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革新の巨人、IBMの半導体製造売却提案への見方、思い

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コンピュータ、半導体、パソコンと業界草創期から引っ張って象徴的に表されるIBMが、半導体製造部門をファウンドリーのGlobalFoundriesに譲渡、売却する発表が、月曜10月20日に行われて、時間軸のいろいろな感慨、様々な切り口の見方が噴出している感じ方がある。公正取引の審査など経て、手続きが完了するのは来年、2015年のいつかと見られているが、開発設計と製造が分離する大きな時代の区切りがまたまた到来、通り過ぎようとしている。
様々な表わし方の業界の受け止め、反応を追っていく。

≪様々な切り口、時間軸≫

IBMの半導体製造部門の売却の報道は続いていて、この6月時点でGlobalfoundriesとの契約が締結に近づいているという見方が、以下の通り表わされていた。

◇IBM Said Near Deal With Globalfoundries for Chip-Making-Sources -IBM may sell chip division to GlobalFoundries (6月11日付け Bloomberg)
→事情通発。昨年来赤字の半導体製造部門の買い手を求めているIBMが、同事業についてGlobalfoundries社との契約に近づいている旨。

◇Reports: IBM near deal to sell chip business (6月11日付け Burlington Free Press)
→IBMがEssex Junction拠点はじめ同社半導体製造事業を売却するという鳴り止まない噂が水曜11日、BloombergがIBMのGlobalfoundriesとの"契約近し"と報道、一層大きくなっている旨。

◇IBM close to deal to sell chip-manufacturing unit (6月13日付け Taipei Times)

そうしてこのほど、前日に発表予定が次のように表わされている。

◇IBM Sets Announcement on Monday, Possibly on Chip-Making Unit (10月19日付け The New York Times)
→IBMの月曜20日の発表について。

正式な発表を受けて、溢れる感じの各紙の表わし方、概要である。

◇IBM, GF Strike Historic Fab Deal-IBM values total assets and cash at $4.7 billion (10月20日付け EE Times)
→IBMが、半導体fabsをGlobalFoundriesに譲渡する歴史的、大いに待たれた取引の締結、しかし、この複雑な取引の完了には2005年に食い込みそうなregulatory twistsを孕んでいる旨。該取引の骨子:
*IBMは、fabs譲渡およびGlobalFoundriesへの約$1.3 billion in cashの支払いについて、今四半期に$4.7 billionの損失を計上
*2つの主要fabsでのここ12ヶ月での損失が、約$700 million
*GFは、該売却で同定された5,000人以上のIBM fabおよびASIC設計従業員全部を雇用する提示を行う計画
*GFはまた、IBM半導体特許10,000件以上の所有権を得る
*どちらの会社もレイオフあるいは工場閉鎖はない
*GFは、IBMの22-, 14-, および10-nm半導体すべてを供給する独占的10年契約を得る
全体として、該取引によりGlobalFoundriesの現状のcapacityが10%以上拡大され、年にウェーハ2 million枚以上生産の可能性の旨。

◇IBM Unloads Chip Biz To GF (10月20日付け Semiconductor Engineering)

◇IBM 3Q disappoints as it sheds 'empty calories'-IBM to divest chip operations, pay GlobalFoundries $1.5B (10月20日付け Austin American-Statesman (Texas) /The Associated Press)
→GlobalFoundriesが、New YorkおよびVermontの製造拠点などIBMの半導体operationsの事業継承で3年にわたり$1.5 billionを受け取る旨。該契約のもと、サーバ用半導体を開発するグループはIBMに留まり、GlobalFoundriesはIBMの用途に向けた他の半導体を生産する旨。

◇IBM to pay Globalfoundries $1.5 billion to take chip unit (10月20日付け Reuters)

◇IBM to pay GlobalFoundries $1.5B to take over chip fabs (10月20日付け ELECTROIQ)
→GLOBALFOUNDRIESが、IBMのintellectual property(IP), technologistsおよび技術含め、IBMのグローバル商用半導体技術事業を買収する旨。IBMは、該半導体operationsを手放すに当たって向こう3年にわたりGLOBALFOUNDRIESに$1.5 billion in cashを支払う旨。GLOBALFOUNDRIESはまた、向こう10年間22-nm, 14-nmおよび10-nm半導体に向けてIBMの独占的サーバプロセッサ半導体技術プロバイダーになる旨。

◇IBM、半導体製造を譲渡、15億ドル支払う条件で (10月20日付け 日経・電子版)
→米IBMが20日、不採算の半導体製造部門を米半導体受託製造会社、グローバルファウンドリーズ(GF)に譲渡すると発表、IBMは今後、3年間にわたり計15億ドル(約1600億円)をGFに現金で支払う旨。構造改革を急ぎ、人工知能型コンピューター「ワトソン」など付加価値の高い事業に経営資源を集中させる旨。
半導体製造部門の譲渡を巡り、IBMは15億ドルの支払いを含め税引き前費用として2014年7〜9月期に47億ドルを計上する旨。IBMは米国にある半導体工場のほか、半導体の知的財産や技術者も含めて譲渡する旨。GFはIBMの半導体製造・加工技術を獲得することで生産効率化を急ぎたい考え、今後10年間、IBMに対しサーバ用半導体を供給する旨。

恒例のIEDMでIBMが14-nm半導体へのアプローチを発表予定、その技術も今回の買収で移されると見られている。

◇Intel, IBM Dueling 14nm FinFETS-IEDM reveals diametrically opposed approaches-Conference will contrast 14nm FinFETs from Intel, IBM (10月21日付け EE Times)
→IEEE International Electron Devices Meeting(IEDM:2014年12月15-17日:San Francisco)では、IntelおよびIBMから3D FinFETsで作られた14-nm半導体について異なるアプローチが示される旨。IntelはbulkシリコンFinFETs製造法を選んでいる一方、IBMはsilicon-on-insulator(SOI)技術を採用しており、IBMの半導体operationsを買収しているGlobalFoundriesにその技術を移すことになる旨。

今回の買収で降りかかるものは何か、いろいろな角度から見ている以下の記事である。半導体サプライヤランキングについても触れており、
・IBMがIHSのグローバル半導体サプライヤ・トップ25(ファウンドリーを除く)に見えていた最後は2009年のこと。
・IBMがIHSのトップ20に入った最後が2005年、一方、トップ15入りの最後は2002年であった。
・トップ10にIBMを見い出せたのはずっと遡って1993年のこと。当時はまだなかったIHSの代わりにGartnerがまとめていたランキングである。
これとて1990年代以降の話と、改めて時間の経過を感じさせられる。

◇What's the Fallout as IBM Goes Fabless? (10月21日付け PC Magazine)
→IBMのグローバル商用半導体技術事業を$1.5 billionでGlobalfoundriesに売却する動きは、業界watchersには驚きとなっていない旨。IBMはenterpriseサービス事業, cloudオペレータ, big data analytics provider, およびcustom system integratorに完全に移行、半導体製造&革新における業界の歴史的な巨人の1つにとっての一段落となる旨。事実としてIBMは、実際に製造する半導体製品が比較的数量が少ないのに比して、シリコン製造プロセスの革新者として特大の役割をもってきている旨。同社は、immersion lithographyはじめ技術開発の最前線にいる一方、Magnetic Racetrack Memoryのような長期的な将来技術にも出資している旨。

IBMの業績そのものは、やはり非常に厳しく以下の現状となっている。年間で〜$ 1 billionのIBM半導体事業規模、将来ノードfabsの建設に$4 billion - $6 billionでは無理が伴なうという表わし方も別途見られている。

◇米IBM、10四半期連続の減収−業績回復へ荒療治、半導体製造事業から撤退 (10月22日付け 日刊工業)
→米IBMの経営が大揺れとなっている旨。2014年7―9月期連結決算によると、売上高が前年同期比4%減の$22.4 billion、純利益が同17%減の$3.5 billion、減収は10四半期連続となり、2015年達成を公約していた1株当たりの利益目標に届かないとの見通しも示した旨。利益改善に向けて事業構造改革を断行、不採算の半導体製造事業から撤退し、同事業を米半導体受託製造のグローバルファウンドリーズ(GF)へ売却するなど、荒療治に乗り出す旨。業績悪化はクラウド化の進展などの市場変革の荒波にさらされ、収益が伸び悩んだのが要因の旨。

今後に向けて、いろいろな切り口での反応、見方が以下の通り噴出しており、しばらく続いていくものと思われる。

◇IBM enters new era with chip deal (10月22日付け Poughkeepsie Journal)
→何1000人ものIBM従業員が、現実に本当と分かった長らく噂の計画に本日順応しており、大して長くはIBMersではない旨。GlobalFoundriesのheadは、2015年のいつか取引が締結、5,000人のIBMersを喜んで迎え入れる、としている旨。

◇IBM's chip business sale gets national security scrutiny-U.S. to scrutinize IBM's chip-business-sale plans (10月22日付け Computerworld)
→IBMの半導体operationsをGlobalFoundriesに売却する提案について、GlobalFoundriesはUnited Arab Emirates(U.A.E.)の投資家が所有しており、IBMは国防総省に半導体を供給していることから、米国のCommittee on Foreign Investmentが徹底的に調べる旨。

◇IBM, GlobalFoundries have work ahead (10月22日付け Ithaca Journal)
→IBMの半導体製造事業を5,000人のworkers, East FishkillおよびBurlington, Vermontの工場, および$1.5 billionとともにGlobalFoundriesに与えるという"最終合意"を完全なものにするのに、両社にはやるべきことがあり、そのための4つの道筋:
*regulatory review
*人事部門が人々を動かすのにとらなければならない多くの手順
*不動産、土地関係
*両社は今後の半導体生産計画詳細を作り出す必要

◇米グローバルファウンドリーズ、回路微細化の開発加速、IBMから半導体製造取得、TSMCと差縮める (10月22日付け 日経産業)
→半導体製造受託(ファウンドリー)世界2位の米グローバルファウンドリーズ(GF)が米IBMから半導体製造部門の譲渡を受ける旨。世界首位の台湾積体電路製造(TSMC)との差はまだ大きいが、GFへの譲渡の対象にはIBMの技術者や特許なども含まれる旨。ファウンドリーも製造だけでなく最先端の設計技術が求められる中、今回の動きでTSMC包囲網がじわりと狭まる可能性がある旨。IBMはGFへの事業譲渡にあたり2014年7〜9月期に税前費用として$4.7 billion(約5000億円)を計上、うち$1.5 billionはGFへの現金支払いの旨。


≪市場実態PickUp≫

【中国の市場と計画】

中国メーカーによる値下げの圧力が、カメラモジュールおよびLED照明について次の通り見られている。

◇China handset camera module makers cut pricing by 15-20% (10月21日付け DIGITIMES)
→スマートフォン用のカメラモジュールについて中国メーカーが値下げを続けており、2014年後半で前年同期比15-20%の低下が見込まれる旨。中国現地ベンダーからのhandset発注が予想を下回り、限られたメーカーからカメラモジュールが供給されている新しいiPhone 6製品の人気沸騰と合わさって、中国での該モジュールの需要が鈍化している旨。

◇Samsung, TSMC Solid State Lighting reportedly to quit LED lighting business, say Taiwan makers-Report: Samsung, TSMC may exit LED lighting market (10月21日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国メーカーからのpricing圧力から、Samsung ElectronicsおよびTSMCが、light-emitting diode(LED)照明市場を放棄する可能性の旨。

中国共産党の第18期中央委員会第4回全体会議(四中全会)が23日閉幕したばかりの中国で、先々の5ヵ年計画が見えてきている。半導体・エレクトロニクス関係の抽出である。

◇China's 5-Year Plan Revealed-Analyst gives inside scoop on China's future-IDC: China's strategy addresses broadband, e-commerce, chips (10月23日付け EE Times)
→2016年は中国では申(猿)年、並びに同国第13次5ヵ年計画(2016年〜2021年)の最初の年、たぶんもっと重要なのは、2011年(卯[兎]年)から2015年(未[羊]年)の5ヵ年計画を如何に締めるかにある旨。IDCより以下のデータ例:
*2015年末までに、中国はいなかの地域および最大10都市含め同国の95%をブロードバンドwire接続する狙い
*中国は、いくつかのSmart CitiesおよびIoTひとまとめに加えて、誰にもスマホ1台を強調
*2017年までに中国でのスマートフォンは10億台以上、これはメーカーだけでなくサービスプロバイダーにも良いこと
*中国の半導体メーカーは、政府によりlow-endスマートフォン市場シェアを高めることが義務づけられる
*現地の半導体業界を促進、現地brandのCPUsおよびapplicationsプロセッサを作る目標

【SK Hynixの最高業績】

韓国のSK Hynixが、スマホ/タブレット向けのメモリ半導体の活況から7〜9月四半期に付いて過去最高の業績を記録している。苦境のSamsungを支えるメモリ半導体の好調ぶりが、ここにも表れている。

◇SK Hynix third-quarter profit at record high on firm chip demand-PC DRAMs drive record profit at SK Hynix in Q3 (10月22日付け Reuters)
→SK Hynixの第三四半期売上げが前年同期比5.6%増、operating profitが$1.24 billionで同社の最高を記録。PCs用DRAMs出荷が安定したaverage selling prices(ASPs)で7%増の一方、スマートフォンおよびタブレットcomputers用NANDフラッシュメモリデバイス出荷は2%の価格低下にも拘らず26%増の旨。

◇SKハイニックス、営業利益率30%で過去最高実績 (10月23日付け 韓国・中央日報)
→SKハイニックスが23日公示した今年7−9月期の実績。売上高が4兆3121億ウォン、前四半期比9.9%増、前年同期比5.6%増。世界的なメモリ半導体市場好況を受け過去最高の実績、このためメモリ半導体分野はSKグループ内で新たな主力となる見込みの旨。

◇韓国SKハイニックス、7〜9月営業最高益に、スマホ向けメモリ半導体好調 (10月24日付け 日経産業)
→韓国SKハイニックスが23日発表した2014年7〜9月期連結決算。営業利益が1兆3000億ウォン(約1300億円)と前年同期比12%増、過去最高を更新した旨。スマートフォンやパソコン向けのメモリ半導体の出荷が好調、回路線幅の微細化で生産性が上がったことも寄与した旨。

【車載用半導体へのM&Aインパクト】

車載用半導体業界に、最近のmergers and acquisitions(M&A)が大きな影を落としている。サプライヤランキングで、トップのルネサスに迫るInfineonおよび上昇するON Semiconductorとして表われている。

◇Mergers, acquisitions reshape the automotive semi supplier landscape (10月22日付け ELECTROIQ)
→車載用半導体業界のサプライヤランキングに大きく影響を与えるともにこの8月発表の買収2件:
 Infineon Technologies AG(独)のInternational Rectifier社(米)買収
  →2013年販売高の足し算では第2位に
 ON Semiconductor社(米)のAptina Imaging社(米)買収
  →同第8位に

◇Wave of mergers shakes automotive semiconductor landscape (10月23日付け EE Times India)
→IHS Technology発。最近のmergers and acquisitions(M&A)がもたらす震動が、車載用半導体市場の競争力の順位を揺らしている旨。車載用半導体は現時点いくつかの四半期にわたって伸びる傾向を示しており、半導体メーカーはこれを多角化する戦略的チャンスと捉えている旨。

◇Flurry of mergers and acquisitions reshape the automotive semiconductor supplier landscape, says IHS (10月23日付け DIGITIMES)

【台湾から中国への流出】

またまた中国が関係するが、中国メーカーからの台湾人材引き抜き、そしてこれは困ったこと、機密漏洩が以下の通り見られている。公正な取引、知財保護と、またまた対応が問われるところである。

◇China companies to raid talent from Taiwan semiconductor industry (10月22日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国の会社が、現在台湾で受けている5倍以上の月給を提示、台湾の半導体業界から人材の引き抜きを計画している旨。中国の半導体業界が打ち上げたこの動きは、中国政府が中国の半導体業界の発展を促進するためにCNY120 billion($19.6 billion)の基金を設けた後に出ている旨。

◇台湾電機大手、中国からむ機密漏洩続出、競争力低下の懸念広がる、報酬やポストで人材流出 (10月24日付け 日経産業)
→台湾の電機大手で機密漏洩が疑われる事件が相次いでいる旨。中国製のスマートフォンに広く使われる半導体の開発会社、聯発科技(メディアテック)を巡る疑惑では、台湾当局が捜査に乗り出した旨。元社員を通じて技術データが中国のライバル企業に流れたとされるケースが多く、台湾企業の競争力低下につながりかねない大きなリスクになっている旨。

【製造装置業界BB比】

半導体製造装置業界の受注、出荷、そしてBB比(受注額/販売額)が、SEMI(北米)とSEAJ(日本)から毎月発表されているが、最新のこの9月分のデータよりともにBB比が1を下回る(需要が供給よりも少ない)結果となっている。

◇Semiconductor equipment book-to-bill declines in September (10月21日付け ELECTROIQ)
→SEMIが本日発行したSeptember EMDS Book-to-Bill Report。2014年9月の北米半導体装置メーカーの世界受注が$1.17 billion(3ヶ月平均)、BB比が0.94。ここ6ヶ月の推移、次の通り(金額:USM$)。

Billings
Bookings
Book-to-Bill
(3ヶ月平均)
(3ヶ月平均)
April 2014
$1,403.2
$1,443.0
1.03
May 2014
$1,407.8
$1,407.0
1.00
June 2014
$1,327.5
$1,455.0
1.10
July 2014
$1,319.1
$1,417.1
1.07
August 2014 (final)
$1,293.4
$1,346.1
1.04
September 2014 (prelim)
$1,250.4
$1,172.8
0.94

                          [Source: SEMI, October 2014]

◇North America semiconductor equipment industry posts book-to-bill ratio of 0.94 in September, says SEMI (10月21日付け DIGITIMES)

◇BBレシオ、1下回る、9月、3カ月連続 (10月21日付け 日経)
→日本半導体製造装置協会(SEAJ)、20日発。9月の日本製半導体製造装置のBBレシオ(3カ月移動平均の受注額を同・販売額で割った値:速報値)が0.93と3カ月連続で1を下回った旨。

◇Semiconductor makers’ BB ratio drops-SEMI: Sept. book-to-bill drops to 0.94 as orders fall 12.68% from Aug. (10月22日付け The Taipei Times (Taiwan))


≪グローバル雑学王−329≫

アフリカからインド、そしてアメリカ新大陸と、大航海時代を経て膨れ上がっていくヨーロッパ世界を、

 『知れば知るほど面白い 地理・地名・地図から読み解く世界史』
  (宮崎 正勝 著:じっぴコンパクト新書 198) …2014年7月7日 初版第1刷発行

より、これから3回にわたってその経過を見ていく。まずは、大航海時代の先兵役がなぜポルトガル?、リオ・デ・ジャネイロのそもそもの名づけの由来、そして、「ヴィンチ村出身のレオナルド」という天才芸術家というそれぞれの切り口に目を向けて、世界史の展開を顧みている。


第4章 大航海から始まるヨーロッパ世界の膨張

20 なぜ、ポルトガルは大航海時代のパイオニアとなったのか?
……→大航海時代のはじまり

◇地理の謎20:小国ゆえに新しい時代を切り拓くことができたポルトガル
・なぜ小国ポルトガルが、大航海の時代の先駆け(パイオニア)となったのか?
 →1つは地形に。かつてのポルトガルとスペイン(カスティリャ王国)との関係は、安定的なものではなかった
・1143年、スペインの前身の1つカスティリャ王国から独立
 →背後からスペインに睨まれていたポルトガル
 →海外に活躍の場を見い出すしか生きる道はなかった

◆世界史の展開20:

〓幻の国を求めたエンリケ航海王子
・ポルトガルでは、すでに13世紀半ばに、レコンキスタは終了
・カスティリャの侵攻を防ぎ、王となったジョアン一世
 →アフリカ西北端の地、セウタをイスラーム勢力から剥奪
 →このとき軍功をあげたのが、ジョアン一世の第三子エンリケ
  →探検家・航海士を懸命に支援…「エンリケ航海王子」と呼ばれるように

〓航路は広がっていった
・1488年、バルトロメウ=ディアスがアフリカ最南端の岬に到達、「喜望峰」と名づける
 →厳密には、最南端はやや東にあるアガラス岬
・1498年、喜望峰をまわってインドのカリカットに到達したヴァスコ=ダ=ガマ
 →アジアへと続く航路を開拓
・1492年、1ヶ月余りの航海で辿り着いた土地をインドと信じ、先住民を「インディアン」と呼んだコロンブス
 →その地は、中米バハマ諸島のサンゴ礁
 →「サンサルバドル(聖なる救済者)」と名づける
 →現地人の虐待や不正を疑われて逮捕、スペインに送還、不遇のうちに生涯閉じる

21 船乗りの勘違いで名づけられたリオ・デ・ジャネイロ
……→ヨーロッパのアメリカ進出

◇地名の謎21:スペインやポルトガルが名づけた南米の地名
・1502年の元日、ポルトガル船が島の多い河口を発見
 →「1月の川」を意味する「リオ・デ・ジャネイロ(Rio de Janeiro)」と名づける
  →川と思ったのは、細長い入り江だった
・南米には、探検に伴ってヨーロッパ人が名づけた地名が多く残る
 →「アルゼンチン」…「銀」を意味するラテン語
 →「エクアドル」…「赤道」の意のスペイン語
 →スペイン人が名づけた「ブエノスアイレス(よい風)」
  …もとはあまりに長い「三位一体祭の都市とよい風に恵まれた聖母マリアの港」

◆世界史の展開21:

〓世界の海を分け合ったポルトガルとスペイン
・両国間で海の境界を取り決め、1494年、トルデシリャス条約締結
 →境界線の東はポルトガル、西はスペインの海域
 →ポルトガルは主にアジア、スペインは主にアメリカに進出することに
 →ただし、ポルトガルの提督カブラルが漂着したブラジルはポルトガル、スペイン王の援助を受けたマゼランが到達したフィリピンはスペイン領に
・ポルトガルは、アジアから香料、茶、絹織物などを輸入、大きな利益を獲得することに

〓南米を席巻したスペイン
・実はコロンブスの探検の500年ほど前、すでにヴァイキングの船が北アメリカに到達
 →コロンブスの快挙は、新大陸の「再発見」でしか
・スペインは、この地に軍隊を派遣
 →1521年、コルテス率いる軍がメキシコを征服
 →1533年、ピサロがインカ帝国を滅ぼす
・南米で産出された安価な銀は、スペイン王室を潤し、ヨーロッパの経済を活性化
 →ほぼ同じ時期、日本の石見銀山も世界の銀の3分の1を算出、東アジア、特に明の経済に大変化を起こす

22 あの著名人の名前が・・・実は、「村名」だった?
……→ルネサンス

◇地名の謎22:幼少の頃は幸せではなかった(?)万能人
・天才芸術家、レオナルド=ダ=ヴィンチの名
 →「ヴィンチ村出身のレオナルド」という意味に
・彼の幼少時のことや本名などについて、いささか不明な点も多い
 →私生児であり、両親が婚姻関係になかったことが影響しているという
 →後には、多くの分野で人並みならぬ才能、「万能の人」として多くの称賛

◆世界史の展開22:

〓どのようにしてルネサンスは始まったのか
・14から16世紀にわたるルネサンス
 →「再生」を表わすフランス語、「文芸復興」などの訳
・きっかけの1つとなったのが、十字軍
 →兵、資材、船舶などを提供した北イタリアの都市。経済的に支える力に
・とりわけ、1453年にビザンツ帝国が滅亡、多くの学者、文人がイタリア半島に移住
 →イタリアで多彩な文芸が花開く
 →文学:ダンテ、ボッカチオ
  美術:三大巨匠…レオナルド=ダ=ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロ

〓広まりを見せるルネサンスの世界
・中世文化は、神や教会といった宗教的世界観を土台
 →ルネサンスでは、解放された人間的感情、現世を生きる喜び、理性などに重き
・イタリアから北方の西ヨーロッパ各地に広まる …北方ルネサンス
・モンゴル帝国の大商業圏のもとの「三大発明(火薬、羅針盤、活版印刷)」実用化
・コペルニクスが唱えた地動説
 →人々の世界観を大きく変える

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