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中国、インドを巡る市場、通商の気になる波風

新興経済圏の伸び、先行きについての懸念が漂うなか、中国そしてインドにおける関連する動きに注目せざるを得ないところがある。中国については、市場の飽和感、そして各国、大手メーカーとの通商摩擦が、また、インドについては、懸案の半導体fab建設、IBM再構築の波紋と、こちらは現下の具体的な動きとして注目する材料となっている。スマートフォン市場も、新興経済圏では廉価版が伸びて、high-end機種の浸透が鈍いことなど、現時点を象徴する動きと受け止めている。

≪現時点の動き≫  

中国のスマートフォン市場であるが、2013年第四四半期に9四半期の伸びの後の低下を示している。

◇The China Smartphone Market Hiccups as Growth Streak Ends with First Sequential Decline in 2013 Q4, Says IDC (2月13日付け IDC)
→中国を世界トップのスマートフォン市場に推進した9四半期連続の伸びを経て、2013年第四四半期に中国のスマートフォン市場が初の低下となっている旨。

通商関係では、米中間の太陽電池のダンピング、そしてワイヤレス大手の市場価格が調査対象として上がっている。

◇ITC、中国製太陽電池の反ダンピング調査を発表 (2月17日付け 人民網日本語版)
→京華時報発。米国国際貿易委員会(ITC)が14日、中国から米国に輸出される太陽電池が、米国の関連産業に実質的な損失をもたらしたとする仮裁定を下した旨。これは米商務省が今後、中国製の太陽電池に対して反ダンピング・反補助金調査の実施を継続することを意味する旨。

◇Qualcomm faces China probe into alleged overcharging-Regulators are also investigating U.S. company InterDigital for allegedly overcharging clients-Qualcomm, InterDigital face monopoly probes in China (2月19日付け Computerworld/IDG News Service)
→中国のNational Development and Reform Commission(NDRC:中華人民共和国国家発展改革委員会)が、QualcommおよびInterDigitalによる不当な価格要求という申し立てを調査していることを確認、この両社ともNDRCの
独占禁止調査に協力している旨。

一方、インドについて、まずは半導体fab建設であるが、インド政府の認可が下りたということで、韓国のLG, Samsungが積極的に乗り出す手前の動きが見られている。ここでもインドでの時間のかかる決定プロセスへの言及がある。

◇LG, Samsung mull setting up semiconductor units in India-Republic of Korea's Ambassador Joon-gyu Lee at a recent event revealed India's demand-Korean chipmakers may try to establish shops in India (2月16日付け Business Standard (India))
→韓国大使、Joon-gyu Lee氏がインドに対して、ウェーハfab拠点を構築する対のプロジェクトにインドが前進するなか、LG ElectronicsおよびSamsung Electronicsがインドでの半導体operationsの設立に注目している旨。両社はインドの要求を考慮しており、問題はインドの遅いプロセス・スタイルであると同氏。LGおよびSamsungは本件についてコメントしていない旨。

◇'LG, Samsung mull setting up semiconductor units in India' (2月16日付け The Economic Times)

◇India semiconductor fab: LG, Samsung may be the next (2月17日付け EE Herald)

半導体事業売却など事業再構築の動きが見られるIBMであるが、jobs削減の第一波がインドになるという以下の内容である。

◇Big blues at IBM India (2月17日付け EE Times)
→史上最大規模のレイオフの1つ、IBMが、グローバルにjobs削減開始、最初に行うのはインドの旨。ハードウェア売上げ26%落ち込みはじめ先月発表の第四四半期業績低迷が、レイオフの主な原因と考えられる旨。
約$1 billionのコスト削減を目指す“resource action”、RAで、IBMの世界従業員43万人について約13,000 jobsが削減されると見られる旨。

また、インドではスマートフォンはじめモバイルhandsetsの国内製造を奨励する消費税対策が施されようとしている。

◇Budget 2014: Excise duty cuts on mobile handsets-Budget 2014: Highlights (2月18日付け EE Times India)
→インドの財務大臣、P Chidambaram氏が月曜17日、インド下院(Lok Sabha)で2014-15年Interim Budgetをプレゼン、国内製造を喚起するよう、政府はモバイルhandsetsへの消費税を6%にするとしている旨。

このようなインド市場での2013年にエンジニアが読んだ製品記事・トップ10である。

◇Top products of 2013 on EE Times India(2月19日付け EE Times India)
→EE Times Indiaの多様なengineering communityの間で昨年、2013年に最も読まれた製品ニュース10点:
・Dialog Semiconductorのoff-line LED driverモジュール用ディジタルプロセッサ、iW6401
・Texas Instruments製ZigBee Light Link開発キット
・Cirel Systems(Bangalore)のpower management IC(PMIC)
・Intel XMM 7160 slimモデム・プラットフォーム  
・Intel QuickAssist Technology
・IntematixとPhilips Lumiledsが開発したLED照明モジュール
・PixelTeqのmicro-patterned光filter技術
・Synopsysによる初のSuperSpeed USB 10Gb/s(USB 3.1) platform-to-platform host-device IPデータ転送
・Hellaの車載OEMs向けLEDsのportfolio
・アルコール呼気検査器および大気品質モニターとして電話を使えるようにするSensirionのセンサ・プラットフォーム

最近矢継ぎ早の動きが見られるGoogleのインドにおける啓蒙イベントの例である。

◇Google dev't workshop to promote apps in Indian languages (2月20日付け EE Times India)
→検索大手、Googleが水曜19日、workshopを2月21日から22日、Bangaloreで行うと発表、インドの100人近いprofessionalおよびamateur開発者が、それぞれの地域言語で如何にAndroidアプリを設計するか、プレゼンする旨。
 

≪市場実態PickUp≫

2020年までに確固たる世界シェアを占めていくという欧州半導体業界の目標が掲げられているが、11社のトップから成るグループによるそれに向けた提言である。

【欧州半導体業界】

◇EU aims to become semiconductor leader after advice from ARM and Intel-Internet of Things to help IC industry in Europe (2月14日付け V3.co.uk (U.K.))
→Electronics Leaders Groupレポート発。Internet of Things(IoT)などの領域に向けたセンサの開発が、欧州半導体メーカーのグローバル半導体業界でのシェア獲得拡大を支援する旨。11 CEOsから構成の該Groupは、IC設計センターなどの拠点をEU域に傘下で置くinitiative、Smart Everything Everywhereの設立を推奨している旨。

◇Europe’s Semiconductor CEOs Back ‘Internet Of Things’ Research Drive-Chief executives of ARM, Infineon and STMicroelectronics want to double value of Europe's microprocessor industry by 2020 (2月17日付け TechWeek Europe)

中心となる1社、STMicroelectronicsを巡る動きが並行している。

◇ST central to Europe’s future in microelectronics-Why the French may take a bigger stake in ST (2月14日付け Electronics Weekly (U.K.))
→イタリア政府がSTMicroelectronicsにおけるequity stakeの一部あるいは全部を売却する可能性、フランス政府がSTのownershipの役割をさらにとるかどうか、疑念を生じている旨。フランスがSTの財務だけでなく経営のコントロールも望むなら、急ぐのがよい旨。

インテルの最新サーバMPUが、以下の通り説明されている。ビッグデータについて、IBMおよびOracleとの競合局面が見られている。

【インテルのサーバMPU】

◇Intel stresses in-memory computing with 15-core server chip-Intel's Xeon E7 v2 chips will go into servers with up to 32 sockets-Intel debuts server chip with 15 cores, in-memory computing (2月18日付け Computerworld/IDG News Service)
→Intelが、サーバ用プロセッサ、Xeon E7-4800 v2ラインを投入、昨年出荷された先行するXeon E5 v2プロセッサのa dozen coresに対し、15 coresを擁する旨。該新半導体は、in-memory computing capabilityをもち、analytics, データベースおよびenterprise resource planningなどの応用に関わるhigh-uptimeサーバに一層有用となる旨。

◇Intel Drives Xeon to Big Data (2月19日付け EE Times)
→Intelが、同社最新サーバmicroprocessor(MPU)、Xeon E7 v2において最大メモリcapacityを3倍に、IBMおよびOracleからのbig-data analytics jobs用のhigh-end半導体に対抗する狙いの旨。該Xeon E7 v2は、four-socketプラットフォームで最大6-TBytes、eight-socketプラットフォームで最大12-TBytesのメインメモリを収容している旨。

時間の経過を気づかされる特許係争であるが、アップル対サムスンも然り。
賠償確定ではあるが、今後の和解交渉、続く訴訟と、その間にもいろいろ急展開するビジネスとは別の時間軸をまたまた感じるところである。

【アップル-サムスン係争】

◇サムスンの950億円賠償確定へ、アップルと特許訴訟 (2月18日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子に米アップルへの特許侵害で計9.3億ドル(約950億円)の賠償金支払いを命じた米カリフォルニア州連邦地裁の昨年末の陪審員評決が確定する見通しとなった旨。このほど担当判事が両社からの再審請求を棄却したことで、覆る可能性がほぼなくなった旨。両社は和解に向けた交渉に入っているが、先行きは不透明、既に次の訴訟に向けた準備も進めている旨。

このところ応援、感動の渦、興奮に浸っているソチ冬季五輪であるが、その中で使われている注目のハイテク技術が挙げられている。個々の詳細はこれからの理解である。

【ソチ五輪でのハイテク】

◇Sochi Olympics: 6 Technologies That Caught Our Eye (2月21日付け EE Times)
→以下の6点:
・Modern Curling Stones Outfitted With Sensors for Hog Line Violations
・Photron FastCam SA-Z HSSM Camera
・Bo-Dyn Bobsled Project Inc. Night Train 2 Bobsled Designed with SolidWorks
・Helmet Cams Like GoPro's Hero 3 Black Edition Show Athletes' POV
・Under Armour/Lockheed Martin Mach 39 Speedskating Suit
・Anschutz 1827F Fortner .22 Olympic Rifle

標準packagingも今は昔という、今日の半導体製品の以下の見方である。汎用、専用、カスタムの半導体の流れを、packagingの世界でも改めてと受け止めている。

【標準packaging】

◇Semiconductor Packaging Is No Longer 'Standard' (2月16日付け EBN)
→標準packagingは、かつてDIPsおよびPGAsのような基本的なthrough-hole製品であったが、1990年代にsurface mount packagingが新しいvolume packagingになった旨。しかし、依然標準packagingがあって、多くの場合multi-sourceであった旨。今日、半導体製品の大方ほとんどで標準packagingの時代は過ぎ去って、市場での製品ライン差別化が商用半導体市場で利益を引っ張る唯一の方法となっている旨。


≪グローバル雑学王−294≫

アメリカにおける政治、経済をキリスト教はどのように考えるか、アメリカ合衆国の行動原理というものに、

『世界は宗教で動いてる』
  (橋爪 大三郎 著:光文社新書) …2013年6月20日 初版1刷発行

より迫ってみる後半である。市場のルールを受け入れて守ること、それを守っているかぎり、何人も非難できないという、市場経済が正当なビジネスの場として存在する典型としてのアメリカの価値観を捉えている。


第二講義 宗教改革とアメリカの行動原理−ウオール街の"強欲"をどう考えるのか

クエスチョン3 アメリカのキリスト教は政治をどのように考えるか

◆ジャーナリズムは預言者の役割
・政治は、理想を実現するための、手段
・もっとも大事なのはGod。王や政治家よりも権威がある。
 →教会が、Godの次に大事
 →ないがしろにする王や政治家は批判の対象に
・王や政治家に対する批判を行う役割
 →預言者のいない現代において、その役割を担うものとして、ジャーナリズムが重要に
・ジャーナリズムは本質的に、反権力
 →役割は、政府を批判すること
・人間は、罪深く不完全。政府や政治家も、人間である以上、必ず間違える
 →ゆえに、監視しなければならない
・ジャーナリズムの問題や腐敗をあばくのは、ジャーナリズム自身
 →相互監視が実行可。ニセ預言者を排除する預言者
・欧米では、部数の多いのは質の悪い大衆紙、オピニオンリーダーになるのは少部数の高級紙、と相場

◆選挙と神の意思
・やたらに選挙が多いアメリカ
 →すべての公職を、選挙で選んでいるのではないかと思うくらい
・皆が投票、多数を得たものがそのポストに就く
 →権限が手に入るが、責任も負う。任期が来れば、そのポストから離れる
・こうはならない中国や日本
 →辞任しても大派閥の領袖として影響力を維持…日本
 →現役を退いた政治家がそのあとも超法規的な権力を維持…中国
・アメリカでは、神の権力が永遠であるから、政治家の権力は有限でなければならないという発想
 →ただ、引退後に回想録を書くことは重要な仕事
  →ポストに就いて内部情報を知り、いろんな意思決定をした人には、メモワールを残す暗黙の責任
  →同じ過ちを繰り返さないために
・ポストに就いたのは神の意思なのだとの考え
 →職務(office)に対する忠誠
 →大統領個人ではなく、彼の職務に対して忠誠を誓う
・就任式で聖書に手を当てて宣誓
 →神の意思にこたえようという態度を示している
・キリスト教のロジック
 →政府や警察、軍隊などの公的職務は、神の意思を体現する権威をもっている
・聖書では、最後の審判までの「つなぎの期間」に、人間が人間を統治してよいという政治の仕組みを定めている
 →英語、ドイツ語。フランス語、すべて聖書の翻訳によって成立
 →その言葉で考えるかぎり、こういう論理に
・ルターの思想で重要なのは、「Beruf(天職…世俗の職業はどれも神が人間に与えた任務であるという思想)」の考え方
 →選挙で選ばれた政治家が、誠心誠意仕事をすべきだという発想の根本

クエスチョン4 キリスト教は経済をどう考えるのか

◆物質と精神の二項対立か
・アメリカ人はひとつに、即物的な現実主義者、金のことしか考えていない
・たしかにアメリカは物質の豊かな国、しかし、物質を上回る思考回路がある
・物質とスピリチュアル(精神)の関係に、アメリカの強さの秘密
 →物質/精神という、二項対立的な発想にこだわると、アメリカを理解できない

◆神の業(ネイチャー)と人の業(カルチャー)
・聖書:自然は全部よろしい。自然(ネイチャー)は、神の業だから。
・それに対して、人間のやることはカルチャー
 →農業を始めたのは人間
 →エデンの園を追放されて、額に汗して日々の糧を手に入れなければならなく

◆「神の見えざる手」から資本主義へ
・現代には、人間の活動として、ビジネス
 →よい場合と悪い場合
・利益があがるかどうかは、市場法則に従う …「神の手」
 →市場に製品を供給することは、隣人愛の実践と解釈可
・アダム・スミス:市場には「神の見えざる手(invisible hand)」が働く
 →市場で決まる価格そのほかは、正しい
・利潤を上げるためにまず、やるべきこと →正直(honesty)
 →ビジネスを、宗教活動の精神で行う
・富は、隣人の幸せに役立つのでなければ意味がない、と考える
 →利益の一部を教会や慈善事業に寄付する
・成功は、神の恵みを受けているという意味
 →素直な意味で、人生の目標になり得る
 →当面は、この世界で職業に邁進し、成功を目指す

クエスチョン5 キリスト教は、科学をどう考えるか

・もともと科学は、宗教的な動機で始まった
 →神の許可なしに動いている自然現象はひとつもない
・神の造ったこの世界(自然)を、聖書のようなもう一冊の書物として「読解」
 →自然科学がスタートした理由
 →科学者の活動は、神の知に近づこうとする行為
 →科学(自然)と聖書(信仰)は決して矛盾しない
・エビデンス(証拠)は、神から与えられた自然の出来事
 →その結論は正しく、真理に近づいていくと期待できる
 →こういう制度はアジアでは、ついに生まれず

クエスチョン6 アメリカ的価値観とはなにか

◆ネイティブ・アメリカンと奴隷制の問題
・アメリカ先住民は、狩猟採集生活をしていて、農業をしていなかった
 →農耕民の都合でよそに移動させ、居留地に閉じ込めてもいい、こういう理屈
・南部の奴隷州が連合、奴隷を認めない自由州が主導するアメリカ合州国から分離独立を図ったのが、南北戦争(1861〜1865年)
 →奴隷は非合法に
 →しかし、黒人の状況はなかなか改善されず、今日でも大きな問題に
・キリスト教では、神の世界に対する主権と、絶対的所有権を考える
 →派生する人間の所有権も神聖視
 →その所有権の範囲が、人間に及ぶかどうかが問題

◆強欲(greedy)とキリスト教
・日本で、富の格差が当然と思われるのは、それが労働の正当な対価だと考えられる場合
 →アメリカでは、誰かがたくさん儲け、ほかのひとがあまり儲からなくても、神の意思だから甘受しなければならない
・金持ちが救われる可能性が小さいのは、大切と思う富を貯えたところに、その人の心もあるから
・キリストが生きていた古代社会では、市場メカニズムが不完全
 →現代の市場経済は、正当なビジネスの場として存在
 →その典型がアメリカ
 →貪欲な人びとは、困った人びとだが、市場のルールを守っているかぎり、彼らを非難することはできない

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