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新製品および今後の方向を巡る憶測、見方…一刻を争う今;10年先

物思う秋に向かって、これから新製品発表、展示会、業界・学会など一連の恒例イベントが続いていく。早速のところでは、アップルのiPhone 5Sがやはり最大の注目であり、インテル、マイクロソフトはじめ一刻を争う情報戦の様相が年々熱を帯びてきている感じ方である。一方、MPUトップ設計者の年次会合、Hot Chips conferenceが開催され、こちらでは今後の方向、10年先を見据えた議論が早々に展開されている。Moore則そしてSSDsに今回注目しているが、半導体業界秋の演目の本格幕開けを迎える現時点である。

≪iPhone 5S、Moore則そしてSSDs≫   

9月10日、サンフランシスコでの開催が予定されている米アップルの新型iPhone発表会であるが、そのiPhone 5Sに入るカスタムプロセッサ、A7半導体について早くも中身、性能の噂情報が表われてきている。

◇Chatter surfaces about 'fast' Apple A7 chip for iPhone 5S-Speculation is mounting about the rumored A7 processor in the widely expected iPhone 5S. Upshot: it's faster, of course.-Rumors agree -- Apple's chip for new iPhone will be a faster processor (8月25日付け CNET)
→Appleの新しいiPhoneモデルの中のカスタムプロセッサは前のものより高速というコンセンサスに、onlineレポートが達している旨。該半導体は64-ビットプロセッサと噂される一方、これまでのA-シリーズ・プロセッサは32-ビットモデルできている旨。

Apple IPhone 5S Rumors: A 31% Faster A7 Chip With Motion-Tracking Capability (8月26日付け International Business Times)

アップルだけでなく、インテルの次世代Atomプロセッサ、マイクロソフトの次期Xbox One consoleについても、事前情報が以下の通りである。発表された後はまた後で、直ちにteardown解析が登場するなど、まさに現代の一刻を争う度合いがますます高まる実態がある。

◇Intel's Bay Trail Is a Game Changer (8月23日付け EE Times)
→Intelの次世代Atomプロセッサ(コード名、Bay Trail)タブレットプロセッサのいくつかの様相を事前NDA閲覧、Intelは、今までにおける単に低電力(および高性能)x86 Atomではなく、真にworld class SoCを作り出している旨。これは、最新22-nm tri-gateプロセスで作られた、新microarchitecture(Silvermont)ベースの新CPUである旨。来るIntel Developer Forum(IDF)でたくさんのdesign wins発表が予想される旨。

◇Xbox One Will have a High-performance Custom Chip-The chip was designed by Microsoft and AMD-Xbox One's custom processor has 5 billion transistors (8月26日付け CIO.com/IDG News Service)
→次期Xbox One consoleは、Advanced Micro Devices(AMD)とMicrosoftが設計したカスタムプロセッサを軸に構築、このプロセッサは50億個のトランジスタ、AMDの"Jaguar" multicoreアーキテクチャーを用いている旨。またカスタムのAMD Radeon graphics processing unit(GPU)も駆使している旨。

こんどは業界イベントに目を向けて、恒例のMPUトップ設計者の年次会合、Hot Chips conference(8月25-27日:PALO ALTO, Calif. [Stanford Memorial Auditorium])である。古くて新しいテーマ、Moore's Lawの終焉で
あるが、今回は10年先という見方が以下のように表わされ、議論を呼んでいる。

◇Moore's Law Dead by 2022, Expert Says (8月27日付け EE Times)
→Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)のmicrosystemsグループ、directorで、かつてIntelでPentium-classプロセッサ設計を担当したRobert Colwell氏の基調講演。2年ごとにシリコン上に入るトランジスタ数が倍になるというMoore's Lawが、2020年にも7-nmノードで終焉に至ると見る旨。リソの進展が行き詰まり、プロセス技術が原子の限界に近づいていることで、このような予測が増えてきている旨。

◇Lapsing of Moore's Law opens up opportunity in chip design-DARPA microsystems chief asks engineers to look forward, redesign conventional chips-Hot Chips: Why breaking Moore's Law could be a good thing (8月27日付け Computerworld/IDG News Service)
→Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)のRobert Colwell氏。Moore's Lawの進展の来るbreakdownが7年でやってくる可能性、しかしそのsignalイベントはMPUアーキテクチャーの新しい時代の到来を告げる旨。物理学よりも経済的要因が、Intelのco-founder、Gordon Moore氏が1965年に最初に表したこの考え方を止めると予測する旨。

◇End of Moore's Law: It's not just about physics-A DARPA director argues that the end of the Moore's Law -- which is essentially why you now have a tablet in your hand -- could come about because of insurmountable economic challenges. (8月28日付け CNET)

インテル出身の方であり、物理というより経済的要因が終焉に至らせるという見方である。早速に3D半導体を推進する向きからは、次のタイトルでコメントが出されている。

◇Moore's Law Dead by 2022: Crying Wolf? (8月30日付け ELECTROIQ)

Hot Chipsではもう1つ、solid-state drives(SSDs)についてまだ10年は最先端メモリでの置き換えが進みながら伸びていくという次の見方である。

◇SSDs still maturing, new memory tech still 10 years away-SSDs may be more expensive than hard drives, but are more flexible, attendees and speakers at Hot Chips said-SSDs will enjoy decade of growth, experts say (8月26日付け Techworld (U.K.)/IDG News Service)
→solid-state drives(SSDs)が、最先端メモリ技術で置き換わるまで、10年以上の伸長および成熟がある旨。

足元ではSamsungが、積極的な最先端メモリによるSSDs展開を行っている。

◇Samsung uses 3D NAND chips in 960Gbyte drive-Samsung SSD features 3D V-NAND flash memories (8月27日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Samsung Electronicsが、同社3D V-NANDフラッシュメモリデバイスを用いたsolid-state drive(SSD)を投入、該SSDは480-gigabyte(GB)および960-GB構成で出す旨。


≪市場実態PickUp≫

上記にもある通り、最先端の新製品を絶えず引っ張っているインテルであるが、その最先端プロセスを活かしたカスタムプロセッサ対応をここ数年打ち出してきている。具体的な対応の現状が以下の通り説明されている。

【インテルのカスタム設計対応】

◇Intel Expands Custom Processor Business-Intel supplied custom processors to 18 customers last year and it expects more customers in the future-Intel designs custom processors for eBay, Facebook, others (8月25日付け CIO.com/IDG News Service)
→インテルがここ1年、eBay, Facebookなど十数の顧客に向けてカスタムプロセッサ設計を行っている旨。「ここ1年、顧客全体、すなわち直接顧客、OEMsおよびエンドユーザのそれぞれ特有のニーズに適合するために、18のカスタムsiliconプロセッサソリューションをお届けしている。」(インテルのDiane Bryant氏)

海峡を挟んだ中国と台湾の間の通商関係は格段に開かれてきているが、半導体関係で現状の懸案2件の進展ぶりである。まずは、世界のTV用半導体市場を席巻する台湾の2社、MediaTek社とMStar Semiconductor社の合併であるが、中国政府からやっとゴーサインが出ている。ただすんなりOKとはいかず、以下に分かれて示す内容の付帯条件の遵守が求められている。

【中国と台湾の間の通商懸案】

◇MediaTek, MStar Merger Gets China's OK (8月28日付け EE Times)
→ともにHsinchu, Taiwanを本拠地とするconsumer electronics ICメーカー、MediaTek社とMStar Semiconductor社の間のこれまで足踏みしている$4B合併が、中国のantitrust regulatorから承認を得たが、LCD TV半導体に関する付帯条件がある旨。

◇China Says Chipmakers Must Compete After $4 Billion Deal-China approves $4B MediaTek-MStar merger (8月28日付け Bloomberg)
→中国のMinistry of Commerceが、長らく遅れているMediaTekとMStar Semiconductorの$4B合併を承認、ただし、競争を促進するよう3年間はそれぞれ別々のentityとしてset-top boxおよびLCD television IC事業を運営しなければならないと規定している旨。MediaTekとMStarは2012年のTV用半導体世界市場の80%を占めており、該合併は来る2月1日終了予定の旨。

◇MediaTek-MStar Merger to Boost Chip-Design Business (8月28日付け The Wall Street Journal)
→台湾の半導体設計会社、MediaTekが、MStar Semiconductorとの合併について中国の承認を獲得、モバイル機器の力強い需要が半導体設計受注競争を引っ張って、該取引はMediaTekの市場シェアを高める旨。

◇China government approves MediaTek-MStar merger deal (8月28日付け DIGITIMES)
→MediaTek発。中国のMinistry of Commerceが、MediaTekと同業のIC設計会社、MStar Semiconductorとの合併提案を条件付きで承認の旨。従って、MediaTekとMStarは合併完了締結日を以前の2013年11月1日から2014年2月1日に延期、MediaTekには依然commerce ministryが置いた条件のもと該取引を如何に進めるかの作業計画を提示する必要がある旨。

もう1つ、こんどは台湾の新たな経済特区への中国企業の進出条件を大幅に緩和している以下の内容である。

◇台湾、中国勢の条件緩和、投資など、新特区、他国企業並み (8月30日付け 日経)
→台湾はこのほど創設した新たな経済特区において、中国企業の投資や技術者らの就労を、他の外資系企業と同じ条件で扱う方針を決めた旨。従来中国企業に対しては厳しい条件を課していた旨。半導体や液晶パネルなど台湾の基幹産業との合弁事業で、中国勢が過半出資して主導権を握ることなどが初めて可能になる旨。

難航状態が続くインドの半導体fab建設であるが、インドと言えばバンガロールと半導体、特に設計・ソフトウェア関係ではパッと結びつくところである。そのバンガロールも、水の供給に耐えられないと受け入れ不可の意向が打ち出されている。

【多難なインドfab】

◇Bangalore says 'no' to India's first chip fab-Official: Bangalore lacks enough water for a chip fab (8月26日付け EE Times India)
→インドのSilicon Valley、Bangaloreが、インド初のelectronic半導体fab unitを不運にも受け入れない旨。「インドではエレクトロニクス製造に対しておそらく最善のecosystemを有しているBangaloreに、この名高いプロジェクトを置きたいのはやまやまであるが、水源に対する需要負担が重すぎて対応できない。」(IT, Biotechnology and Science and TechnologyのPrincipal Secretary、I.S.N. Prasad氏)

◇Bangalore out of electronic chip fabrication unit race (8月26日付け The Hindu)

我が国半導体業界の苦境ぶりが、半導体サプライヤ・ランキングに以下の通り表われている。今更でもないが改めて見て、世界的な統合が進むなか、今までの蓄積をもって今後の最先端技術を引っ張るあり方をまたまた考えている。

【サプライヤ・ランキングの変貌】

◇Lone Japanese semiconductor supplier ranked among top 10 in 1H13 (8月27日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsが8月2日発行のResearch Bulletinから、半導体サプライヤ・ランキング、1985年から2013年上半期までの推移概要、下記参照。トップ10での日本サプライヤ、1985年の5社から2013年上半期は1社に。
http://electroiq.com/articles/2013/08/lone-japanese-semiconductor-supplier-ranked-among-top-10-in-1h13/

◇More Japan-based semiconductor suppliers disappear from IC Insights list of top 10-IC Insights: Japanese chipmaker dominance drops off (8月28日付け DIGITIMES)


≪グローバル雑学王−269≫

1980年代のエチオピアの飢餓が最も印象的に残っているが、今に至るまでアフリカで食料や医薬品がどうして事足りないのか、

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

より、その飢えの構造的問題に迫ってみる。ここでも、宗主国、先進国との関係に振り回されて、自分たちが最もよく知る地元で思うような活動が行えない実態があって、脱しきれない旧態を知らされている。


第6章 飢えの構造

1 飢えの複雑系

□誰が飢えているのか
・国連食糧農業機関(FAO)は毎年、世界の栄養不足状況についての報告書
 →アフリカ人の4人に1人が飢餓状態、今日でも「飢餓大陸」と言われる所以
・アフリカの諸地域の中で、「飢え」の正確な実像に基づいた問題の立て方をすることが重要

□「作れず」、「買えず」、「もらえない」
・「作れず」…家畜も含めて、自らの食料源が絶たれてしまう状態
・「買えず」…市場で食料があっても売るものがなくて、飢えていく状態
・「もらえない」…飢餓が、伝えられなかったり、戦闘などのために被災者が援助物資にアクセスできなかったりする状態

□戦乱こそ餓死の元凶
・1960年代末、ナイジェリアからの分離独立を目指したビアフラ戦争時の飢えの事例
・1984年から1985年にかけてのエチオピアの飢餓
 →日本でも「アフリカ飢餓キャンペーン」で大々的に報道
・1990年代、コンゴ民主共和国内戦での飢餓の事例
・飢餓による犠牲者を減らす最も確かな道筋
 →まずは戦乱をなくすこと

□なぜ「作れない」のか
・サハラ以南のアフリカの食料生産をどうしたら増加させられるかという課題
 →国民を賄うだけの食料生産量をどう増加させられるのかという処方箋
 →「緑の革命」と名づけられた食料増産キャンペーン

2 持ち込まれる「革命」

□「緑の革命」の輸出
・「緑の革命」の定義 …種子、投入財、土木技術の三つのコンテンツで土地面積当たりの高い収量を実現するプロセス
・「緑の革命」の特徴
 →人口増加に追いつかない食料生産の不足
 →複数の要因が相互に絡み合いながら、結果として低生産という数字

□複雑な原因に単純な解決策
・外部から持ち込まれるあらゆる技術
 →農民のもつ地域の知識と断絶することなくつながっていくことが農民が受容する鍵
・アフリカでも「緑の革命」以前に、持続可能性の観点から各地域の農業生産性の低さの正確な実像を把握すべき

□「革命」というビジネス
・アフリカ版「緑の革命」
 →「アグリビジネス」と呼ばれる幅広い農業分野で活動する欧米の巨大企業が導入を働きかけ
・結局、生産者たる地域農民は、外国の技術と投入財に振り回され、自らの蓄積してきた技術や品種を放棄することに

□外国企業に売り込む種子
・米国のモンサント社
 →ある時から、農薬から種子の販売まで手広く営業するアグリビジネスへと転身している企業
・ヨーロッパ市場への農産物輸出に大きく依存しているアフリカ諸国の政府
 →極めて懐疑的な姿勢
・問題をはらんだ遺伝子組み換えトウモロコシの種子
 →豆やカボチャを混栽不可
 →味が悪く、家畜の飼料としてしか売れない

3 考える農民たち

□人々から生まれた「食料主権」
・食料不足に対する基本的アプローチ、「食料主権の確立」
 →定義:すべての国と国民が自分たちの食料と農業政策を決定する権利を持っている
 →「食料への権利」の考え方より一歩踏み込んだコンセプト

□「食料暴動」の背景
・2007年末〜2008年4月、食料価格の高騰をきっかけにアフリカ諸国の都市を中心に暴動が発生
 →生活必需品の高騰による生活苦一般への不満や怒りがその背景
 →直接的原因:
  →新興国で食生活が肉食化、飼料用トウモロコシの需要が急増
  →バイオ燃料用の需要が急増
・アフリカの食料大量輸入国は、穀物の輸入依存をなくすことをこれまでも政策目標に
 →実際には、輸入換金作物の生産が優先

□国産に不熱心な世界銀行
・世界銀行など、アフリカ人が消費する食料分野での投資には消極的
・2007〜2008年の食料危機はある程度予測されていた事態とも言える

□もっと農民の声を
・今、アフリカの各地で、農民・生産者自身が協力し組織化、自らの利害を自国の政府や「北」主導の国際機関に対して主張していく動き
・今日の農民運動の特質
 →政府と協調はするが、自分たちの目標や選択に対しては自律性を保とうとしている点

□西アフリカの農民運動
・西アフリカの1970年代、「セネガルNGO同盟(FONGS)」
 →創始者の一人、今は亡きジョグ・ファル
  …農民のヨコの組織化に生涯を捧げた農民リーダー
・FONGSの活動:
 …土壌改善セミナー
 …食品加工のための技術研修
 …農産物の商品化や販売の支援
 …マイクロクレジット(少額融資)立ち上げ
 →1993年、全国農村協議・協同評議会を発足

□国際交渉にも声をあげる農民団体
・農民の選択なき外からの自由化の動き
・2003年9月、メキシコ・カンクンで行われたWTO閣僚会議
 →「北」の貿易自由化交渉の進め方に異議を唱える「南」の国々の代表たちの力によって決裂

□農村から生まれる参加型民主主義
・闘い、考える農民・市民が、今やアフリカ各地に
・今日のアフリカにおける食料生産量の不足問題は、すぐれて南北問題
・米国を筆頭とする「北」のアグリビジネス界、余剰生産をしばしば「人道的援助」として外交手段にする農業輸出大国
・アフリカの土地を大規模に利用・取得する中国やブラジルなどの新興国の動き
 →アフリカの家族経営農業の危機要因

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