モバイル機器Update: 新技術、戦略、wearable、新製品対応
1ヶ月ほど前にモバイル機器関連のアップデートを本欄で行ったばかりであるが、グローバルな活況を反映して、方々で新たな動きが見られるということで、現下の特に注目の内容を示している。今回は、30秒携帯フル充電の新技術、Appleのベースバンド社内開発、Wearable Processing Units(WPUs)登場、TSMCのiPhone 6に向けたプロセッサ量産立ち上げ、などを挙げている。
依然世界的に人気のスマートフォン、タブレットにwearableの話題が富に加わってきて、当分アップデートに暇なしの様相を受け止めている。
≪グローバル方々の動き≫
新技術として、イスラエルからアミノ酸から作った半導体を用いて携帯電話を30秒でフル充電可能というアプローチが発信されている。
◇Charge Your Phone in 30 Seconds? An Israeli Firm Says It Can-Peptide-based device charges a cellphone in 30 seconds (4月7日付け The Wall Street Journal /Digits blog)
→Tel Aviv Universityのnanotechnology departmentによる研究を用いて開発されたlaptop chargerの大きさの機器が、depleted cellphoneを30秒で充電できる旨。該prototype機器は、自然に発生する有機化合物、peptidesから作ったbiological半導体開発を利用している旨。
◇Amino-Acid Semiconductors Promise Fast Phone Charging (4月9日付け EE Times)
→元々はAlzheimer's Disease対策で開発された技術の強みに立ってTel Aviv Universityからスピンアウトしたイスラエルのstartupが、short-chainアミノ酸から作った半導体を用いてcellphoneを30秒でフル充電できるようにした旨。
戦略的には、Appleが社内でベースバンドプロセッサの開発設計を行い、生産はSamsungほかに発注するという動きが見られている。
◇Apple reportedly to develop baseband chips for iPhones in house, say sources (4月7日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Appleが、2015年リリース予定のiPhonesに用いるベースバンドプロセッサを開発するR&Dチームを作る計画、該ベースバンド半導体の発注をSamsung ElectronicsおよびGlobalfoundriesに行う旨。
これは噂の段階ではあるが、Microsoftが中国市場開拓でMediaTekに働きかけがあるとされている。
◇Microsoft and MediaTek rumored to be looking to push Windows tablets in the China white-box tablet market-Report: Microsoft wants MediaTek's help in pushing Windows for tablets in China (4月7日付け DIGITIMES)
→MicrosoftがWindowsベースタブレットを中国のwhite-box市場で推進するようMediaTekに積極的に説得を試みており、9-インチ以下のモバイル機器に対してWindows licensing無料とする発表があって上流supply chain筋は両社が連携するhigh chanceと見ている旨。MediaTekとMicrosoftはこの噂を確認していない旨。
話題の多いwearableであるが、今回注目したのはインドのstart-up、Ineda SystemsによるWearable Processing Units(WPUs)と名づけた現在サンプル段階のプロセッサ製品である。最大1ヶ月電池動作が可能という目玉効能となっている。
◇Startup Claims Wearables with its Chips Can have Up to 30 Days of Battery Life-Ineda Systems, backed by Samsung and Qualcomm, will ship its chips in the second half of the year-Ineda designs processors for wearables, claims 30-day battery life (4月8日付け CIO.com/IDG News Service)
→Ineda Systemsが、wearable electronics用を狙ったプロセッサDhanushラインのサンプルを配布、該半導体は再充電なしで最大1ヶ月電池動作を可能にする旨。同社は該プロセッサを今年後半に出荷する計画、用いたfirst fitness trackers, smart watchesなどwearablesが来年前半に登場の旨。
◇Local start-up promises month-long battery life for wearables (4月9日付け EE Times India)
→Ineda Systems(Hyderabad, India)が、wearable electronic機器の非常に低電力および長電池寿命の要求に適合するよう設計された'Dhanush' SoCsラインを発表、これらCPUsをWearable Processing Units(WPUs)と呼ぶ同社は、該半導体に向けて非常に高い目標を掲げている旨。Inedaは、音声認識、センサ解析およびcontextual computing、そしてBluetooth Low Energy(BLE) connectivityの常時ONで、常時ON電池寿命30日が可能としている旨。
最後に新製品対応に向けて、まずはApple iWatch用の基板関係である。
◇FPCB suppliers reportedly deliver samples for Apple iWatch validation (4月8日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Flexible PCBサプライヤ、Flexium Interconnect, Zhen Ding Technology HoldingおよびCareer Technologyが、品質確認を求めてAppleにiWatch機器用のFPCBサンプルを届けている旨。
AppleのiPhone 6などに使われるA-seriesプロセッサのTSMCにおける量産立ち上げ、および生産計画である。
◇TSM Pushing Forward on 20-Nano iPhone 6 Chip, Says BlueFin-Analysts: TSMC goes ahead with 20nm chips for iPhone 6 (4月9日付け Barron's /Tech Trader Daily blog)
→BlueFin Research Partners発。TSMCが、20-nm featuresを擁するAppleのA-seriesプロセッサの量産を立ち上げており、それらの半導体はiPhone 6および次期iPadモデルで使われる模様の旨。TSMCは、6月末までに20-nm半導体月当たりウェーハ30,000枚を生産する計画、2014年末までにその倍以上にする旨。
モバイルにも4K解像度が入ってくる動きが、今年のNAB Showにて見られている。
◇Ultra HD solutions find their way into mobile devices (4月11日付け EE Times India)
→最近のNAB Show(4月7-10日:Las Vegas)にて、4Kとしても知られるUltra High Definitionソリューション(1080p HDTV formatの2倍の水平および垂直解像度を誇る)がいくつか披露された旨。
≪市場実態PickUp≫
【2月の世界半導体販売高】
米SIAからの2月の世界半導体販売高発表が週末ということで、業界各紙の反応が明けた週の前半に以下の通りである。前年同月比の増加のほどが謳われている。
◇Global Chip Sales Rose 11.4% in February (4月8日付け EE Times)
◇February semiconductor sales up 11.4 percent compared to last year (4月9日付け EE TimesELECTROIQ)
【半導体は増えても】
半導体販売高については、2013年の史上最高から2014年に入っても上記の通り好調なデータが発表されているが、2013年の半導体材料および製造装置市場は金額規模が減少しており、現状の半導体市場の性格、特質を照らし出しているところを感じている。
◇SEMI reports 2013 global semiconductor materials sales of $43.5B USD (4月7日付け ELECTROIQ)
→SEMI発。2013年のグローバル半導体材料市場が2012年比3%減少する一方、世界半導体売上げは5%増加している旨。半導体材料市場の売上げ$43.5 billionは、2年連続の縮小となる旨。
2012-2013年の地域別半導体材料市場が次の通り。
(Dollar in U.S. billions; Percentage Year-over-Year)
地域 | 2012年 | 2013年 | % Change |
Taiwan | 8.97 | 8.96 | 0% |
Japan | 8.24 | 7.29 | -12% |
South Korea | 7.22 | 6.94 | -4% |
Rest of World | 7.17 | 6.76 | -6% |
China | 5.50 | 5.70 | 4% |
North America | 4.75 | 4.75 | 0% |
Europe | 2.95 | 3.07 | 4% |
Total | 44.80 | 43.46 | -3% |
[Source: SEMI April 2014]
◇Worldwide Semiconductor Manufacturing Equipment Spending Declined 11.5 Percent in 2013, According to Final Results by Gartner (4月7日付け Gartner)
→Gartner社による最終確定値。2013年の世界半導体capital equipment spending総計が$33.8 billion、2012年から11.5%減、ウェーハレベル製造装置需要はlithographyおよび関連プロセスが力強かった一方で、back-end製造分野が平均を大きく下回った旨。
◇Worldwide semiconductor revenues grew 5% in 2013, says Gartner (4月7日付け DIGITIMES)
→Gartner発。2013年の世界半導体売上げ総計が$315 billionに達し、2012年から5%増、トップ25半導体ベンダーの売上げ合計が同6.9%増の旨。特に2013年のメモリ市場は23.5%増大の旨。
【Micronのイタリアでの人員削減】
Micron Technologyのイタリア拠点での人員削減が広く欧州に波紋を投げかけていたが、下記の通り、STMicroelectronicsが受け入れるなど政界、経済界、イタリアはじめこぞって収拾に努めている経緯が窺える。
◇ST agrees to take back 110 sacked Micron workers-ST will hire 110 researchers being laid off by Micron (4月9日付け Electronics Weekly (U.K.))
→イタリアの人員を40%減らそうと、Micron Technologyは419人の研究者を削減したいとして、STMicroelectronicsと話し合いを重ねた旨。いろいろな政治家および前CEO、Pasquale Pistorio氏からの圧力を受けて、STMicroelectronicsが419人のうち110人を引き取ることに同意の旨。
◇Micron and Italian unions reach proposed settlement-Employees to vote Monday on proposed settlement between Italian unions, Micron (4月10日付け Electronics Weekly (U.K.))
→今朝の早い時間まで続いた昨日の延々と続いた交渉を経て、MicronとItalian unionsが決着の提案を出すに至り、4月14日に従業員投票を行う旨。
◇Jobs Saved at Micron Italy: Reports (4月11日付け EE Times)
→Micron Technology社(Boise, Idaho)幹部と組合代表の間の会合がローマのMinistry of Labourで夜を徹して行われ(4月9-10日)、イタリアのjob削減を実効的に419から48に減らすという合意に達した旨。
【Apple−Samsung係争】
AppleとSamsungの間の特許侵害係争の新たな段階の論戦が繰り広げられている。SamsungはSteve Jobs氏のEメールを引き合いにしている一方、AppleはSamsungが依然と侵害製品を販売と攻め立てている。
◇Steve Jobs's Email Revealed (4月7日付け EE Times)
→Steve Jobs氏が亡くなる1年前に、年間戦略計画会議に向けて箇条書き優先順位を示すEメールをApple executive teamに送っており、Samsungが、Apple特許5件侵害という告発の防御証拠として該Eメールを提出している旨。
◇Samsung leaks Jobs' email calling for "Holy War with Google" (4月8日付け EE Times India)
◇Apple Lays Out Case for $2B Penalty-Samsung still sells infringing phones, says expert (4月9日付け EE Times)
→Apple対Samsungの係争の件。あるApple expertによると、Samsungは少なくともApple特許1件を侵害しているphonesを依然出荷しており、3倍の損害賠償の可能性がある故意の侵害となる旨。これとは別に他のexpertの調査によると、消費者は特許化されたApple featuresへのアクセスに$44〜$102を支払うことになるという結論の旨。
【grapheneの取り組み】
将来の有望材料grapheneについて、韓国そしてポーランドにおける取り組みである。技術開発の記事では、毎日のように見かけるgrapheneの世界各国のアプローチである。
◇Samsung Researchers Celebrate Promising Graphene Breakthrough (4月7日付け EE Times)
→Samsung Advanced Institute of Technology(SAIT)とSungkyunkwan University(成均館大学校)(ソウル)の研究が奏功、flexibleディスプレイ, terahertz半導体そして非常に改善されたelectronicsが、研究所から出る段階にちょうど近づいている旨。Samsung Electronicsは4日、同社研究者が並外れた導電性、強靭性、柔軟性、軽さおよび透明性に恵まれた材料、grapheneの商用化を加速する方法を見い出した旨。
◇In graphene we trust: How Poland is putting confidence and cash in a material still on the starting blocks-Polish company places big bet on graphene production (4月8日付け ZDNet)
→ポーランド政府が一部所有しているポーランドのNano Carbonが、今まで大規模製造がやりにくいとされているcarbon材料、grapheneの量産に対する準備を整えている旨。Warsawに生産拠点をもつ同社は、顧客として日立およびIBMを入れている旨。
【台湾が最大サプライヤ】
中国のエレクトロニクス輸入額の国別シェアで、やはりという受け止めであるが、2013年について台湾が1位、そして韓国が続く形となっている。これら両国と我が国、米国との開きにも注目している。
◇Taiwan remains China's largest electronics supplier-Data: Taiwan was biggest electronics supplier to China in 2013 (4月5日付け The Taipei Times (Taiwan)/Chinese News Agency)
→台湾の昨年中国向けエレクトロニクス輸出の86.1%が半導体で、44.1%増の$72.17 billion、中国半導体輸入の31.1%を占める旨。韓国の昨年の中国向け半導体輸出は20.6%増、台湾の半導体業界への脅威が高まってきている旨。
◇Taiwan becomes largest source of China electronics imports in 2013, says MOEA (4月7日付け DIGITIMES)
→台湾のMinistry of Economic Affairs(MOEA)発。中国が2013年に輸入した電子デバイスおよびコンポーネント総計は$307.04 billion、国別比率は次の通り: 台湾 27.3% $83.79 billion…2012年から37.6%増
韓国 18.7% $57.48 billion
日本 7.7%
米国 5.4%
≪グローバル雑学王−301≫
世界の宗教を国・地域別に経緯、内容など見てきたが、最後に我が国、日本について、日本人と宗教と題して、
『世界は宗教で動いてる』
(橋爪 大三郎 著:光文社新書) …2013年6月20日 初版1刷発行
より、2回に分けてアプローチしてみる。神様、仏様と、物心ついてから口ずさんでいた感じ方があるが、神道のカミ、神仏習合、日蓮宗と以下に前半として説明されており、インド、中国を経て日本に届いてからの仏教の変容ぶりが1つに示されている。
第六講義 日本人と宗教−カミと人間は対等の関係
クエスチョン1 神道とはどのような考え方か
◆漢意とやまとごころ
・国学の中心人物とされている本居宣長(1730〜1801年)、『古事記伝』の序文で面白い議論
→カミ(神のこと)とはなにか
・そこに、「神」という漢字、中国語の文字
→意味が似ているからという理由で、カミに当てることに
・「漢意(カラゴコロ)」…漢字のもたらした意味や、それにつきまとう観念
・漢字のような表意文字の場合、文字とともに概念も伝えられるのが普通
・漢字の表意の機能を外して、単に音の表記として使ったのが、万葉仮名
→カナという日本独自の表音文字
→漢字カナ混じり文という日本語表記のスタイルが育っていく
→日本語の中核的な部分に、中国語の概念システムが移植されている
・宣長の提案 →日本の文化的価値を「純化」して取り出すこと
→中国由来の要素を確定し、引き算、残差こそが「日本的なもの(やまとごころ)」
⇒国学
◆カミとはなにか
・カミとは何? →結論は、カミにはこれといった実体がない
→人間に、特別な影響を与えるもの
→もともとの、日本人の考え方だ、と宣長は言う
・日本は、カミさまだらけ →カミとは、自然現象のこと
・仏教は、寺院建築
→それならカミにも、建物が必要では
→仏教が伝わってからは、寺院と神社がパラレルな存在に
・日本のお祭りの本質は、カミと人間が仲良くすること
◆カミと存在
・一神教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教)では、Godが創造したことで、存在が始まる。その前は、無。
・日本人には、人間が誰かに「造られた」という感覚がない。自分は「自然に生まれた」と思う。
・カミと人間の関係を端的に言えば、「生む/生まれる」
→「生む」とは、自然現象であって、創造とは違う
→「生む」ことの本質は、コピー。元と同じものが、もうひとつできる。
親のコピーが子ども
・人間がカミのコピーであるなら、カミと人間は、本質的に同じであって、存在として対等
・神道の、すべての存在者は何かから生まれた、とする考え方
→仏教は、因果律(輪廻の法則)でとらえる
・親から生まれたから、いま自分はここにいる
→日本人にとって自然なこの考え方は、一神教とも、仏教とも対照的、神道に即した考え方
・神道の考えでは、自然現象の背後にはカミ
→例えば、地震ならナマズ
クエスチョン2 神仏習合とはどのような考え方か
・神道の国に仏教が入ってきて、お寺もたくさん作られた
→当時の人びとの感覚としては、ほとんどテーマパーク
・カミと仏を調和させる工夫
→最初の工夫は、「カミが出家して仏教徒になる」というもの
→もっと進んだ工夫は、本地(インドのこと)垂迹(移動すること)説
・結論は、「仏=カミ」…神仏習合
→あまりにも強引な説、矛盾だらけ
・大きな食い違いの一つとして、輪廻の範囲
→インドの考え方…天人〜人間〜動物、の範囲内の生命
日本のカミは、植物や無生物(山や川や石など)も含む
・天台本覚論
→本覚とは、ほんとうは覚っている、という意味
・もともと仏教とは、インドの偉い人間がたまたまそういう状態(覚り)になるという話
→日本に伝わると、動物はおろか山も川もすべてが仏に
クエスチョン3 日蓮宗とはどのような考え方か
・最澄(767〜822年)が中国からもたらした天台宗
→教相判釈というテキストのランキング
・日蓮(1222〜1282年)が知りたかったのは、数あるうちのどの経典が、釈尊の真意を述べているか
→法華経は、最上の経典である、という結論に
→法華経だけを絶対視する「法華専持」を唱えた
・日蓮は、律宗や浄土宗、真言宗などを、仏教のあり方として間違っている、と激しく攻撃
→原理主義的な態度をとった、日蓮宗の誕生
→日本国が法華経を尊重し、法華経を中心に国家を運営すれば、政治も軍事も経済も、すべてうまくいくと説いた
→『立正安国論』を著わす
・まもなく本当に、モンゴルの軍勢が攻めてきた(元寇)
→日蓮の宗教的カリスマが一挙に
・「南無妙法蓮華経」と題目を唱えるだけで、その経を読んだのと同じ効果
→日蓮宗が発明した考え方
・浄土宗の「南無阿弥陀仏」
→日蓮宗が真似したと思われる
・日蓮宗から分かれた、日蓮正宗
→日蓮の弟子の一人、日興(1246〜1333年)が開祖
→日蓮本人を釈尊と同格のブッダと考える
→江戸時代を生き抜き、明治から昭和に伝わって、熱心な在家の信者を集める
→今日の創価学会に発展