Semiconductor Portal

HOME » ブログ » インサイダーズ » 長見晃の海外トピックス

半導体製造deepノードを巡る取り組み・競合・懸念

"微細化の絶え間のない進展"が、半導体のこの上ない魅力であり、次々とそれこそ絶え間なく新しい市場を開拓する原動力であることは、誰しも疑いのないところであり、それぞれの世代で違った内容、形で思いを共有しているところと思う。現時点では10-nm台となっているdeepノードの半導体製造について、連携はじめさまざまな取り組み、競合を意識した優位性のプレゼンの一方、従来の外挿ではなかなか収まらないという問題意識が見られているということで、微細化限界への挑戦の現状をレビューしている。

≪限界への挑戦≫

Moore's Lawがどうこう言われながら約半世紀、半導体製造の指針であり続けているが、それをモバイル、ゲームなど次世代機器がその限界をテストしているという見方がある。

◇How Apple, Intel And Motorola Are Pushing 'Moore's Law' To Its Limits-Analysis: Mobile devices push IC tech to its physical limits (10月6日付け Business Insider)
→モバイル機器、ゲーム機など次世代electronicsは、Moore's Lawにより数10年導かれてきている半導体製造の限界をテストしている旨。iPhone 5SではAppleは、該handsetに向けたmotionデータ収集を取り扱うのにco-processor使用に頼っている旨。
  
そのMoore's Lawが、10-nm台になってくるとゆがみを生じてくるという以下の見方である。

◇Moore's Law gets very warped in the sub 20nm era-IEF 2013 How the heck do we make a profit dot com?-Mentor CEO: Big cost squeeze is coming at 20nm and below (10月7日付け TechEye)
→1.IEF2013 meeting(Dublin)にて、Mentor GraphicsのCEO、Wally Rhines氏。Moore's Lawは立ち去ろうとしているのかもしれないが、まだ全くというわけではない旨。それは不思議な法則であり、約50年も信頼性があり、自然の法則、learning curveに基づいており、IntelのGordon Moore氏がこの法則を1年から2年へ、そしてそれから18ヶ月に変えてもそうである旨。post 20-nm時代の半導体の今後について多くの問題を提起、Big Squeezeと呼ぶ旨。
 2.過去50年にわたって見られた典型的なコスト削減が、IC dimensionsの20-nm以下縮小につれ途中で脱落している様相の旨。ウェーハ価格が28-nm半導体に比べて41%上昇、450-mmウェーハへの切り換えはその増加を減じるのにほとんど役立たない旨。

10-nm台とか最小寸法の表現、Definitionも、いろいろで誇張があるのではないか、これもよく言われる以下の指摘である。ITRSでは、メモリとロジックに分けて最小寸法の定義を表わしたのも1990年代後半のことと思い起こすところである。

◇IEF2013: Liars' contest on nodes, says Mentor CEO.-Mentor CEO: Process node measurements have long been exaggerated (10月7日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IEF2013 meeting(Dublin)にて、Mentor GraphicsのCEO、Wally Rhines氏。半導体メーカーは何10年の間、自分たちの製品の最小feature寸法を誇張してきており、International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)がベンダーの請求を検証する試みを放棄させている旨。結果として半導体メーカーは、拡販目的でお互いに一歩先んじようとしている旨。

最先端の実戦の最前線ではどうなっているか。TSMCの来るIEDMでの発表予定内容である。

◇TSMC to unveil 16nm FinFET platform at IEDM(10月4日付け ELECTROIQ)
→12月のInternational Electron Devices Meeting(IEDM)にて、TSMCが大方の尺度で世界最先端半導体技術の1つである16-nm FinFETプロセスを披露する旨。

TSMCでは新設台南工場で20-nm以降の最先端の取り組みが以下の通り進められている。最高の売上高を記録して、アップルビジネスの争奪が声高になるなかの16-nmプロセスの開発のようである。

◇TSMC Bets Big on High-Performance Chips-TSMC's Fab 14 is readied for 20nm, 16nm chips (10月7日付け The Wall Street Journal /Digits blog)
→TSMCが、Tainan(台南) Science ParkのFab 14 facilityにて、Appleなどファウンドリー顧客向けに20-nm半導体を作る準備を行っている旨。また、この台湾南部工場で次世代16-nmプロセスの開発も行っている旨。

◇Fab times: Taiwan's TSMC thinks big in micro chip race-TSMC invests $17B in new fab facilities (10月8日付け Reuters)
→TSMCが、台湾南部での新しいウェーハfab拠点の建設および装備に$17B出資しており、20-nm dimensions半導体を作る旨。同社は、AppleのファウンドリービジネスのなにがしかをSamsung Electronicsから得ている旨。
Samsungはじめ競合圧力が高まってくるが、一方、TSMCの9月売上げは$1.89B、前年同月比28%増となっている旨。

TSMCを十分意識しているところと思うが、Globalfoundriesからは、20-nmではそうでないものの10-nmでは従来の外挿コストダウンが得られる、と先行き強気のスタンスである。

◇20nm cost penalty is a one node blip, says Globalfoundries. -Moore's Law cost savings will return at 10nm, GlobalFoundries exec says (10月8日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Globalfoundries EMEA(Europe, the Middle East and Africa) Technical Seminar(London)にて月曜7日、Globalfoundriesの先端技術アーキテクチャーvice president、Subi Kengeri氏。20-nmでは通常のMoore's Law 30%トランジスタコスト削減が得られていないが、続くノード、10-nmでは従来のコスト曲線に戻ると見る旨。Globalfoundriesでは20-nmノードで、28-nmに対して2倍のraw gate改善および16%のロジック密度アップを得て、28-nmより7.5〜8.5%のコスト節減となっている旨。ほかの誰よりも7-8%のdieコスト優位性があると思っている旨。

半導体製造装置業界では、14-nm以下、450-mmウェーハに向けたコラボの動きが相次いでいる。

◇Increase in collaborations for deep node semiconductor manufacturing (10月8日付け EE Herald)
→半導体製造ecosystem、主に半導体装置メーカーが、14-nm以下のノードおよび450-mmウェーハでの半導体製造に向けたソリューション開発でコラボを高めている旨。
・ASMLとimecが連携を拡大、Advanced Patterning Centerを打ち上げ、14-nm以下のノードでのlithography技術に取り組み
・SUSS MicroTecのphotomask装置部門がSEMATECHと連携、extreme ultraviolet(EUV)試作製造のプロセスavailabilityを前倒しするextreme ultraviolet lithography(EUVL)基板およびblank cleaning技術の調査・開発を行う
・最近の大きな動き、Applied MaterialsとTokyo Electronがdeepノード製造の革新を早めるために合併

EUV(extreme ultraviolet)リソを推進するIMECからは、着実な足取りを示すアップデートが以下の通り行われている。

◇EUV Still Promising on IMEC's Road Map-Delayed EUV tech could work at 9nm, Imec exec says (10月9日付け EE Times)
→IMEC research instituteの年次pressイベント(LEUVEN, Belgium)にて。
extreme ultraviolet lithography(EUV)が生まれている土地柄であり、依然有望な基調のロードマップ。EUV用最新MOPA(master oscillator power amplifier)光源の開発が、長く遅れている該lithographyシステムの最も弱いコンポーネントを一層着実な足取りに乗せている旨。年末までに80W光源を動作システムでデモする予定、125W版が来年、そして125 wafers/hourの商用スループットを引っ張れる250W版を2015年末までの旨。


≪市場実態PickUp≫

週末に発表された米SIAからの月次世界半導体販売高、今回の8月分については、前回その内容を示している。週末ということもあって、各紙の反応が週明けにかけて以下の通り見られている。6ヶ月連続の増加となっているが、さらに4ヶ月は増加が続くのではという見方が表わされている。

【8月世界半導体販売高発表への反応】

◇Global semiconductor sales increase for sixth straight month in August (10月4日付け ELECTROIQ)

◇SIA: Global Semiconductor Sales Rise in August (10月4日付け The Wall Street Journal)

◇Chip sales up for 6th month (10月4日付け Investor's Business Daily)

◇News&Data、半導体世界売上高、8月6.4%増 (10月5日付け 日経・夕刊)

◇Where is the semiconductor market going?-Proprietary Leading Indicators (PLIs), suggest at least another four months (10月6日付け CIOL)
→米SIAの8月世界半導体販売高をもとにした増加基調の見方。

◇Global chip sales rise for sixth straight month in August 2013, says SIA-Report: August chip sales rose 6.4% year-over-year (10月7日付け DIGITIMES)

これも週末に発表されたSamsungの四半期業績であるが、2四半期連続で最高益を更新する内容となっている。一方、現下の半導体販売高をSamsungとともに引っ張ると言っても過言ではないと思われるTSMCも、四半期業績を発表、最高売上げを記録している。懸念の見方がある第四四半期そして来年に入っての在庫過剰であるが、上記の世界半導体販売高の先行きの見方に通じるところであり、問題はないと楽観的な見方も出始めている。

【SamsungにつづきTSMCの最高業績】

◇Samsung takes aim at second straight year of record profit as memory chips rebound (10月4日付け Reuters)

◇Samsung Electronics on course for record profit as memory chips rebound (10月4日付け Tech2)

◇Samsung set for another record quarterly profit (10月7日付け DIGITIMES)

◇Samsung's New Bright Spot: Memory Chips (10月7日付け The Wall Street Journal)
→Samsung Electronics Co.のスマートフォン事業の伸びに鈍化懸念がある一方、メモリ半導体事業が明るい材料になる可能性の旨。

◇TSMC 3Q13 sales in line with guidance (10月9日付け DIGITIMES)
→TSMCの9月連結売上げがNT$55.38B($1.88B)と最高を記録、前月比0.5%増、前年同月比27.6%増。第三四半期の連結売上げがNT$162.6B、前四半期比4.3%増、これも最高を記録の旨。TSMCの2013年累計販売高がNT$451.22B、前年同期比20.2%増。

SoC市場攻略について、IntelのQuark、そして車載SoC市場におけるプレーヤー競合のそれぞれ以下現状である。

【SoC攻勢2態】

◇Intel Tackles SoC With Quark (10月7日付け EE Times)
→Intelの新しいPentium-ベース・アーキテクチャー、Quarkは、Atomよりも小さく、消費電力を抑えたプロセッサを実現、さまざまな企業がSoCを開発するベースとなる旨。スマートフォンなどよりも小さなInternet of the Things(IoT)向けの該コアが最初に入ったのがX1000 SoC、そのスペックが先週末にリリースの旨。

◇Mobile IC Vendors to Alter Automotive SoC Market (10月8日付け EE Times)
→新顔となるBroadcom, Qualcomm, およびNvidiaからRenesas, STMicroelectronics, Infineon, およびFreescaleなど従来プレーヤーまで車載用ICメーカーの多くが、急成長するin-vehicle infotainment SoCs分野席巻に凌ぎを削っている旨。

◇Automotive market sees influx of mobile SoC companies (10月10日付け EE Times India)


≪グローバル雑学王−275≫

明治時代に入って、明治政府に対する反乱、摩擦はNHKの「八重の桜」で表わされているところであるが、近代化の過程をいくつかの切り口から、

『学校では教えてくれなかった! 世界のなかのニッポン近現代史』  
  (菅野 祐孝 著:歴史新書 洋泉社) …2013年3月21日 初版発行

  より追って確認していく。明治時代の外交、自由民権運動から議会開設、そ
  して資本主義の確立と、それぞれのいばらの道の進展、波乱を、年毎辿って
  いくと、鎖国から開国へ一気に視野が開けてきた興奮、そして意気込みが強
  く伺えるものが随所にある。


第1章 開国と日本の近代化 −−−幕末から明治後期まで   ≪後≫

4 明治時代の外交 −−他国とのお付き合いはうまくいったのか?

◇東アジア近隣諸国との交渉 −明治政府の外交手腕は?
・1871年、政府は最初の対等条約として日清修好条規を締結
 →日本を清より下位にみていた朝鮮への対応
・1871年、琉球漁民殺害事件…宮古島の漁民が台湾原住民によって殺害
 →1874年、西郷従道の指揮のもと、台湾出兵
  →日本は賠償金などの名目、銀50万両を得る
・琉球は、江戸時代初期以来、日清両属の関係
 →1879年、政府は琉球の廃藩置県を強行、沖縄県を設置
 →沖縄での近代化は、本土に比べてはるかに遅れることに
・1873年、西郷隆盛ら征韓派の参議は一斉に下野
 →内務省の長官(内務卿)、大久保利通が政権を掌握
 →明治6年の政変
・1875年、朝鮮と江華島事件に発展
 →1876年、日朝修好条規を締結、釜山の開港など
 →日本が幕末に諸外国と結んだ不平等条約をそのまま朝鮮に対して押しつけるような格好
・日本には国境の画定も重要な外交課題
 →1875年、樺太・千島交換条約が成立
  …ロシアは樺太、日本は占守島(ロシア名はシュムシュ島)以南の千島全島を領有
・1875年、小笠原諸島の領有を宣言
 →1880年、東京府の管轄下に

◇条約改正の進展 −なぜ短期間に解決したか?
・1871年、政府は岩倉具視を特命全権大使とする欧米使節団を派遣
 →近代的な政治制度を整え、工業国・貿易国として発展している先進国の姿をまざまざと
 →信仰の自由を求める声が各国から噴出
  →1873年、政府はキリスト教禁止の高札を撤廃
 →内治優先を痛感して、1873年に帰国
・1894年、外相、陸奥宗光の時、日清戦争の直前に日英通商航海条約に調印
・1911年、外相、小村寿太郎が改正日米通商航海条約に調印
 →岩倉遣外使節団から40年目にして条約改正を達成、欧米と対等関係を築き得た
 →国力充実、日清・日露戦勝など支えとなった背景

5 自由民権運動と立憲国家の成立 −−議会開設までの経緯は?

◇自由民権運動の盛衰 −運動の進展に、政府はどう対処したか?
・1874年、板垣退助・江藤新平・後藤象二郎ら、国会の開設を要求する民撰議院設立の建白書を政府に提出
 →自由民権運動
 →各地に結成された政社と呼ばれる政治団体を拠点に活発化
 →政府と民権派との熾烈な攻防
・1877年、西郷隆盛らが西南戦争を起こす
 →政府軍に敗れ、西郷は自刃
 →士族による最後の反政府武力反乱
・1880年、民権運動は国会開設請願運動として全国的に広まる
・1881年、すでに下野していた板垣退助が自由党、
 1882年、大隈重信が立憲改進党を組織、
 1882年、政府側が立憲帝政党を結成して対抗
・結局、大隈重信は第一次伊藤博文内閣の外相、後藤象二郎は黒田清隆内閣の逓相に
 →民権運動はしだいに衰退

◇立憲国家はどのようにして確立したか?
・民権運動が最高潮に達した1880年代初頭
 →1885年、伊藤博文は太政官制を廃止、新たに内閣制度を創設、宮内省や内大臣府を新設
・1889年、紀元節にあたる2月11日、大日本帝国憲法(明治憲法)発布
・日本は、議会をもつアジアで最初の立憲国家に
 →教育の面で支えた教育勅語

◇議会政治はどのように展開したか?
・1890年、第1回衆議院議員総選挙が実施
 →圧倒的に民党(対する政府寄りの政党は吏党)が優勢
・政府と政党はしだいに歩み寄り、対立の争点も予算問題から条約改正問題に
・1900年、治安警察法を制定、取り締まりを強化
 →下には厳しい政治
・「情意投合」によって政権がたらい回しされた明治最後の10年間
 →桂園時代
  …山県系の陸軍大将、桂太郎
  …立憲政友会の西園寺公望

6 資本主義国家の成立 −−資本主義はどのようにして確立したか?

◇近代資本主義成立の要因とは?
・1880年代後半、「企業勃興」と呼ばれる会社設立のブームが到来
 →鉄道業、紡績などの軽工業
 →産業革命の時期を迎える
・1881年、最初の私鉄会社、日本鉄道会社が設立
 →東北線や高崎線を建設
・1883年、蒸気動力と電灯を装備した大阪紡績会社が操業を開始
 →日本近代綿糸紡績業が確立
 →1909年、綿織物の輸出額が輸入額を凌駕
 →1909年、世界最大の生糸輸出国に成長
・1901年、官営八幡製鉄所が操業開始
・日本でも産業革命が進展、1900年前後に日本近代資本主義が確立
・政府の「上から」の保護のもとに進められた資本主義の育成
 →政府は「下から」の動きを治安警察法などで取り締まっていった

ご意見・ご感想