤ、Leadcore Technologyに出資、MediaTekのXiaomiとの提携を急ぎ終わらせている旨。XiaomiがLeadcoreの技術特許にアクセスができるという両社取引に達している旨。
TSMCについては、次期アップルのA9プロセッサ生産受注に関する憶測が続いている。

◇TSMC to grab 40-50% of A9 chip orders (11月26日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCが、次世代iPadおよびiPhone機器用のAppleのA9プロセッサ発注の40-50%を獲得する見込み、TSMCはこの見方へのコメントを控えている旨。

中国市場の激動の現時点を示す2点、まずは4Gスマートフォンソリューション価格の下がりっぷりである。

◇China market: 4G smartphone chip prices continue to fall (11月27日付け DIGITIMES)

→業界筋発。4Gスマートフォンソリューション価格が$10/個に低下、2015年前半には引き続き落ちて$7-8に達すると見る旨。半導体プロバイダーがより多くの受注獲得に向けてより低い見積もりを提示する傾向、2015年に予想より早い速度で4Gソリューション価格が低下していく旨。中国の4Gスマートフォン半導体市場における価格戦争は、2015年にLeadcoreおよびSpreadtrumなど現地のIC designersが誘発、MediaTekおよびMarvellがこれに従う情勢の旨。激しい価格競争で中小プレーヤーは市場から押し出される可能性の旨。

もう1つ、労働力市場確保に向けた賃上げの実態の例である。

◇Wage rates in eastern China rise in November (11月28日付け DIGITIMES)

→中国東部・江蘇省(Jiangsu Province)の地方政府が、他の市よりずっと遅れて11月1日に賃金レートを値上げ、重大な労働力不足があった2014年第三四半期の間のelectronics工場に課せられた過重な負担を避けるための旨。台湾のsupply chainメーカーによると、月の最低がCNY150($24.50)からCNY1,680に、時間当たり最低レートがCNY1.50からCNY14.50に上げられた旨。中国のほとんどの地方政府がほぼ毎年最低賃金を上げてきており、多くの日本、韓国および台湾の企業が労働コストのより低い新しい場所を探して生産ラインを動かしている旨。

言い古された感のある激動の中国であるが、今後の展開に向けた新たな段階の渦中にあり、台湾の半導体メーカーの立ち位置とともに引き続き敏感に注目である。


≪市場実態PickUp≫

【インドも激動】

中国での激しい動き、駆け引きに触れたが、続く新興大国、インドでも活発な動きが見られており、まずはインド製タブレットである。

◇Made-in-India tablet ships to US, Europe (11月21日付け EE Times India)
→Innomindsが、シリコンベンダー、electronics製造&サービスプロバイダーと連携、今日の市場の他のbrandsよりも入手手頃な"made-in-India"タブレットを供給する旨。同社の現地製タブレットが、欧州および米国ですでに用いられている旨。

人口がこの先世界のトップになることが見込まれるインド。Googleによるインドに根づいたインターネット人口を増やす活動である。

◇Lost in translation? Google builds Indian language online content (11月25日付け EE Times India)
→The Indian Express発。検索大手、Googleが、インド現地の会社と連携、Indian Language Internet Allianceを設立、Indian languages onlineを推進して2017年までにインターネット人口を5億人に伸ばす旨。

この第三四半期スマートフォン市場におけるインドの急伸長ぶりである。

◇India is APAC's fastest growing smartphone market (11月27日付け EE Times India)

→International Data Corporation(IDC)発。インドがAsia Pacificで最も急成長のスマートフォン市場を記録、2014年第三四半期に前四半期比27%成長の旨。

【ASMLの意気込み】

lithography装置最大手、ASML Holdingが、同社Investor Dayの場にて、意欲的な今後の目標が次の通り表わされている。

◇UPDATE 2-ASML sees sales at 10 bln euros in 2020 if Moore's Law slows (11月24日付け Reuters)
→世界第2の半導体製造装置メーカー、ASMLが月曜24日、2018年までに年間販売高を10 billionユーロ($12 billion)にほぼ倍増、あるいは顧客が最新機種購入を先延ばしすれば最大その2年後に倍増の可能性の旨。

◇ASML outlines long-term growth opportunity at Investor Day (11月24日付け Market Watch)
→2020年までにearnings/株を3倍に。

焦点となる次世代extreme ultraviolet(EUV)関連システムについて、まず台湾のTSMCとの取引が以下の通り発表されている。

◇Chip equipment maker ASML sells first next-generation EUV systems (11月24日付け Reuters)
→オランダの半導体装置メーカー、ASMLが、TSMCとの取引で次世代extreme ultraviolet(EUV)半導体etchingシステムの最初の受注獲得の旨。世界最大の半導体lithographyシステムメーカー、ASMLは、最先端EUV技術に大規模投資、もっと小さく強力なスマートフォンなどモバイル機器を作れるとしている旨。

◇ASML lands EUV tool orders from TSMC (11月25日付け DIGITIMES)
→lithographyシステムベンダー、ASML、24日発。TSMCが、NXE:3350B EUVシステム2台を発注、生産用の意図で2015年納入の旨。加えて、すでに納入されているNXE:3300Bシステム2台が、NXE:3350B性能に格上げされる、と明らかにした旨。
続けざま、韓国のSamsungおよびSK Hynixへの装置供給計画が次の通りである。ASMLにとっての韓国市場の大きさに気づかされる。

◇ASML expands partnership with Samsung, SK hynix-Korean chipmakers plan to use new ASML systems (11月26日付け The Korea Times (Seoul))
→ASML Holdingが来年、Samsung ElectronicsおよびSK Hynixの両社に最新のlithography装置を供給する旨。「韓国市場は、2020年までにASMLのグローバル事業年間売上げの少なくとも3分の1を占める」(ソウルでのpress conferenceにて、ASML KoreaのCEO、Kim Young-sun氏)旨。

【NXPのIoTs戦略】

NXP Semiconductorsが、米国および中国に拠点展開しているstartup、QuinticのBluetooth Low Energy(BLE)およびwearable electronics半導体事業を買収している。有望成長市場、Internet of Things(IoTs)に向けて、必要技術の補充を行っている。

◇NXP acquires Quintic's Wearable and BTLE IC business (11月24日付け EE Times Europe)

◇Nxp Semiconductors NV acquires wearable and bluetooth low energy IC business of Quintic-NXP to buy Bluetooth, wearables chip business (11月24日付け Reuters)
→NXP Semiconductorsが、QuinticのBluetooth Low Energy(BLE)およびwearable electronics半導体事業買収に合意、60件以上の特許などintellectual property(IP)が含まれる旨。該取引は、2015年第一四半期に完了の運び、Quinticのtop managementはNXPに入る模様の旨。

◇NXP to Pick Up Its Missing IoT Link - Bluetooth Low Energy-NXP to buy Quintic's assets and IP (11月25日付け EE Times)
→成長するInternet of Things(IoTs)市場を追及、NXP Semiconductorsが、同社portfolioには目について欠けていた重要技術piece、Bluetooth Low Energy(BLE)を入手の旨。買収先のQuinticは、Sunnyvale, Calif.から北京、上海および深センにoperationsをもつ9年のstartupである旨。NXPは、該買収金額を明らかにしていない旨。

【IEDM 2014】

デバイス・プロセス技術の覇を競う場として回路のISSCCとともに長らく注目してきているIEDMであるが、今年は60年、還暦を迎えるとのこと。ここでも改めて時間の経過を知らされるが、最新の状況、注目内容が以下の通り表わされている。

◇Slideshow: IEDM 2014 Preview (11月26日付け EE TimesELECTROIQ)
→半導体&電子デバイス技術、設計、製造、物理およびmodelingの領域での科学技術ブレイクスルーを発表するIEEE International Electron Devices Meeting(IEDM)が、今年は迎えて60年の記念の年、2014年12月15-17日、Hilton San Francisco Union Square Hotelにて開催の旨。該conferenceは、シリコン、化合物および有機半導体だけでなく、新規途上の材料システムに及んでいる旨。今回は、回路およびプロセス技術相互の影響、環境発電、バイオセンサ/bioMEMS、パワーデバイス、magnetics & spintronics、二次元electronicsおよびnon-Boolean computing用デバイスへの重点が高まっている旨。特に注目の内容、以下の通り:
1) "Pixel-Parallel" Image Processing (NHK)
2) Fully Integrated 27nm 16Gb ReRAM (Micron Technology)
3) Porous Silicon for Integrated On-Chip Energy Storage (Intel)
4) Strained FDSOI Devices for the 10nm Node (ST Microelectronics/IBM Technology Development Alliance)
5) Eliminating Bulky Optics in Hyperspectral Cameras (Imec)
6) Dual-Channel Nanowire Transistors (CEA-LETI)
7) Real-World Performance of Scaled InGaAs Devices (Massachusetts Institute of Technology)
8) Polysilicon Transistors on Arbitrary Substrates, Such As Paper (Delft University of Technology)
9) Flexible High-Performance Nonvolatile Memory (KAIST)
10) Nonvolatile Logic-in-Memory Technology (Tohoku University)
11) 3D Integration of Diverse Technologies for Self-Driving Vehicles (Tohoku University)
12) A New Memory Type - TRAM (Low-Power Electronics Association and Project[LEAP])
13) Combating Alzheimer’s Disease with MEMS Technology (University of Tokyo)
14) FinFETs Formed by Directed Self-Assembly (IBM)

【Intelの新たな取り組み2点】

Intelが近々計画している親指大のパソコン、そして生体認証技術を用いるソフトウェア、次の通りである。

◇Intel planning thumb-sized PCs for next year-The devices will plug into smart TVs and monitors-Intel wants to shrink a PC down to thumb-drive size (11月21日付け Techworld (U.K.)/IDG News Service)

→Intelが来年、モニターやテレビジョンに差し込めるUSB driveの大きさのcomputer stickを計画している旨。

◇Intel to tame passwords with biometric authentication-Intel turns to biometric authentication (11月24日付け CIO.com/IDG News Service)
→IntelのMcAfee事業部門が、生体認証技術を用いるソフトウェアを2014年末までに出し、ユーザが電子機器アクセスにパスワードで入る代わりとする旨。


≪グローバル雑学王−334≫

産業革命および市民革命が変えていく世界の姿に3回にわたって注目する最後3回目は、

 『知れば知るほど面白い 地理・地名・地図から読み解く世界史』
  (宮崎 正勝 著:じっぴコンパクト新書 198) …2014年7月7日 初版第1刷発行

より、ウィーン体制崩壊後のヨーロッパおよび南北戦争とドイツ・イタリアの統一を巡る推移、エピソードを見ていく。アラスカがどうしてアメリカの領土なのか、あの大きな飛び地のそもそもにも触れている。

第5章 産業革命・市民革命と姿を変える世界

32 なぜ、アラスカは地理的に近いカナダやロシアではなく、アメリカの領土になったのか?
……→ウィーン体制崩壊後のヨーロッパ

◇地理の謎32:わずかな金額で売りに出されたアラスカ
・アラスカの地はもともとロシアの領土
 →デンマーク生まれのベーリングが、ロシア皇帝の命を受け、探検&確認
 →毛皮を得るためのラッコ猟の拠点としてロシア領に
・1853年からのクリミア戦争でロシアは財政難に
 →当時のカナダは、目下の敵、イギリスの領土
 →次善の策、アラスカは、アメリカ合衆国に売却されることに
・売却額、わずか720万ドル。アメリカは半世紀で、その100倍の利益。

◆世界史の展開32:

〓ウィーン体制の崩壊
・ウィーン会議では、旧王朝や旧制度が復活、ただし一時的「復活」
・フランスでは、1830年の七月革命、1848年の二月革命
 →二月革命の影響で、ヨーロッパ各地で革命運動が展開
 →体制の転換…「諸国民の春」
・正統主義に基づく復古的な政治体制は、こうして崩壊していくことに

〓グレート・ゲームとクリミア戦争
・このような中で繁栄を極めたのは、イギリス
 →二大政党政治が機能
 →1851年には、第1回万国博覧会がロンドンで開催
・イギリスと対抗したのが、ロシア
 →イギリスとロシアの争いは「グレート・ゲーム」とも
 →対立は、クリミア戦争で頂点に
・激戦の末、ロシアは敗北、装備の差
 →イギリスやフランスの軍艦が蒸気船だったのに対し、ロシアは帆船

33 アメリカ南部とは、どの州を指す言葉なのか?
……→南北戦争とドイツ・イタリアの統一

◇地図の謎33:州の分類に影響を与えた事件とは?
・アメリカの州のグループ分け …「南部」「東部」「中西部」
 →歴史的、気候的、風俗的な固まりを意識
・「南部」の区分に、大きな影響を与えた要因が、「南北戦争」

◆世界史の展開33:

〓アメリカが二つに割れた南北戦争
・1860年、北部の考え方に近い西部出身の男が大統領に当選
 →エイブラハム=リンカーン
・南部は、アメリカ合衆国を離脱、アメリカ連合国を創設、独自の大統領を選出
 →南北戦争が始まることに
・北軍が、最大の激戦、ゲティスバーグの戦いを制す
 →リンカーンが語った「人民の、人民による、人民のための政治」
  →勝利の一報を聞いた数日後、凶弾によって命を落とすことに

〓ドイツとイタリアのそれぞれの統一
・ドイツとイタリアでは、それぞれ統一のための動き
 →1861年、イタリア王国が成立。1866年にヴェネツィア、1870年にはローマ教皇領も併合
 →1871年、ドイツ帝国が成立。プロイセン王がドイツ皇帝、帝国宰相にはビスマルクが就任。
・フランスでは、共和政が復活 …第三共和政
・東アジアでは、日本で明治維新
 →旧体制から抜け出そうとしない清・朝鮮王朝とは異なり、急速な近代化

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