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Update: モバイル機器インパクト、世界を巻き込む凌ぎ合い

昨年の中国のconsumer electronics市場が急減というデータが表われて、パソコンの低迷が続く中、モバイル機器の活況ぶりに当面しばらく注目せざるを得ない現状がある。Apple向け生産対応、64-ビットプロセッサ、そして中国およびインド市場など、キーワードとなってくる情勢である。それぞれに従来の勢力に新しい勢力が台頭してきて、世界を巻き込む凌ぎ合いの様相となっており、変化を見た時間間隔でのアップデートの必要を感じている。以下、現時点の注目の動きから入っていく。

≪現時点の動き≫  

BoschとSTマイクロが並んでリードした一昨年、2012年のMEMSデバイス市場ランキングであるが、昨年はApple向けビジネス対応でBoschが抜きん出る結果となっている。

◇Apple Design Wins Lift Bosch to Top of MEMS Ranking (3月10日付け EE Times)
→IHS発。ARM携帯電話およびiPad design winsに助けられて、Boschが、2013年MEMSセンサおよびactuatorsのトップメーカーになった旨。2012年はBoschとSTMicroelectronics NVが並んでMEMSランキングのトップであった旨。市場全体は5.8%増の$8.96 billion、Boschは26%増で$1 billionに達する一方、STのMEMS販売高は2.1%減であった旨。
・≪表≫ 2013年MEMSメーカー売上げトップ20 (MUS$) [Source IHS]
http://analog-eetimes.com/images/01-edit-photo-uploads/2014/03/20140310eihsmemsranking440.jpg

Apple向けプロセッサ生産対応がやはり中心の話題となるが、次世代のA8プロセッサを誰が作っているのか、日替わりの記事の様相を呈している。今までのSamsungか、あるいは取って代わるTSMCか、はたまた両方か、と賑やかである。

◇The Apple A8 'fab' enigma: Is it TSMC, Samsung, or both? (3月10日付け CNET)
→誰がAppleの次世代プロセッサを作っているのか、SamsungとTSMCの間のPRの戦いがフル回転を始めている旨。ここのところ、あるときはTSMC、あるときはSamsungとの情報、たぶんともに正しい旨。

そのTSMCについて、CMP工程仕様関連でA8対応の遅れが表面化、早速に火消しが行われる以下の内容である。

◇TSMC 20nm wafer production delayed temporarily, but will not affect shipments-TSMC delayed 20nm chips due to CMP spec issue (3月11日付け DIGITIMES)
→TSMCが、同社20-nmウェーハstartsがCMP(chemical mechanical planarization)で用いられる材料の仕様問題から最近遅れていることを確認の旨。この点は解決されており、出荷の遅れはない旨。業界筋によると、TSMCは2014年始めにAppleのA8プロセッサに重点化、20-nmプロセスノードでの量産を開始の旨。

A8関連の受注に向けては、実装分野についても主要メーカー間のシェアが取り沙汰されている。

◇ASE may land more packaging orders for Apple A8 CPUs (3月11日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、Appleの次世代A8プロセッサについてのpackaging受注について以前予想された20%より高くなる可能性の旨。先の報道では、AppleがA8 CPUsについてのpackage-on-package(PoP)発注のうち、Amkor TechnologyとSTATS ChipPACがそれぞれ40%、残る20%がASEとされていた旨。

64-ビットモバイルプロセッサについて、先行するAppleをAndroid勢が如何に出てきて追い越していくか、予測の方は何歩か先に騒がしくなっている。

◇Apple dominates 64-bit mobile chips as Android rivals lag-But ABI Research is predicting 64-bit chips will be on more Android mobile devices by 2018-ABI: Apple's lead in 64-bit mobile chips could diminish (3月11日付け Computerworld/IDG News Service)
→ABI Research予測。Appleが、64-ビットモバイルプロセッサをリードする位置にあるが、Android handsetメーカーが向こう4年で追いつく可能性の旨。Androidは今年64-ビット版を得る見込みの旨。今年出荷が予測される64-ビットモバイルプロセッサ182 million個の約20%がAndroidモバイル機器に入り、2018年には1.12 billion個の60%を占めると見る旨。

現状のモバイルプロセッサをリードする米国Qualcommが、中国で先端品を生産する計画という話が浮上している。同社は中国政府から公正取引に問題があるとして調査を求められており、それを睨んだ攻防との推測が出てきている。

◇Commentary: Is it likely for Qualcomm to produce 28nm chips at SMIC?-Will Qualcomm shift some 28nm chip orders to SMIC? (3月13日付け DIGITIMES)
→最近の中国発記事によると、Qualcommのpresident、Derek Aberle氏が中国のSMICで28-nm半導体を作る計画を披露としている旨。台湾の業界観測筋が特に言及して曰く、Qualcommはたぶんに中国との関係改善に注目しており、同社handset半導体の販売への公正取引調査を中国政府が取り下げる期待感の旨。

現時点でもこのように変化に富んだ動きとなっており、随時アップデートを要する状況を受け止めている。


≪市場実態PickUp≫

エレクトロニクス・半導体の世界市場を見渡して、現状の頼みの綱となっているモバイル機器であるが、テレビ、デジカメなどconsumer electronicsの中国市場について大きく需要が減るデータが表わされている。

【中国のconsumer electronics市場】

◇Consumer Electronics Market Tumbles in China as Major Device Shipments Slide in 2013 (3月10日付け IHS iSuppli)
→IHS Technologyからの最新レポート。2013年の中国のconsumer electronics市場が減少、televisionsおよびdigital still cameras(DSCs)など製品需要が減速して、同国のメーカーは成長の新たな戦略を強いられる旨。昨年の中国consumer electronics業界全体の主要製品出荷が710.2 million台、2012年の781.0 million台から9%と急減の旨。

世界最大の光通信の展示会、OFC 2014(Optical Fiber Communication Conference and Exposition)(3月9-13日:Moscone Center San Francisco)が開催され、ここでもsoftware-defined networking(SDN)が将来のキーワードとして表わされている。

【OFC 2014から】
              
◇Intel, Mellanox, Vello Ride Optics (3月11日付け EE Times)
→Intel, Mellanox, およびVello Systemsなどが、今週今回の場で、光ネットワーキングに向けた新しい標準を発表、Internetデータセンターおよびcarrierネットワークスを通してのデータの増大する潮目の流れを円滑にする狙いの旨。

◇Intel touts growing momentum behind silicon photonics technology-Intel gains industry support for its optical connector technology (3月11日付け V3.co.uk (U.K.))
→IntelとCorningが開発したMXC光コネクタ技術が、Microsoftなどいくつかのメーカーからの支持を集めている旨。該コネクタは、データ伝送を早めるためにデータセンターで用いられる旨。今回の場でadopters meetingを開催しているIntelによると、Molex, TE ConnectivityおよびUS ConecなどMXCを支持しているベンダーの旨。

◇Experts Look to SDN for Optical Network Future (3月13日付け EE Times)
→今回の講演者が、光ネットワーキングの将来はsoftware-defined networking(SDN)であるとしており、SDNは継続する問題、バンド幅capacityを抑える助けになる旨。

パソコンの低迷、ハードウェア撤退と、厳しい材料の多いAMD、そしてIBMであるが、それぞれトップから現状の取り組み、今後に向けたスタンスが表明されている。

【AMD、IBMの取り組み】

◇AMD Shares Rise on CEO Interview, Boost in Non-PC Sales-AMD CEO boosts company's revenue outside of PCs (3月7日付け Re/code)
→Advanced Micro Devices(AMD)のPresident and CEO、Rory Read氏。2011年に就任したときはPCs以外の製品売上げが4%であったが、それが現在30%以上になっている旨。

◇IBM CEO Rometty: ‘We Are Not Exiting Hardware’ -CEO: IBM will improve its hardware business, not get rid of it (3月10日付け The Wall Street Journal /Digits blog)
→IBMのCEO、Virginia Rometty氏が同社株主に説明、"新たな現実および機会に向けて"儲からないcomputerハードウェア事業の位置づけを変える旨。該ハードウェア事業は、2012年の税前利益$1.2 billionに対し、2013年は税前loss $500 millionであった旨。ハードウェアから撤退というのではなく、IBMは高性能およびhigh-endシステム、ストレージおよびcognitive computingの依然リーダーであり、引き続き先端半導体技術のR&Dに投資していく旨。

あまり馴染みのないtungsten diselenide(WSe2)が共通して用いられているが、超薄LEDsの取り組みが3つの大学の研究グループから同時に発表されている。

【tungsten diselenide(WSe2)】

◇2D Material Promises Next Generation of Optoelectronics Devices (3月12日付け EE Times)
→Nature Nanotechnologyの3月9日号に、WSe2を用いた結果を述べた3つの異なるグループの論文が以下の通り:
 MIT focus on WSe2
 University of Washington focus on WSe2     
 Vienna University of Technology focus on WSe2 

◇Boffins build bendy screen using LEDs just THREE atoms thick-It's a flexible display! It's a light-powered processor! It's almost anything you want-Scientists develop ultrathin flexible display with LEDs (3月11日付け The Register (U.K.))
→University of Washingtonの研究。厚さが3原子、モバイル機器などportable electronicsでflexibleディスプレイとして用いられるlight-emitting diodes(LEDs)を開発、該LEDsはsilicon oxideベース上のtungsten diselenide(WSe2)で作られる旨。人間の髪の厚さの10,000分の1ながら、放出する光は標準測定機器で見える旨。

◇World's Thinnest Solar Cells Developed By Vienna University Of Technology-Researchers tout thinness of solar cells made with tungsten diselenide (3月11日付け CrazyEngineers)
→Vienna University of Technology(Austria)の研究。超薄solar cellsで用いられるtungsten diselenide diodeを開発の旨。

PV(photovoltaic)市場の世界的構成が大きく変わっていることを知らされる以下の内容である。今まで圧倒していた欧州から、中国および日本がリードするAsia-Pacific地域に入れ替わる変容となっている。

【グローバルPV(photovoltaic)市場】

◇Asia ahead of Europe in 2013 installed PV capacity (3月12日付け EE Times India)
→European Photovoltaic Industry Association(EPIA)からの最新データ。
2013年に少なくとも37GWのPV capacityが加わって、グローバルPV累積installed capacityが2013年末で136.7GWに押し上げている旨。欧州が2013年は該市場での主導的役割を失っており、2011年には70%以上、2012年は依然約59%であったが、2013年は28%止まりになっている旨。中国および日本(それぞれ約11.3GWおよび6.9GW)が引っ張って、Asia-Pacific地域が2013年グローバル市場の57%となっている旨。


≪グローバル雑学王−297≫

カースト制度がまず思い浮かぶところがあるが、こんどはヒンドゥー教とインド文明について、

 『世界は宗教で動いてる』
  (橋爪 大三郎 著:光文社新書) …2013年6月20日 初版1刷発行

より、2回に分けて迫ってみる。生まれ変わる輪廻の考え方、多神教で無数の神のヒンドゥー教を知らされるが、とにかく時間がかかるインド社会の論理というのは、依然仕掛っている半導体工場のインドでの建設の推移にも表れている感じ方がある。


第四講義 ヒンドゥー教とインド文明−カーストは本質的に平等

クエスチョン1 カーストとはなにか

◆カーストとは
・紀元前13世紀ごろに、アーリア人がインドに侵入してきた結果、できたカースト制
・カースト(ヴァルナとも)は身分制。奴隷制ではない。
 第一:平等の要素 …輪廻によって入れ替わり、誰がどのカーストになるかは順番
 第二:結婚して家庭をもつ権利 …カースト内で結婚、同じカーストの子孫を残す
 第三:カーストは職業と結びつく …生まれた瞬間に決まっている職業
・すべてのカーストの人びとが相互依存しながら生きていく社会ができている
・はじめは、バラモン/クシャトリア/ヴァイシャ/シュードラの4カースト
 →細かく分かれて、数えきれなく
・最初はインドの中央部 →次第にインド半島全体に広がっていくという経過

◆他の文明圏との違い
・封建制、身分制のヨーロッパ中世
 →都市が成長するのと入れ代わりに封建的な身分制は縮小
・近代化したインド →政府もカースト制に反対
 →いずれなくなっていくと思われるが、とにかく時間がかかる
 ⇒ヨーロッパとだいぶ違うインド社会の論理
・日本も江戸時代には、士農工商の身分秩序
 →明治政府になると、軍隊は国民皆兵、どのような身分の出身でも大将、元帥になれる可能性。学制もこれと同じ。
 ⇒インドでは、なかなかこうはいかない

◆イスラムとの関係
・インドのカースト制に反対する宗教 →イスラム教
 →アッラーの前では、すべての人間は平等
・イスラム教とヒンドゥー教は、水と油のようで、混じり合わないまま併存
・ヒンドゥー教のイスラム教の対立を乗り越えようとした宗教、シク教
 →第三の宗教として、インドに定着

クエスチョン2 輪廻とはなにか

・インド人だけの考え方 →輪廻
 →現世で低いカーストであっても、死んで生まれ変われば違うカーストになる可能性
・中国は祖先崇拝
 →輪廻の考えは、中国人の発想のなかにほとんど残っていない
・祖先崇拝、中国や韓国では何百年も遡るのが、ごく普通
・輪廻は、人間と動物の間に境がない
 →生命体としては同じ。ほかの動物に生まれ変わるのが普通
・境があるのは、動物と植物の間
 →動物は有情。植物には神経組織がないから無情。
・ヒンドゥー教と仏教に共通する考え方として、因果の観念
 →原因があるから結果がある
 →物理的な因果に加え、人間の行為の善悪の因果も議論の射程に

クエスチョン3 ヒンドゥー教とはなにか

◆ヒンドゥー教の原型はバラモン教
・カーストと輪廻を前提として生きているインド人のものの考え方
 →ヒンドゥー教の論理は、征服民族であるアーリア人が持ち込んだバラモン教の段階でほぼ出来上がっていた
 →手当たり次第に取り込んで、ヒンドゥー教という、とてもひとくちでは説明できない多神教に

◆多神と化身
・ヒンドゥー教には無数の神
 →なかでも、ブラフマー、ヴィシュヌ、シヴァの三神が大事
 →ブラフマー …世界の創造主
  ヴィシュヌ …太陽の光を神格化、慈悲深い神
  シヴァ   …破壊の神、同時に再生を司る神でも
・神が「化身」するという考え方が、ヒンドゥー教の根本的な点
 →どんな宗教もヒンドゥー教になってしまう
・由来の異なる信仰がいくつも束になって集まってできたのが、インドの宗教、ヒンドゥー教
・個々の具体的な神を超えた、抽象的な神にともに従うグループだという意識
 →「一即多」
・インド人の場合は、神はひとりでも、大勢でも気にしない
 →神道にも入門の儀礼はなく、神道の信徒だという言い方もない
 →よく似ている

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