セミコンポータル
半導体・FPD・液晶・製造装置・材料・設計のポータルサイト

陣営間の様々な駆け引きの様相:綱引き、ためらい、働きかけ

アップルとサムスンの間の特許侵害係争、ファウンドリー業界各社の最先端プロセスへのアプローチ、そして中国のタブレット市場開拓を図るインテルはじめ各社の動き、とそれぞれの中での各陣営の様々な駆け引きの動きが目立ってきている。アップル陣営とアンドロイド陣営の間の綱引き、最近提携が発表されたサムスン-グローバルファウンドリーズ陣営への参加の誘いをためらうUMC、そしてpricing優位性、奨励金とあの手この手の中国タブレット市場での働きかけ、とそれぞれの様相、情勢を受け止めている。

≪それぞれの活発な動き≫  

SAN JOSE, Calif.で現在進められているアップルとサムスンの特許侵害係争から、アップル陣営がアンドロイド陣営を圧迫しているという韓国発の記事である。

◇「アップルがパテントトロール使いアンドロイド陣営を圧迫」 (4月21日付け 韓国・中央日報)
→アップルがパテントトロールと評価される子会社を前面に出してアンドロイド陣営を威嚇しているという米裁判所の判断が出された旨。ドイツの特許専門ブログ「フォスパテンツ」が18日に明らかにしたところによると、カリフォルニア州連邦北部地方裁判所のクラウディア・ウィルケン所長は最近発行した命令書で「(アップルの子会社である)ロックスターコンソーシアムがグーグルのアンドロイド事業を妨害し、アップルの利益を増やす威嚇戦術を使っている」と明らかにした旨。この裁判所はサムスンとアップルの2度目の特許訴訟が進められている裁判所の旨。

これに対して、アンドロイド陣営を率いるグーグルが、サムスンへの賠償に同意したことが明らかにされている。こんどはアップル陣営への圧力と映る利害関係が表われている。 

◇Apple v. Samsung: Google Agreed to Indemnify Samsung-Revelation no surprise (4月23日付け EE Times)
→ここSAN JOSE, Calif.の連邦法廷での特許侵害訴訟におけるAppleの訴えのいくつかに反対してGoogleがSamsungに賠償することに同意していたことが明らかにされた昨日、Lucy Koh判事の法廷ではだれも特に驚いていない様相の旨。結局のところSamsungの携帯電話製品はGoogleのAndroid operating system(OS)で動いており、しっかり結びついた利益が法廷観測筋には明らかとなっている旨。

サムスンがグローバルファウンドリーズに対して14-nm FinFETプロセス技術のライセンス供与を行う動きが以下の通りで、前回も触れたばかりである。

◇半導体受託生産2位の米社、サムスンが技術供与、共同で台湾TSMC追撃 (4月19日付け 日経)
→韓国サムスン電子が18日までに、半導体受託生産で世界2位の米グローバルファウンドリーズと提携すると発表、最新の生産技術をライセンス供与し、共同生産できるようにする旨。大規模な受注ができる体制を整え、業界首位の台湾積体電路製造(TSMC)を追撃する旨。

サムスンは、UMCに対してもこの2社連携に乗るよう次の通りオファーした模様であるが、TSMCを追撃するこの連携にはUMCはためらいがあるとされている。

◇UMC hesitates to join Samsung-Globalfoundries 14nm process alliance-Sources: UMC reluctant to team with Samsung, GF on 14nm process (4月22日付け DIGITIMES)
→台湾のウェーハファウンドリー業界筋発。Samsungからの申し出にも拘らず、UMCが、14-nm FinFETプロセスノード開発についてのSamsung Electronics-Globalfoundries allianceへの参加に乗り気でない旨。

最後に、中国のタブレット市場でのプロセッサ製品拡販に向けて、インテルは奨励金、MediaTekはpricing優位性と、働きかけが行われている。

◇Intel, MediaTek become favorites in China white-box tablet industry-Sources: China's white-box tablet makers favor Intel, MediaTek (4月21日付け DIGITIMES)
→中国のwhite-box supply chain筋発。中国のwhite-boxタブレットプレーヤーが、Intelのタブレット製品に向けた奨励金およびMediaTekソリューションのpricing優位性から、3GおよびLTE-enabledモデルに向けてIntelおよびMediaTek製のapplication processor(AP)ソリューション採用に向いてきている旨。

インテルは、Android entry-levelタブレットに向けた打ち上げを進め、今年タブレット用プロセッサ出荷4000万個を目標としているとされている。

◇Intel looking to tap entry-level tablet market with Bay Trail-Entry (4月22日付け DIGITIMES)
→台湾supply chainメーカー発。Android entry-levelタブレットに向けて中国はじめ新興市場に入っていく試み、Intelがまもなく、特にentry-levelタブレット用のCPUプラットフォーム、Bay Trail-Entryを打ち上げの旨。Intelは2014年にタブレット用プロセッサ40 million個を出荷する狙い、第一四半期には5 million個を出荷している旨。

中国現地のスマートフォンメーカー、Xiaomi(小米)が、タブレットに向けてインテルおよびNvidiaからの設計協力を受けているという以下の内容である。インテルはじめ各社の今後の成果に注目である。

◇Xiaomi working on tablet with Nvidia-Report: Nvidia, Intel work with Xiaomi on tablet design (4月23日付け The Taipei Times (Taiwan)/Chinese News Agency)
→Topology Research Instituteのresearcher、Michael Zuo(左鵬飛)氏。中国市場向けlow-endスマートフォンに特化するXiaomi(小米)が、同社最初のタブレットcomputer設計にIntelおよびNvidiaの協力を得ている旨。該タブレットにどのチップセットが用いられるかまだ明らかではないが、Hon Hai GroupおよびInventecによる組立の可能性の旨。第三あるいは第四四半期の間に中国市場に出て、$160ほどの売価と見ている旨。


≪市場実態PickUp≫

【IBMの「Power8」】

IBMが、Powerシリーズの最新CPU「Power8」をオープンハードウェア製品として打ち上げを行っている。3年、$2.4 billionを要した開発とのことであるが、冷めた見方も早々見られる中、受ける市場の反応に注目である。

◇IBM Unveils Power8 Chip as Open Hardware (4月23日付け EE Times)
→IBMが、Powerシリーズの最新CPU「Power8」半導体設計および新しいPower8サーバマザーボード仕様を、collaboratorsおよびcompetitors両方に披露している旨。

◇IBM Unveils Power8 Chip As Open Hardware-Google and other OpenPower Foundation partners express interest in IBM's Power8 chip designs and server motherboard specs.-IBM debuts servers with Power8 chip; shares design with partners (4月23日付け InformationWeek)
→IBMが水曜23日、同社Power8プロセッサベースのサーバラインを投入、該プロセッサアーキテクチャーは昨年設立されたOpenPower Foundationの他の会社と共有されている旨。該Power8サーバマザーボードのスペックを該半導体設計に加えて作成、Google, Mellanox, Nvidia, Tyanなどのメーカーに出している旨。該Power8半導体および関連サーバには、開発に3年、$2.4 billionがかかっている旨。

◇Power 8 Gains User, Skeptic (4月24日付け EE Times)
→veteranサーバアナリストが、IBMがオープンハードウェア製品としてPower 8プロセッサおよびマザーボードの新市場を見い出すことに懐疑的な見方。中国の1社を除いて、誰が該IBM技術のライセンス供与を受けるか、該initiativeを打ち上げるイベントでは明らかでなかった旨。IBMは、OpenPower Foundation(OPF)について26のパートナーを発表、Googleのengineering managerが議長役で、Googleの興味を示すもののPower 8を用いる具体的なcommitmentはなかった旨。

◇IBM、「パワー8」搭載サーバ投入−リナックス対応強化 (4月25日付け 日刊工業)
→日本IBMが24日、最新プロセッサー「パワー8」を搭載、ビッグデータ(大量データ)時代に向けた水平拡張型の高性能サーバー「パワー・システムズSクラス」を発売したと発表、心臓部のパワー8はコア(回路)数が12個、1コア当たり8スレッド(実行処理)、全体では96スレッドの同時処理が可能、「オープン・パワー・ファンデーション」と呼ぶ開発コミュニティーとの連携でリナックス対応を一段と強化した旨

【Cadenceの積極的な動き】

Cadence Design Systems社が以下の通りJasper Design Automation社を買収しているが、活発なIP戦略および買収から、2013年半導体IPコアサプライヤ・ランキングにCadenceがいきなり4位に割って入る結果が見られている。

◇Cadence to acquire Jasper Design Automation(4月21日付け ELECTROIQ)

◇Cadence Gobbles Up Jasper-Analysis: Acquisition gives Cadence the most complete functional verification portfolio in the industry, and a complete high-level synthesis flow. (4月21日付け Semiconductor Engineering)

◇Cadence to Acquire Jasper (4月22日付け EE Times)
→Cadence Design Systems社(San Jose, Calif.)が、Jasper Design Automation社(Mountain View, Calif.)を$170 million in cashで買収する意向、Jasperの非常に評価が高いformal analysis toolkit、JasperGoldプラットフォームに立った検証アプリが、Cadenceのすでに包括的なSystem Development Suiteに加わる旨。

◇Cadence agrees Jasper Design acquisition-Cadence adds formal analysis with $170M Jasper buy (4月22日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇Cadence Breaks Into Top 4 in Semi IP Core Ranking-Acquisitions move Cadence into fourth place in semiconductor IP market (4月23日付け EE Times)
→Gartner社発。2013年半導体設計IP市場が、11.5%伸びて$2.45 billionの規模に、半導体IPコアサプライヤ・ランキングが次の通りの旨。
 1. ARM Holdings plc     売上げシェア43.2%
 2. Synopsys               13.9%
 3. Imagination Technologies         9%
 4. Cadence Design Systems社
2012年ランキングではトップ10になかったCadenceが、IP戦略刷新およびTensilicaとCosmic Circuitsの買収が刺激して、4位に入った旨。

【Alteraの最先端に向けたコラボ】

FPGAのAlteraが、TSMCとはfine-pitch copper bump-ベース実装技術、そしてIntelとは初の14-nm FPGAテスト半導体と、20-nm生産、14-nmテストと最先端に向けたコラボを進めている。

◇Altera and TSMC collaborate to bring advanced packaging technology to Arria 10 FPGAs and SoCs (4月21日付け ELECTROIQ)
→TSMCの特許化したfine-pitch copper bump-ベース実装技術をAlteraの20-nm Arria 10 FPGAsおよびSoCsにもってくるよう両社が協働、Alteraがこの技術を商用生産で初めて採用、Alteraの20-nmデバイスファミリーに品質、信頼性および性能の改善が得られる旨。

◇Altera and TSMC Collaborate to Bring Advanced Packaging Technology to Arria 10 FPGAs and SoCs-Innovative Copper Bump Package Technology Improves Quality, Reliability and Performance in Altera's 20 nm Device Family (4月21日付け PR Newswire)

◇Altera-TSMC tie-up to bring advanced packaging technology to Arria 10 FPGAs and SoCs-TSMC will package Altera's Arria 10 FPGAs and SoCs (4月23日付け DIGITIMES)

◇Altera sees first 14nm FPGA test chips from Intel-Intel turns out 14nm test chips for Altera (4月24日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Alteraが、14-nm Tri-Gateプロセスで作られた同社Stratix 10 field-programmable gate arrays(FPGAs)で用いられるelementsのテスト半導体をIntelから受け取った旨。

【"connected car"ランキング】

最先端通信技術を駆使したクルマ、"connected car"のグローバルランキングトップ10が、発表されている。BMWを筆頭に、日本勢ではトヨタ、ホンダが入る内容となっている。

◇BMW Has Most Advanced Connectivity (4月21日付け EE Times)
→Machina Research(London)によるグローバル"connected car"ランキング・トップ10、次の通り:
 1.BMW
 2.GM
 3.Ford
 4.Audi
 5.Chrysler
 6.Mercedes-Benz
 7.Tesla
 8.Toyota
 9.VW
 10.Honda

【"Bezos則"】

半導体のMoore則をもとに容量、価格の法則がいろいろな切り口で提案されてきている経緯があるが、cloud computing価格について、AmazonのCEOのBezos氏に因む法則が以下の通り表わされている。

◇Moore's law gives way to Bezos's law-Cloud computing's price cuts give rise to "Bezos's law" (4月19日付け GigaOm)
→Moore's Lawが性能が高まるとともに価格が低下する半導体を規定しているように、cloud-computing市場は、AmazonのCEO、Jeff Bezos氏に託して"Bezos's law"を遵守している様相の旨。Amazon Web Services(AWS), GoogleおよびMicrosoftが今春、cloudサービス価格を積極的に下げている旨。cloudの歴史にわたって、computing power単位価格がおおよそ3年ごとに50%下がっている旨。


≪グローバル雑学王−303≫

充分なエネルギーがなければ国家は成り立たず、治安は維持されず、侵略勢力から国を守ることはできないと訴える、英語学者、 評論家で上智大学名誉教授、渡部 昇一氏の

 『国家とエネルギーと戦争』
  (渡部 昇一 著:祥伝社新書) …2014年3月10日 初版第1刷発行

を、今回から読み進めることにする。今年で85才、幼少期に太平洋戦争を経験した同氏の我が国にとって何が一番大切かを問う、警世の書とある。石油が大きく影響した太平洋戦争の敗北、戦後の急成長の繁栄、そして今、福島原発事故から国民的議論を呼んでいる原子力の是非。本書では原子力エネルギーを擁護する同氏の考え方であるが、賛否は置いていま沸き返っている議論の1つの見識として触れてみる。


≪まえがき≫

・終戦後まもないころ、水力発電のためのダム工事が行われ、日本中いたるところの山奥で集落が水底に
 →水力発電所から生み出される電気の総量が日本の電力量のどれだけか
 →たったの7%、愕然!
・日本の電力、約60%が火力、約30%が原子力
・火力のための燃料は輸入
 →原発を停めているために日本が余計に支出、毎日約100億円
 →最近(2014年1月下旬)発表の日本の貿易収支、史上最大の赤字
・日露戦争終結から10年も経たないうちに主要エネルギーは石炭から石油に
 →日本ではほとんど産出されない石油、なのに軍艦ばかり造りたがる人たち
 →結局はあの大戦に日本は突入せざるを得なく
・福島原発の事故の後の騒ぎを見て鋭く反省させられること
 →国家とエネルギーの関係 
 →記憶に鮮やかに残る日米戦争

第一章 石油の時代を見抜いていた秋山真之の眼力  ≪前≫

□石炭がエネルギーになり、近代国家が誕生した
・日本が開国したころ、白色人種と有色人種の間にある差違は、現代では想像もつかないほど絶大
 →白人は次々と有色人種の住んでいる地域を植民地あるいは半植民地に
・なぜ、あれほどの差が急についたか
 →産業革命にあったと(著者は)思う
・新しい産業の勃興と自然科学とが次から次へと結びついていって相乗効果
 →白人圏とほかの人種の世界は圧倒的な差
 →石炭の使い方の新発見一つに原因
 →新しい使い方が発明されたことによって、産業革命に
 →非常に短い期間に次から次へと石炭をエネルギー源とする近代工業の発明が続いた
・幕末、黒船が来たときには、「帰れ」とはもはや言えず
 →黒船は石炭で動く船
・明治維新を起こして、それに成功、西洋文明を取り入れ
 →一番中心になったものは石炭と、それを使っての産業
・日清、日露戦争の時代までのエネルギー源は依然として石炭
 →国内炭鉱から潤沢に出て、石炭は日本の大きな輸出品目
・ちっぽけな東洋の国が大国、ロシアを負かす
 →石炭をエネルギーとする近代文明をマスターしたことによって成された

□秋山真之が見抜いた。「これからの戦争は機械と石油だ」
・それから10年経つか経たないかの間に、世界のエネルギー事情に大変革
 →1914年に始まる第一次世界大戦
 →「人が3割、機械が7割で戦争をしている」という名言で表し、「その機械はすべて石油で動く」とした秋山 真之
(注)秋山 真之(1868年-1918年)…日本の海軍軍人。最終階級は海軍中将。
「坂の上の雲」の主人公の一人、少佐時代に日露戦争が勃発、連合艦隊の作戦参謀に任ぜられ、日本海海戦の作戦立案、見事、丁字戦法にてロシアのバルチック艦隊を殲滅させた。
・新しく戦車というものが出現。飛行機も空中戦、その上、爆撃も。
・秋山真之は、主として、機械のことを力説
 →新しい世界の主役は機械。機械を動かすのはすべて石油。
・機械と石油なしでは戦おうにも戦えないことが明白に
 →日本の軍人たちは、何事にも落ち着いて物を考えられなくなったと言える
・秋山真之の講演から:
 →新しい時代は石油と機械の発展力がものすごいことに
 →機械を動かすすべてのエネルギーは石油
 →工業生産に従事する人間も同じく戦闘要員なのだ
 →機械力の変化から、破壊兵器、開削機、削岩機もみな機械
・機械のことは繰り返し強調、なぜか石油のことは一ヶ所でしか言っていない
 →秋山ほどの先見性のある人間であってもエネルギーのことは軽視してしまったのだろうか?

月別アーカイブ