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いよいよ秋の陣 新製品打ち上げ競い合い 一方で徹底した切り換え

モバイル機器の活況で昨年のペースをほんの少し上回っているという本年の世界半導体販売高の現時点であるが、猛暑のなか秋の気配が見え始めているところ、9月前半のアップルの新型iPhone発表、インテルの開発者向け会議、そしてサムスン、ソニーなど出展するコンシューマ・エレクトロニクスショー「IFA 2013」と、目白押しの新製品打ち上げが行われ、いよいよ競い合い秋の陣の到来である。マイクロソフトのバルマーCEOの退任も伝えられ、スマートフォンを中心とするモバイル革命の荒波が続く最中である。

≪相次ぐ打ち上げと世界への波紋≫   

米アップルの新型iPhone発表会の9月10日、サンフランシスコでの開催が、この間近に控えるタイミングでありながら噂ベースで以下の通り世界に広がっている。

◇Intel May Speed Introduction of Better Phone, Tablet Chips-A brawnier, more efficient Atom microprocessor could boost the company's long-term outlook. (8月17日付け Barron's)
→来月、すべての目がモバイルcomputingのメインイベントに、Appleのさらに先のiPhoneそしてたぶんiPad改修モデルが披露の予定、しかし、噂されているAppleのgatheringの日時および場所、すなわち9月10日およびSan Franciscoが正しければ、Intelの開発者のための年次conference、IDFと一致する旨。

◇Apple's cheaper and not so cheap iPhone explained (FAQ)-The release date of a cheaper iPhone and of the iPhone 5S is all but certain. So what's the big deal? And a champagne color? Really?! CNET explains. (8月20日付け CNET)

◇新型iPhone、9月初めに出荷へ、米メディア報道 (8月20日付け 日経 電子版)
→米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)が19日、関係者の話として、米アップルが、現行「アイフォーン5」の後継機と廉価版の2種類について9月始めの出荷を目指していることが明らかになった旨。製造委託先の鴻海(ホンハイ)精密工業へ出荷依頼、主要部品の生産は6月から既に始めている旨。

◇新iPhone、日本発売は9月20日か、「金」モデルも (8月21日付け 日経 電子版)
→米アップルが開発中の新型iPhoneについて、日本国内での発売日は9月20日金曜日になる見込み、正式な発表会は既報通り10日にサンフランシスコで開催される予定の旨。新型iPhoneでは、ハイエンドとなる「iPhone5S」(通称)とローエンドの「iPhone5C」(通称)の2モデルが登場する見込み、iPhone5Sには、従来のホワイトとブラックに加え、新たにシャンパンゴールドの筐体が加わって3色モデルの構成になると予測される旨。

偶然かどうか、インテルの開発者向け会議、Intel Developer Forum(IDF)(9月10-12日:サンフランシスコ)の初日、そして場所も重なる開催となっている。インテルのIDFについてはこれからであろうが、今時点ではモバイル機器向けに次の動きが見られている。

◇Intel previews multimode LTE chips, with eyes on U.S. handset market-Multimode LTE processors on tap at Intel (8月19日付け PCWorld)
→インテルのMobile and Communications Group、vice president、Aicha Evans氏。Intelは、8月末までにmultimode Long-Term Evolution(LTE)プロセッサ, XMM 7160の出荷を始める旨。一方、Intelはそれが14-nm寸法のAtomプロセッサfast-trackingであることを来月発表する見込み、それらpartsの来年第四四半期での出荷に向けている旨。

アップルの中国市場でのシェア低下が以下の通り見られており、今後の巻き返しに注目が集まるところと思う。

◇中国タブレット市場で苦戦する米アップル (8月22日付け 英フィナンシャル・タイムズ紙)
→IDC発。競争が激しい中国のタブレット市場で、米アップルの「iPad」のシェアがこの1年でほぼ半減したことがわかった旨。米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した安価な端末が急速に売り上げを伸ばし、iPadを追い抜いた旨。アップルの競合相手の多くは中国の中小企業で、シェア1%未満のメーカーを合わせると市場全体の50%を占め、前年同期の36%から大きく伸びた旨。

◇Apple's grip on China tablet market loosens (8月22日付け AP)

また、少し先立つコンシューマ・エレクトロニクスショー「IFA 2013」(9月6日-11日:ドイツ・ベルリン国際見本市会場)に関連して、ソニー、サムスンの以下の動きが見られている。

◇Sony Said to Plan Flagship Xperia Introduction Next Month-Sony may unveil new Xperia flagship phone on Sept. 4 (8月17日付け Bloomberg Businessweek)
→ソニーの新しいXperia phoneは、同社HDTV setsおよびcameras向けに開発された技術を搭載、該phoneは来る9月4日に投入、Appleが最新iPhoneモデルの詳細を述べる予定の約1週間前の旨。このXperiaは、同社Bravia TVs用に作られた"X-Reality"半導体およびCyber-shot camerasに向けて開発されたセンサの使用によって高解像度を特徴とする旨。

◇サムスンがスマートウォッチを発売か、アップルに攻勢 (8月21日付け 人民網日本語版)
→米ブルームバーグの8月17日の情報を引用、環球網発。サムスン電子が来月、スマートウォッチ「Galaxy Gear」を発売する旨。消息筋によると、このスマートウォッチは通話、ネットサーフィン、メール送受信が可能の旨。Galaxy Gearはグーグルのアンドロイドを採用、アップルの潜在的なライバル商品に攻勢をかける旨。同製品は国際家電見本市「IFA」の開幕2日前の9月4日に発売されるという噂がある旨。

◇サムスン・ソニー、アップル新製品に対抗して次世代スマートフォン公開=IFA2013 (8月22日付け 韓国・中央日報)
→韓国メディアによると、来月6日(現地時間)にドイツ・ベルリンで開幕する欧州最大の家電博覧会「IFA2013」で、サムスン電子とソニーが次世代スマートフォンを発表する計画、サムスン電子は4日晩にベルリンでモバイル・アンパック行事を開き、今年下半期の期待作「ギャラクシーノート3」とスマートウォッチ「ギャラクシーギア」を発表する予定、またブルームバーグ通信によると、ソニーはテレビとカメラに使用されたイメージセンサ技術を搭載した次世代Xperiaスマートフォンを公開すると予想される旨。

まことに矢継ぎ早、慌ただしい感じ方であるが、このようにならざるを得ない市場における切り換えの動きが以下の通り急激に進行している。

◇China tablet chipset vendors shifting 28nm process orders away from TSMC, say sources (8月20日付け DIGITIMES)
→業界筋発。Qualcommの歩調に従って、中国のタブレット用チップセットベンダーのいくつかも、TSMCでの28-nm発注を削減、より好条件のファウンドリーpricingを提示できる他のファウンドリーhousesに発注の一部を振り替えている旨。GlobalfoundriesおよびSamsung Electronics両方ともに競合メーカーが、28-nmプロセスノードの歩留り改善に努めてきており、Qualcommに特に照準、TSMCから切り換えさせる魅力的な価格提示を可能にしている旨。

◇MediaTek ramping up smartphone solutions to meet surging demand-Smartphones drive demand for MediaTek chips (8月19日付け DIGITIMES)
→MediaTekのdual-coreスマートフォン・ソリューション、MT6572の売れ行きが、中国など新興市場で極めて力強く、7月の同社売上げを史上2番目に押し上げている旨。

◇More China-based white-box tablet makers shifting to MediaTek solutions-Sources: White-box tablet makers turn to MediaTek (8月21日付け DIGITIMES)
→業界筋発。MediaTekのquad-core MT8125およびMT8135などチップセット・ソリューションを用いて新モデルを開発し始めている中国のwhite-boxタブレットメーカーがますます多くなっている旨。Acer, Asustek ComputerおよびLenovoなどfirst-tierブランドによるMediaTekのタブレット・ソリューションの採用が、MediaTekのチップセットの人気立ち上げに加勢、white-boxメーカーが製品差別化戦略の刷新を余儀なくされている旨。
Acer, AsustekおよびLenovoによる$99-199 MediaTek-ベース・タブレットの打ち上げで、以前はwhite-boxメーカーが席巻していたentry-levelからmid-rangeの分野に分け入っている旨。

あの手この手、特に低価格化路線の台頭が見られてくると、高性能・高機能のハイエンドの方も、工夫を凝らさないと市場で落ち着けるものではないことは、歴史が繰り返し証明しているところである。それにしても、かくもモバイル機器はじめセットに注目せざるを得ないとなると、陰に隠れる半導体の進展についての印象があるのは困ったことではある。  


≪市場実態PickUp≫

米フェイスブックが新興国はじめ世界のネット普及の障害および抑制要因の打開に向けて、世界の関係大手6社と団体、internet.orgを設立している。

【世界へのネット普及】

◇Facebook CEO Announces Internet Access Project-Facebook spearheads push for universal Internet access (8月21日付け The Wall Street Journal)
→Facebookが、6社(Samsung Electronics, Nokia, Ericsson, MediaTek, Opera SoftwareおよびQualcomm)と連携、internet.orgという団体を設立、Webアクセスを地球上の依然つながっていない40億人以上の人々にもたらすことが使命の旨。

◇新興国のネット普及、フェイスブックが新団体、サムスンなど6社と (8月22日付け 日経産業)
→交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックが20日、新興国におけるインターネットの普及を目指し、韓国のサムスン電子など6社と共同で新団体を立ち上げたと発表、効率的なデータのやり取りを可能にする圧縮技術の開発などで協力、新興国におけるネット普及の妨げになっているコストの大幅な引き下げを目指す旨。

エレクトロニクス業界、本年これまでの目立つ買収締結が、次の通りまとめられている。それぞれの今後の動きに注目もしている。

【本年これまでの目立つ買収】

◇Slideshow: Big Deals of 2013 (8月19日付け EE Times)
→本年これまでのエレクトロニクス業界買収について目立つもの(締結タイミング:金額):
 ASML closes Cymer deal …5月末:$2.6B
 Micron closes Elpida buy …7月末:$2.5B
 Cadence buys Tensilica …3月 :約$380M
 Dialog Semi snags iWatt …7月 :最大$345M
 Cisco buys Ubiquisys …4月 :$310M

製造受託のファウンドリーを半導体サプライヤ・ランキングに含めるもの、そうでないものが見られるが、"最終市場価値"として以下の通り算出すると、TSMCがインテルを抜いて首位に躍り出ているという見方である。

【Final Market Value】

◇TSMC became No.1 IC supplier in Q3-TSMC tops Intel in Q3's "final market value" (8月20日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IC Insightsが、"final market value"として知られる評価法を用いると、TSMCが今四半期、インテルを抜いて世界最大の半導体サプライヤになってくる旨。該評価法は、ファウンドリーの販売高figuresを2.22倍して計算、TSMCのウェーハ製造拠点で作られた半導体に対して末端顧客が払った見積もり価値としている旨。

◇On a different scale TSMC ranked as world's largest semiconductor company (8月20日付け EE Herald)

◇IC Insights names TSMC as top IC supplier in 2Q13 (8月21日付け DIGITIMES)

そのTSMCのモバイル機器向け需要が引っ張る好業績がその原動力になっているが、台湾の本年の半導体outputについて$62.33Bの見込みが出されている。半導体業界全体では$300Bの壁がここ数年立ち塞がっているが、約5分の1の世界比率に気づかされている。

【台湾の半導体output】

◇Taiwan IC output expected to grow over 14% in 2013 (8月20日付け Focus Taiwan)
→台湾・Industry and Technology Intelligence Services(ITIS)の最新レポート。グローバルIC業界は第一四半期に在庫調整に直面したが、それ以来ビジネスが戻してきて、台湾のIC分野には年間の伸びが示されている旨。2013年の台湾の半導体分野のoutput valueは総計NT$1.87 trillion($62.33B)の見込み、2012年のNT$1.634 trillionから14.4%増の旨。


≪グローバル雑学王−268≫

エジプトの混乱が現在日々伝えられているが、東西冷戦後のアフリカにおける戦争と平和の実態を、

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

より見ていく後半である。まだ記憶に新しいアルジェリアにおける日本人を含む多くの犠牲者がでた天然ガス施設襲撃(2013年1月)が1つとして以下に示されているが、ネット時代に身を置く若者たちが不満への抵抗手段を宗教に見い出すというやり場のない現実が見えている。


第5章 冷戦後の戦争と平和   ≪後半≫

3 「国際社会」とアフリカ

□国連とアフリカ
・今日では、安保理の議題の7割はアフリカが対象
 →中心となる活動は、PKOと呼ばれる国連の平和維持活動
・冷戦期最初のPKO →コンゴ民主共和国が独立直後に内戦状態に陥った際
・冷戦後のPKO →1991年以来のサハラ住民投票ミッション
         →2013年2月現在、7件展開 …全世界のおよそ半分
・PKO派遣のタイミング、規模、性格は、常任理事国のその時々における資源などの経済的利害や地政学的思惑が大きく左右
・1991年以来、本格的内戦に突入したソマリア
 →1993年には、武力行使を伴うPKOが投入
  …「平和執行」型PKO、「PKOの第三世代」
 →アメリカ政府が、犠牲から即刻撤退する事態
  →富裕国と貧困国の命の価値の格差を如実に反映
・1994年、ルワンダの一発触発であった国内対立が、フツ人によるツチ人の「民族浄化」という大虐殺へと発展

□アフリカ最後の植民地
・アフリカ大陸は今日も未解決の植民地問題を抱えている
 →旧スペイン領西サハラ問題
・西サハラの南北両端の国境線
 →欧州列強間の力関係で決められた植民地獲得競争の産物
 →20世紀初め、スペインとフランスとの間の協定
・西サハラは自国領だと主張して、多数のモロッコ人を動員
 →モロッコは、今日に至るまで西サハラの占拠を続けている
・西サハラ問題の解決に向けて、2つの条件
 →1. 不法占領国の体制基盤を脅かすような政変が起き、既存の秩序が崩れ、国内政治が流動的になること
 →2. 安保理常任理事国の圧力
・残る唯一の西サハラ和平への道は当面、被占領地における西サハラ住民の抵抗と国際社会の圧力によるしかない
・国連の決議に実効性をもたらすためには「北」の市民社会の働きかけが極めて重要に

4 9・11以後のアフリカの平和

□西進する反テロリズム戦争
・米国の主導する東アフリカを中心とした反テロ戦争
 →フランス軍の積極的な介入によって、西アフリカにも拡大

□アルジェリアの経験
・マリと国境を接するアルジェリア
 →フランス主導のマリ北部への軍事介入に対して常に慎重
・かつて、ソ連のアフガニスタン侵攻の際、アルジェリアの若者が、数千人規模でアフガニスタンでの「聖戦」にかけつけ
・2013年1月、天然ガス施設を襲撃、日本人を含む多くの犠牲者
 →このアフガン帰還組がリーダー
・イスラーム急進派政党がかくも急速に拡大した背景
 →職もまともに得られない若者の政治に対する不満の増長
 →彼らの多くが宗教に唯一の抵抗手段を見い出した
・結局、アルジェリア政府は、イスラーム武装勢力と対話路線、国民和解へと進んだ

□人々のイスラーム
・現代アフリカでは、断食の月ともなれば、多くの人々は断食を守るが、こっそり守らない人も
・庶民の生活にはイスラーム世界の人物や用語が入り込んでいる
 →「財政によるラマダン(断食)」…IMFがアフリカ政府に強いた緊縮財政
 →「経済上のジハード(聖戦)」…欧州に命がけで密入国しようとする若者の冒険
・2011年のチュニジアやエジプトの長期独裁政権の追放
 →ネット時代に世界を読む能力を身につけた若者たちの不正に対する怒りが原動力
 →「市民革命」

□戦争は人々の心の中に生まれる
・不安定なグレーゾーンが生まれた背景
 →1980年代以降の緊縮財政、国境警備も含めて治安関係の予算が充分に取れなくなった
  →国境コントロールが極めて手薄に
・早くからマリの中央政府がトゥアレグ人の自治要求に耳を傾け、格差是正策ないし社会発展策を打ち出していれば、武力対立は回避できた可能性
・グレーゾーンが誰もが安心して暮らせる普通の日常生活モードに戻れる地域になれば、これこそ平和的解決の鍵

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