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モバイル激動の渦中、6ヶ月連続のグローバル半導体販売高増加

モバイル機器市場の激しい動きを受けて半導体市場の業界模様が大きく影響を受けているなか、米SIAから8月の世界半導体販売高が発表され、6ヶ月連続の増加基調を維持している。米国市場の伸び、メモリ製品需要の力強さが目立つデータ内容であるが、モバイル対応が大きく左右しているものと受け止めている。そのモバイル対応が、ファウンドリーの設備投資投入、そしてプロセッサの置き換え凌ぎ合いと、それぞれ市場シェアアップに向けた動きを日々加速している現状が見られている。

≪8月の世界半導体販売高≫

米SIAからの8月の世界半導体販売高についての発表は以下の通りである。米国政府機関の閉鎖が行われているなかでの発表であり、米国政権および議会に対する切迫した注文のコメントがつけられている。今回の発表自体は、6ヶ月連続の伸び、昨年を上回る販売高のペースと元気づく内容であるが、問題は、モバイル市場の拡大基調、世界経済の安定性について、今後の推移次第でどこまで維持されるかにかかっていくと思われる。

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○8月のグローバル半導体販売高、6ヶ月連続の増加−Americas地域の販売高、前年同月比23.3%増 …10月4日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2013年8月の世界半導体販売高が$25.87 billionに達し、2012年8月に比べて6.4%の増加、これは2011年3月以降業界最大の前年比増加となる。Americas地域の販売高は、2012年8月に比べて23.3%の増加、一方、8月のグローバル販売高は前月、7月の$25.53 billionを1.3%上回った。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「グローバル半導体販売高は今や6ヶ月連続の増加となり、大方はAmericas地域の伸びが続くお蔭をもって、当業界は昨年のペースをかなり上回っている。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、Brian Toohey氏は言う。「ここ数ヶ月メモリ製品の力強い需要が販売高を引っ張ってきているが、8月ではノンメモリ製品においても販売高が増加、半導体市場の力強い息吹きを示している。」

地域別には、8月の販売高はAmericas(+23.3%), Asia Pacific(+7.6%), およびEurope(+5%)と前年8月を上回ったが、大方は日本円安が1つにあってJapan(-16.4%)となった。8月の販売高は、すべての地域にわたって前月を上回った。

   【3ヶ月移動平均ベース】


市場地域
Aug 2012
Jul 2013
Aug 2013
前年同月比
前月比
========
Americas
4.17
5.02
5.15
23.3
2.5
Europe
2.77
2.85
2.91
5.0
2.0
Japan
3.64
2.93
3.04
-16.4
3.7
Asia Pacific
13.74
14.73
14.78
7.6
0.3
$24.32 B
$25.53 B
$25.87 B
6.4 %
1.3 %

--------------------------------------

市場地域
3- 5月平均
6- 8月平均
change
Americas
4.60
5.15
11.8
Europe
2.84
2.91
2.4
Japan
2.74
3.04
10.8
Asia Pacific
14.51
14.78
1.9
$24.69B
$25.87
4.8 %

「半導体販売高は、マクロ経済状況の安定化が1つにあってここ数ヶ月弾みを増しているが、今週の米国政府の閉鎖および国家の負債限界を巡る紛糾の事態は、経済を不安定にし伸びを粉砕する恐れがある。」とToohey氏は言う。「議会と政権は、いっしょになってこれら自ら招いた痛手を避け、Americaをきちんと整理すべきである。」

※8月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/August%202013%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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モバイル市場の激動を受けて、これはその好調な景気による結果であるが、サムスンの第三四半期業績に以下のように表われている。

◇サムスン営業益25%増の9000億円 7〜9月も最高益 (10月4日付け 日経 電子版)
→韓国サムスン電子が4日、今月下旬の正式発表に先立って2013年7〜9月期業績予想値を公表、売上高が前年同期比13%増の59兆ウォン、営業利益が同25%増の10兆1000億ウォン(約9000億円)になった模様の旨。2四半期連続で最高益を更新、スマートフォン用などの半導体が量、単価とも伸びたとみられ、スマホ本体の拡販も利益の押し上げに寄与した旨。

◇サムスン電子、7−9月期の営業利益10兆ウォン超…韓国企業初 (10月4日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子の7−9月期の営業利益が10兆ウォン(約9000億円)に達した旨。韓国企業のうち、四半期基準の営業利益が10兆ウォンを超えたのはサムスン電子が初めての旨。

モバイル市場の注目は早くもアップルの次のA8プロセッサに向けられており、今までのサムスンにTSMCが如何に分け入っていくか、観測が打ち上げられている。

◇TSMC on track to Produce Apple's 2014 20nm A8 Processor (9月26日付け Patently Apple)
→fab-toolサプライヤ筋からとするDIGITIMES発によると、TSMCが20-nmプロセス用製造装置購入を踏み上げており、2014年第一四半期に量産に入る予定の旨。現時点、Appleの新しいA7は28-nmプロセッサである一方、A8は2014年に20-nmプロセッサに移る予定の旨。

◇TSMC to cover 60-70% of Apple A8 chip production, says report-Report: Samsung and TSMC will split production of A8 processor (9月30日付け DIGITIMES)
→韓国・Hankyung(韓国経済新聞)発。TSMCが、アップルの次世代A8プロセッサ製造の大半、60-70%を扱い、その残り、30-40%がSamsung Electronicsに向けられる見込みの旨。SamsungはアップルのiPhoneおよびiPad機器用プロセッサの供給を独占してきており、アップルが最近発表したiPhone 5sの新しい64-ビットA7半導体は引き続きSamsungによる製造となっている旨。

Intelやサムスンの垂直統合とは違って、ファウンドリーの世界ではIP、ソフトウェア、設計サービスなど関連業界との連携が軸になる宿命があるが、そのファウンドリーの設備投資の総売上高に対する比率の高さに以下より改めて注目させられている。

◇Pure-Play Foundries Spending Big on Capital Equipment-Capex as a percent of sales much higher than industry average. Overcapacity on horizon? (10月2日付け IC Insights)
→主要専業ファウンドリーのcapital spendingの対販売高比率推移、下記参照。
http://www.icinsights.com/files/images/bulletin20131002Fig01.png

◇Foundries have 53% capex-to-sales ratio-IC Insights: Biggest foundries pour money into capex (10月3日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IC Insights発。Siファウンドリー最大手4社の今年のcapital expenditures総計が$16.6B、売上げ総計の53%となる見込みの旨。半導体業界全体の平均で見ると、capexは販売高の18%の割りつけの旨。TSMCが、GlobalFoundriesおよびSamsung Electronicsとの競合激化からここ数年capital spendingを踏み上げている旨。

モバイル機器の頭脳となるプロセッサについて、置き換え合戦の様相、そして激しい競合模様を受け止めている。製品サイクルがますます短くなる状況だけに常に安穏とはいかない動きを感じている。

◇Dell launches four new tablets -- all on Intel chips-No plans for future Windows RT tablet running on ARM-Dell's 4 new lower-cost tablets have Intel processors (10月2日付け Computerworld)
→Dellが水曜2日、4つのタブレットcomputersを展開、2つがAndroidおよび2つがWindows 8.1動作、そしてDellが以前low-endタブレットで使っていたARM-ベースプロセッサではなく、すべてがいろいろなIntelプロセッサを採用、新モデルのpricingは$150〜$500の旨。このIntelプロセッサは"Intelにとって大成功"の旨。

◇Lenovo Drops Intel for Qualcomm in Latest K-Series Phone-New Lenovo K-Series phone has a Qualcomm chip, not Intel (10月2日付け All Things D)
→Lenovo Groupからの新しいVibe Zスマートフォン、コード名K910は、Qualcommプロセッサを搭載、K900に搭載していたIntel Atom "Bay Trail"プロセッサではない旨。Intelは、そのsocketは失ったが、Lenovoとの関係は広範囲の機器にわたって長く続いており実りが多いとしている旨。

◇MediaTek to enter Samsung supply chain with quad- and 8-core mobile chips, says report-Report: Samsung will use MediaTek mobile processors (10月3日付け DIGITIMES)
→CLSA Asia-Pacific Marketsから引用、中国語Commercial Times発。
MediaTekのモバイル機器用quad-coreおよびeight-coreプロセッサが、来年後半にSamsung Electronics向けsupply chainに入っていく旨。この報道で、Taiwan Stock ExchangeでのMediaTek株価が上がっている旨。


≪市場実態PickUp≫

上記の通り、モバイル激動の中のA8プロセッサ生産対応が注目されるTSMCであるが、同社の最先端プロセスへの取り組み状況が以下の通りプレゼンされている。FinFETsの難しさ、3D Stacksアプローチなどかなり切り込んだ内容を受け止めている。

【TSMCの最先端現況】

◇TSMC Shows Path to 16nm, Beyond-TSMC execs talk 16nm, 20nm chip challenges (10月2日付け EE Times)
→TSMC 2013 Open Innovation Platform(R)(OIP) Ecosystem Forum(10月1日:San Jose Convention Center)にて、TSMCにおける進展、特に16-nmノードについて率直、詳細な概要プレゼンの旨。TSMCは、半導体分野およびエレクトロニクスの先導役と見られており、世界最大、最先端の半導体メーカーの1つである旨。毎月8インチ換算130万枚ものウェーハを出荷、そのいくらかは今や20-nm寸法になっている旨。本記事の論点項目:
 Making Progress at 20, 16 & 10nm
 CTO Gives Sun-y Picture
 Half-steps Forward
 Double-Patterning Demon
 Foibles of FinFETs
 More Foibles of FinFETs
 Blocks for 20, 16nm Chips
 Three Roads to 3D Stacks
 A Lower-cost 3D Option
 Big Bucks, Big Bets

三次元技術を活かしたNANDフラッシュメモリ、3D NANDが、2015年には全体の約30%を占めるという見方が出ているとともに、Samsungは中国・西安工場で3D NAND生産に向けた装置発注を始めている。

【3D NANDフラッシュメモリ】

◇Samsung Kicks off Commissioning of Equipment Orders for Xi'an Plant (10月1日付け Korea IT Times)
→Samsung Electronicsが、中国・西安(Xi'an)の新設半導体工場に向けた装置発注を開始、該工場は3D NANDフラッシュメモリ半導体生産に集中する旨。

◇3-D is Key to Next-Generation NAND Flash (10月2日付け IHS iSuppli)
→IHS社のFlash Dynamics brief発。三次元技術がフラッシュメモリの次の最先端に向けて道を拓き、3-D NAND生産が当初の予想よりぐんと素早く前倒しされている旨。3-D NANDは2014年は手堅く5.2%増、2015年にはフラッシュメモリ出荷全体の30.2%と生産が飛躍的に伸びると見る旨。

与野党の対立が続いてついに政府機関の閉鎖に立ち至っている米国。半導体業界関係でも、ヘリウムの供給確保関連法案が大統領の署名待ちとなっているし、NIST(National Institute of Standards and Technology:国立標準技術研究所)も閉鎖されているとのこと。大統領と野党の協議も物別れになって、過ぎゆく時間の虚しさを感じるところがある。

【米国政府閉鎖インパクト】

◇Semiconductor Industry Applauds Final Congressional Approval of Helium Legislation -Senate passes H.R. 527, legislation to secure the supply of helium; bill awaits President's signature (9月26日付け SIA Press Release)
→先端半導体製造などに欠かせないガス、ヘリウムの供給確保について、米国上院が本日、Responsible Helium Administration and Stewardship Act、H.R. 527の修正版を満場一致で承認、下院では同法案が昨日通過、今や大統領の署名を待っている旨。

◇米政府、17年ぶり閉鎖、予算不成立、職員数十万人待機 (10月1日付け 朝日新聞DIGITAL)
→政府機関の一部閉鎖が1日、17年ぶりに始まった旨。オバマ政権が進める医療保険制度をめぐる与野党の対立が続き、1日からの新年度の暫定予算案で折り合えなかった旨。観光地の国立公園などが閉鎖されるほか、数十万人の政府職員が自宅待機などに追い込まれる見込みの旨。

◇NIST closed, all measurements invalid (10月2日付け EDN NETWORK)
→連邦予算を巡るWashingtonでの現在の行き詰まりにより、米国政府機関の大半が閉鎖の事態、それには、電圧および電流など多くの物理量の国家標準を収容、calibrationサービスを供するNIST(National Institute of Standards and Technology:国立標準技術研究所)が含まれる旨。

恒例のシーテック(CEATEC)も、こと半導体に関しては国内メーカーは1社の参加になっているとのこと。自動車業界との連携、wearableはじめ新領域、と業界模様の変貌をますます感じている。

【シーテック・ジャパン2013≫(10月1-5日:幕張メッセ)】

◇シーテック、「スマートイノベーション」テーマにきょう開幕−587社が出展 (10月1日付け 日刊工業)
→IT・エレクトロニクス産業の総合展示会「シーテック・ジャパン2013」が1日、幕張メッセで開幕、「スマートイノベーション」をテーマに家電や電子部品メーカーなど587社が出展する旨。デジタル機器分野で韓国メーカーや米IT企業の攻勢が続く中、日本勢は新しい価値を提案する動きが加速している旨。

◇自動車メーカー、相次ぐ参戦、電機と連携、広げる商機、シーテック (10月3日付け 朝日新聞DIGITAL)
→自動車メーカーが、「シーテックジャパン」に相次いで参入している旨。
カーナビをはじめとする機器にとどまらず、自動運転車や電気自動車(EV)などの開発にITは欠かせず、電機メーカーとの連携を深め、消費者もつかもうとしている旨。

ベトナムで初めての半導体業界イベントが開かれるとともに、生産工場および市場の今後の展開が有望視されている。上記の米SIAによる8月世界半導体販売高でもAsia Pacific地域が57%を占める現状である。香港、シンガポール、マレーシア、フィリピンなどに加わっていく可能性である。

【ベトナム半導体業界】

◇Vietnam sees great opportunity from semiconductor industry (9月29日付け VietNamNet Bridge)
→Global Equipment Services GES(San Jose, CA)のManaging Director、Don Tran氏。ベトナムにおけるエレクトロニクス製品需要が、インターネットを用いる人々の比率の増大および彼らの収入改善から高まってきている一方、企業は、自分たちの生産および事業において情報技術(IT)およびハイテクをさらに駆使しようとしている旨。これらすべて、ベトナムには 長らく努力してきている半導体IC工場を展開するのに有利な条件となる可能性の旨。

◇Vietnam Semiconductor Strategy Summit Brings Together Key Decision Makers (10月1日付け SEMI)
→ベトナムでの史上初、半導体業界イベント、SEMI Vietnam Semiconductor Strategy Summit(2013年9月9-10日:Ho Chi Minh City)について。米国、欧州、韓国、日本およびシンガポールから120人以上の出席。


≪グローバル雑学王−274≫

我が国の近現代史、すなわちペリー来航・開国、明治維新から日清・日露、そして2度の世界大戦を経て今日に至るまで、

『学校では教えてくれなかった! 世界のなかのニッポン近現代史』  
  (菅野 祐孝 著:歴史新書 洋泉社) …2013年3月21日 初版発行

より推移を追って一層の頭の中の整理を図っていく。タイトルにあるように、"学校では教えてくれなかった"我が国の近現代史という側面が多々という感じ方もある。著者は、1980〜1990年代の大学受験界に多大な影響を及ぼしたカリスマ教師として知られる方。やるなら『今でしょっ!』で読み始めているが、時あたかもNHKの「八重の桜」と重なる部分が見られるところである。
早速ながら、以下の早々に出てくる生麦事件については、最近のこと、次のアップデートが見られている。
⇒生麦事件で犠牲のリチャードソン、生前の写真初発見 (2013年9月11日付け 朝日新聞DIGITAL)
 …幕末の1862年の「生麦事件」で殺害された英国人商人チャールズ・リチャードソンの生前の写真が初めて見つかった。これまで事件直後の遺体の写真1枚しか確認されていなかった。151年になる14日から、横浜市の横浜開港資料館で公開される。見つかったのは、立ち姿のリチャードソンが片手を柱に寄せてポーズをとっている写真。幕末に日本に滞在した英国人ジェームズ・キャンベル・フレイザーの写真帳にあった。


≪はじめに≫

・日本の近代は、欧米と東アジアの動きのなかで迎えた夜明け
 →欧米や東アジアの歴史を把握することなく近現代史を理解することは極めて難しい
・今の日本経済は秒読みで世界の影響のもとに存立
 →本書の視点は、諸外国との関係のなかで、日本の近現代史を極力わかりやすい言葉でもう一度振り返ってみること
 
第1章 開国と日本の近代化 −−−幕末から明治後期まで   ≪前≫

1 開国と貿易の開始 −−開国後、日本はどのような道を歩んだか?

◇アメリカが日本に開国を迫ったのはなぜ?
・捕鯨業や対中貿易のためにはどうしても船舶の寄港地が必要に
 →日本の開国を促すことに

◇ついに鎖国の壁が崩壊 −幕府はどう対処したか?
・1853年、アメリカ東インド艦隊司令長官、ペリーが、浦賀に来航
・1854年、ペリーは再び浦賀に来航、幕府はその軍事的圧力に屈する形でついに日米和親条約に調印
 →200年以上に及ぶ長い鎖国政策に幕
 →その後、日米和親条約と同様の条約をイギリス・ロシア・オランダとも締結
・幕府は朝廷にペリー来航を報告、幕臣や諸大名に意見を述べさせるなど挙国一致策
 →幕政に介入するきっかけを与える結果に

◇いよいよ外国との貿易がはじまった −日本社会はどうなったか?
・1856年、ハリスがアメリカ総領事として下田に着任
・1858年、大老井伊直弼が天皇の勅許を得ずに、日米修好通商条約に調印
・1859年から、居留地貿易が横浜・箱館・長崎で始まった
・日本と外国で金銀の比価が大きく異なっていた当時
 →幕府は1860年以降、金の含有率が低い万延小判を鋳造して対応
・開国によって庶民生活が圧迫
 →幕府に対する批判
 →外国人に対する反感から攘夷の気運がさらに
  (例)1862年、イギリス人殺傷(生麦事件)

2 幕末の政局と幕府の落日 −−薩摩・長州の策略とは?

◇公武合体と尊皇攘夷、そして武力討幕へ −幕府倒壊の経緯はいかに?
・井伊直弼ら南紀派が推す徳川慶福
 →家茂と改名して14代将軍に
・1860年、水戸浪士が登城中の井伊を桜田門外で暗殺(桜田門外の変)
 →幕府の独裁体制の崩壊と幕府権威の失墜を意味
・桜田門外の変で安藤・久世政権が崩壊
 →長州藩は藩論を尊皇(…天皇[朝廷]を尊ぶ)攘夷(…外国人を排斥)に転換
・1863年は尊攘運動の全盛期
 →いずれも鎮圧、瞬く間に崩壊
・1864年、幕府は勅許のもとに長州征討を開始
・米英仏蘭の4か国は兵庫沖まで軍艦を進め、修好通商条約の勅許を求めた
 →日本にとっては極めて不利な形勢
・1866年、薩長同盟が秘密裏に結ばれ、武力倒幕の路線が形成
・徳川15代将軍となった慶喜
 →軍制の強化、人材登用・職制改革などを実施…慶応の改革
・1867年10月14日、政権を朝廷に返還した…大政奉還
・1867年12月9日、討幕派は王政復古の大号令
 →明治天皇を中心とする新政府樹立
  →徳川家抜きの政権が誕生、260年以上にわたる江戸幕府が終焉
・1868年1月、旧幕府軍は、鳥羽・伏見で薩摩・長州・土佐藩主体の新政府軍と交戦
 →江戸城を無血で明け渡し
 →彰義隊も新政府軍に敗退
 →飯盛山で白虎隊が自刃
 →幕臣、榎本武揚軍、戊辰戦争終息

3 近代化政策の展開 −−日本が見よう見まねでやったものとは?

◇近代化の第一歩 −政府が掲げた基本方針とは?
・1868年1月、新政権発足を諸外国に告知、3月、明治天皇が五箇条の誓文を発布
・1868年7月、江戸が東京と改称
・1868年(慶応4年)9月、元号が明治に
 →天皇一代に一つの年号(一世一元の制)がここから慣例に
・1869年2月、東京が日本の首都に

◇中央集権体制はどのようにして確立したか?
・1871年、政府は廃藩置県を断行
 →薩長土肥出身の藩閥官僚を中心とする中央集権国家の基礎が確立
・幕藩体制が解体、明治近代国民国家が形成されていくまでの一連の変革の過程
 →明治維新

◇富国強兵策の展開 −近代化の基礎となった三大改革とは?
(一)近代教育の確立−教育政策はなぜ失敗したか?
・1871年、文部省が設置、フランスの制度にならって学制が頒布
 →就学率は5割にも満たなかった
(二)近代軍制の確立−モデルはどこの国?
・1872年、陸軍省と海軍省を設置、国民皆兵の理念のもとに1873年、徴兵令を公布
 →実際に徴兵の対象となったのは貧農の次男・三男という農家にとっては重要な若い働き手たち
・近代の陸軍は、フランス式兵制(のちドイツ式兵制)を採用
・海軍は一貫してイギリス式の兵制
・1874年、東京に警視庁を設置
(三)財政基盤の安定化−財源を何に求めたか?
・1873年、政府は地租改正条例を公布
 →前代、江戸時代の人びとは、自分がどの藩に生まれるかによって一生の負担が決まる
・定率課税となったため、政府は安定した税収を確保へ

◇殖産興業政策 −欧米は日本経済の近代化にどう貢献したか?
・「上から」の近代産業育成政策 …殖産興業
 →工部省と内務省の主導
・1871年、政府は新貨条例を公布 …金本位制を建前
 →円・銭・厘を単位とする十進法を採用した新硬貨鋳造
・金本位制…自国で流通している紙幣や硬貨をいつでも金と交換可
 →金と交換できる紙幣…兌換(交換の意)紙幣
・1872年、政府は国立銀行条例を制定
・1882年、大蔵卿、松方正義は「銀行の銀行」、日本銀行を設立、日本銀行券を発行
 →通貨量が激減、インフレからデフレに転じる
・1872年、新橋〜横浜間、1874年、大阪〜神戸間に鉄道が開通
・1871年、前島密の建議、郵便制度が発足
・1869年、北の大地、蝦夷地は、北海道と命名

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