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昔の汎用品、今の新興経済圏移行、低価格製品&市場の伸び

携帯電話関連世界最大の「Mobile World Congress(MWC) 2014」(2月24-27日:Barcelona, Spain)が開催されて、64-ビット、LTE-Advanced、8-および6-コアはじめ最先端の動きとともに、スマートフォンも新興経済圏が伸びを牽引、低価格化に歯止めがかからず伸び率が鈍化していく現状を感じさせている。かつてのメモリとノンメモリ、汎用から専用へと、低価格の止まらない波に対抗して、付加価値そして売上げの拡大に駆け巡った半導体業界の経緯に共通する受け止め方を強くしている。

≪Mobile World Congress(MWC) 2014から≫  

今回のMobile World Congress(MWC)を控えた論調として、最大市場の中国への一層の傾斜が表わされており、中国の出展数も大きく増加している。

◇Chip makers dream of China as they head off toward Spain's smartphone gala (2月23日付け Global Times)
→きらびやかな展示から離れて半導体メーカーは、最大のモバイル市場、中国に気をとられている旨。QualcommおよびIntelからMediaTek, MarvellおよびBroadcomまで、スマートフォン応用を動かし高速ワイヤレスconnectionsを牽引する重要コンポーネントのサプライヤは、中国ブランドおよびChina Mobileはじめテレコムcarriersが4G LTE, すなわちLong-Term Evolutionに拍車ということで、具体化するopportunitiesにつけこもうと先を争っている旨。今や米国では大方採用されている標準、LTEへの中国の動きは、Intelはじめ半導体メーカーに、支配的なLTE半導体サプライヤ、Qualcommをして身の程を知らせる独特の機会となっている旨。月曜から木曜までのMWCは、戦いの場の軸となる旨。今年の中国からの出展は99で、昨年の70から増加、ベスト製品を披露する機会となる旨。
IntelおよびQualcommなどのメーカーは、新しい次期LTE-oriented microprocessors(MPUs)を披露する旨。

市場の受け入れ如何はこれからとして、低価格化を今回一気に押し上げた感のあるMozillaとSpreadtrum Communicationsによる激安スマートフォン構想の打ち上げである。

◇$25 Smartphones on Firefox OS to Rock MWC-Spreadtrum and Mozilla target first-time smartphone users (2月23日付け EE Times)

◇Mozilla shows $25 Firefox OS-based smartphone running Spreadtrum chips-One aim is to help blunt domination by two mobile OS's, Android and iOS, Mozilla CEO Sullivan declares-Mozilla, Spreadtrum roll out chipset for $25 Firefox smartphones (2月23日付け Computerworld)
→MozillaとSpreadtrum Communicationsが、SC6821チップセットを投入、Firefox operating system(OS)搭載の$25スマートフォンなるもので今年用いられる旨。このような電話は、モバイルキャリア数社が出す見込み、すべて米国以外の旨。

◇米モジラが2500円スマホ、OSにファイヤーフォックス−新興国向け、中国から半導体 (2月24日付け 日経 電子版)
→米国の非営利組織、モジラ財団(Mozilla Foundation)が、世界最大の携帯電話見本市、MWC開幕に合わせて23日記者会見。自らの基本ソフト(OS)「ファイヤーフォックス(Firefox)」を搭載した25ドル(約2500円)の激安スマートフォンが登場するとの見通しを明らかにした旨。低価格部品を使っても動作を確保できる中国メーカー、展訊通信(スプレッドトラム:Spreadtrum Communications, Inc.)製の半導体と組み合わせる旨。価格水準は現在の標準的な低価格機種の約4分の1で、スマホの値下がりに拍車がかかりそうな旨。

次を狙うNokiaからも、新興経済圏に向けた$100台前半のAndroid-ベースが披露されている。

◇Nokia’s Android X Series Targets 'Next Billion'-But Is the Price Right? (2月24日付け EE Times)
→キャッチフレーズ、"connecting the next billion to the Internet"のもと、Nokiaが月曜24日MWCにて、同社初のAndroid-ベースモバイルhandsets, Nokia Xシリーズを披露、Nokia X, Nokia X+, およびNokia XL機器が$122〜$150の価格の旨。該新シリーズをもって新興経済圏の成長市場でのシェア獲得の期待の旨。

各メーカーとも中国はじめ新興経済圏に向けた製品発表の流れが共通する現状である。

◇Chip Makers Step Up Race to Soup Up Smartphones (2月24日付け The Wall Street Journal)
→Qualcomm, IntelおよびMediaTekなど半導体メーカーが今回の場で、handset仕様を気にする人々に向けての仕立てと思われる製品発表を行っており、幾分驚くことに、そのような人々の多くはtechnology-aware中流クラスが増大している中国はじめ新興経済圏にある様相の旨。

気の利いた小物から値段へと、両方立てていかなければならない流れと映ってくるが、Appleが先鞭を切った64-ビットのプロセッサが表看板の1つのキーワードとなっている。

◇64bit mobile chips gaining momentum (2月25日付け EE Times India)
→64-ビットApple A7プロセッサ搭載のApple iPhone 5Sの投入以降、64-ビットモバイルapplicationsプロセッサをもつことがなにかstatus symbolになっている旨。Intel, Mediatek, Nvidia, およびQualcommが、Mobile World Congressの前、あるいは期間中に64-ビット計画を発表の旨。

スマートフォンのOSについても、現状の2強を追う争いが注目となっている。

◇スマホOS、3番手争い、アンドロイド、iOSが9割、見本市開幕、25ドル端末も (2月25日付け 朝日新聞DIGITAL)
→携帯電話関連で世界最大の見本市、「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」が24日、スペイン・バルセロナで開幕、スマートフォンの普及で携帯のサービスが多様化するなか、注目されるのが、スマホを動かす基本ソフト(OS)の覇権争い、米グーグルの「アンドロイド」と米アップルの「iOS」の寡占を崩す3番手争いの旨。MWC会場の「一等地」を占めたのは日本勢ではなく、中国の華為技術(ファーウェイ)や韓国のサムスン電子などの旨。

新興経済圏が引っ張る市場拡大となると、欠かせない低価格化ということで、スマートフォンを巡る戦いは一皮めくれた新たな局面を迎えているという見方が優勢になってきている。

◇Smartphone wars shift from gadgetry to price (2月26日付け Reuters)
→携帯電話業界は、派手なhigh-end機器市場が飽和してきており、今や$100以下の急速に伸びているスマートフォン需要に注目している旨。今週のMWCでの話の大方は、最新の大画面、premium-priced機器から、アナリストが今や業界最善の成長期待と圧倒的に評している新しいentry-levelスマートフォンに移っている旨。


≪市場実態PickUp≫   

新興経済圏でのスマートフォンの低価格化は、2013年の世界スマートフォン市場の伸びに早くも、そして端的に表われており、2017年までに一桁の伸びになることが予想されている。

【世界スマートフォン市場】

◇Despite a Strong 2013, Worldwide Smartphone Growth Expected to Slow to Single Digits by 2017, According to IDC (2月26日付け IDC)

◇Global smartphone growth to fall sharply in 2014: IDC (2月26日付け Reuters)
→IDC発。グローバルスマートフォン出荷の伸びが、今年急激に低下、2018年まで鈍化し続けると見る旨。需要が中国など発展途上国に移行、平均価格が大きく下げていく旨。

◇世界スマホ市場、成長ペース鈍化、2014年出荷台数19%増 (2月27日付け 日経 電子版)
→米調査会社、IDCが26日、2014年の世界のスマートフォン出荷台数が前年比19%増の12億台になるとの見通しを発表、前年比増加率は2013年の39%から大幅に低下する旨。普及の一巡に伴って米国や日本などの先進国で市場拡大のペースが鈍化、一方、頼みの綱の新興国では価格下落が急速に進んでおり、競争環境は厳しさを増しそうな旨。

半導体の研究開発投資について、2013年のメーカートップ10ランキングが発表されている。モバイル機器のプロセッサ、そしてメモリに関わる顔ぶれの伸びが際立つ中身となっている。それにしても際立つIntelの研究開発投資である。

【研究開発投資トップ10】

◇Top 10 Semiconductor R&D Leaders Ranked for 2013 -Intel is tops again, Micron and Qualcomm show biggest R&D increases, Broadcom with highest R&D/sales ratio (2月25日付け IC Insights)

◇Intel remains top semiconductor R&D spender, says IC Insights-IC Insights: Intel still leads chip R&D spending (2月26日付け DIGITIMES)
→IC Insightsが、研究開発費の半導体メーカー2013年ランキングをリリース、Intelが引き続き他のすべての半導体メーカーを上回り、トップ10のspendingの37%、世界半導体R&D expenditures総計の19%を占める旨。トップ10データ、次の通り:
≪IC Insights: 世界半導体R&D spendingトップ10:2012-13 (US$M)≫

2013
2012
2012
2013
13/12
順位
販売高
R&D
比率
販売高
R&D
比率
R&D
1
1
 Intel
49,114
10,148
21%
48,321
10,611
22%
5%
2
3
 Qualcomm
13,177
2,655
20%
17,211
3,395
20%
28%
3
2
 Samsung
32,251
2,765
9%
34,378
2,820
8%
2%
4
5
 Broadcom
7,793
2,318
30%
8,219
2,486
30%
7%
5
4
 ST
8,364
2,413
29%
8,044
1,816
23%
(25%)
6
9
 TSMC
16,951
1,370
8%
19,850
1,623
8%
18%
7
8
 Toshiba
11,217
1,710
15%
11,958
1,560
13%
(9%)
8
7
 TI
12,081
1,877
16%
11,475
1,522
13%
(19%)
9
13
 Micron
8,002
909
11%
14,433
1,487
10%
64%
10
6
 Renesas
9,314
1,901
20%
7,975
1,343
17%
(29%)
 トップ10合計
168,264
28,066
16.7%
181,864
28,663
15.8%
2%

      [Source: IC Insights, compiled by Digitimes, February 2014]

◇TSMC ranks as 6th-largest R&D spender in IC industry (2月26日付け Focus Taiwan)

米国の電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズ、そして同社を引っ張るElon Musk氏を巡る動きが、以下のように相次いでいる。電気自動車に向けた電池の革新およびさらに大きな展開に注目である。

【テスラを巡る動き】

◇アップル、テスラ買収に関心!?−狙いは自動車か、“大変革”なのか (2月24日付け 日刊工業)
→米アップルが電気自動車(EV)米テスラ・モーターズの買収に関心を示していると米紙が報じた旨。イノベーションの停滞に陥るアップルが、成長市場の自動車分野への進出を狙ったものではないか、という見方もある旨。
しかしシリコンバレーでは、もっと壮大なシナリオを期待する声も出始めている旨。

◇パナソニック、米テスラと車用電池の大型工場 −1000億円投資 (2月26日付け 日経 電子版)
→パナソニックは米電気自動車(EV)メーカー、テスラ・モーターズと共同で、米国に電気自動車向けの電池工場を建設することで最終調整に入った旨。国内の複数の部材メーカーにも参加を呼びかけており、総投資額は1000億円を超えるとみられ、2017年の稼働をめざす旨。日米の主力メーカーが協力し、大量生産でコスト低減が進めば、環境性能に優れるEVの普及に弾みがつきそうな旨。

◇Tesla Targets Battery Innovation to Reduce EV Costs (2月27日付け EE Times)
→主導EV carメーカー、Tesla Motors社が、同社のbillionaire entrepreneur、Elon Musk氏が約$35,000のコストの電気自動車を作る目標のカギになるという、"Gigafactory"提案の詳細をリリースする準備を行っている旨。

◇米テスラ、電池新工場に5100億円、量産でコスト下げ (2月27日付け 日経 電子版)
→電気自動車(EV)メーカーの米テスラ・モーターズが26日、米南西部に大規模な電池工場を建設、2017年に稼働させる計画を明らかにした旨。総事業費は最大50億ドル(約5100億円)に達する見通し、パナソニックなどの協力企業と共同で運営することを想定している旨。量産効果により電池のコストを大幅に引き下げる旨。

実装技術のIPで1990年代から各社に攻勢をかけてきているTesseraが、以下の通り台湾の後工程メーカー2社との特許侵害係争を続けざま決着させている。

【特許係争】

◇ASE to pay US$30 million to Tessera to settle patent case (2月26日付け DIGITIMES)
→Advanced Semiconductor Engineering(ASE)が、Tesseraに対し、米国Northern District of California地裁での特許侵害訴訟を決着させるために計$30 millionを支払う旨。

◇PTI to pay Tessera US$196 million in patent lawsuit settlement (2月27日付け DIGITIMES)
→実装&テストのPowertech Technology(PTI)が、Tesseraとの特許侵害係争に決着、PTIはTesseraに対して計$196 millionを支払う旨。

フラッシュメモリのNANDとNORの出荷データの対比に改めて注目している。
volumeゾーンの用途を擁するNANDの新記録の一方、NORの方は低下して差が大きく拡がる結果となっている。

【NANDとNOR】

◇A Tale of Two Memories: NAND eMMC hits a Record Year, While NOR Flash Shrinks Further (2月24日付け IHS iSuppli)

◇NAND Up, NOR Down in Flash-NAND flash shipments rise, NOR slips in 2013, IHS says (2月24日付け EE Times)
→IHS technologyの本日レポート。2013年フラッシュメモリ出荷が、NANDとNORでさらに開きが出ている旨。
NAND 1 billion個以上の新記録…2012年の687 million個から49%増
      売上げが約28%増の$25.8 billion
NOR  606 million個で約10%減
      売上げが約$3 billionで15%減


≪グローバル雑学王−295≫

ヨーロッパ文明とキリスト教、宗教改革とアメリカの政治・経済はじめ行動原理を、

 『世界は宗教で動いてる』
  (橋爪 大三郎 著:光文社新書) …2013年6月20日 初版1刷発行

より見てきたが、こんどは2回にわたってイスラム文明の世界に入ってみる。二や三は分裂を意味するとして、世界に一つというイスラムの連帯の根本があり、コーラン(クルアーン)とて1冊の本、いくつもの部分に分かれていないことをまず知らされている。


第三講義 イスラム文明の世界−イスラム教は平和のための宗教

クエスチョン1 アッラーとはなにか

◆タウヒード
・アッラーは、アラビア語で神(God)という意味
 →ユダヤ教のヤハウェ、キリスト教の父なる神と同じもの
 →天地を創造し、最後の審判の主宰者でも
・唯一の「一」→イスラム教ではタウヒード(唯一性)、中心的な概念
 →アッラーが「一つ」、預言者も「一人」、預言者に従う人びとの共同体(ウンマ)も「一つ」
・タウヒード(一)が重要なのは、二や三は分裂を意味するから

◆預言者
・一人の預言者、ムハンマド
 →イスラム教では「最後で最大の預言者」と信仰告白
  →ムハンマドより前に預言者がいた、と認めている
・イスラム教からの見方
 →旧約の預言者に従うのが、ユダヤ教徒
  新約の預言者イエスを神の子キリストだとして従うのが、キリスト教徒
 →どちらも信じ方が間違っているけれども、まったくの異教徒であるとはみなさない
・イスラム教には、争いを避けようという知恵が備わっている

◆ウンマ
・イスラム共同体、ウンマ
 →これも世界に一つ、イスラムの連帯の根本
・喜捨(ザカート)はムスリムの義務
 →集まった資金をプールして支援が必要な人びとに分ける
・ウンマの観念は、地域社会が活動の実態であっても、ほんとうは世界全体が一つのウンマ、と考えるところに特徴

クエスチョン2 ムハンマドとはなにか

◆ムハンマドの生涯
・ムハンマドは、6世紀後半に、アラビア半島の商業都市、メッカで生まれた
・大きな転機が訪れたのは40才ごろのとき
 →大天使ジャブライール(ガブリエル)を通して神の啓示を受ける
・622年、ムハンマドは信徒たちを伴い、ヤスリブ(現在のメディナ)に移動
 →ヒジュラ(聖遷)。この年をイスラム暦(ヒジュラ暦)の元年
・630年、メッカへの無血入城を果たす
 →イスラム共同体が形成 …ウンマ

◆イエスとムハンマドの違い
・イエスは病気治療のような奇蹟
・ムハンマドの奇蹟
 →神の言葉を聞いて、啓示を受けたこと、それ自体が奇蹟
  →クルアーン(コーラン)の存在が、アッラーの奇蹟
 →天空に駆けのぼった奇蹟

クエスチョン3 クルアーンとはなにか

・天使、ジャブライール(ガブリエル)の声が聞こえるとき、ムハンマドは声で口走り、それを傍らにいた人がもれなく記録、整理したもの
 →クルアーン(コーラン)
・クルアーンは1冊の本、いくつもの部分に分かれていない
・クルアーンは、アラビア語でなければならず、ほかの言語への翻訳を認めない
・聖書の場合、本文の確定作業が今日も続く
 →クルアーンに関しては本文の校訂の問題は存在しない

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