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Apple iPhone 6 & 6 Plusの明かされる中身と市場インパクト

Apple社のiPhone 6およびiPhone 6 Plus発表について市場の余波が大きく続いて押し寄せている。teardown解析が進んでbill of materials(BOM)コスト評価が行われるととともに、依然革新性に重きを置いた半導体など関連IC partsの選択の傾向が指摘されている。一方、iOS 8.0.1のアップデートの不具合、本体が曲がりやすい問題と、現時点ネット上のやりとりが見られている。また、市場の今後について今の勢いがどうなるのか、推進寄り、抑制寄りと立場に応じて割れるインパクトを、これまた連日のように与えている。

≪先行きへの割れる見方≫

台湾から見たAppleのiPhone 6による8月の輸出が、かなりの増加を見せている。製品リリースに備えた積み増しのためで、今後は細っていくという慎重な見方が表わされている。

◇Taiwan Export Orders Get Lift From Apple's iPhone 6 -Economists Expect Momentum to Taper Off Later This Year-Taiwan exports surged in Aug., ahead of the iPhone 6 debut (9月22日付け The Wall Street Journal)
→台湾・Ministry of Economic Affairs発。8月に海外の購入側が台湾メーカーに$38.21 billionの発注、前年同期比5.2%増、Apple社はじめとするメーカーが製品リリースを前にelectronicコンポーネント在庫を積み増し、しかしながら、economistsはこの推進力は今年後半先細ってくると見ている旨。

デバイスを作る側は増産にひた走っており、TSMCおよびUMCにおいて以下の動きである。

◇TSMC, UMC ramping wafer production capacity in China-Sources: TSMC, UMC push up production in China (9月22日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCおよびUMCが、需要増大に対応、中国での8-インチfabsのウェーハ生産capacityを立ち上げている旨。TSMCの上海の8-インチウェーハfab拠点は90,000枚/月から110,000枚/月に生産capacityを高めている一方、UMCの子会社、Hejian Technologyは49,000枚/月60,000枚/月に生産を増やしている旨。

関連部品の価格の動きとして、以下その1つである。

◇Smartphone 4G solution prices to continue to fall in 1H15-Sources: Prices for 4G phone chips dip (9月22日付け DIGITIMES)
→業界筋発。entry-level 4Gスマートフォン用半導体の価格が、$8 to $9/個に低下、QualcommのSnapdragon 210プロセッサの$9以下での投入を受けてさらに下がる可能性の旨。

Apple向け生産とnon-Appleデバイスベンダー向けの対応で、1年の割り振り模様が以下の通り表わされている。

◇Chip suppliers set to compete for wafer capacity-IC vendors ramp up capacity competition, sources say (9月25日付け DIGITIMES)
→業界筋発。半導体サプライヤが、non-Appleデバイスベンダー向け半導体を生産するためにウェーハ受注を獲得し始める見込み、ウェーハcapacityの新たな競合roundが始まる様相の動きの旨。大方のウェーハファウンドリーhouses、特にTSMCは、2014年始め以降ほとんどフルcapacity操業となっており、年の後半にApple関連サプライヤが発注し始める前に年の前半はnon-Appleデバイスベンダーからの需要に適合するようoutputを立ち上げなければならない旨。

これから落ち込むなんてことはないと、ファウンドリー筋からの見方である。

◇Foundry sector downplays Q4 utilization dive rumors (9月23日付け The China Post)
→半導体ファウンドリー分野に近い筋が昨日、第四四半期に12-インチウェーハメーカーにとって展望が大きく落ち込む可能性を示す市場での噂を軽視している旨。

今回のiPhoneのteardown解析が、以下の通り連日発表されている。
iPhone 6 Plusの利益マージンが目立つ内容となっている。

◇Teardown: iPhone 6 Plus packs in A8, Retina HD display (9月22日付け EE Times India)
→iPhone 6 Plusは、AppleのA8 SoC, 大きなLi-Ion電池および平方インチ当たりできるだけ多くの画素を入れたRetina HDディスプレイなど、小さいパッケージに詰め込める限りの多くの新技術を組み合わせている旨。

◇Teardown.com Analysis: The Apple iPhone 6 & 6 Plus (9月23日付け Tech Insights)
→BOMコスト比較:
 iPhone 5S      $211.49
 iPhone 6      %nbsp;$227.00
 iPhone 6 Plus    $242.50

◇iPhone 6 Plus: US$100 costlier for consumers, US$15.50 more expensive for Apple to make, says IHS (9月24日付け DIGITIMES)
→IHS発。AppleのiPhone 6よりiPhone 6 Plusを買おうという消費者にとって、画面寸法の0.8-インチ分の追加が$100ほど余分にかかる旨。しかしながらAppleにとっては生産コストの増加は約$16で高い利益マージンとなる旨。コストデータ、次の通り:
NANDフラッシュ16GB搭載iPhone 6
 →bill of materials(BOM)コスト $196.10
  製造費            $4
  生産コスト          $200.10
iPhone 6 Plus
 →BOMコスト           $211.10
  製造費            $4.50
  生産コスト          $215.60

teardown解析をもとに、Apple社のデバイス部品選択の考え方が以下の通り表わされている。

◇Commentary: Few Taiwan-made IC parts in iPhone 6 (9月25日付け DIGITIMES)
→iPhone 6の最近のteardown解析によると、Appleは依然主導的な国際プレーヤーによるIC parts使用を好んでおり、大方の台湾のIC design housesはそのsupply chainから除かれている旨。NXP Semiconductors, AustrimicrosystemsおよびInvenSenseが初めてiPhone supply chain入りに選ばれていることから判断すると、AppleのIC parts購買は関連半導体の革新の度合に依然基づいており、特にIC partsがもたらす新機能、新しい応用あるいは電力節減など付加価値に注目している旨。

市場インパクトとして見られる動き、まずは、盛り返しを図るSamsungからの発信である。

◇Samsung Electronics executive says expect quick mobile business turnaround (9月23日付け Reuters)
→Samsung ElectronicsのPresident、D.J. Lee氏が、press conferenceにて。同社のモバイル事業は、その力強い基礎および科学技術の実力から素早く戻す旨。Galaxy Note 4スマートフォンについて、これまでの一層力強いpre-ordersに特に言及、先行品よりもずっと良い売上げとなる様相の旨。

AppleそしてSamsungから、20-nm, 64-ビット世代の到来が告げられる形である。

◇Apple, Samsung Usher in the 20nm, 64-bit Smartphone Generation (9月24日付け PC Magazine)
→当初予想より時間がかかっているが、スマートフォン向けapplicationプロセッサの20-nm世代が現われ始めている様相、Apple iPhone 6および6 Plus並びにまもなく出てくるSamsung Galaxy Note 4およびNote Edgeのいくつかのversionsを動かしている旨。

ところで、特に大きい方のiPhone 6 Plusについて、お尻のポケットに入れて一定時間座ると体重に耐えられずに曲がってしまうらしいとのネット発信が見られ、実際にアメリカでは苦情が相次いでいるとのこと。9月27日付けITmedia ニュースによると、非営利の消費者団体が発行する米国情報誌「Consumer Reports」は9月26日(現地時間)、Appleの新端末「iPhone 6 Plus」および「iPhone 6」の強度テストの結果を発表、いずれの端末も「インターネット上で騒がれているよりずっと強く」「考えられているほど曲がりやすくない」としているとのことである。世界中でまだまだ続きそうな余波という受け止めがある。


≪市場実態PickUp≫

【Intelの中国接近】

Intelが、中国政府系列下のモバイル半導体メーカー2社に投資する動きが報道されるとともに、中国のアプリ・プロセッサメーカーとの連携が発表されて、次の通りいろいろな切り口での見方が表わされている。

◇Digitimes Research: Intel, Rockchip look to expand x86 presence in tablet AP market (9月22日付け DIGITIMES)
 →PC市場の伸びの力不足および過剰ウェーハcapacityから、Intelは、モバイル製品事業に重点化してこの問題を打開しようとしているが、ARMがモバイル業界を席巻しており、Intelはビジネスパートナーに奨励金を出さざるを得なくなっている旨。Intelは、中国のapplication processor設計のRockchipと協力、新しいビジネスモデルを始めて、新しい半導体およびソリューション設計サービスを売り込む旨。Rockchipの中国でのecosystemを通してIntelは、新興市場に一層適するprice-friendlyで競争力のある製品にするよう、ウェーハOEM事業を立ち上げて次第にcustomized x86半導体製品にもっていく期待の旨。

◇Intel Takes 20% Stake in China’s Spreadtrum, Says Tencent-Report: Intel buys a 20% stake in Spreadtrum (9月24日付け Barron's /Tech Trader Daily blog)
→Intelが、中国政府が出資するTsinghua Unigroupが昨年買収した半導体メーカー、Spreadtrum Communicationsの20% equity stakeを買収の旨。中国のnewsサービス、Tencentは、Intelは中国での公正取引調査を回避するためにSpreadtrum stakeを買収、としている旨。

◇Intel May Invest in Spreadtrum, Report Says (9月25日付け EE Times)

◇Intel taking stakes in China mobile chipmakers (9月25日付け Reuters)
→本件2つの事情通筋発。Intel社が、中国政府系列下のモバイル半導体メーカー、Spreadtrum CommunicationsおよびRDA Microelectronicsに投資する発表が迫っている旨。Qualcomm社が引っ張るスマートフォン半導体業界で挽回を図る最新の動きの旨。

◇4 Reasons for Intel's $1.5 Billion Bet in China-Chip firm to piggyback on China's IC dream (9月26日付け EE Times)
→インテルの中国アプローチは、複数のレベルで分岐がある旨。
  1. Qualcomm vs. China
  2. Intel vs. China's national priority
  3. ARM vs. X86
  4. Intel vs. TSMC (and SMIC)

【ARMのCortex-M7コア】

ARMから、次世代32-ビットプロセッサ・コア、Cortex-M7が発表されている。従来の倍の性能、今までで最も強力なMCUコアとのこと、以下の通り幅広い用途分野が見込まれている。

◇ARM Pumps Up MCU for IoT-Cortex M7 doubles past performance (9月23日付け EE Times)
→ARMが、産業、インフラおよびhome automation市場のembedded応用に向けて次世代32-ビットプロセッサ・コア、Cortex-M7を発表、28-nmプロセスに向けた該コアは、従来のCortex-M品のcomputeおよびdigital signal processing(DSP)の倍の性能を擁して、ARMのこれまでで最も強力なmicrocontroller(MCU)コアである旨。

◇ARM aims to put real brains into devices for the Internet of things-ARM targets the Internet of Things with Cortex-M7 design (9月23日付け VentureBeat)
→ARM Holdingsが、32-ビット, 400-MHzプロセッサコア、Cortex-M7設計を披露、車載electronics、データストレージおよびnetworking装置、医療用electronicsおよびいろいろなInternet of Things(IoT)応用に向けた半導体に入る可能性の旨。Freescale Semiconductor, Atmel およびSTMicroelectronicsが、該ARM設計のライセンス供与をすでに受けている旨。

◇ARM Holdings unveils new processor for connected homes, factories (9月23日付け Reuters)

◇ARM looks to rev up cars, fridges with new embedded-chip design (9月23日付け CNET)

【次世代ストレージ】

次世代ストレージに向けたメモリ技術のトップ10が、以下の通り挙げられている。デバイス構造からアーキテクチャーまで様々なアプローチの最先端の取り組みが一覧できる受け止めである。

◇Top 10 Candidates for Next-Gen Storage (9月22日付け EE Times /Slideshow)
→デバイスからアーキテクチャーまでメモリ技術トップ10を探索、以下の内容。
3D chip stacking using TSVs improve densities at Micron
 …MicronのHybrid Memory Cube(HMC)はDRAM半導体stackに最大2,000個のthrough silicon vias(TSVs)を使用
True 3D chips layered directly on same die
 …BeSang製True 3D半導体はSK Hynixによる製造
IBM banking on phase-change memory to replace HD
Racetrack memory could replace 3D, PCM, and HDD
 …IBMが発明したRacetrackメモリ
Spintronic memories just around the corner
 …IBMの取り組み
IBM's mag tape plus SSD caches could change game
 …IBMと富士フィルム
Multi-level SSD has legs yet
 …Intel
Atomic memory will be proven this decade
 …IBMのscanning tunneling microscopes(STMs)に向けた新pulsed技法
Hybrid architectures only store changes locally or remotely
 …Fusion I/O(最近SanDiskが買収)のソリューション
Software-defined storage uses algorithms to accelerate memory hierarchies

【SPIE総括】

SPIE Photomask Technology conferenceでのASMLの微細化の見方を前回の本欄で示しているが、半導体製造の最先端を探る本conferenceのまとめが次の通り表わされている。EUVについての受け止めに注目している。

◇SPIE Photomask Technology Wrap-up (9月23日付け ELECTROIQ)
→SPIE Photomask Technology conference and exhibition(2014年9月16-18日:Monterey Conference Center, Monterey, Calif.)について。
extreme-ultraviolet(EUV) lithographyが主導する話題、しかし唯一ではなく、mask patterning, 材料&プロセス, metrology, シミュレーション, optical proximity correction (OPC), およびマスクデータpreparationが、セッション&プレゼンで広く取り上げられた旨。EUVが半導体製造の“magic bullet”(魔法の弾丸、特効薬)と称賛されて何年か、業界executivesおよびエンジニアは該技術が有用性の窓が限られるという懸念をもっている旨。引き続く遅れで、10-nmおよび7-nmプロセスノードではあきらめる向きが出ている旨。

【38-nmプロセス】

ふと38-nmプロセスという共通するキーワードに注目させられた以下2件である。中国・Xian SinoChipの台湾・Powerchipへの生産委託、そして中国・SMICのNANDフラッシュOEM生産対応offeringである。

◇Xian SinoChip reportedly uses Powerchip foundry services-Report: Xian SinoChip turns to Powerchip for foundry services (9月23日付け DIGITIMES)
→業界筋発。メモリ、ディジタルSoC設計およびtestingサービスのXian SinoChip Semiconductors[中国:2009年に中国・Inspur Groupが買収する前はQimonda Technologies (Xian))]が、ウェーハ生産をPowerchip Technologyに委託、38-nmプロセスを用いる旨。

◇SMIC ready to begin OEM production of NAND flash chips (9月24日付け DIGITIMES)
→業界筋発。SMICが、NANDフラッシュ半導体のOEM生産に入る備えであり、社内で開発した38-nmプロセスを用いてNANDフラッシュ半導体を生産する旨。この同じプラットフォームを用いてSMICは3D NANDフラッシュ半導体の開発を始める計画の旨。


≪グローバル雑学王−325≫

3回に分けて古代帝国の滅亡、そしてその後のヨーロッパ・アジアの再編を、

 『知れば知るほど面白い 地理・地名・地図から読み解く世界史』
  (宮崎 正勝 著:じっぴコンパクト新書 198) …2014年7月7日 初版第1刷発行

より見ているが、その2回目である。今回は、小生もそう感じたことのある地名の由緒2点、ドイツに目立つ「○○ブルク」、そして北の趣きのフランスの「ノルマンディー」に注目している。


第2章 古代帝国の滅亡とヨーロッパ・アジアの再編

10 なぜドイツ周辺には「○○ブルク」という地名が多いのか?
……→フランク王国の分裂

◇地名の謎10:たくさんの小国が分立していたドイツ
・ドイツ周辺、たくさんの「○○ブルク」が存在
 →「ブルク(burg)」には「城塞都市」といった意味合い
 →諸侯の城郭や修道院を核として発展した城塞都市の名残
・他のヨーロッパ諸国にも似た傾向
 →フランスの「○○ブール」
  イギリスの「○○バラ」、「○○ベリー」
  ロシアの「○○グラード」

◆世界史の展開10:

〓分裂するフランク王国
・ローマ帝国の分裂後、西ヨーロッパで勢力を誇ったフランク王国
 →栄光の西ローマ帝国復活の勢いがあったカール大帝
 →その死後、親子、兄弟の間で激しい対立、抗争の幕
・843年、ヴェルダン条約:870年、メルセン条約
 →西フランク王国(後のフランス)、イタリア、そして東フランク王国(後の神聖ローマ帝国→ドイツ)の三国に分かれることに

〓断絶するカロリング家
・カロリング家、すなわちカール大帝の血を引く王の系統の断絶
 →イタリアで875年のこと。ローマ教皇領も存在、複雑な位置。
 →東フランク王国では10世紀はじめ。「神聖ローマ帝国」と呼ばれるように。実際には各地に諸侯が存在。
 →西フランク王国では10世紀末に断絶。その後はカペー朝、徐々に王権が強化へ。

11 「ノルマンディー」は西欧(フランス)にあるのに、名前が北欧(ノルディック)っぽいのは、なぜ?
……→ノルマン人の進出

◇地名の謎11:ヨーロッパ中を恐れさせた「ヴァイキング」
・北フランスの地名、ノルマンディー
 →もともと北欧を根拠地とした「ノルマン人の国」といった意味
・北方を原住地としたノルマン人
 →通商のほか、海賊行為なども。別名「ヴァイキング」

◆世界史の展開11:

〓ヨーロッパ各地に進出していったノルマン人
・ノルマン人はゲルマン民族の一派
 →デーン(デンマーク)、スウェード(スウェーデン)、ノルウェーの3系統に大別
・リューリクというノルマン人の首長が率いる一派
 →862年、ノヴゴロド王国を建国
 →その約20年後、キエフ公国を建設
 →モスクワ大公国、ロシア帝国へと続いていくことに
・10世紀始め頃、ノルマン人の首長、ロロが率いる部隊
 →セーヌ河口域からパリにまで迫る
 →ノルマンディー公国に
・12世紀前半、地中海にノルマン人が進出、イタリア南部とシチリアに両シチリア王国が建設

〓イギリスとノルマン人
・イギリスは、王国群が9世紀前半に統一、アングロ=サクソン王国と呼ばれるように
 →これを攻撃したのがノルマン人
・1066年、またもやノルマン人がイングランドを攻撃
 →ノルマンディー公のウィリアム
 →以後、イングランドはしばらくノルマン系の王(血統の入った王)が君臨する国に
・ウィリアムがノルマンディー公という立場で、同時にイングランドの王に
 →複雑な関係が、以降の英仏関係に大きな影響を及ぼすことに

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