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大手プレーヤーを巡る連日の激しい変化、衝撃

米主要企業の意外な組み合わせ、ITの両雄、アップル・IBMの提携が株価を押し上げという見出し(7月19日付け日経 電子版)が見られるが、こればかりではなくインテルのmicroprocessor(MPU)出荷が四半期最高を記録、市場予想を越える好業績となるなど市場の好感を呼ぶ大手プレーヤーの動きが相次いでいる。一方、マイクロソフトのノキアhandset事業部門買収に絡んだ人員削減、そして富士通の半導体生産の撤退で10年以上に及ぶ我が国業界再編に一区切りと、いろいろな記憶、思いが去来する現下の動きとなっている。

≪モバイル市場活況の反映≫

かつてのパソコン黎明期のライバル、アップルとIBMの企業向け携帯端末分野での提携が次の通り意表を突く形で発表され、早速の反応を合わせ次の通りである。

◇アップルとIBM、企業向け携帯端末で提携 (7月16日付け 日経 電子版)
→米アップルが15日、企業向け携帯端末分野でIBMと提携したと発表、IBMが同社の顧客向けにアップルのスマートフォン「iPhone」や多機能携帯端末「iPad」を販売、両社で使いやすいアプリケーションソフトの開発も手掛ける旨。IT業界を代表する2社が連携して事業基盤の強化を目指す旨。

◇Apple-IBM Deal: Trouble for Google, Microsoft (7月17日付け EE Times Blog)
→AppleのIBMとの連携で、AndroidおよびWindows Phoneが仕事場に隙間を作り出すのがさらに難しくなる旨。

◇Apple and IBM on the Way to Demonstrate That ONE plus ONE is More Than TWO (7月17日付け 3D InCites)

◇Apple and IBM forge global partnership to transform enterprise mobility (7月17日付け DIGITIMES)

◇ITの両雄、企業向け補完、アップル・IBM提携、マイクロソフトに対抗 (7月17日付け 日経)
→米アップルとIBMの新旧ITの巨人が提携、IBMがアップルのタブレット「iPad」などに向けてビッグデータ分析などビジネス仕様のアプリを開発、両社で企業向け携帯サービス需要を掘り起こす旨。かつてパソコン市場で争った両雄が弱点を補い合う形で手を組み、ビジネス分野で牙城を築くマイクロソフトに対抗する旨。

同じタイミングで発表されたインテルの第二四半期業績が以下の通りで、MPU出荷が四半期最高を記録、モバイル部門の赤字を補って余りある内容となっている。市場の好感材料となって株価がdecade-highに上がるとともに、苦境が続くパソコン業界について最悪の事態は過ぎたという見出しも現れている。  

◇Intel's Mobile Losses Mount-CPU sales break quarterly record (7月15日付け EE Times)
→Intelの第二四半期の売上げが$13.8 billion、前年同期比$1 billion増、operating incomeが$3.8 billion, net incomeが$2.8 billion, そして1株当たりearningsが55 cents、microprocessor(MPU)出荷が四半期最高記録と概して好調な四半期にも拘らず、モバイル部門では大きな赤字となっている旨。

◇Intel Third-Quarter Sales Forecast Top Analysts’ Estimates-Intel forecasts rosy results for Q3 (7月15日付け Bloomberg)
→Intelが、第三四半期売上げをアナリストの予測を越えて$14.4 billionと見ており、年間では5%増の売上げ販売高と見る旨。さらに次の2点発表:
・Galileo Gen2 single-board computerを来月約$60でリリース予定
・サーバメーカー向けにXeon E5 "Grantley"を出荷中

◇Intel says worst is over for battered PC industry (7月15日付け Reuters)

◇Intel shares hit decade high on strong revenue forecast (7月16日付け Reuters)
→Intel社が、旧いPC置き換え需要からアナリストの評価を上回る四半期売上げ、株価が7%、decade-highに上がった旨。

◇米インテル、PC需要回復で好調、4〜6月、増収増益 (7月17日付け 日経産業)
→米インテルが15日発表した2014年4〜6月期決算、売上高が前年同期比8%増の$13.831 billion(約1兆4000億円)、純利益が同40%増の$2.796 billionの増収増益の旨。データセンター向け事業が好調な一方、パソコン(PC)需要の回復で主力のPC向けMPUも伸びた旨。

陰に陽に大方、モバイル市場の活況が引っ張る市場の動き、反応と映るが、他の大手プレーヤーを巡る懸案を追うと、まず、アップルの次世代A8プロセッサについて現時点は以下の見方である。

◇Apple iPhone 6 Rumors: New A8 Processor Will Be Dual-Core Clocking At 2.0GHz-Report: The iPhone 6 will have a dual-core A8 processor running at 2 GHz (7月12日付け International Business Times)
→Apple社の次世代iPhone, iPhone 6は新しいA8プロセッサが特徴となる見込み、該プロセッサはSamsung Electronics Co. Ltd.とTSMCが共同で製造している模様の旨。金曜のある報道では、この新しい半導体は業界標準となっている4-コアではなく依然2-コアで見せているが、現状のiPhoneモデルにあるものよりはかなり高速である旨。

一方、IBMの半導体製造拠点売却を巡っては、先行きの不透明感が増すところも出てきている。

◇Fab 8 looks to boost its staff-Newspaper ads run near two IBM plants-GlobalFoundries tries to recruit IBM employees for its N.Y. plant (7月14日付け Times Union (Albany, N.Y.))
→情け容赦のない交渉戦術の様相、IBMのmicrochip事業を巡って両社やり合っているなか、GlobalFoundriesがIBMのback yardから従業員募集を行っている旨。

◇Chip business sale may be dead-Alliance@IBM says GlobalFoundries deal called off after offer-IBM, GlobalFoundries fab-sale deal may be off the table (7月16日付け Times Union (Albany, N.Y.))
→GlobalFoundriesに半導体製造拠点を売却するというIBMの計画が、多分にpricing条項および国家セキュリティ懸念を巡ってもたついている様相、GlobalFoundriesはAbu Dhabi政府が所有しており、米軍へのtrusted半導体サプライヤとしてのIBMの役割を複雑にしている可能性の旨。
GlobalFoundriesは本記事へのコメントを控える一方、IBMは反応していない旨。

マイクロソフトのノキアhandset事業部門の買収を巡って、以下の人員削減の動きである。

◇Microsoft Cuts 18,000 Jobs-Nokia takes 12,500 of the layoffs (7月17日付け EE Times)
→今日まで最大のレイオフ、Microsoftが、来年中に18,000 jobsを削減、12,500がNokiaのhandset事業部門買収関連の旨。この動きは、Microsoftのモバイルoperationsを整理統合、最大$1.6 billionかかり、完了に年末まで要する旨。

◇Microsoft to cut 18,000 jobs this year as it chops Nokia (7月17日付け Reuters)

大手プレーヤーについて連日の激しい変化、衝撃が走る動きに追い打ちをかけるように、懸案となっていた富士通の半導体生産について以下の撤退の方向が打ち出されている。我が国業界再編の大きな区切りとなってくる。

◇富士通、半導体の生産撤退、台湾・米社に工場を売却 (7月18日付け 日経 電子版)
→富士通が半導体生産から撤退する方針を固めた旨。主力の三重工場(桑名市)を台湾のUMC(聯華電子)に、会津若松工場(福島県会津若松市)を米オン・セミコンダクター社にそれぞれ段階的に売却する旨。投資負担が重く業績がぶれやすい半導体事業を大幅に縮小、クラウドなどITサービスに集中する旨。かつて世界上位を占めた日本の半導体産業は構造変化への対応が遅れ苦戦する中、10年以上続いた再編は富士通の生産撤退で一区切りがつく旨。

◇Ailing Fujitsu seen looking to sell chip units to Taiwanese, U.S. firms-Fujitsu said to be in talks to sell fabs to UMC, ON Semi (7月18日付け The Japan Times)


≪市場実態PickUp≫

【「クロームブック」】

グーグルのノートPC「クロームブック」が、7月から国内で発売され、ネット上にデータ保管、2万円台の価格、に注目させられる。MediaTekのプロセッサ、無償「クロームOS」が低価格化を引っ張っている。

◇Chromebooks can get cheaper thanks to new support for a low-end chip-How a MediaTek chip could yield cheaper Chromebooks (7月12日付け Engadget)
→Chromebook portable computersの価格が$200ほどに下がっているが、ARM HoldingsのCortex-A7設計に基づくMediaTekプロセッサのお蔭でもっと下がっていく可能性の旨。

◇グーグル、ノートPC発売、ネット上にデータ保管 (7月14日付け 日経 電子版)
→米グーグル日本法人(東京・港)が14日、ノートパソコン「クロームブック」を企業や教育機関向けに国内で発売すると発表、東芝や台湾のエイスース、エイサーなどが7月から順次売り出す旨。オープン価格で、米国での価格は200〜300ドル(2万〜3万円)、電子メールや文書作成などのネットサービスを利用できる旨。クロームブックは同社のウェブブラウザー「クローム」を基に開発した独自基本ソフト(OS)の「クロームOS」を搭載、OSが無償のため、米マイクロソフトのOS「ウィンドウズ」を搭載した大半のパソコンより安くなる見込みの旨。

【New York州半導体コンソーシアム】

IBM、GlobalFoundriesで半導体の話題が続く米New York州で、こんどはSiCの取り組みという理解であるが、産官学挙げての半導体製造コンソーシアムが下記の通り設立されている。

◇Tech firms join forces on major NY semiconductor deal-N.Y. to fund R&D in semiconductor materials (7月15日付け USA Today)
→General Electricはじめ十数のpartiesが、New York Power Electronics Manufacturing Consortiumでコラボ、New York州から$135 millionの出資を受ける旨。該consortiumは、State University of New YorkのCollege of Nanoscale Science and Engineering(CNSE)が本拠、民間会社が5年にわたってさらに$365 millionを払う旨。

◇General Electric, IBM join N.Y. semiconductor deal (7月15日付け Poughkeepsie Journal)
→New York州が、General ElectricおよびIBM、GlobalFoundriesなど100以上のメーカー、大学および公的機関と連携、半導体用新材料を開発、製造する旨。

◇IBM joins $635M semiconductor effort in New York (7月15日付け WRAL Tech Wire)

【DRAM価格】

6月後半から7月と、DRAM価格の高止まりが続いている。アップルの新製品への仕込みが、プロセッサ同様メモリにおいて先行きの期待の中核となっている。

◇DRAM chip prices likely to hike 10% in July(7月16日付け DIGITIMES)
→業界筋発。DRAM半導体価格が、市場の締まった供給を反映、7月に少なくとも10%上昇する情勢、Appleが4.7-inchおよび5.5-inchの新しいiPhones並びに新しいiPadを2014年後半に発表する様相という市場の見方があり、メモリ半導体需要が後半に拡大する見込みの旨。

◇DRAM高値続く、6月後半分、パソコン用に品薄感、スマホ向けの供給増加 (7月16日付け 日経)
→パソコン向けDRAMの大口取引価格が高止まりしている旨。DRAM大手は需要が拡大しているスマートフォン向けの供給を強化しており、パソコン向けは品薄感が強い旨。米アップルのスマホ「iPhone」の新型モデル向けの部品調達が一服する8月ごろまでは高値が続くとの見方が出ている旨。

【Thread Group】

ホームautomation機器に向けた業界標準、Threadを、Googleにより買収される運びのNest Labsが引っ張っている。7社で標準化を目指しているが、Bluetoothからの反撃が見られている。

◇Nest Nurtures New IoT Protocol (7月15日付け EE Times)
→Googleによる$3.2 billion買収を控えながらも、Nest Labsが、低電力mesh networking protocolを同社製品すべてに控え目に作り込んでいる旨。今度はホームautomation機器に向けた業界標準、Threadを作る期待の旨。ARM, Freescale, Silicon Labs, およびSamsungなど少数の半導体およびシステムメーカーが、Nestの率いるad hoc Thread Groupに参画している旨。

◇Nest, Samsung, ARM and others launch ‘Thread’ home automation network protocol-Industry group will work with network protocol for home automation (7月15日付け VentureBeat)
→7社で結成されたThread Groupは、IEEE 802.15.4ワイヤレスprotocolおよびIPv6技術を用いるホームautomationシステム向けThreadネットワークprotocol使用を推進している旨。

◇Bluetooth Fights Back Against Thread (7月16日付け EE Times)
→Internet of Things(IoT)向けZigbee低電力版のThreadグループからの最近の発表について、ThreadグループがIoTに調和をもたらすと考えるなら再考を、と反撃の旨。

【Internet of Things(IoT)関連】

IoTに向けたソフトウェア、特化GPU、買収、センサnodesと、いろいろな切り口での動きが連日のように見られている。インターネットのその先のIoTについての活発な展開に当面は注目である。

◇ASOS software development paradigm for IoT (Part 1) (7月15日付け EE Times India)
→Internetが伸びていって、今や我々には、普通には'intelligent'と考えられていない家庭警報システム、サーモスタット、トースター、白熱電球などの機器から構成されるInternet of Things(IoT)がある旨。
application specific operating system(ASOS)は、embeddedシステム上で動く複数のtasksを制御するのに用いられるRTOSを合成する結果である旨。

◇Tiny GPU Targets IoT, Android Wear-Imagination offers graphics core for IoT, wearable gadgets (7月16日付け EE Times)
→Imagination Technologiesが、wearablesおよびInternet of Things(IoT)に向けた新しいAndroid-compatibleグラフィックスコア、PowerVR Series5XE GX5300を発表、0.55mm2で業界最小、低コスト、面積制約のある応用に向けて設計されている旨。

◇Atmel's Wireless Castle Complete-No place like home: Atmel to acquire Newport Media (7月16日付け EE Times)
→Atmel社が先週、Internet of Things(IoT)分野へのコミットを再確認する半導体メーカーに名乗り、Newport Media Inc.(NMI)を買収する$140 million cash取引提案をもって2つの重要製品、802.11n WiFiおよびBluetoothモジュールを加え、同社SmartConnectワイヤレスportfolioを完成する旨。

◇Low-Power Sensor Nodes Enable the Internet of Things-IoT sensor nodes get smaller, use less power (7月17日付け Electronic Design)
→Internet of Things(IoT)応用に向けた超低電力センサnodesについて、大きさが小さくなってさらに強力になっている一方、power management予算は維持している旨。


≪グローバル雑学王−315≫

ボスニア紛争からこんどはアメリカ大統領選挙について、その地上で最も熾烈な情報戦の一部始終を、

 『国際メディア情報戦』
  (高木  徹 著:講談社現代新書 2247) …2014年1月20日 第1刷発行

より、至近距離の描写で見ていく。クリントンが大統領になった1992年、オバマ大統領の2012年の再選について、ほんの僅かの間の一挙一動が如何に成否、結果に影響するか、迫真的に知らされるところである。メディアの効果、影響力とともに一歩間違えばの恐さが随所に溢れ出ている。


第2章 地上で最も熾烈な情報戦 −アメリカ大統領選挙

1 1992年のウォー・ルーム

□隠し撮りされた失言
・オバマ大統領というキャラクター
 →情報戦を考え抜いて戦う戦略家
 →テレビ画面の枠の中、能力を最大限に発揮する天才的な演技者
・4年に1度行われるアメリカ大統領選挙
 →世界で最も集中的かつ大規模に「メディア戦略」が行われる舞台
・中でも2012年の選挙
 →オバマ大統領から見れば共和党候補につけた差が、2008年の7.3ポイントから2.8ポイントと、3分の2近く減
 →この選挙から初めて「スーパーPAC(特別政治活動委員会)」という民間団体を通じて無制限の献金を集め、膨大なテレビCMをうつことができるように
・特に強力、ロムニー候補が富裕層支持者向けの小規模なパーティで犯した失言を執拗に題材にする一連のCM
 →驚くのは、この映像が「隠し撮り」で撮られたこと
 →アメリカでは隠し撮り映像を使ったことは大きな問題になっていない
 →ロムニー候補がむしろ不注意、指導者としての資質を問う判断材料に

□クリントンの存在感
・2012年の選挙、民主党全国大会で、ビル・クリントン元大統領がオバマ大統領を支援する感動的な名スピーチを繰り広げた
 →クリントン元大統領は、歴代大統領の中で別格とも言える高い人気を保つ特異な存在
 →妻のヒラリーがもし次の大統領の座を目指すなら、その大きな力に

□1988年になめた苦汁
・クリントンが大統領になった1992年の大統領選挙
 →メディア戦略の成功例として特筆される選挙戦
 →キャンペーンチームに「ウォー(戦争)・ルーム」と呼ばれるメディア対策に特化した戦略部門を設立
 →中心人物の一人に、現在ではアメリカのメガメディアを代表する政治キャスターの大立者、ジョージ・ステファノプロス(George Robert Stephanopoulos)
 →当時は、31才の若き天才メディア戦略家
・1988年の大統領選挙で、ある選挙CMの「傑作」に敗れた苦い体験がもとに
・「ウォー・ルーム」の名付け方
 →情報の戦いを「戦争」ととらえていた

□ほんの一瞬のしぐさが命取りに
・1992年のテレビ討論で、ブッシュ(父)大統領が大きなミス
 →少女が質問をしている時に、大きなしぐさで自分の腕時計を覗き込んだ姿が放送
 →一瞬起きたことでも、繰り返し切り取られて放送された
 →典型的な「情報の拡大再生産」

□テレビ史に残る名場面
・クリントン候補の答え方が秀逸
 →「雇用、教育、健康のために投資をすること、アメリカの人々を再び一つにする政策が絶対に必要」
・強い意志をあらわにしたクリントン候補の発言の合間、ブッシュ大統領の口をぽかーんとあけた表情がカメラでアップに
 →自分が発言していない時にとった態度の失敗を、テレビは残酷なまでに

2 ピンチをチャンスに変えたオバマ

□オバマの犯したミス
・2012年の大統領選挙
 →9月半ばにはオバマ優位で大勢
 →その後一転、テレビ討論の第1回がロムニー候補の一方的勝利に、オバマ大統領が失速、大激戦に
・今回も、勝負を分けたのは「発言していない時の態度」
 →オバマ大統領は、相手が発言している時、手元のメモを見て視線が下に落ちていることが多かった
 →さらに、オバマ大統領が口ごもるような場面が散見
・一気に「ロムニー挽回」という「情報の拡大再生産」に
 →1週間ほどでオバマ大統領の各種世論調査におけるリードがなくなった

□公平なルールの下でのゲーム
・ここでオバマ大統領がとった行動
 →第2回の討論を前に、リゾートに泊まり込み、徹底的にリハーサル
・アメリカの民主主義では、テレビ向けのテクニックを磨くことは当たり前
 →一つの「ゲーム」
・CNNの中継
 →視聴者代表が候補者に対してその瞬間にどれだけ好感を持つかという「好感度折れ線グラフ」が画面下に

□リビアの米領事館攻撃事件
・2012年10月16日、テレビ討論第2回
 →先立つ9月11日、リビア・ベンガジのアメリカ大使館攻撃事件
 →再選を目指すオバマ大統領の外交・安全保障に関する最大の失点
・ところが、オバマ大統領はそのピンチをチャンスに、そしてこの討論全体の「勝利」に
 →「合宿訓練」の成果

□討論会でのカメラワーク
・タウンホールミーティング形式の討論
 →演出やカメラワークで印象的な場面を放送する余地が大きい魅力的な素材
・第1:「素人」の有権者が質問者として発言
 →ハプニングが起きる可能性が格段に
 →どんな質問者のどんな行動にもとっさに対応できる「放送運動神経」
・第2:候補者が発言のたびに前後に大きく動く特徴
 →カメラが、オバマ大統領、司会者、ロムニー候補の三者がやりとりする姿を立体的に

□ピンチをチャンスに変える
・質問者は、事件の直前に警告があったにも拘らず領事館の警備を強化しなかったことを問題に
 →オバマ大統領は、直後の対応について語り、話をすり替え、しかしそのことを気づかせないくらいのよどみのない、自信に溢れた答え方

□オバマの逆襲
・ロムニー候補は、メディアの報じた「常識」にとらわれており、事件翌日の記者会見でオバマ大統領が何と言ったかは精査していなかった
 →オバマ大統領の予想外の自信にロムニー候補が動揺したのが見てとれた

□テレビ出演の生きた教科書
・司会のクローリー記者、CNNを代表する政治記者、この道30年以上のベテラン
 →「大統領は、たしかにテロ行為と言った。でも、2週間ほど、すべてがわかるまでかかったのも事実。」
 →ロムニー候補に対して、「その意味であなたも正しい。」
・「司会者をいじる」行動に出たオバマ大統領
 →「放送運動神経」を見せつけた場面
・トランスクリプトを精査、「テロ行為」という一言があったことを利用、司会者まで巻き込んでテレビの映像を支配することに成功
 →ロムニー候補から「一本とった」ことを全米に印象付けた

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