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市場が変える構図、IntelがARM半導体メーカーに製造対応

Intelが選んだ顧客に向けてファウンドリー製造対応を行うという発表があって、start-upが目立つなかFPGA大手のAlteraがその顧客に入っていたが、このほどIntelがAlteraの最先端戦略製品、Stratix 10 SoCデバイスをIntel最先端プロセス、14-nm FinFETで製造するという内容が、Alteraからの発表に盛り込まれている。しかもこのSoCは、4つのARM Cortex-A53コアを用いており、モバイル用プロセッサを席巻するARMからは距離を置いていたIntelのスタンスの変化とともに市場が変える構図というものを感じさせている。

≪モバイルへのスタンス≫

Intelからは、AlteraのSoCデバイスについての発表を前に、モバイルへの重点傾斜のシグナルが発せられている。

◇Intel's James Says Mobile Delay Due to Lack of Priorities-Intel president: Priorities delayed our push into mobile chips (10月25日付け Bloomberg)
→IntelのPresident、Renee James氏。ここのところモバイル応用ICs開発に優先順位を高めてきている旨。

一方、IBMにおいてもARMからライセンス供給を受ける発表が、Alteraの発表直前に行われている。

◇IBM licences ARM Cortex processors (10月28日付け EE Times India)
→IBMが、ARM Holdingsからある範囲のARM Cortexプロセッサのライセンス供与を受ける旨。IBMは、該microprocessors(MPUs)を、同社カスタム半導体clients、すなわち世界中で普及するwiredおよびワイヤレス通信を可能にするネットワークルータ、スイッチおよびcellular基地局を構築するメーカーに向けて提示する計画の旨。

そして、Alteraの発表を迎えるが、秘密のヴェールが開かれるというタイトルも見られ、以下の通りである。

◇Altera's Secret Processor Unveiled: a Quad-Core ARM Cortex-A53 (10月29日付け EE Times)
→秘密のヴェールが引き裂かれ、AlteraのStratix 10 SoCsが64-ビットquad-core ARM Cortex-A53プロセッサsubsystemを特徴とする旨。

◇Intel Makes 14nm ARM for Altera-Altera, Intel to add 64-bit ARM cores to 14nm FPGAs (10月29日付け EE Times)
→Alteraが本日、ARMの64-ビットコアを同社半導体に入れると発表、それはIntelが、4つのARM Cortex-A53コアを用いるハイエンドAltera Stratix 10品を2014年から製造することを意味する旨。Alteraは、embedded DSPsなどロジックもある該Stratix 10デバイスは同社最高性能品としている旨。

◇Altera announces quad-core 64-bit ARM Cortex-A53 for Stratix 10 SoCs (10月30日付け DIGITIMES)
→Intelの14-nm Tri-Gateプロセスで製造されたAlteraのStratix 10 SoCデバイスは、高性能、quad-core 64-ビットARM Cortex-A53プロセッサシステムを組み入れており、同デバイスのfloating-point digital signal processing(DSP)ブロックおよび高性能FPGA fabricを補足している旨。

背景として、これまでTSMCとの連携が主であったAlteraが、Intelの絶対的なプロセス優位性に賭けたとしている。fabプロセスの点では、Intelは競合に1ノード先行していると見られ、Intelは現在14-nm FinFETプロセスを立ち上げているが、ライバルのファウンドリー、TSMCは現在20-nmプロセス立ち上げであり、来年後半まで商用可のFinFETs版はない見込みとなっている。
業界観測筋は、Intelの最先端プロセスとARMの64-ビットコアの組み合わせを調べることに興味があるとしており、Alteraは、Intelの14-nmプロセスに成るStratix 10品は現在のhigh-end 28-nm FPGAsコア性能の2倍、1-GHz以上のFPGA性能が得られるとしている。

Intelは、Samsungのタブレットにmodem半導体を入れており、さらに展開する対応を以下の通り行っている。

◇With Samsung Win, Intel Has a Modem Chip for LTE Phones and Tablets-Intel places LTE modem chip in Samsung Galaxy Tab 3 10.1 (10月30日付け All Things D)
→Samsung Galaxy Tab 3 10.1は、Intel XMM 7160 multi-modeワイヤレスmodemを搭載、Long-Term Evolution(LTE) 2G/3G/4G bands, 並びにGSMおよびHSPAをサポート、該タブレットのプロセッサはMarvell Technology Group製の旨。Intelは来年、LTE-AdvancedおよびSprintのTD-LTE networksをサポートするワイヤレスmodem半導体を出す意向の旨。

このような流れから、IntelはARM半導体メーカーに最先端製造の門戸を開いて、Appleのパイまで獲得するよう全くの変わり身を見せるのではないか、と以下の観測である。

◇Intel Opens its Manufacturing Facilities to ARM Chip Makers - Will Apple Switch? (10月30日付け PadGadget)
→SamsungはAppleのプロセッサ半導体を依然製造しているが、それはまもなく終わりになる可能性、ARM developers' conferenceでの最近の発表によると、Intelは来年から64-ビットARM半導体の製造を始める旨。Forbes発、Alteraの該ARM conferenceでの発表によると、Intelは2014年にARMのレースに参入、これはIntelが今までやってきているのと完全な変更となる旨。Intelはモバイル市場でのARMの人気の伸びを鈍らせるのに懸命にやってきている旨。

Intelでは並行して、TV事業へのスタンスの検討が行われている。

◇Intel looking to exit TV project, in talks with Verizon (10月30日付け Reuters)
→Intel社が、television事業への入り込みを再考しており、同社Internet TV initiativeの継承についてVerizon Communications社と協議している旨。


≪市場実態PickUp≫

TSMCの28-nmプロセスcapacity稼働率が低下、high-endスマートフォンの売れ行きが良くないためとなっている。業績の数字にどう出るか、いつあらわれるか、気をもたせる状況である。

【TSMCでの懸念】

◇TSMC seeing utilization rate of 28nm processes fall (11月1日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCの28-nmプロセスcapacity稼働率が、high-endモバイル半導体の受注低迷から70%に低下している旨。TSMCの重要なモバイル半導体clientsが、過剰在庫を防ぐよう最近ウェーハstartsを削っている旨。
high-endスマートフォンの売れ行き不振により、在庫レベルの注意深いモニターが急がされている旨。

このTSMCの状況をはじめとして、第四四半期そして2014年早々の弱含みの予想が、2四半期絶好調の業績となったSK Hynix、そして台湾のUMC、ASEから声を揃えるように聞こえてきている。

【弱含み第四四半期(10-12月)】

◇SK Hynix posts record revenues and operating profits in 3Q13 (10月29日付け DIGITIMES)
→9月の中国工場火災でDRAM outputを減らしたSK Hynixであるが、第三四半期連結売上げがKRW4.08 trillion($3.85 billion)と史上最高を記録、前四半期比4%増、DRAM価格上昇およびモバイル機器新リリースによるNANDフラッシュビット出荷増大が効いている旨。

◇UPDATE 2-SK Hynix braces for weaker Q4 as fire damage hits output (10月29日付け Reuters)
→SK Hynix社が火曜29日、中国工場での火災に伴う半導体出荷の落ち込みを警告、2四半期の利益新記録の後、メモリ半導体市場の盛り返し延伸がなくなる危険性の旨。

◇UMC warns on margins in Q4-UMC forecasts lower revenue, margins for Q4 (10月31日付け The Taipei Times (Taiwan))
→世界第4位のcontract半導体メーカー、United Microelectronics Corp(UMC, 聯電)が昨日、第三四半期のnet profitの72%増を発表、しかしこの第四四半期は弱含みの季節需要および在庫調整から利益マージンが浸食されると注意を求めた旨。

◇ASE forecasts weakness after strong Q3-ASE sees Q4 business weakening (10月31日付け The Taipei Times (Taiwan))
→世界最大の半導体実装およびtestingサービスプロバイダー、Advanced Semiconductor Engineering(ASE, 日月光半導體)社が昨日、Apple社のiPhone 5S指紋センサモジュール受注が追い風、第三四半期は連結売上げがNT$56.74 billionの最高記録、しかし今四半期は、コア事業販売高が顧客の在庫調整から前四半期のNT$37.81 billionからたかだか3%減ると見ている旨。

スマートフォンの拡販もあの手この手、今やGoogle傘下のMotorolaが、顧客の好きな組み合わせにモジュール化で対応するDIY(do-it-yourself)作戦である。

【DIYスマホ】

◇Motorola's 'Project Ara' promotes DIY smartphones (10月31日付け EE Times India)
→Motorolaが、高度にモジュール化したスマートフォンを作り出すための無料、オープン・ハードウェアプラットフォームの新しいinitiative, 'Project Ara'を発表、この活動を通してGoogle所有の同社は、ユーザが自前のスマートフォンを設計する支援を行う狙いの旨。ユーザが、どんな電話にするか、外観を如何にするか、どこでどう作るか、どれだけのコストおよびどれくらい長くもつか、決められるようにする旨。

スマートフォンとタブレットを合わせた工場世界売上げが、consumer electronics(CE)市場の売上げを上回りそうという見方が、以下の通り表わされている。改めて成長ぶりに気づかされている。

【スマホとタブレット、合わせると】

◇Combined Smartphone and Tablet Factory Revenue to Exceed Entire Consumer Electronics Market This Year (10月25日付け IHS iSuppli)

◇Smartphone, tablet revenue to surpass entire CE market (10月29日付け EE Times India)
→IHS発。本年のスマートフォンおよびタブレットのグローバル工場売上げが、consumer electronics(CE)市場全体の売上げを上回る見込み、これは初めてのことの旨。メディアおよびPCタブレットおよび3G/4G cell phonesの2013年世界original equipment manufacturer(OEM)工場売上げが、Rs.22.28 lakh crore($354.3 billion)に上る旨。


≪グローバル雑学王−278≫

昭和に入って我が国もファシズムに陥り、日中戦争から第二次世界大戦に入っていく1930〜1940年代前半について、

『学校では教えてくれなかった! 世界のなかのニッポン近現代史』
  (菅野 祐孝 著:歴史新書 洋泉社) …2013年3月21日 初版発行

より、目覚ましい経済回復を遂げるアメリカとの行き詰まり、世界から孤立化してファシズムに傾斜していくまでの今回は前半である。腐敗した政党政治:日本経済に対する不信・不満:逼迫的な閉塞感が、ファシズム路線に踏み込んでいった背景に挙げられている。


第3章 ファシズムの時代 −−−1930〜1940年代前半の世界と日本 ≪前≫

1 昭和初期の日本とアメリカ −−行き詰まりはなぜ生じたか?

◇二大政党内閣の出現 −経済・外交政策の違いとは?
・昭和初期、日本は二大政党の時代
 →憲政会:立憲政友会
・1927年、金融恐慌のはじまり
 →金融界、三井・三菱・住友・安田・第一の五大銀行の優位が確定
・結びついた銀行資本と産業資本 …金融資本または独占資本
・強硬外交をとる田中義一内閣は山東出兵を断行
 →1928年、北伐軍(蒋介石の中国統一運動)と済南で戦火…済南事件
・中国の山海関から東側に駐留した日本軍→関東軍
 →満蒙権益と中国権益を擁護
  →「満」…中国東北部の黒竜江省・奉天省・吉林省
   「蒙」…熱河省・チャハル省・綏遠省エリアの内蒙古
・1928年、張作霖爆殺事件 →真相が国民に知らされず
・1930年、ロンドン海軍軍縮会議
 →補助艦の保有比率、主力艦建造禁止の期間延期

◇世界恐慌の影響 −欧米は恐慌からどのように脱出したか?
・1929年10月24日、暗黒の木曜日、株価の暴落に端を発する経済混乱
 →世界恐慌に発展
・米国大統領に就任した民主党のフランクリン・ローズヴェルト
 →1933年、管理通貨制度に移行
 →ニューディール(新規巻き直し)政策を実施、TVA(テネシー川流域開発公社)などの土木事業
・アメリカ経済は目覚ましい景気回復

◇世界恐慌が日本経済に与えた影響とは?
・1930年、浜口内閣の蔵相、井上準之助が、金解禁を断行
 →金解禁と世界恐慌による二重の不況…昭和恐慌
・社会不安から、テロや軍部による国家改造の素地
・1931年、管理通貨制度に移行
 →円安を利用した輸出が活発に;赤字国債を発行、景気刺激策
 →1933年には世界恐慌以前の水準まで生産力を回復
※赤字国債…政府歳入の赤字を埋めるために政府(国)が発行する債券

2 ファシズムの進展 −−日本がファシズムに陥ったワケとは?

◇満州事変はなぜ起こった?
・昭和に入ると、政党間でも外交方針、特に中国政策を巡る対立が激化
 →政党と真っ向から対立した軍部や右翼
・1931年9月1日、南満州鉄道の線路が爆破される事件
 →中国軍の仕業と見せかけ、関東軍は宣戦なきまま軍事行動を開始
 …満州事変のはじまり
・1932年、五省からなる満州国を建国、清朝最後の皇帝、宣統帝溥儀が執政に就任
 →満州国では1934年から帝政を実施、実態は日本の傀儡国家
・満州事変以降、日本から満蒙開拓団など多くの移民
 →1937年からは満蒙開拓青少年義勇軍も
・日本は確実に世界から孤立した道を歩み始めた

◇日本がファシズムに傾斜したのはなぜ?
・日露戦争後から軍部の台頭が顕著
 →満州事変のころになると、政府の政策を左右するように
・世界で最も早くファシズム政権を築いたのはイタリア
 →1928年、ムッソリーニ
・ドイツでも1933年、ヒトラーのナチス政権成立
・日本が次第にファシズム路線を歩み始めた背景
 →腐敗した政党政治:日本経済に対する不信・不満:逼迫的な閉塞感
・1932年、五・一五事件、「話せばわかる」時代から「問答無用」の時代へ
・1936年、二・二六事件
・共産主義を敵視するファシズムの気運、ますます高まる
 →1936年、ソ連を仮想敵国とする日独防共協定
 →1937年、日独伊三国防共協定
・民主主義国家群とファシズム国家群の二極化へ

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