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アップルとインテルの新製品&技術発表、グローバル市場の期待と失望

予定通り、同じタイミング、同じ米国西海岸で、アップルとインテルから新製品および新技術が発表されている。アップルからは最新版「iPhone 5S」および低価格版「iPhone 5C」、インテルからはwearable機器用SoC、Quarkはじめすべてのcomputing分野でリードしていくスタンスが新体制から打ち上げられている。スマホ中毒の社会問題化も表われてきているグローバル市場からは、今後への期待はさながら、特に新興市場のドライな期待からくる失望とが交錯する反応が両社の発表と同時に飛び交っている。

≪グローバル市場、瞬時の反応≫   

アップルの発表を前に見られた国内市場の動き、Samsungとの今後の見方である。

◇ドコモ、iPhone販売へ、スマホ、サービス競争に、3社、価格戦略に腐心 (9月7日付け 日経)
→NTTドコモが米アップルのスマートフォン「iPhone」を発売する見通しとなり、国内携帯電話会社の顧客争奪戦は一変する旨。大手3社が今秋冬商戦でiPhone新モデルを揃って扱えば、消費者は端末で通信会社を選ばなくなる旨。各社の競争はサービスや通信品質の充実を争うステージに移行する旨。

◇Lack of memory capabilities threaten Apple's future-IHS: Apple's rift with Samsung could affect its memory capabilities (9月9日付け EE Times Asia)
→IHS発。Appleが同社機器に入る半導体についてSamsung Electronicsへの依存を減らすことは、同社が必要とする先端メモリ技術に逆らう効果になる可能性の旨。

そして、中国市場に続いてインドでも、スマートフォンについて地場メーカーの進出ぶりが次の通りである。

◇サムスン・アップルを追撃、インド地場スマホ躍進、低価格機が人気 (9月10日付け 日経)
→インドのスマートフォン市場で現地企業が躍進している旨。中国製の部品を活用した低価格機種を投入、既存大手の製品に手が届かなかった層を中心に新たな需要を開拓している旨。インドは約9億人の携帯電話加入者を抱える「携帯大国」、スマホへの関心は高い旨。経済が減速する中でも競争が活発になりそうな旨。「マイクロマックス」「カルボン」「ラヴァ」――。インドの携帯電話販売店では、サムスン電子、アップル、ソニーなどグローバル企業と並び、聞き慣れないインドのブランドが人気を集めている旨。地場ブランドの量販機種の価格は7000ルピー(約1万円)〜8000ルピー程度の旨。

そうして迎えたアップルの発表であるが、まずは以下の反応である。

◇Apple iPhone 5S and 5C - Hits and misses (9月10日付け EDN NETWORK)
→事前予想の当たり外れについて。

◇China Is the Only Reason the iPhone 5c Matters (9月10日付け EE Times)
→Apple社が火曜10日、AppleのA6-プロセッサベース、5色、$99からの"iPhone 5c"など2つの新しいiPhonesを投入、もう1つ披露された高価な"iPhone 5s"は3色、A7プロセッサの大きな速度改善、iOS7ソフトウェアは手で触って電話のロックを解除できるfingerprint-scannerが呼び物の旨。2つのうちより重要なのは安い方のiPhone 5c、Appleの中国戦略がかかってくる旨。

よーく見るとということで、瞬時に揃って出てきた「iPhone 5C」は高過ぎるという以下の反応である。株価も大きく下げてしまっているが、上記のインド市場そしてよく言われる中国市場の実態から見ても、失望を誘ったものと思われる。

◇High iPhone price spooks investors, Apple shares drop (9月11日付け Reuters)
→Apple社の新しいiPhonesが、中国など新興市場では高過ぎるとして投資家が1つのモデルを酷評、Wall Streetが水曜11日こっぴどいスタンスの旨。
他のモデルについてはgame-changing featuresが十分でないとして却下の旨。

◇In world's biggest market, "cheap" iPhone looks too pricey (9月11日付け Reuters)

◇米アップル株急落、「5C高すぎる」厳しい反応 (9月12日付け YOMIURI ONLINE)
→11日の米ナスダック店頭市場で、アップルの株価が5%以上も急落、終値は前日比26.93ドル安の467.71ドルと、1か月ぶりの安値となった旨。アップルは10日にスマートフォン「iPhone」の最新版を発表したが、市場関係者の間では、低価格機の「5C」が「中国など新興国市場では高すぎる」などといった厳しい反応が相次いでいる旨。

「iPhone 5S」については、A7プロセッサで64-bit computingを取り入れたのは今後に先取りする曰く因縁があるという見方が出ている。

◇The real reasons Apple's 64-bit A7 chip makes sense (9月11日付け CNET)
→Appleが、新iPhone 5Sの心臓部、A7プロセッサを披露、64-bit computingの驚異についてたくさんのマーケティングの誇張を注入、しかし、Appleがsmartにモバイルcomputingで32-bit時代の先に移行する実際の長期的理由がある旨。

アップルとSamsungのメモリの関係について上で触れたが、プロセッサ製造ファウンドリー受託については以下の見方が出てきている。

◇Digitimes Research: Samsung eager to snatch 14nm A9 chip orders from Apple (9月13日付け DIGITIMES)
→Digitimes Research発。Samsung Electronicsが、AppleからのA9半導体受注をものにしようと14-nm FinFETプロセス開発にR&Dの重点を置いている旨。Appleは、20-nm A8の発注は出さないとSamsungに知らせていると思われ、SamsungはAppleに向けて新A7半導体など他のプロセッサを依然作っている旨。AppleはSamsungの最大ファウンドリー顧客のままであり、Apple向けA8半導体供給の機会を失うと、Samsungが2014年半ばから埋めなければならないcapacityに空きが出てくる可能性の旨。

もう一方のインテルについては、新体制で迎える初めてのIntel Developer Forum(IDF)となるが、Moore's Lawの堅持のもと次世代プロセスを活かしてデータセンターから超モバイル機器まで、すべてのcomputing分野で主導していくスタンスを以下の通り打ち出している。早速に今回の目玉、wearable機器用SoC、Quarkについて、中身、実像がつかめないとの見方が示されている。

◇Intel Quark Runs on Roof, Raises Questions (9月10日付け EE Times)
→Intelが今回の場で、新興途上のInternet of Things(IoT)で飛躍すべく、Intel最新&最小のSoC、Quarkを発表、しかしながら、その技術スペック詳細あるいはリリース時期が出されておらず、明確にした製品および戦略よりは急いでした観測気球の趣きがある旨。Intelの新しいchief executive, Brian Krzanich氏が初めてのIDF基調講演の後で、Quarkはx86コンパチ、32-nmプロセス製造である、と説明の旨。

◇Intel reveals 14nm PC, declares Moore's Law 'alive and well'-But is Chipzilla whistling in the dark? (9月10日付け The Register)
→IntelはMoore's Lawが絶えてはいないことを知らしめたいとして、証明するために今回の場でCEO、Brian Krzanich氏が、同社次世代のプロセスshrinkageを展開の旨。

◇米インテル、身につける機器向けの新半導体 (9月11日付け 日経 電子版)
→10日に米サンフランシスコで開幕した開発者会議(IDF)にて、ブライアン・クルザニッチ最高経営責任者(CEO)が初めての対外向け経営戦略プレゼン。身に着けて利用する「ウエアラブル機器」などに対応する新たな半導体を発売する方針を明らかにし、同社従来品に比べて消費電力を約10分の1に減らすなど機能を向上、ウエアラブル機器をスマートフォンなどモバイル機器に続く成長市場として位置付け、取り組みを強化する旨。開発者に向けて「コンピューターに関連するあらゆる領域で業界を牽引する」と述べた旨。

◇New Intel CEO, president talk product plans and future of computing (9月11日付け ELECTROIQ)
→開幕セッションにて、Intelの新CEO、Brian Krzanich氏。データセンターからタブレット、電話およびwearablesのような超モバイル機器まで、computing分野は刺激的でゲームのようにも変わる移行を経ている旨。
Intelは、新製品を擁して超モバイル機器でのIntelの進展を前倒しするなど、ダイナミックな市場分野の各々に対応していく旨。

◇Slideshow: Intel's CEO Fires Up IDF (9月13日付け EE Times)
→今回の場で一般初お披露目のIntelの新しいchief executive、Brian Krzanich氏は、弾丸を込めたstraight shooterのイメージをつくりあげている旨。基調講演にて、"我々の計画は、すべてのcomputing分野で主導すること"の旨。

インテルの今後に注目であるが、長きMPUのライバル、AMDもまた、今後に向けた方向性を次の通り発表している。

◇AMD announces new embedded chips as PC business shrinks (9月9日付け Reuters)
→パソコン販売低下から新市場を目指すAdvanced Micro Devices(AMD)社が、スロットマシン、工場ロボット、空港表示、医療機器など動かすよう設計された半導体を披露の旨。月曜9日に発表された半導体はすべて、Bald Eagle(ハクトウワシ)など捕食性の鳥に因んだコード名で、グラフィックス、低電力機器および高性能computing向け、来年出てくる旨。

◇AMD Plans 64-bit ARM for Communications in 2014 (9月10日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、embeddedプロセッサ用同社2014年ロードマップの概略を説明、初めてARM-ベースSoCが入っている旨。AMDのHierofalconは、64-ビットARM Cortex A57 CPUコアを4-8個、10GBase-KR EthernetおよびPCI Express Gen 3 linksとともに収容、通信およびストレージシステム向けの旨。該28-nmデバイスは、すでに出荷されていてAMD品が出るまでにはアップグレードされそうなIntelのAtom-ベースSoC、22-nm Rangeleyに対抗する旨。


≪市場実態PickUp≫

上記の通り、スマートフォンの新技術、新製品の話題に事欠かず、しかも非常にインパクトが強い状況が続いているが、それを反映してパソコン、タブレットおよびスマートフォンをまとめて総称するsmart connected機器市場について、その現時点の内訳予測がIDCより次のように発表されている。

【スマホが圧倒する予測】

◇Tablet Shipments Forecast to Top Total PC Shipments in the Fourth Quarter of 2013 and Annually by 2015, According to IDC (9月11日付け IDC)
→PCs、タブレットおよびスマートフォンから成る世界smart connected機器市場が、2013年は27.8%増の予測、2012年の30.3%増を若干下回る旨。タブレットおよびスマートフォンの出荷が伸びを引っ張る一方、PCは2013年10%減の様相の旨。International Data Corporation (IDC) Worldwide Quarterly Smart Connected Device Trackerでは、2013年第四四半期にタブレット出荷がPC出荷(desktopプラスportable PCs)全体を上回ると見ている旨。2013年年間ではPCs出荷がタブレット出荷より大きいが、2015年末までには年間ベースでタブレットがPCsを上回ると見る旨。スマートフォンは2015年に14億台を上回り、世界のsmart connected機器出荷全体の69%を占める旨。

スマートフォンはじめモバイル機器用プロセッサの受託製造が依然大きく引っ張って、TSMCの8月販売高は力強い業況を示している。一方、ハイエンドスマートフォン需要が軟化して12-インチfabsのcapacity稼働率が落ちてきている状況がここにきて見られており、どの程度の市場の変わり目か、要注意である。

【TSMCに見る市場の変わり目】

◇TSMC's Sales Stay Strong in August (9月10日付け EE Times)
→TSMC(Hsinchu, Taiwan)の8月半導体販売高は、以前の同社第三四半期の冷めた予測の兆候がなく、依然力強い旨。8月連結販売高は約NT$55.09B(約$1.86B)、前月比5.7%増、前年同月比11.2%増。2013年1-8月累計はNT$395.84B($13.37B)、前年同期比19.3%増。
UMCの8月連結売上げ約NT$11.00B($372M)、前月比4.8%減、前年同月比6.2%増。2013年1-8月累計がNT$82.24B($2.78B)、前年同期比6.3%増。

◇TSMC 12-inch fabs running at 75-80% of capacity, say sources (9月12日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCでの12-インチfabsのcapacity稼働率が、グローバル市場のハイエンドスマートフォン需要軟化から半導体発注が減少、最近75-80%に低下している旨。28-nmプロセスのcapacity立ち上げの現段階は終わりにきており、稼働率を落としている旨。

SK Hynixの中国・無錫工場の9月4日火災の影響が懸念されているが、部分的再開はじめ以下の見方、動きとなっている。

【SK Hynix中国工場火災の影響】

◇Chip Supply Concerns Linger After Hynix Factory Fire (The Wall Street Journal)

◇SK Hynix China plant to resume full operations in 3-6 months, sources say (9月9日付け DIGITIMES)
→装置メーカー筋発。SK Hynix中国工場が、3-6ヶ月以内にフル操業再開見込み、火災の被害から現在30,000-40,000枚止まりのウェーハ生産再開となっている旨。60,000-90,000枚のウェーハ生産がWuxi[無錫]工場火災で依然影響を受けており、生産装置100-200 setsに被害が及んでいると見られる旨。

◇SK Hynix partially resumes operation at fire-hit China plant (9月9日付け DIGITIMES)
→SK Hynixが土曜7日、9月4日に火災に見舞われたWuxi[無錫], China工場での操業を部分的に再開の旨。

◇SKハイニックス、DRAM工場、一部生産再開 (9月10日付け 日経産業)

◇Samsung likely to increase PC DRAM output following SK Hynix fire (9月13日付け DIGITIMES)
→業界筋発。SK Hynixの中国での最近の工場火災からPC用DRAMのグローバル供給が減少、Samsung ElectronicsがPC用DRAMのoutputを高めていく様相の旨。

半導体業界の地域別capital spending比率というと、1990年前後は我が国が世界全体の半分以上を占めていたが、その後の経緯はあるもののこのほど発表された本年上半期データでは日本は7%となっている。またまた改めてこれでいいのか、今後もつのか、我が国のプレゼンスのあるべき姿が問われてくる。

【半導体業界capital spendingの推移】

◇Asia-Pac Soars, Japan Drops in Regional Semiconductor Capex Spending (9月10日付け IC Insights)
→IC InsightsのFall Forecast Seminar(9月12日:Sunnyvale, California)での主要テーマとなる半導体業界capital spendingの推移、1990年から現在まで次のグラフで表される旨。
http://www.icinsights.com/files/images/bulletin20130910Fig01.png
2013年上半期での地域別capital spending比率:
 Asia Pacific/Others 53%
 North America 37%
 Japan 7%
 Europe 3%

◇Semiconductor capex spending falls in Japan, says IC Insights (9月12日付け DIGITIMES)


≪グローバル雑学王−271≫

「ワシントン・コンセンサス」の20年間に続いて、2000年代に入ると、中国を筆頭とするインド、ブラジルなどの新興国がアフリカに進出して、こんどは内政干渉は一切行わず、お互い欲する物とをひたすら取引するというスタイルの「北京コンセンサス」に代わっていく流れを、

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

より、読み解いていく。世界の隅々まで入り込んでうまく浸透していく中国の"ビジネス・プラクティス"を世界の方々で目の当たりにする感じ方があるが、アフリカにおいてもなおさらにの受け止めがある。


第7章 ワシントン・コンセンサスから「北京コンセンサス」へ  ≪後≫

3 「北京コンセンサス」の登場−−−アフリカと中国

□政治の季節からビジネスの季節へ
・2000年台に入ってからのアフリカ大陸への中国の登場
 →欧米日の国際企業からは脅威の眼差し
・中国の開放政策と冷戦の終焉
 →中国−アフリカ関係は新たにビジネス中心へ大きく舵を切る
・中国側の、内政干渉は一切行わず、お互い欲する物とをひたすら取引する単純明快な"ビジネス・プラクティス"(商売の仕方)
 →「ワシントン・コンセンサス」に代わる「北京コンセンサス」
・2000年以降、中国−アフリカは蜜月時代
 →2013年現在、アフリカ内の台湾承認国はわずか4か国に減

□蚊取り線香から戦車まで
・インド洋を横切って中国とアフリカ東部−南部を結ぶ航空便
 →中国人のビジネスパーソンで満席が多々
・セネガルの首都、ダカールにある広々としたドゴール通り
 →土地の人から「中国人通り」と呼ばれるように
・今日、9、10月の新学期、中国製の安い文房具
 →子どもの学費が低く抑えられ、感謝するアフリカの親
・中国のアフリカ大陸進出
 →中国政府の極めて明確な国策の結果
 →貿易と投資の自由化のもとで結果として伸びた民間投資
・2001年に晴れて中国がWTOに加盟
 →経済のグローバル化を推進するルールを存分利用できるように
・2012年には世界の武器輸出五大国に仲間入り
 →戦争などの武器輸出攻勢もこの大陸に

□中国式資源外交
・2000年以降の最大の動き、中国の資源外交、欧米日と異なる点:
 第1:資源引き渡しを唯一の交換条件、資源国政府に多額の援助を供与、内政干渉をしないことを前面に出して交渉
 第2:多額な貸し付けとセットになった道路や鉄道建設などのインフラストラクチャーの整備
・中国式資源外交の結果、原油の純輸入国となった中国の輸入原油の30%近くは、アンゴラ、スーダン、ナイジェリアなどのアフリカ諸国から
・注目された大型の中国案件
 →コンゴ民主共和国政府と中国政府の間で2007年に調印された資源融資開発額90億ドルのパッケージ契約
 →コンゴ国民に対し、新たな希望を与える国家プロジェクトの象徴

□中国の工業化とアフリカの脱工業化
・当面考えられる3つの問題点
 →第1:アフリカ政府との密室交渉に終始、どこまで人々の生活−−雇用や所得分配−−に結びつくか明確でない
 →第2:より根の深いアフリカの工業化という中長期的課題
  →ますます遠のいてしまう懸念のアフリカ工業化の展望

□国づくり代行の限界
 →第3:中国企業にすべて丸投げ、アフリカ側の国民の国づくりのシナリオが遠ざかってしまうという懸念
・原油取引で、内戦で破壊された国内インフラを早期に修復してくれる中国の存在はきわめて貴重
・中長期的には、アフリカの地場産業や技術者が大量に育つわけでもなく、国づくりの課題を先延ばしにしている観
・経済を動かすのも、富を生むのも国民・市民の選択が決定的

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