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飛躍を期待の新年スタート、Wearables/IoT/クルマに焦点のCES

新年の第1週、恒例の業界新年賀詞交歓会への出席と米国・ラスベガスで開催のInternational Consumer Electronics Show(CES)からの話題である。賀詞交歓では、やっと明るい兆しが見えてきた我が国、今年は実質的な成長戦略で押し上げ、飛躍を図るというトーン、ちょうど午年、ぴったりのフェーズと感じている。CESからは、モバイル機器活況の先を巡って、Wearables、Internet of Things(IoT)そして自動運転を目指すクルマに特に焦点を受け止めている記事内容となっている。

≪賀詞交歓会、およびCES関係記事から≫  

JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)の平成26年 新年賀詞交歓会(1月8日)に出席、手元メモで次の通りである。

○ JEITA 佐々木会長 …以下は、JEITAホームページにある年頭所感とで示している。

・2013年の日本は、アベノミクスや民間活力を向上させる景気対策等の施策により、厳しい事業環境に苦しんできた当業界にも明るい兆しが見え始めた一年に。電子情報産業の2013年における日系企業の生産も約38兆円、前年比5%増と3年ぶりのプラス成長。

・激しさを増す韓国や中国を始めとする諸外国との国際競争。政府に対して税制改正や規制改革等、あらゆる機会を捉え訴えて大きな成果。

・2014年の世界経済は、全体的に着実な経済回復の期待。わが国においても、消費税増税による景気の下振れリスクはあるものの、成長戦略の確実な実行による国内経済の回復期待。

・今後著しい成長が見込まれる医療・ヘルスケア、エネルギー、社会インフラ、自動車、農業分野など、従来の枠組みを超えたあらゆる分野と融合、わが国の基幹産業、IT・エレクトロニクス産業は、世界に先駆けたスマート社会の実現に向けて大いに貢献できるものと確信。

・引き続きイコールフッティングな競争環境の整備が肝要

・マイナンバーの利用拡大、オープンデータ・ビックデータの速やかな利活用推進、個人情報保護とデータ利活用の両立などを実行するためのルール整備について、積極的に政府に対し引き続き働きかけ

・わが国最先端の技術を結集したベストプラクティスをアジアをはじめとする海外へ積極的に展開

・2020年オリンピックに向けて飛躍するスタートの年となることを祈念

政府側来賓からは、次のキーワードの挨拶である。

○ 茂木 経済産業大臣

・安倍政権、2回目の年  株価など大幅高のこの1年

・4期連続プラスのGDP

・今年は全国津津浦浦まで景気アップの実感を

・国際環境推進の準備に向けた減税

タイミングを同じくして、1月7-10日、Las Vegasで開催されているCESから発信されている記事について、以下の通り注目している。まずは、事前からwearableの話題が早々に表わされている。 

◇Wearables to Gain ‘Respect,’ ‘UltraHD” Video Chips to Proliferate at CES, Say Analysts-Wearable devices, Ultra HD video chips to make news at CES (1月4日付け Barron's /Tech Trader Daily blog)
→業界アナリスト発。smart watchesなどwearable electronicsが、今回のCESの目玉製品の部類に入る旨。アジアでの最近のリサーチに基づいて、Appleが2014年末前にiWatchを打ち上げへ、これがwearable技術の動きをさらに確実にする旨。一方、MediaTekがLong-Term Evolution(LTE)スマートフォン, Ultra HDTVsおよびwearable electronicsに向けたチップセットを出展する旨。

開催前日のpre-CESも含めて各社の講演プレゼンがいろいろ見られているが、クルマ関係の内容として次の通り。

◇Platform Brings Hypervisor & Virtualization to Automotive (1月6日付け EE Times)
→今回のCESで、Harmanが、connected carでのin-vehicle infotainmentに向けたscalableプラットフォームを披露、該プラットフォームは、hypervisorsおよびvirtualシステムなど商用およびconsumer computingから知られる考え方を車載環境に移植する旨。加えて、cyberセキュリティの面倒を見て、クルマでのシステムintegrationを容易にする旨。

また、wearableに向けたreference designが展開されている。

◇Freescale Rolls Platform for Wearables Design-3 Pitfalls of Wearable Device Design (1月6日付け EE Times)
→Freescaleが、まだ定まらないところがあるwearable市場を可能にすべく、今回のCESにて、業界初のwearable機器用reference designなるものを展開しており、fitnessおよびヘルスケアから"infotainment"に至るたくさんの応用に十分柔軟性のあるプラットフォームの旨。

注目のIntelからは、超モバイル、wearableそしてInternet of Thingsがキーワードとなるアピールとなっている。

◇Intel CEO Seeking to Change ‘Intel Inside’ to Everywhere-Intel CEO may introduce products at CES (1月6日付け Bloomberg)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏が、今回のCESでの基調講演で新製品を披露、PC関連事業の停滞が続いていることで、モバイルおよびwearable electronics市場を狙っている旨。ultramobile製品に向けた新しいQuarkプロセッサが含まれる旨。

◇Intel's CEO Vows It Will be Lord of the Things-Intel CEO is on the case for the Internet of Things (1月6日付け The Wall Street Journal /Digits blog)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏、月曜6日の基調講演。Internet of Things向け半導体について、まもなく披露していく旨。

◇Intel Edison Aims to Dress Wearables-Quark module rolls in mid-2014 (1月7日付け EE Times)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏が、月曜6日のpre-CES基調講演にて、wearableの世界に向けたビジョンをプレゼン、その基本はSDカードの大きさのcomputingモジュールにある旨。

モバイル用プロセッサを引っ張っているQualcommからも、クルマ、wearableへの視線が見られている。

◇Qualcomm’s Steve Mollenkopf on China, Cars and Wearables-Qualcomm's next CEO talks wearable devices (1月8日付け Re/code)
→QualcommのCEOに3月に就任予定のSteve Mollenkopf氏。wearable electronicsについて、人々は追加の機器を身に着けていき、これらは動きあるいはヘルスケア関連をモニターするだけ、いくつかはfull-up phonesの可能性の旨。

クルマとエレクトロニクスの業界の両立について、以下、パネル討議で見られる問題意識である。

◇CES Panel: Autonomous Cars Are 'Long Way Off' (1月9日付け EE Times)
→水曜8日のクルマおよびエレクトロニクス業界のexpertsパネルにて。
self-driving automobileの今後を描こうとしたが、以下に代表される"critical issue"に直面する旨。クルマの7年の平均lifespanを、consumer電子デバイスのやっと18ヶ月のlifecycleとどう両立するようにするか。クルマの側からはエレクトロニクス業界に対して、"We need your help"。

苦境が続いた昨年の我が国の半導体・エレクトロニクス業界は、賀詞交歓会でもその影響を感じるところがあったが、CESにおいても我が国のプレゼンスの向上を図らないとというトーンがテレビ報道も含めて相次いで表わされているように思う。それこそ成長戦略の押し上げに乗っかっていかなければ、との感じ方が強まってくる。

◇CES:中韓メーカー、存在感、影薄い日本勢 (1月10日付け 毎日)
→今回のCES、中国企業の存在感が増しており、目立つ場所で薄型テレビやスマートフォンを展示、韓国勢も目を引く新製品を発表、相対的に日本勢の影は薄くなっている旨。15万人の来場客の多くが訪れるCES中央会場の“玄関口”は長年、米インテルと米マイクロソフトの展示ブースの“指定席”だったが、出展をやめたマイクロソフトの代わりに、昨年から中国の家電大手、ハイセンス(海信集団)がブースを構えている旨。
 

≪市場実態PickUp≫   

半導体業界の生産capacityについて、昨年12月時点での各社別ランキングが次の通り表わされている。メモリ、そしてファウンドリーメーカーがトップ5を独占している。

【IC業界capacityランキング】

◇Samsung, TSMC, and Micron Top List of IC Industry Capacity Leaders-The top 10 companies now hold 67% of worldwide IC industry capacity, up from 54% in 2009. (1月8日付け IC Insights)
→トップ10、下記参照。
http://www.icinsights.com/files/images/bulletin20140108Fig01.png

◇Samsung, TSMC and Micron top list of IC industry capacity leaders, says IC Insights (1月9日付け DIGITIMES)
→IC Insightsによるinstalled capacityから見た半導体業界ICメーカーのランキング。トップ10には、北米4社、韓国2社、台湾2社、欧州および日本が各1社。2013年12月時点で、以下の概要:
Samsung Electronics 8インチ換算1.9 million枚/月 全体の12.6%
TSMC              1.5 million枚/月    10.0%
Micron Technology
Toshiba/SanDisk
SK Hynix
以下、Intel、ST、UMC、Globalfoundries、TI

◇TSMC, Samsung and Micron top list of IC industry capacity leaders (1月9日付け ELECTROIQ)

そのメモリメーカーの一角、Elpidaを買収したマイクロンの直近四半期業績が発表されているが、以下のマイクロンの地元、Idahoを含めた見出しにあるように、Elpidaによる売上げの押し上げが顕著な内容となっている。

【マイクロンの力強い業績】

◇Micron shares rise on strong results, possible Apple contract (1月8日付け Reuters)
→Micron Technology社が、力強い業績発表、およびApple社と思われる顧客契約調印を受けて、水曜8日の株価が13%高、ここ10年で最高値をつけた旨。

◇Micron Revenue Tops Estimates After Elpida Merger Boosts Volumes-Elpida purchase boosts revenue at Micron in quarter (1月8日付け Bloomberg Businessweek)

◇Elpida brings more good news to Micron-The company’s sales are up and the worldwide memory market looks strong. (1月8日付け The Idaho Statesman)

◇Micron posts profits on higher sales in fiscal 1Q14 (1月8日付け DIGITIMES)
→Micron Technologyの2013年11月28日締め2014年第一四半期の販売高が$4.04 billion、前四半期($2.84 billion)比42%増、前年同期比120%増。
net profitsは$358 million、前四半期の$1.71 billionから低下の旨。

前回触れた米SIAによる月次世界半導体販売高発表、11月分について、遅ればせ各紙の反応を示す。

【米SIAの2013年11月世界半導体販売高発表への反応】

◇Ninth successive month of semi growth-SIA: November brings ninth straight month of growth in global IC sales (1月6日付け Electronics Weekly (U.K.))

◇Global semiconductor sales continue to climb in November, says SIA (1月7日付け DIGITIMES)

2013年の世界半導体販売高が$300 billionの大台を如何に越えるかは、もう1ヶ月待たなければならないが、大きく左右するサムスン、TSMCの2013年を締める業績が以下の通り発表されている。減少が目立つ内容で、予断を許さない感じ方が出てくる。

【サムスン、TSMCの2013年締めの業績】

◇サムスン2年ぶり減益、2013年10〜12月、営業益6%減 (1月7日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が7日、2013年10〜12月期の連結営業利益が8兆3000億ウォン(約8100億円)と前年同期比6%減ったようだと発表、前年実績を下回るのは2011年7〜9月期以来でほぼ2年ぶりの旨。スマートフォンの平均販売単価が下がったほか、ディスプレイ部門も不振だった旨。
半導体部門はスマホやサーバ向けにメモリ半導体のDRAMが伸び、競合するSKハイニックスの生産トラブルなどで市況も堅調で大幅な増益となったとみられるが、連結業績全体の落ち込みは補えなかった旨。

◇TSMC 4Q13 sales fall 10%, but meet guidance(1月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの2013年第四四半期連結売上げがNT$145.81 billion($4.855 billion)、前四半期比10.3%減、NT$144-147 billionのguidance rangeには入っている旨。
TSMCの2013年12月連結売上げがNT$49.68 billion、前月比12.1%増、前年同月比33.7%増。年間ではNT$597.02 billion、2012年から17.8%増。


≪グローバル雑学王−288≫

中国、韓国と見てきた歴史認識の問題、最後は、中国と我が国とのトライアングルが経済関係では取り上げられることが多い台湾について、

『歴史認識を問い直す −−−靖国、慰安婦、領土問題』
  (東郷 和彦 著:角川oneテーマ21 A-168) …2013年5月10日 再版発行

より、歴史、そして政治的な視点から以下示されている。台湾の独立と尖閣の領有には、中国とアメリカ、二つの超大国の狭間に立つという共通点があり、政治的な難しい駆け引き、舵取りを改めて感じるとともに、台湾との特に経済的な連携からくる信頼の重さを評価するところである。


第二部 歴史認識問題 −−−再登場した諸問題

第六章 台湾の場合 −−見落としがちな問題

□中国の軍事戦略
・現下の日本を取り巻く最も深刻な問題
 →中国が、尖閣の現状を実力によって変更することを国策として決定、実施し始めた点
・中国の軍事戦略
 →1978年の改革開放以来、軍事力を増強、新しい海洋戦略を着々と形成
  →「第一列島線」構想 − 以下を中国の勢力圏の下に置こうとするもの
   …九州を起点、沖縄の上を通り、台湾を囲む形、フィリピンとボルネオの西岸を南下、反転してベトナムのホーチミン市近辺まで
・台湾は、中国の国益にとって不可欠の意味、「核心的利益」を持つ、との主張
・2012年春から、中国の論調の中に「尖閣は核心的利益である」という発言
・台湾に対して、尖閣問題について一緒に日本に闘おうという熱い呼びかけ
・台湾・馬英九政権の考え方 →尖閣は台湾固有の領土である
 →解決の方法として、徹底的な話し合いを求めている
・もう一つ、台湾の立場は、徹底的に漁業の問題重視
 →重要な漁場である点で、台湾側には日本政府に対する不満
・1997年、日中漁業協定が新しく締結
 →台湾の漁船には適用がない難
・(著者は、)いま日本は、台湾との溝を深めてはならないと思う
 →台湾のいま置かれている位置と日台関係に、もう一回注意を払う必要

□台湾のアイデンティティ
・台湾の歴史、振り返り
 →台湾が近代史に登場するのは400年前
 →1683年より「化外の地」として清の支配下に
 →1895年より日本帝国の最初の植民地に
  →自分たちを日本に売り渡した清への「恨」
 →戦後すぐはまず、2・28という国民暴動が発生
  →台湾のアイデンティティは「アンチ・チャイナ」に
 →2000年民進党の陳水扁政権成立以降の台湾は、難しい道程
  →独立志向が滲み出ていた陳水扁政権に対し、中国との不要な対立を嫌ったアメリカは、温かい対応をせず
 →馬英九政権は、「統一せず・独立せず・武力を使わせず」の現状維持政策を軸に、中国との経済協力を推進
・台湾に対する中国の政策
 →本質をひと言で言えば、台湾は中国の一部であることは動かせない
 →台湾国民が、いかように、国の運命と将来について考えようとも、この中国の鉄の締め付けの下にいることは否定のしようがない
・台湾の問題は、「選択」ではなく、「存続」の問題

□「日本の台湾化」という問題
・(著者が、)2011年5月、久しぶりに台湾を訪問
 →台湾各地で日本研究熱が燃え始めており、いっせいに「日本研究中心」(日本研究所)ができている
・台湾政界の有力者で日台関係で何十年にわたり多くの橋渡しをしてきた人、仮にB氏との懇談
 →台湾の独立と尖閣の領有には共通点 …中国とアメリカ、二つの超大国の意向を察知しないといけない
・「日本の台湾化」が現実化
 →日本が、この中国による「鉄の締め付け」とこれに抗するアメリカの力の狭間に立たされる
・台湾人が、日本を取り巻く条件よりはるかに困難な中で、自ら勝ち取ってきた民主主義
 →そしてようやく緒についてきた戦後の日台関係

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