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変わる、初めて上回る、半分の価格、などダイナミックな市場の動き

日本列島が猛暑に見舞われるなか、世界の半導体市場もモバイル機器関連の引き続く熱気が引っ張って、分野別の温度差は見られるものの今後に向けて注目せざるを得ないダイナミックな動きが噴出している。PC用MPUの低調を補って余りあるタブレットおよび携帯電話用プロセッサ、SoCがメモリを大きく上回っていくテスト装置市場、と変わる市場の様相がデータに表われている。さらに、ついにというかスマートフォン販売数量がこの第二四半期にfeature phonesを初めて上回るなど、以下波乱含みの現時点の市場である。

≪様々な変化、波乱≫   

変わる市場の第1として、低迷基調のMPU市場をタブレットおよび携帯電話用プロセッサが押し上げているという以下の内容である。モバイル応用向けプロセッサが伸びて、PCsおよびサーバ用プロセッサを補い、まさに変化するプロセッサ市場の様相となっている。

◇Tablet and Cellphone Processors Offset PC MPU Weakness-Total microprocessor sales are forecast to rise 8% in 2013 and reach $61.0 billion. (8月13日付け IC Insights)

◇Tablet and cellphone processors offset PC MPU weakness (8月13日付け ELECTROIQ)

◇Tablet and handset processors offset PC MPU weakness, says IC Insights (8月13日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。2013年の世界microprocessor(MPU)販売高が最高記録の$61Bに達する勢い、大方はインターネットにつながるタブレットおよび携帯電話の力強い需要による旨。notebooksなど標準PCsは引き続き低迷、もう一度2013年のMPU市場全体の伸びを抑えている旨。MPU販売高全体は、2012年の2%増止まりから2013年は8%増と現在見ている旨。

◇Changing processor market-IC Insights: Mobile processor market is in growth mode (8月13日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IC Insights発。モバイル応用向けプロセッサが伸び基調にあり、タブレットcomputerプロセッサが今年は54%増、$3.5Bの一方、携帯電話アプリプロセッサは30%増、$16.1Bが見込まれる旨。しかしながら、メインフレームcomputers, PCsおよびサーバに入るx86-architectureプロセッサは、今年のmicroprocessor(MPU)市場全体の半分以上を占める、と見る旨。

◇Mobile Rising in Processor Market (8月13日付け EE Times)
→≪円グラフ≫ 応用別MPU販売高 (Source: IC Insights)、下記参照。
http://img.deusm.com/eetimes/2013/08/1319209/123002_304185.jpg

もう1つの変わる市場として、テスト装置市場が以下のようなSoCとメモリの比率が見込まれる状況になっており、一昔前の感覚からのまさに変化を感じるところである。

◇ATE Market Changes With The Times-SoC test equipment market continues to outpace memory test (8月15日付け SemiMD.com)
→Gartner発。昨年のsystem-on-a-chip(SoC)テスト装置市場は$1.7Bに達する一方、メモリ半導体テスターは$362M、この差が向こう4年で拡がって、2017年にはSoCテストが$2.85Bの一方、メモリテストは$620Mになると見る旨。

スマートフォンやタブレットの急速な伸びから時間の問題という受け止めがあるにせよ、スマートフォンの販売台数がfeature phonesをこの4-6月四半期に初めて追い抜いた、という以下のデータである。なにしろ商品の更新サイクルが早く、ベンダー各社の取り組む戦略に目が離せず、このデータも引き続き注目する必要がある。

◇Smartphones Outsell Feature Phones for First Time (8月14日付け EE Times)
→Gartner社発。第二四半期の世界スマートフォン販売が225M台に達し、初めてfeature phonesを上回った旨。第二四半期のスマートフォン販売は前年同期比47%増、一方、feature phonesは同21%減、210M台の旨。
・≪表≫ 2013年第二四半期スマートフォンのベンダー別出荷
http://img.deusm.com/eetimes/2013/08/1319224/143921_857097.jpg
・≪表≫ 2013年第二四半期スマートフォンのOS別出荷
http://img.deusm.com/eetimes/2013/08/1319224/143930_413508.jpg
・≪表≫ 2013年第二四半期携帯電話のベンダー別出荷
http://img.deusm.com/eetimes/2013/08/1319224/143944_121985.jpg

◇Smartphones outsell feature phones for first time (8月16日付け EE Times India)

タブレット用プロセッサ受注獲得を目指して、ARM系半導体メーカーの半分の見積もり価格を提示する中国の設計メーカーの動きが以下の通りである。
コスト削減第一にどこまでいくのか、今後に波乱を引き起こす可能性を孕んでいる。

◇China-based IC designer Allwinner lands orders from Taiwan (8月14日付け DIGITIMES)
→台湾のsupply chainメーカー発。中国のAllwinner Technologyが、台湾のMicro-Star International(MSI)からタブレット用プロセッサ受注獲得、Asustek Computerからの同様な受注を得る見込み、またAcerとも協議に入っている旨。シェアを守ろうとpricingにベンダーが大きく頼る市場では、生産コスト削減が優先順位のトップ、多くのタブレットベンダーがfirst-tier ARM半導体メーカーの半分の見積もり価格を提示する中国のIC設計メーカーからのソリューションに向いている旨。

PC市場の低迷が言われるなか、グラフィックス半導体の健闘ぶりが目立つ伸びっぷりとなっている。使い方、使われ方の工夫、魅力の余地を感じさせている。

◇Second quarter graphics chip shipments: AMD tops the chart, Intel is up, Nvidia is down (8月14日付け ELECTROIQ)
→Jon Peddie Research(JPR)による2013年第二四半期グラフィックス半導体出荷およびサプライヤ市場シェア。PC市場全体は前四半期比2.5%低下の一方、グラフィックス市場は同4.6%増えている旨。

◇Report: Graphics market grows, thanks to double-chip dipping-Graphics chip market growing this year despite PC slump, firm says (8月14日付け PCWorld)
→Jon Peddie Research(JPR)発。laptopメーカーのますます多くが自分たちのPCsに統合およびディスクリートグラフィックスの両方を加えており、グラフィックス半導体メーカーの展望がPCメーカー自身よりも良好に見える旨。

不安要因が見え始めている本年後半の半導体市場であるが、グローバルファウンドリー業界の年末第四四半期は前四半期比減少する見方が早くも出てきている。

◇Digitimes Research: Global 4Q13 IC foundry output value to contract (8月15日付け DIGITIMES)
→Digitimes Research発。グローバルファウンドリー業界の生産高が、半導体業界supply chainを通しての在庫消化から、3四半期連続の伸長を経て2013年第四四半期は前四半期比減少となる様相の旨。


≪市場実態PickUp≫

三次元NANDフラッシュメモリ(V-NAND)を先週発表したばかりのSamsungが、今週の第8回 Annual Flash Memory Summit(8月13-15日:Santa Clara Convention Center)の場にて、V-NANDベース初めてのsolid state drive(SSD)を発表している。東芝、Micronに重ねて先んじる動きとなっている。

【矢継ぎ早の新SSD発表】

◇Samsung introduces world's first 3D V-NAND-based SSD (8月14日付け ELECTROIQ)
→Samsungが本日、同社が最近リリースした3D V-NAND技術ベースの初のsolid state drive(SSD)を投入、Flash Memory Summit 2013での基調講演にて、企業法人サーバおよびデータセンター用に設計された新SSDを発表の旨。

◇Samsung targets enterprises with 3D V-NAND based SSD drives-Samsung offers SSDs with its 3D V-NAND flash memory (8月14日付け ZDNet)
→Samsung Electronicsが、同社三次元Vertical NAND(3D V-NAND)フラッシュメモリデバイスを用いて、世界初、480-gigabytes(GB)および960GBのデータストレージを有する2つのsolid-state drivesを生産化、該SSDsはデータセンターおよび企業法人サーバでの使用向けの旨。

◇With 3D Chips, Samsung Leaves Moore's Law Behind (8月14日付け Forbes)
→少なくとも市場の1セグメントでMoore則の終わり、Samsung Electronicsが今月始め、128Gビット蓄えられる三次元V-NANDフラッシュメモリ半導体の商用生産開始、そして本日、今週開催のFlash Memory Summitの場で、該半導体で作った初のsolid-state drives(SSDs)を披露の旨。

◇Samsung intros 3D V-NAND SSD for enterprise applications (8月16日付け DIGITIMES)

微細化、高性能化を競う最先端のアプローチとは違って、応用からくるニーズに合わせた低速、低コストの取り組みが以下の通り見られている。応用の軸に主眼を置いた最先端の工夫が求められる領域である。

【低い方へのアプローチ】

◇Slideshow: Facebook Calls for Cold Flash (8月15日付け EE Times)
→Facebookのインフラdirector、Jason Taylor氏基調講演。フラッシュメモリ業界はより高いenduranceおよび性能にもっていくよう重点化しているが、Facebookの1日に新しい写真約350M枚を蓄積するニーズには、比較的低いendurance、控えめな性能の半導体が好ましくなる旨。いわゆる"cold flash"に向けて低コストはじめ他のsolid-state技術が役に立つ可能性の旨。

◇ARM Preps Near-Threshold Processor for IoT (8月15日付け EE Times)
→ARM Holdings plcが、CMOSトランジスタの閾値電圧に近く、数十KHzオーダーのクロック周波数での動作に最適化したプロセッサコアに取り組んでいる旨。同社は複数の社内リサーチ設計を行う中、今やInternet of Things(IoT)などembedded応用に向けた低速、非常に低電力のmicrocontroller(MCU)コアを開発している旨。

先月後半のことでその時点では特に発表は行われなかったようであるが、インテルが富士通の携帯電話向け半導体事業の一部を以下の記事が示す通り買収している。

【インテルの富士通ワイヤレス買収】

◇Intel Acquires Fujitsu Wireless (8月13日付け EE Times)
→Intel社が、先端multimode LTE RF transceiverを開発する富士通の子会社、Fujitsu Semiconductor Wireless Products社(FSWP)(Tempe, Ariz.)を先月買収したことを確認の旨。

◇Intel's surprise mobile acquisition (8月13日付け New Electronics)
→先月後半、Intelが目立たずにFujitsu Semiconductor Wirelessを買収、知る限り何ら発表はないが、Fujitsu Wirelessはオープン市場で使えるたぶん最先端のmultimode LTE rf transceiverを開発しており、Intelにとっては非常に重要な動きである旨。

◇Intel confirms acquisition of Fujitsu's LTE-A chip business (8月13日付け Light Reading Mobile)

◇Intel Gets LTE-A Smarts With Fujitsu Buy (8月13日付け Light Reading)

◇携帯向け半導体事業の一部、富士通、インテルに売却(8月15日付け 日経)
→富士通が14日、米インテルに携帯電話向け半導体事業の一部を譲渡したと明らかにした旨。富士通が取り組む半導体事業の構造改革の一環、今回売却した音声信号の変換に使う半導体は米クアルコムなどが強く、富士通の収益は低迷していた旨。すでに米アリゾナ州の開発拠点と、同拠点に勤務する約100人の従業員はインテルに移った旨。

7月末でエルピーダメモリの完全子会社化を完了したマイクロン・テクノロジーが、引き続くタイミングで来年にわたっての人員削減の計画を以下の通り発表している。

【マイクロンの人員削減】

◇Micron cuts jobs after purchase of Japanese firm-Micron sets 5% reduction in workforce (8月12日付け San Francisco Chronicle /The Associated Press)
→Elpida Memoryの買収完了に引き続いて、Micron Technologyが、従業員の約5%、約1,500 jobsを来年にわたって自然減、レイオフおよび早期退職により減らしていく計画の旨。その時期、程度および期間は、組織、場所、機能およびビジネスニーズにより変わる旨。

◇Micron to lay off 5 percent of workforce; Boise impact unknown-Some say the Boise campus will be hit; Elpida employees will keep their jobs. (8月12日付け The Idaho Statesman)

◇Micron Expands With Elpida, But Trims Jobs (8月13日付け The Wall Street Journal)


≪グローバル雑学王−267≫

東西冷戦後、大型の武力紛争が減っているが、中小規模の武力対立は減少するどころか、アフリカ各地で拡散し続けているという1990年代以降の現実を

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

より、各地の動きで見ていく前半である。複雑に入り組んだ内戦模様、市場のグローバル化の影響、宗主国への切れない依存、などなど残る感じ方である。


第5章 冷戦後の戦争と平和   ≪前半≫

1 武力紛争のトポス

□「北」の報道、「南」の現実
・現代アフリカの戦争は、何よりも命の「南北格差」を反映
 →「北」のメディアでは、武力紛争はしばしば大まかな説明でなされることが多い
・本章の視点
 →現代アフリカの武力紛争の減少を特徴づけ
 →新たな紛争形態としてのアフリカでの反テロ戦争の背景
 →国際社会の和平努力の特質

□大きな戦争から小さな戦争へ
・大型代理戦争においては和平の展望の一方、中小規模の武力対立は減少するどころか、アフリカ各地で拡散続く
 →1990年代 …ソマリア、スーダン南部、ルワンダ、ザイール、リベリア、シエラレオネ
 →2000年代 …コートジボワール、ソマリア、スーダン西部・ダルフール
 →2010年代 …リビア、マリ北部
・一触即発の社会政治状況にある地域ないし地点は、転移を繰り返し、特定しにくいことが多い
・1998年、エチオピアとエリトリア、冷戦後の「アフリカの角」の新しい戦争の例

□ほとんどが内戦
・冷戦後の武力紛争の特質、現象面から整理、次の4点
 →第1:国内外の反政府勢力と政府軍による武力行使によって内戦という形をとることが多い
  …典型例:1990年代のルワンダ内戦
   →隣国ウガンダから侵攻、ツチ系ルワンダ人がフツ系中心政府を排除
  …1980年代に始まったリベリア内戦
  ⇒複合地域戦争
   →アフリカ諸国が財政難で弱体化、領域管理能力が手薄、国境が極めてフレキシブルな存在に

□群雄割拠型紛争
 →第2:戦闘の当事者が二者に限らず、停戦交渉を難しくしている
  …広大な国土を舞台に展開したコンゴ内戦
  …ソマリアでの壮絶な「国盗り合戦」

□限りなく不透明な終戦
 →第3:現代アフリカの内戦はしばしば始まりと終わりが不明確、戦争とも平和とも言えないグレーゾーンが存在
  …スーダンのダルフール紛争
  …サヘル地域のマリ、ニジェール北部の北部民族自立運動の一部
  …セネガル南部カザマンスでの独立運動の離反集団

□自己目的化する紛争行為
 →第4:冷戦後の反政府武装組織には闘争の目的ないし勝利後の明確な政治経済ビジョンが欠如
  →内戦状態こそが支配地域の鉱物資源を不法に輸出でき、巨大な利益を生むので、紛争が自己目的化
 …シエラレオネ内戦「紛争ダイヤ」
 …コンゴ東部内戦での希少金属のタンタル鉱石

2 ビジネス化する戦争

□多様な戦闘のアクター
・アフリカの新興国家の軍隊、冷戦後の特徴
 →国軍ないし政府軍兵士の待遇が多くの公務員と同様、しばしば良くなく、士気が高くない
・アフリカの多くの共和国の軍隊が持つアフリカ社会内の対外従属的性格

□困った時のフランス頼み
・植民地からの独立が旧宗主国の軍事基地の撤退を伴なった北アフリカ
・対して、サハラ以南の旧フランス領アフリカの中の親フランス政権は、国内にフランス軍基地を抱えた
 →フランス軍要員を常駐

□市場化する戦場
・内戦にも反政府活動にも、近隣諸国出身者や非アフリカ人が傭兵として参加する事例が多い
 →冷戦後、より一層顕著に
・1991年から2002年に及んだシエラレオネ内戦
 →政府は1990年代半ば、アパルトヘイト後の南アフリカの元軍人による民間軍事会社と契約締結
・アフリカでの戦争治安の民営化傾向
 →市場のグローバル化の影響が今や「南」の戦場にも

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