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本年最高の月次世界半導体販売高の一方、新製品、大型買収の打ち上げ

米SIAから7月の世界半導体販売高が発表され、本年では月次最高となる$25.53 billionで、前月比2.6%増、前年同月比5.1%増、特にAmericas地域の伸びが目立つ内容となっている。9月前半は注目の新製品発表がアップル、インテルなど控えており、モバイル機器が主に引っ張る活況が本年後半にどう引き続くか、に注目である。早速にサムスンの腕時計型端末はじめ新製品の打ち上げが始まる一方、携帯事業関係での大型買収の動きが業界を驚かせて、半導体販売高への今後のインパクトに目が離せないところである。

≪7月の世界半導体販売高≫   

恒例の米SIAからの発表内容、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○7月のグローバル半導体業界、2013年で最高の全体販売高−Americas地域の販売高、前年比21.5%増;グローバル販売高、5ヶ月連続増加 …9月3日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2013年7月の世界半導体販売高が$25.53 billionに達し、2013年での最高を記録、前年同月、2012年7月に比べて5.1%増加したと発表した。この7月のグローバル販売高は、前月の$24.88 billionを2.6%上回っている。Americas地域の販売高が、前年同月、2012年7月に比べて21.5%増加、同地域のここ2年以上で最大の前年比増加となっている。月次販売高の数値はすべてWorld Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationのまとめであり、3ヶ月移動平均で表わされている。

「グローバル半導体販売高の一貫して上向きの軌道は、7月も続き、Americas地域が特に力強く、昨年のペースに先行して急増している。」とSemiconductor Industry Association(SIA)のpresident & CEO、Brian Toohey氏は言う。「すべての地域、そしてすべての製品カテゴリーにわたって販売高が増えており、マクロ経済指標が残る2013年の間、引き続き伸びるという前兆となっている。」

地域別には、7月の販売高は前月、6月との比較で、Japan(+7.9%)、Americas(+5.4%)、Asia Pacific(+1.2%)およびEurope(+0.3%)と増加している。前年同月、2012年7月との比較では、7月販売高は、Americas(+21.5%)では急激な増加、Asia Pacific(+7.2%)は堅調、Europe(+1.1%)は控え目に増加したが、Japan(-18.6%)は日本円安が大方で急激な減少となっている。

                        【3ヶ月移動平均ベース】


市場地域
Jul 2012
Jun 2013
Jul 2013
前年同月比
前月比
========
Americas
4.13
4.76
5.02
21.5
5.4
Europe
2.82
2.84
2.85
1.1
0.3
Japan
3.60
2.72
2.93
-18.6
7.9
Asia Pacific
13.74
14.56
14.73
7.2
1.2
$24.29 B
$24.88 B
$25.53 B
5.1 %
2.6 %

--------------------------------------

市場地域
2- 4月平均
5- 7月平均
change
Americas
4.36
5.02
15.2
Europe
2.83
2.85
0.7
Japan
2.72
2.93
7.8
Asia Pacific
13.71
14.73
7.4
$23.62B
$25.53
8.1 %

「半導体業界は秋が近づくにつれ、素早く推進するエネルギーを構築しており、議会および政権においては伸びを焚きつけ米国の競争力を高めるinitiativesを履行、その推進力を保っていくよう支援を望む。」とToohey氏は続ける。「世界のトップ人材へのアクセスのニーズが日ごとに高まっており、今こそpolicymakersは意義深いimmigration改革法制化への行動をとるべきときである。議会はまた、半導体製造などの応用に必要となるガス、ヘリウムの供給を確保する法制化を速やかに承認しなければならない。来る10月7日の期限があり、ヘリウムの重要な供給元、Federal Helium Reserveが産業用および科学用ヘリウム・ユーザに供給を止めることになる。」

※7月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/July%202013%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

米国半導体業界の秋の陣に備える意欲が最後に示されているが、これを受けた各紙(誌)の反応が以下の通りである。

◇SIA: Global Semiconductor Sales Up in July (9月3日付け The Wall Street Journal)

◇Chip Market Growth Strengthens in July-Chip sales rose 5.1% in July, WSTS says (9月4日付け EE Times)

この時期恒例の新製品発表の先陣を切って、スマートフォンと連携して用いる腕時計型端末が、Qualcommとサムスンから以下の通り打ち上げられている。半導体販売高でも新たな押し上げ材料となる起爆剤であり、市場の反応に注目である。

◇Qualcomm to Sell 'Toq' Smart Watch to Show Off Display-Tick "Toq": Qualcomm enters smartwatch arena (9月4日付け Bloomberg)
→Qualcommが、スマートフォンのcompanionデバイスとして動作する腕につける(時計型)コンピュータ、Toqを投入、同社のBluetooth ICおよびMirasolディスプレイ技術を特徴としている旨。

◇サムスン:腕時計型端末発表 日本でも発売 (9月5日付け 毎日jp)
→サムスン製のスマートフォンと無線通信機能で連携、スマホをポケットやバッグから取り出さなくても、電話を受けたり、届いたメールを約1.6インチの平らな画面で読んだりできる旨。価格は299ドル(約2万9800円)の見通し、通話などに使うマイクとスピーカーを内蔵、カメラで写真撮影が可能、あくまでスマホを補完する役割で、電話の発信やメールの送信はできない旨。ベルリン(「IFA2013」)で発表された腕時計型端末「ギャラクシーギア」の外観、下記参照。
http://mainichi.jp/graph/2013/09/05/20130905k0000e020212000c/001.html

間近に開発者会議(IDF)を控えるインテルであるが、先行して低電力Atom C2000 "Avoton"プロセッサが発表され、Hewlett-Packard(HP)からはこれを採用したサーバが披露されている。

◇Slideshow: Intel Beats ARM Servers (9月4日付け EE Times)
→Intelが、第2世代Atom-ベースサーバSoCおよびそれがApplied Micro, CalxedaおよびMarvell製ARM-ベース半導体を上回る結果のbenchmarksと印象的な発表、該64-ビットC2000, 別名Avotonは、50以上のシステムで設計されており、2014年の十数のcompetitorsから予想される溢れる64-ビットARM-ベース品より数ヶ月先行している旨。

◇HP's Moonshot cadence: Intel's C2000 on deck, ARM 'fairly quickly'-HP announces Moonshot servers with Intel, AMD, Calxeda processors (9月5日付け ZDNet)
→Hewlett-Packard(HP)からの次のMoonshotサーバ構成は、4日水曜に披露されたIntelの低電力Atom C2000 "Avoton"プロセッサ・ベースであり、Big DataおよびWeb-hostingに用いられる旨。HPは11月に、Advanced Micro Devices(AMD)およびCalxeda製プロセッサが入るMoonshotサーバカートリッジを出す計画の旨。


≪市場実態PickUp≫

モバイル業界に驚き、大きなインパクトを与える買収劇が2件。まずは、業界No.1の巨人同士、マイクロソフトがノキアのhandset事業を買収するというニュース発表が、次の通り世界を駆け巡り、それぞれに受け止め模様が滲み出るタイトルとなっている。トップ同士が通じる間柄という経緯があり、マイクロソフトのトップが退任の意向を表明していることから、今後の展開に否応なく注目である。

【マイクロソフトのノキアhandset事業買収】

◇Microsoft in $7 Billion Deal for Nokia Cellphone Business (9月2日付け The Wall Street Journal)

◇Microsoft to Buy Nokia Handset Business (9月3日付け EE Times)
→ソフトウェア大手、マイクロソフトが、ノキアのhandset事業を5.44Bユーロ($7.2B)で買収する旨。ノキアの該機器およびサービスのほとんどすべてを3.79Bユーロ($5.0B)で買収、加えて、ノキアの特許の多くについて4年から10年にわたる期間でライセンス供与を1.65Bユーロ($2.2B)を支払って受ける旨。また、ノキアに対し最大1.5Bユーロ($2B)の出資optionsを出す運びの旨。該取引は、ノキアの株主承認、法制当局の承認など条件を満たしていって、2014年第一四半期に完了予定の旨。

◇ソフトの巨人、脱パソコンへ路線転換 ノキア買収のマイクロソフト (9月4日付け 朝日新聞DIGITAL)
→米マイクロソフトが、市場が広がるスマートフォン端末に本格参入、ソフトウエアの巨人が、米アップルや韓国サムスン電子を追う側に回る旨。マイクロソフトにとって、ゲーム機「Xbox」、タブレット端末「Surface」に続くハード(モノ)への参入、パソコン用の基本ソフト(OS)で世界を席巻した巨人の路線転換となる旨。ノキアの特許を使い、技術者ら3万2千人を受け入れてライバルを追う旨。

◇マイクロソフト反転攻勢、スマホ挽回へ背水の陣−ノキア携帯端末事業を買収 (9月4日付け 日経 電子版)
→米マイクロソフトがノキア(フィンランドの携帯電話端末事業を総額54億4000万ユーロ(約7140億円)で買収、米グーグルやアップルに差をつけられたスマートフォン分野で巻き返す狙いの旨。パソコン用基本ソフト(OS)の会社から、端末とサービスの会社へと反転攻勢に出るが、競争を勝ち抜けるかは不透明の旨。

市場の方も早速に反応、一時代の区切りと表わすタイトルも見られている。

◇Makers in Microsoft, Nokia supply chains to compete fiercely for orders-How the Microsoft-Nokia handset deal will affect supply chains (9月4日付け DIGITIMES)
→業界筋発。MicrosoftおよびNokiaのsupply chainsにある台湾のメーカーが、MicrosoftがNokiaのDevices and Services部門との統合を完了後、スマートフォン、ゲーム機、タブレットおよびその他周辺の受注獲得に向けて準備を整えていく見込みの旨。

◇End of an era: Nokia sells handset biz to Microsoft (9月4日付け EE Times India)
→Nokia社が、苦境にあるhandset事業を、ソフトウェア大手、Microsoft社にRs.42,574.85 crore(5.44Bユーロ)相当の取引で売却合意の旨。

もう一つ、ルネサスエレクトロニクスが、2010年にノキアから買収した携帯用LSI事業を米ブロードコム社に売却するという以下のこれも驚きの動きで伝わっている。先の6月27日には、富士通などへの売却交渉が頓挫、事業撤退で構造改革を急ぐという発表を行った後の今回となっている。

【ルネサスの携帯用LSI事業、Broadcomへの売却】

◇Broadcom Buys Renesas' LTE Assets - IP, SoC & Engineers (9月4日付け EE Times)
→Broadcom社が4日水曜、Renesas MobileからLTE-関連assetsを買収する最終合意を発表、モバイル業界の大方を驚かせた旨。

◇Broadcom Pays $164 Million for Renesas 4G Wireless Chip Unit-Broadcom purchases Renesas' LTE chip line for $164M (9月4日付け All Things D)

◇ルネサス、海外2社売却、携帯用LSI事業、米半導体大手に (9月5日付け 日経)
→ルネサスエレクトロニクスが4日、携帯電話用システムLSIを手掛ける海外のグループ企業2社、子会社のルネサスモバイル傘下のフィンランドとインドのグループ会社などを、米半導体大手、ブロードコム(カリフォルニア州)に10月1日付で売却すると発表、売却額は$164M(約162億円)の見通しの旨。ルネサスは6月下旬、携帯電話用システムLSI事業からの撤退を発表、2社も清算する方針だったが、売却で赤字幅の縮小につながる可能性がある旨。2社には7月末時点で約1270人の従業員がおり、大半はブロードコムに移籍する模様の旨。

台湾関係の業界交流のご縁でご紹介を得て、都内で開催された「台湾自由経済モデル区セミナー −自由経済モデル区を利用した日本企業のアジア事業展開の可能性」(主催:中華民国行政院経済建設委員会)を聴講した。主旨概要は、業界記事より次の通り。

【台湾の「自由経済モデル区」】

◇台湾の経済閣僚、日本企業に「自由経済モデル区」の優位性強調 (9月4日付け フォーカス台湾)
→台湾が経済自由化の実験区として推進をめざす「自由経済モデル区」への投資誘致を行おうと、行政院経済建設委員会の管中閔主任委員(閣僚級)が3日、東京で説明会を開き、80社を超える日本企業が参加して活発な意見交換が行われた旨。管氏は「日本は経済的にも産業的にもアジアで最も成熟した国で、同エリアへの企業誘致開始にあたり、日本を最優先対象にした」と述べるとともに、モデル区の優位性として税関などでの規制緩和により日本の物流産業が台湾に拠点を獲得したり台湾を関連事業の基地にできることなど、アジア地域の物流センターとしての台湾のポテンシャルを強調した旨。

セミナーでの手元メモより、台湾野村総研より現在の台湾の経済状況はじめ今回の「モデル区」に至る説明である。
・台湾経済は4-6%程度の安定的な成長を続けてきたものの、近年は伸び悩み
・2012年のGDP成長率は1.26%、2013年も2.40%まで引き下げられている現時点
・70%を超える輸出
・単に作って出すだけでは。投資を呼び込む必要。
・外の力を借りながら、拡大成長へ
・中国とのECFA(Economic Cooperation Framework Agreement)、サービス貿易、投資、産業協力、税関協力は合意。物品貿易、紛争解決を残すのみ。
・法人税率、もともと台湾は17%とアジアで最も低い部類。さらに10%というのが今回のモデル区。
・中国大陸からの台湾旅行者、2007年までゼロ、2012年は259万人
・特許法、日本並みに改正中
・台湾が提供する中華変換機能(Chinalization)[カスタム化]
台湾政府からのプレゼン概要項目、次の通り。
・重点産業の推進 → スマート物流 国際医療 付加価値農業 産業協力
・第1期モデル区  この8月16日スタート
・自由貿易港区 7ヶ所…台北港 台中港 安平港 高雄港 基隆港 桃園空港 蘇澳港
・農業バイオ園区 1ヶ所…屏東

その台湾では、恒例のイベント、SEMICON Taiwan 2013(9月4-6日: Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall[TWTC Nangang], Taipei, Taiwan)が開催され、注目した内容、以下の通りである。台湾政府からは、本年の半導体生産高が過去最高の$58.81Bと、$60Bに迫る予想が改めて示されている。

【SEMICON Taiwan 2013】

◇Fabless-foundry model remains major trend, says Qualcomm executive -Qualcomm exec: The fabless-foundry model still works (9月5日付け DIGITIMES)
→Qualcommのグローバルoperations、senior VP、Roawen Chen氏。ファブレス-ファウンドリー・ビジネスモデルが依然半導体業界の大きな流れであるのに対して、垂直統合により効率を達成するIDMモデルはうまくいくよりも失敗しやすくなってきている旨。IDMモデルでうまくやっているのはIntelだけ、Samsung ElectronicsはメモリIC分野でだけ垂直統合に成功しているものの、IDMモデルは事業全体には大して価値を付加していない旨。

◇Government is predicting record IC output this year-Taiwan will produce $58.81B in chips this year, government forecasts (9月5日付け The Taipei Times (Taiwan))
→台湾Minister of Economic Affairs、Chang Chia-juch(張家祝)氏、開会の挨拶。本年の台湾半導体分野の生産valueが約NT$1.75 trillion($58.81B)、昨年のNT$1.6 trillionから9.3%増の見込み、台湾のグローバル市場における力強い競争力から最高記録になる可能性の旨。


≪グローバル雑学王−270≫

2000年代に入る前と後のアフリカであるが、1980年代、1990年代と市場原理至上主義を、ワシントンに本店のあるIMFと世界銀行が「南」の債務国にほぼ一律に採用させようとした「ワシントン・コンセンサス」の20年間を主点に、

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

より見ていくことにする。21世紀に入るあたりが先進経済圏から新興経済圏に世界経済の軸ブレが起きて、それとタイミングを一にするところであるが、前半として先進経済圏が支配した「ワシントン・コンセンサス」下のアフリカの実態が前半として表わされている。


第7章 ワシントン・コンセンサスから「北京コンセンサス」へ  ≪前≫

1 世界史の中のアフリカ経済

□独立の象徴だった工業化
・2000年代初頭、中国を筆頭とするインド、ブラジルなどの新興国がアフリカに進出
・構造調整期、1970年までは続けられてきた国家の投資計画による製造業の育成が多くの国々で停止
・独立前のアフリカの植民地
 →原料供給者という従属的地位
・アフリカでいち早く独立したガーナの首都、アグラ、今でもアトミック・ジャンクションという名の巨大な交差点
 →1950年代末、原子力の平和利用の研究所をこの地区に創設したことに由来
・1980年代からの構造調整計画
 →「貿易自由化」の推進
 →多くの国営製造業が、廃業に

□産業構造の中抜き現象
・この20年、凋落するもののいまだ重要な役割を果たす農業部門と増大するサービス部門への「製造業なき経済構造」という中抜き現象
・自国内でほとんど加工することのない農業や鉱業とサービス業だけで、一つの国が経済として成り立っていくのか?
・ポスト構造調整期の21世紀、アフリカ諸国で、なぜ、工業化とりわけ製造業の創出が必要なのか
 →第1:より多くの付加価値と雇用を生むためには、近代技術を利用した製造業が不可欠
 →第2:製造業は、技術革新の知的インフラを学ぶ最良の学校
 →第3:国内市場を通じてモノ、サービス、ヒト、お金がグルグル回り出すエンジンに
・欧米日、NIEs、BRICSなどほぼすべての今日の「北」は、国家の計画と介入によって、意図的ないし政策的に製造業を育ててきた

□工業化なき都市化
・1960年代の独立期、多くの新興アフリカ諸国が採用した5年から7年の投資計画に裏打ちされた輸入代替工業化戦略
 →1980年代の構造調整期にほぼ否定された
・今改めて問われる、グローバル化という新たな世界史の文脈のなか、国民のために経済を作り上げるという独立以来の悲願の行方

2 すべては対外債務危機から始まった

□世界銀行の診断と処方箋
・1980年代初頭から1990年代末までの20年間
 →アフリカの諸社会にとっても「構造調整の時代」
 →市場原理至上主義を、ワシントンに本店のあるIMFと世界銀行が「南」の債務国にほぼ一律に採用させようとした
  …「ワシントン・コンセンサス」
・構造調整融資によって再稼働するはずであった「開発」ないし「経済成長」という目標がいつの間にか後退
 →1990年代末には、「貧困削減」という目標ないし建て前にすり替わってしまった

□押しつけられた「定食ダイエットメニュー」
・「構造調整」の極めて重要な側面
 →アフリカ諸国政府にとってはほとんど選択の余地なし
 →「定食ダイエットメニュー」として押しつけられた
・「北」の債権国の力を背景とした金融機関と生き残りを図る「南」の政権との間の攻防の20年

□民営化の光と影
・構造調整政策の柱の一つである公営企業の民営化
 →国家の持つ公的資産の所有ないし運営権を、公的部門から民間部門に移すこと
・世界銀行の統計:サハラ以南のアフリカの公営企業数は、1990年の6069社から、1995年には4058社、3割減少
・情報通信部門の公営企業、旧宗主国の民間企業がアフリカ市場をほぼ自然独占
 →民営化を通じた「再植民地化」現象との指摘
・「北」の富裕国が牛耳る国際金融機関の外圧で強行された民営化
 →自国民の富を外国に売り渡しているのではないかという怒りや不信感

□「成長論」の限界
・"定食メニュー"を軒並み半ば強制的に食べさせられたアフリカ諸国の社会への障害
 →1つは、南アフリカを除いて、アフリカ諸国では、経済・社会に関する統計は極めて未発達
 →もう1つ、一国の経済成長が高ければ、社会全体で貧困は減っていき、その社会は安定繁栄するという楽観的な予定調和的発想が根強くあった
  …「均霑(きんてん)理論」

□セネガルはこうなった
・ケニアと並んで1980年代初頭、構造調整融資を先駆けて受け入れたセネガル
 →1979年11月、「中期経済財政再建計画」という名の構造調整計画実施を発表
  →当初のシナリオが何年経っても実現しなかった
  →格差社会が残存し続けた

□経済のインフォーマル化
・都市における無届け零細ビジネスの増大
 →「インフォーマル部門」あるいは「インフォーマル経済」
 →都市雑業層とも
・世界銀行などでの推計:サハラ以南、インフォーマル部門での雇用の割合
 →1980年において66%、1990年には74%に増加
 →基本的には国内で雇用を生む経済活動が充分に稼働していない
・「経済の犯罪化」という現象ともつながっている
・貧困化するセネガル社会、若者が政府批判を強め、以降「都市の暴力」という表現が選挙のたびに

□改革の息切れと社会
・1980年代以降、多くのアフリカの大都市の治安は悪化
 →貧困層から生活圏を隔離する居住区全体を塀で囲むゲーテッド・シティないしコミュニティ(要塞都市)がアフリカ各地に
・シナリオが遠のく構造調整政策(SAP)
 →世界銀行では2004年8月、SAPという用語が廃止、開発政策支援融資(development policy lending)という用語に
 →「ワシントン・コンセンサス」に代わって登場、「北京コンセンサス」
  …巨人・中国の一党支配といういずれは民主化の嵐にさらされる

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