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世界のメガトレンドを受けて、変わらざるを得ない動き

世界的な変化のうねりを随所に感じたばかりのタイミングに、半導体製造装置業界最大手そしてスマートフォンの老舗にそれぞれ合併、売却の動きが出てきている。半導体デバイス業界の最先端を引っ張るメーカーが数社に絞られていき、スマートフォン業界もアップルはじめ先行メーカーの突出そして新興経済圏での乱立模様と、まさに世界のメガトレンドを受けて抗しきれない状況のもと変わり身に向けてタイミングを図るのみという切迫した動きを受け止めている。いまだ当分、うねり、余波に目が離せない現時点である。

≪変化のうねりに抗する動き≫   

半導体業界は最先端プロセスの技術的、経済的ハードルが急激に高くなって、特に膨大な投資から取り組むメーカーが時とともにだんだんと限られてきているこのところである。半導体製造装置業界もその煽りを受けて、そのうち壁にぶつかるという問題意識が昂じる展開が読めるなか、最大手2社、Applied MaterialsとTokyo Electron Ltd.(TEL)の合併合意が発表され、各紙が一斉に反応、それぞれの表わし方に注目している。

◇Applied, Tokyo Electron Agree to $29 Billion Merger (9月24日付け EE Times)

◇Applied To Buy TEL (9月24日付け SemiMD)
→fabツール業界景観大刷新の取引、Applied Materialsが、ライバル、Tokyo Electron Ltd.(TEL)を約$9.3B相当の株式取引で買収する最終合意を発表、該blockbuster取引のもとApplied Materialsが該新会社経営権の68%、TELが32%を所有する旨。新しい社名となり、本社は東京とSanta Clara, Calif.の2ヶ所の旨。

◇Applied Materials, Tokyo Electron deal would create titan-Applied Materials, Tokyo Electron to form IC gear powerhouse (9月24日付け Reuters)
→半導体製造装置の世界最大手サプライヤ2社、Applied MaterialsとTokyo Electronが、stock-for-stock transactionでの合併に合意、市場時価総額$29Bの会社が作り出される旨。

買収ではなく、合併や経営統合により国境を越えた再編を目指すという今回のスタンスであるが、タイトル表現に違ったニュアンスを感じるところがある。

◇Applied Materials to merge with Tokyo Electron (9月24日付け ELECTROIQ)

◇U.S. Manufacturer of Chip-Making Equipment Buys Japanese Rival (9月24日付け The New York Times)

◇Applied economics (9月24日付け The Economist)

独占禁止、公正取引の審査に向けても分かれる見方がある。

◇Why the merger of two major chip equipment giants may not spur antitrust concerns (9月24日付け VentureBeat)

◇Chip Equipment Merger May Raise Antitrust Issues (9月24日付け The Wall Street Journal)

いずれにせよ変わらざるを得ない動きを受け止めている。

◇Applied Materials: Acquiring to Stay Ahead (9月24日付け The Wall Street Journal)

◇Applied Materials CEO Moving Family to Tokyo in Big Deal (9月25日付け Bloomberg Businessweek)
→事情通発。Applied Materials社のChief Executive Officer、Gary Dickerson氏が、今回の件で家族をCaliforniaから東京に移そうともしている旨。

◇Applied Materials to merge with Tokyo Electron (9月25日付け DIGITIMES)

◇国境越えた再編、新段階に、東京エレクと世界首位統合 (9月25日付け 日経 電子版)
→東京エレクトロンと米アプライドマテリアルズが24日、2014年後半に経営統合すると発表、両社の株式時価総額の合計は約3兆円、「三角合併」と呼ぶ手法を使い、日米の主力上場企業が経営統合するのは初めてとみられる旨。日本企業の国境を越えた再編が新たな段階に入った旨。

スマートフォンの老舗、ブラックベリー(旧リサーチ・イン・モーション[RIM])については、さらに予想されたことではあるが、カナダ金融会社への売却および大幅な人員削減が発表されている。

◇BlackBerry to cut 4,500 jobs (9月24日付け EE Times India)
→BlackBerry Ltdが、グローバルに4,500 jobs、同社グローバル人員の約40%を削減する計画、利益性を高めて非常に競争の激しい市場で生き残りを図る旨。2015年度第一四半期末までにoperating expendituresを約50%減らす目標の旨。

◇ブラックベリー、身売りで基本合意、カナダ金融会社に−47億ドル (9月24日付け 日経 電子版)
→カナダの通信機器大手、ブラックベリー(旧リサーチ・イン・モーション)が23日、カナダの金融サービス会社、フェアファクス・ファイナンシャル・ホールディングスを中心とした企業連合に身売りすることで基本合意書を交わしたと発表、実現した場合の買収総額は約$4.7B(約4650億円)。スマートフォンの老舗であるブラックベリーは米アップルなどとの競争激化で経営が悪化、8月中旬から身売りや他社との提携などを具体的に検討していた旨。

インド誌では、このカナダ金融会社はインド系の方が主導と以下の記述である。

◇BlackBerry to be acquired by Indian-origin billionaire (9月25日付け EE Times India)
→BlackBerry Limitedが、Fairfax Financial Holdings Limitedが率いるコンソーシアムが同社を買収する申し出についてletter of intent(LOI)合意調印の旨。市場シェア低迷を受けて、BlackBerryは、同社最大株主でもあるインド系billionaire、Prem Watsa氏のFairfax Financialが主導するRs.29,559.75 crore($4.7B)取引で株式非公開化を決定の旨。

引き続く世界のメガトレンドとして、いろいろな切り口があって整理が必要とは思うが、今後を引っ張る経済規模そして先端技術として現下目についた以下の内容である。

◇China's smartphone shipments to exceed 450 million in 2014: IDC (9月24日付け Reuters)
→IDC発。世界最大のスマートフォン市場、中国について、2014年の出荷が450M台以上と、今年より少なくとも25%増になりそうな旨。この増大は、政府の4Gライセンス発行および世界最大のワイヤレスoperator、China Mobile LtdがそれまでにiPhonesを扱うという予想が引っ張っている旨。

◇Mega ASIC Drives Cisco Router-Cisco crafts ASIC with 4B transistors for its routers (9月24日付け EE Times)
→1.Cisco Systemsが、新しいhigh-end coreルータを展開、それを動かす大規模カスタム半導体のスペック概略を説明の旨。このCisco nPower X1は、ASICs設計の同社10余年の歴史の中で最大、最も集積度の高い半導体である旨。
 2.Cisco Systemsが、最新のcoreルータに向けて、40億個のトランジスタを含むASIC、nPower X1を設計、該ASICは、336 dual-threaded Tensilicaコアを有し、最高400 gigaビット/secのデータ伝送速度をサポートする旨。


≪市場実態PickUp≫

SK Hynixの中国・無錫工場火災の波紋がいまだ収まりを見せていない一方、モバイルDRAMの売上げ、ビット需要が大きな伸びを示す、このところのDRAM需給関係の動きとなっている。

【DRAM需給関係】

◇DRAM shortages to widen in October (9月25日付け DIGITIMES)
→SK Hynixの無錫(Wuxi)工場での火災に端を発するDRAM半導体供給不足が、10月に拡大する見込み、該工場がフル生産に戻れるのは2014年第一四半期以降になる旨。SK Hynixは10月あたりには該メモリfab生産が復旧する見込みとしているが、そのステートメントにも拘らず、すでに締まっているDRAM供給が一層絞られるとの観測が浮上している旨。

◇China white-box makers likely to face rising DRAM costs (9月26日付け DIGITIMES)
→業界筋発。SK Hynixの火災被害を受けたWuxi工場が短期間でフル生産に戻れなければ、中国のwhite-boxスマートフォン&タブレットメーカーのDRAM半導体購入コストが上昇せざるを得ない旨。  

◇Mobile DRAM revenues rise 26% in 2Q13, says IHS-IHS: Mobile DRAM sales accelerated in Q2 (9月25日付け DIGITIMES)
→IHS発。2013年第二四半期のモバイルDRAM売上げが$2.8Bに達し、前四半期の$2.2Bから26%増、ビット出荷の24.1%増並びにASPsの1.5%増が引っ張っている旨。モバイルDRAMの全体DRAM市場シェアは、第二四半期33%と一定している旨。

◇Digitimes Research: Mobile DRAM bit demand to rise 35.5% in 4Q13 (9月26日付け DIGITIMES)
→Digitimes Research発。2013年第四四半期のモバイルDRAMビット需要が、400M gigaビットを超える見込み、前四半期比35.5%増、前年同期比70%以上増。内訳、次の通り(上記と同順):
 スマートフォン 334M gigaビット  39.1%増 92.1%増
 タブレット    65.8M gigaビット 41.9%増 40.5%増

マイクロンとサムスンが引っ張って仕様を詰めてきた三次元メモリIC、Hybrid Memory Cube(HMC)について、マイクロンが初めてのサンプル出荷を以下の通り発表している。

【MicronのHMCサンプル】

◇Micron Technology Ships First HMC Samples; Plans Volume Production for 2014 (9月25日付け 3D InCites)
→Micron Technology社が、2GB Hybrid Memory Cube(HMC) engineeringサンプルの出荷を発表、HMCはメモリ技術の劇的な一歩、これらengineeringサンプルは世界初のHMCデバイスとして大手顧客と広く共有されている旨。 

◇Micron ships first samples of Hybrid Memory Cube (9月25日付け ELECTROIQ)

◇Micron ships Hybrid Memory Cube that boosts DRAM 15X-System makers get their first look at the high-speed memory boards-Micron: Hybrid Memory Cube engineering samples ship (9月25日付け Computerworld)
→Micron Technology発。メモリ半導体stackingの先端パッケージ、Hybrid Memory Cube(HMC)のサンプル配布を現在行っており、高性能computing応用を目指すこの3DIC cubeのメモリ半導体は、現状のDRAMsより必要パワーが70%少なくなる旨。

◇Micron Technology Ships First Samples of Hybrid Memory Cube-Volume Production Planned for 2014 (9月25日付け Yahoo! Finance)

現在は28-nmが主流となっているファウンドリー対応プロセスであるが、次の20-nm製造に向けてサムスンとTSMCの鬩ぎ合いが早くも始まっている。

【20-nm製造対応】

◇Samsung to build 20nm foundry capacity, sources say (9月23日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Samsung Electronicsが、20-nmウェーハの30K枚ファウンドリーcapacityを構築する計画、プロセス競争でライバル、TSMCと並んでいくことを示している旨。

◇TSMC stepping up purchases of 20nm manufacturing equipment-Sources: TSMC orders more semiconductor equipment for 20nm chips (9月26日付け DIGITIMES)
→fab-toolサプライヤ筋発。TSMCが、2014年第一四半期に量産に入る予定の20-nmプロセス用製造装置の購入を踏み上げている旨。

アップルiPhone 5SのA7プロセッサは、TSMCではなくサムスンによる製造と改めて示されている。上記の20-nm対応に向けても然り、当面いろいろ憶測、論議を呼ぶ両社である。

【A7はSamsung製】

◇Apple's A7 processor is reportedly made by Samsung, at least for now-A7 processor reportedly carries label: "Made in Korea" (9月20日付け The Verge)
→Chipworksが行ったteardown解析。iPhone 5SのA7プロセッサは、複数のAppleプロセッサモデルについてファウンドリーサービスを行っている
Samsung Electronicsによる製造の旨。該新スマートフォンのM7 co-processorはNXP Semiconductors製LPC18A1 microcontroller(MCU)である旨。

◇Apple A7 uses Samsung's 28nm process (9月21日付け ELECTROIQ)
→先週、Apple iPhone 5Sの分解解析をスタート、Appleがプロセッサ半導体製造をTSMCに移していると多くの憶測があったが、これはそうでないと今や決定的に言える旨。28-nmに移って、依然Samsung製造である旨。


≪グローバル雑学王−273≫

「北」に翻弄される「南」のアフリカという基調がいまだ尾を引く感じ方のまま、今回で

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

の読み納めとなる。自主性を高めつつあるいまだ端緒という全体の受け取りであるが、教育の基盤、貧困問題など根底からの問題を抱えるアフリカに、本書に接する機会を得て、今後とも動きに注目したく思う。


終章 人々が変えるアフリカ   ≪後≫

3 アフリカ知識人論

□家族の言葉で考えよう
・アフリカ人口の4割しか各国の定める公用語の実用識字力を得ていない
・農村人口の7割がアフリカ地域の言語しか話さない
・主要言語集団 
 →西部のフルベ語、ハウサ語、ヨルバ語、バンバラ語
 →東部のスワヒリ語
 →南部のソト語、ツアナ語
・近年、再び自分たちの日常話す言語で基礎教育を試みる動き

□初等教育から民族語表記で
・マリでは、初等教育でンコ語による表記を教える試み
 →自分たちが普段話す言語に基づく思考やコミュニケーションが出来るようにする
・続く自分たちの言語を通じた文化運動の戦い

□知識人の役割
・あるべき社会を展望し、実現のための様々な段取りを示唆する知的作業
 →すぐれて知識人、政治リーダーの役割
  …アルジェリア革命のフランツ・ファノン
  …ケニア独立のジョモ・ケニヤッタ
  …ガーナ独立のクワメ・エンクルマ
  …南アフリカのアパルトヘイト体制のスチーブ・ビコ
  …ギニア・ビサウ革命のアミルカル・カブラル
  …セネガル独立のレオポール・サンゴール
・新興アフリカ国家の知の生産の中心地は、大学

□リサーチなき大学−−「北」からの委託研究の時代
・1980年代に入ると、世界銀行や欧米の援助機関が依頼するテーマを研究し報告書を出す、いわば委託研究
・大学研究環境の劣化に対応
 →大学を去り、欧米の大学や研究所で自らのキャリアを活かす知識人もこの時代に増大
・アフリカを動かすアフリカ人による知の再構築

4 二つのアフリカ、二つの道

□消費者主権か、人民主権か
・21世紀に入り、世界もアフリカも大きな地殻変動
・アフリカ大陸「9億人(ここ数年「10億人」とも)の市場」
 →「BOP(Bottom[後にBase] of Pyramid)ビジネス」マーケティング
  →「南」の低所得者層向け消費財市場で単価を下げて、きめ細かく開拓しようとする試み
・自国の富の持ち出し対価として受け取った収入
 →「北」や新興国の製造する消費財の売り込み攻勢によって回収

□植民地期商法の復活
・生産者と消費者が同じアフリカ地域内に育つという内発的内需拡大案が、今日探られるべき
 →「北」と新興国にもっぱら資源と消費市場を提供するアフリカを拒否するシナリオ

□買えない人々はどうするのか
・「安く」なった商品にせよ、それさえ買えない人々の生活はどうなるのかという問題
・「資源のアフリカ」や「消費財市場のアフリカ」に求められるもの
 →ビジネスチャンスを優先するのではなく、何よりも自国の発展のために利用する、政治の復権

□南米の経験、アフリカの経験
・南米大陸
 →当初は潰され続けた反貧困の社会運動は、多様な社会的政治的文化的実験を通して、1990年代末から政権交代を実現
 →南アメリカはもはや、北アメリカの裏庭ではなくなった

□「独立」前夜に消されていったナショナリストたち
・3つの事例:
 *マダガスカル →300万人の島人口で、10万人とも推定される犠牲者
            …「マダガスカルを新しくする民主化運動(MDRM)」
 *カメルーン  →「カメルーン人民同盟(UPC)」
 *ケニア    →1963年の独立時、マウマウ戦争の参加者が完膚なきまでに排除

□未完のアフリカ統一プロジェクト
・1963年5月、エチオピアの首都、アジスアベバでアフリカ統一機構が発足
 →立派な名称とは裏腹、植民地期の領土の保全や内政不干渉が強調
・この半世紀のアフリカ地域の生成
 →いまだ書ききれていない、伝えきれていない出来事が多く残る
・より人間的なアフリカ社会の実現を目指すことへの人々の戦いは、一向に衰えていない
・加速化するグローバル化
 →商品と資本を通じて否応なしにアフリカ域内のみならず残りの世界の人々を結びつけ、その関係を変化させてきた
・グローバル化した課題を積極的にそれぞれの地域で担おうとする地球的市民感覚は確実に
 →人々の主権の回復

≪あとがき≫

・(著者が)最初の『現代アフリカ入門』を出して、20年
・南の人々と北の人々を結ぶ共通の絆は何か
 →目先の国益を相対化できる地球市民となること
・アフリカないし「南」に対して有する「北」の義務ないし責任

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