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PC時代からMobility時代へ、変わる立ち位置、迫られる変革

10年ひと昔、3年ひと昔、ドッグイヤーなど折に触れて技術変化の激しさあるいは周期を表わしてきた感じ方であるが、このところのパソコンからモバイル機器への急激な流れは、今までの基準、通り相場を大きく変えるdisruptiveという表現がより当てはまりそうな情勢である。技術的には、低電力設計、材料と半導体業界の立ち位置が変わらざるを得ないとともに、ビジネス的にもモバイルへの怒涛の急流に舵を切り直さざるを得ない大手プレーヤーの変革の動きが続いている。

≪急激な流れと対応≫   

現下の市場は、モバイル機器新製品の投入への期待感に溢れている。

◇IC sector to see strong Q3 due to electronics demand-Mobile devices to boost IC packaging/test services revenue in Q3, execs say (7月8日付け The Taipei Times (Taiwan)/Chinese News Agency)
→IC実装およびテストサービス分野のexecutives発。第三四半期に新しいモバイル機器が投入、IC実装およびテストサービスcontractorsの売上げが10%増大すると見る旨。Siliconware Precision Industries(SPIL)のchairman、Bough Lin氏は、新しいゲーム機、スマートフォンおよびタブレットcomputersがhigh-end半導体の実装およびtestingを必要とすると期待の旨。

Fortune誌のGlobal 500でも、Appleはじめモバイル機器関連の押し上げが目立つ結果となっている。  

◇Apple Bucks High-Tech Slippage in Fortune Rankings (7月8日付け EE Times)
→発表されたばかりの今年のFortune Magazine、Global 500について。売上げが尺度のこのFortune Global 500、今回最も目立つのはAppleの昨年55位から今や19位への急上昇である旨。ハイテク関係、健闘している例:
Samsung           20位 → 14位
Hon Hai Precision(Foxconn) 43位 → 30位

折も折、SEMICON West(7月9-11日:San Francisco)でも、モバイル機器に大きく期待をかける展望が打ち上げられている。

◇Applied Materials Says Smartphone Demand Boosting Sales-Applied Materials: Advanced smartphone chip demand to drive gear sales(7月9日付け Bloomberg)
→Applied MaterialsのCEO、Michael Splinter氏。スマートフォンメーカーは、handsetsにおけるさらに先端の半導体を欲しており、この流れが半導体製造装置の2014年販売高を推進する支えになる旨。「本当にすべてモバイル関連、ファウンドリーspending、NANDフラッシュメモリspendingは当然増えると見る。」

◇SEMICON West keynoter outlines The Big Five Challenges of the semiconductor industry-GlobalFoundries CEO: Cost, other challenges beset the chip business (7月9日付け ELECTROIQ)
→GlobalFoundries CEO、Ajit Manocha氏の基調講演。半導体業界が直面する最大の課題、聴衆の約60%は経済との反応、これに対して同氏は次の見方。モバイル機器からくる需要の信じられないほどの伸びが新しい力学を牽引、業界に毎年新しい技術ノードが求められ、以下のBig Five Challengesが表れてきている旨。
 cost
 device architectures
 lithography and EUV
 packaging
 450mm wafer transition

モバイルへの流れとともに、技術的に大きく変わってきたのは、低電力が前面に出てくる一方、高性能の求められ方も今までと同様の延長上となっていることである。今回のSEMICON Westにて、端的に触れている以下の内容である。

◇Materials Improvements Boosting IC Performance-Applied Materials aims to boost NMOS transistors' performance (7月11日付け EE Times)
→Applied Materials社のepitaxy部門ヘッド、Schubert Chu氏。半導体材料の改善は今日、各ノードでICs性能改善の約90%を担っており、2000年の約15%の貢献からは大きく高まっている旨。スマートフォンおよびタブレットがエレクトロニクスsupply chainの多くを引っ張っている"mobility era"では、トランジスタ性能を高めるとともに同時に電力消費を減らす重点化が求められ、電力消費が実際的にnon-issueであったPC eraの間の重点化とは非常に異なっている旨。

今後についての問題対応意識が、他の技術の切り口から次の通りである。

◇Slideshow: Lam Eyes Next $1B Opportunity (7月8日付け EE Times)
→plasma etcherなど半導体エッチング装置の分野で先端技術を送り出してきているLam Research CorporationのDavid K. Lam氏、Asian AmericanとしてNASDAQに初めて上場、今や次のbillion-dollar opportunityのときである旨。スライドの1つとして、以下の内容:
・≪表≫ lithographyの半導体製造に占めるコスト比率は、1984年の25%から今日は70%に増大。2018年までにEUVがなくてquadあるいはoctal patterningに進まざるを得ないなら、コストは天井知らず、支えられない
http://img.deusm.com/eetimes/2013/07/1318828/143107_796699.jpg

◇High-end packaging next battlefield for IC assembly and test services providers, says Amkor executive (7月9日付け DIGITIMES)
→Amkor TechnologyのAsia-Pacific operations、sales director、Kevin Yu氏。スマートフォン用の力強い伸びが、packaging技術関連に押し寄せており、high-end IC実装市場が、outsourced semiconductor assembly and test(OSAT)メーカーにとって次の戦いの場になっていく旨。

急激な流れに対応する大手プレーヤーの具体的な動きである。Appleがプロセッサのファウンドリー製造委託先をSamsungからTSMCに移す動きが伝えられるなか、Samsungがファウンドリー顧客をほかに広げていく以下の内容である。

◇Samsung to supply chips for Amazon, Sony-Sources: Samsung may make ICs for Amazon, Nvidia, Sony (7月10日付け The Korea Times (Seoul))
→Appleが、Samsung ElectronicsとのSiファウンドリー発注を絞っているなか、Amazon, NvidiaおよびSonyが、Samsungの顧客候補である旨。SamsungはfabラインをモバイルDRAMs製造にシフト、NANDフラッシュメモリデバイスは他のサプライヤから購入と言われている一方、Samsung SemiconductorはSan Jose, Calif.に新キャンパスを正式に起工、約2,000人の従業員の計画の旨。

インテルは、今までの蓄積をもとにスーパーコンピュータ用のプロセッサなどを推進していくとする韓国でのプレゼン内容が見られている。

◇Intel to push supercomputer chips-Intel targets processors, software for supercomputers (7月11日付け The Korea Times (Seoul))
→Intel Korea CEO、Lee Hee-sung氏。desktop PCプロセッサ需要が低迷、Intelは伸びに向けてスーパーコンピュータなど最先端応用に目を向けている旨。Intelは、プロセッサ、co-processorsおよびソフトウェアなどスーパーコンピュータ関連すべての領域への投資を首尾一貫増やしている旨。

インテルとともにパソコンを引っ張ってきたマイクロソフトも、現下の流れに対応する改革を行おうとしている。

◇マイクロソフト、脱パソコンにらみ組織再編へ (7月12日付け 日経 電子版)
→米マイクロソフトが11日、大規模な組織再編を実施すると発表、従来の製品に基づく8つの事業部門を解消、「マーケティング」「人事」など機能を軸としたグループを設置する旨。パソコン市場が頭打ちとなっているため、効率化や社内連携の強化を通じてモバイル機器など成長分野における取り組みを強化する旨。年内をメドに再編を完了、従来は社内に分散していたマーケティングや人事、財務経理などの機能を集約するとともに、製品開発も「基本ソフト(OS)」「アプリケーション・サービス」など大きなくくりとする旨。


≪市場実態PickUp≫

上記の急激な流れを色濃く映し出すこの第二四半期の世界PC出荷データが、以下の通りである。ベンダーランキングでレノボが初めて首位となっている。

【第二四半期世界PC出荷】

◇レノボ、パソコンシェアで初の首位、HPを上回る (7月11日付け 朝日新聞デジタル)
→米調査会社IDCが10日、今年4〜6月期の世界のパソコン出荷台数を発表、中国最大手のレノボグループがシェア16.7%を占め、米国最大手のヒューレット・パッカード(HP)を0.3ポイント上回り、IDCの調査では初めて首位に立った旨。中国メーカーの存在感が世界のパソコン市場でも高まっている旨。

◇Lenovo Passes HP to Take PC Market Lead (7月11日付け EE Times)
→2013年第二四半期世界PC出荷トップ5ベンダー、下記参照。
http://img.deusm.com/eetimes/2013/07/1318868/231743_888053.jpg

◇世界のパソコン出荷、4〜6月、2期連続2ケタ減、タブレットが侵食、日本勢も苦戦 (7月12日付け 日経)
→米調査会社のIDCが2013年4〜6月期の世界のパソコン出荷台数が前年同期比11.4%減の7563万台だったと発表、タブレットやスマートフォンなどに押され、2四半期連続の2ケタ減となった旨。減少幅は過去最大だった1〜3月(13.9%減)より縮まったが、上位5社すべてが出荷台数で前年同期を割り込んだ旨。

中国はじめ韓国、台湾での人材争奪戦がこのところよく見られており、目に入るだけで次の通りである。

【人材獲得&育成】

◇日本人技術者40人採用、鴻海、液晶部品を設計 (7月6日付け 日経)
→電子機器の受託製造サービス(EMS)最大手、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が、約40人の日本人技術者を来年までに採用する旨。リストラで電機大手を中途退職した人材を中心に募集、開発や生産現場の実務担当者として活用する旨。大阪市にある日本法人が雇用、主な採用対象者はスマートフォンやタブレットに搭載する液晶モジュール(複合部品)の設計や、液晶パネル生産などに携わった技術者、年齢制限は設けない旨。

◇IT人材争奪インド過熱、サムスン、新卒に1500万円提示 (7月9日付け 日経)
→インドでIT人材の争奪戦が過熱してきた旨。同国の理工系学生の卒業生は毎年70万人と日本の約7倍、新たな製品やサービスを生み出す力を備えつつあることから、厳しい競争を勝ち抜いた優秀な学生に1000万円を超す年俸を提示する海外企業も登場した旨。インドの頭脳をどう生かすかが、低迷する日本のITの活路にもなるかもしれない旨。

インドでは、教育の内容がアップデートされているかという問題意識が見られている。

◇'Syllabus for engineering colleges is defective', says minister (7月11日付け EE Times India)
→Union Minister for Science & Technology、S Jaipal Reddy氏。インド政府は、工学系志望者が理論的知識とともに最新の科学技術skillsを開発できるように、工学系collegesの授業摘要再構築に取りかかっている旨。

上に触れたSEMICON Westでの半導体製造装置市場データが、以下の通りである。今年は2年連続で販売高が減少する見込みであるが、来年、2014年での戻しを期待する内容である。

【半導体製造装置市場】

◇Chip Manufacturing Sector Getting Upbeat About 2014-SEMI: 2013 to be a so-so year for IC gear, 2014 to be better (7月8日付け The Wall Street Journal/Digits blog)

◇SEMI sees 21% increase in chip equipment spending for 2014 (7月9日付け ELECTROIQ)
→本日リリースされたSEMI Capital Equipment Forecastのmid-year版。
2014年の半導体装置販売高は$43.98Bに達し、2013年から21%増と見ている旨。データ内容、次の通り:[金額単位:USB$]

【装置種別】

2012
2013F
%Chg
2014F
%Chg
Wafer Processing
28.15
28.70
1.9
35.59
24.0
Test
3.55
3.00
-15.5
3.18
6.0
Assembly & Packaging
3.08
2.55
-17.2
2.90
13.7
Other
2.15
2.04
-5.1
2.32
13.7
Total Equipment
36.93
36.29
-1.7
43.98
21.2

【地域別】

2012
2013F
%Chg
2014F
%Chg
Korea
8.67
6.69
-22.8
8.74
30.6
Taiwan
9.53
10.43
9.4
10.62
1.8
North America
8.15
8.04
-1.3
8.75
8.8
Japan
3.42
3.80
11.1
4.61
21.3
Europe
2.55
2.35
-7.8
4.21
79.1
China
2.50
2.81
12.4
5.11
81.9
Rest of World
2.10
2.17
3.3
1.94
-10.5
Total Equipment
36.93
36.29
-1.7
43.98
21.2

 [Source: Equipment Market Data Subscription (EMDS), SEMI]

◇Fab Tool Market Expected to Contract Again (7月9日付け EE Times)
→SEMI(San Jose, Calif.)発。半導体製造装置市場が、2013年は2年連続で減少する見込み、しかし2014年には力強く戻すと見る旨。


≪グローバル雑学王−262≫

我々「北」側の国々の成長モデルは、環境的にも、社会的にも、そのままではアフリカのお手本にはならない、と繰り返して

『新・現代アフリカ入門 −−−人々が変える大陸』  
  (勝俣  誠 著:岩波新書(新赤版)1423) …2013年4月19日 第1刷発行

より知らされるアフリカである。地球環境の様々な問題も、発端は「北」側にあって、アフリカは世界で最も排出量が低く、最も地球環境に負担をかけていない、地球に最も優しい地域というくだりに考えさせられる。「北」側の範囲内に今まで留まりがちであるが、これからはそれこそ全世界の公正な国際ルールのあり方というものを考えさせられている。


第1章 所変われば品変わる   ≪後半≫

1. 実に多様な地理世界   …つづく

□砂漠化対策は砂漠緑化ではない
・アフリカにおける砂漠化現象への国際社会の注目
 →1970年代初頭にサヘル地域を襲った大旱魃以降
・1992年、ブラジルのリオデジャネイロにて、「地球サミット」開催
 →交渉プロセスから、砂漠化防止条約(後に砂漠化対処条約に変更)が誕生
  →「砂漠化防止」…援助の名のもとに実に多様な解釈
・かつて農耕などに使われてきた土地の地力をいかに回復させるか、が対策の主要目標
 →土壌の回復は何よりもまず、地域住民の参加によって実現すべきとしている
・砂漠化の最も直接的原因
 →1960年代以降、急速に進行している都市化
 →樹木の再生産サイクルをはるかに上回る規模の森林伐採

□農地拡大による森林減少
・農地拡大のための森林伐採の開始時期 →植民地期に遡ることが多い
・(例)西アフリカのセネガル
 →フランス植民地当局は、落花生栽培を政策的に奨励
 →高まる現金収入の必要性から森林伐採による農地拡大へ
・地力を劣化させ砂漠化を進行させる持続不可能な農業
 →砂漠化の強力な促進要因

□政治が促進する砂漠化
・一口に砂漠化を防止といっても、具体的に実施する際には、様々な政治的
 ・社会的軋轢
 →砂漠化対策とはすぐれて政治問題

□熱帯雨林減少の論理
・植民地時代から続行する熱帯の木材の輸出、耕地の拡大、さらには鉱物資源の開発など
 →熱帯林を確実に減少
・(例)コンゴ盆地の熱帯雨林の減少の危機
 →戦乱や予算不足で行政の監視機構が不在
 →森林買い付け業者による政府決定の買収
 →いまだ本格的に熱帯雨林破壊の進行を止めることが出来ていない国
 →環境問題は政治化されている

2. 地球温暖化とアフリカ

□異常気象はアフリカにも
・1990年代末以来、サヘル地域やギニア湾諸国で洪水災害が多発
・東アフリカ、南部アフリカ、マダガスカルなど、深刻な旱魃、大洪水が間欠的に発生
・以下、私たち「北」が向き合う二つの課題

□誰が誰を助けるのか
・第1 地球環境は、人類のいわば国際的公共財
 →先進国の方が歴史的に環境の負荷に責任が重く、「南」の途上国に比して、より多くの技術的・資金的努力をしなければならない
・アフリカこそ世界で最も排出量が低く、最も地球環境に負担をかけていない、地球に最も優しい地域
・「北」の環境破壊型社会が、「南」に負う、その豊かさの代償
・アフリカのような後発諸国が環境を破壊しない新たな経済発展を実現していくこと
 →人類にとっての長期的な環境保全投資に

□環境破壊なき経済発展を
・第2 アフリカもまた、環境的に持続可能な発展を如何に築いていくかという問題に応える必要
・従来の自然保護の発想は、もはやアフリカ社会の新たなニーズと合致しない
・昨今の「北」各国の成長モデルは、環境的にも、社会的にも、そのままではアフリカのお手本にはならない
 →「北」の環境破壊型の経済発展とは異なる新しい経済発展モデル、ないし新しい持続可能な社会のあり方

3. 人々は待つことができない

□地球環境は地域住民が守る
・自らが必要とする地域環境を守る、より公正な国際ルールの実現に向けて、果たしてどこまで国際交渉力を強化できるか
・環境の悪化の影響を日々最も直接的に受けている地域の声がアフリカの政府代表に届くことが不可欠
 →一国内の権力の正当性を確実なものにしていく民主化の問題

□木を植えて、市民が育つ
・ケニア出身のワンガリ・マータイ(2004年にノーベル平和賞を受賞:2011年に他界)の試み
 →彼女たちが手掛けた植林運動、「グリーン・ベルト・ムーブメント」
 →従来の行政主導の植林運動とは少なくとも異なる以下の2点

□地元の樹種・作物に注目する
・第1 植林活動の参加者が自分たちの地域の資源と自分たちの得た知識を活用しようとした
 →多様かつ外国に頼らない自家採種
 →女性たちは、自分たちの言葉を用いてプロの森林官も認めるほど植林活動に成功
・第2 環境保全活動が、考える住民、すなわち「市民」づくりに結びついている
 →植林活動は、政治を考える市民を育てるアプローチ

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