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とうの昔そうなのに、改めての中国インパクト、DRAM市場の変遷

新興市場を代表する中国、そしてモバイル機器の急拡大、と何をいまさらという感じであるが、いろいろな切り口で改めての認識が求められる雰囲気を感じている。半導体市場の6割近くをAsia Pacificが地域別に占め、その中の大きな比率を中国が引っ張る現時点である。グローバルエレクトロニクス生産の半分以上が中国という下りが見られるが、当然かもしれない。もう一つ、DRAM市場も然り、応用分野として長らく引っ張っているパソコンをモバイル機器が今にも追い抜くというデータが表われている。

≪様々な急展開≫   

中国のインパクトの大きさといえば、まずは中国株がくしゃみをすれば、という事態を感じた以下の内容である。すぐに戻し基調になってはいるが、目を離せないところと思う。

◇中国人民銀行が緊縮信号…中国株価5%急落、KOSPIも1800に下落 (6月25日付け 韓国・中央日報)
→中国の中小銀行が資金難に陥るという危機感に韓国・中国をはじめとするアジア株式市場が一斉に下落、上海総合指数は24日、前日より109.86ポイント(5.3%)急落した1963.24で取引を終えた旨。株価を落としたのは、中央銀行である人民銀行が昼間の12時頃にホームページに掲載した声明書、この中で「現在の中国金融の全般的な流動性は、合理的な水準」と明らかにした旨。中国内の中小銀行が資金不足に苦しんでいるが、これを解消するために金融を緩める意向はないということを表わした旨。
余波はアジア全域に及び、KOSPI(Korea Composite Stock Price Index:
韓国総合株価指数)指数は1.3%下落して1799.01に、1800を下回ったのは昨年7月以来約11カ月ぶりの旨。日本の日経指数は1.3%、インドネシアは1.9%、シンガポールは1.6%下落した旨。

◇東証14時、上げ幅拡大、1万3200円に迫る、上海株が午後も堅調 (6月27日付け 日経 電子版)
→27日の後場中ごろの東京株式市場で日経平均株価が上げ幅を拡大、一時は前日比363円高の1万3197円と1万3200円に迫った旨。日本時間14時に午後の取引が始まった中国の上海市場で上海総合指数が堅調に推移しているのを受けて買い安心感が強まり、トヨタやホンダなど主力株の一角が一段高となった旨。

中国の中のことではあるが、注目したのが、モバイル機器用プロセッサ半導体のSpreadtrum Communications社を国有会社が買収に動いている以下の内容である。

◇Chinese state firm offers $1.38 billion for Spreadtrum (6月24日付け EE Times)
→中国国有holding会社の子会社、Tsingua Unigroup Ltd.が、携帯電話用半導体メーカー、Spreadtrum Communications社(Shanghai, China)買収に、$1.38B in cashを提示の旨。ファブレス半導体大手プロバイダー、Spreadtrumは、2G, 3Gおよび4Gワイヤレス通信用半導体を出している旨。

◇Tsinghua offers to buy Spreadtrum for US$28.50 per share (6月25日付け DIGITIMES)

その一方では、台湾のファブレス半導体大手の合併について中国Ministry of Commerceが注文をつけて実現が遅れる事態となっている。中国の影響力の影を感じるところである。

◇MediaTek still pursuing merger deal with MStar-MediaTek chairman: The deal with MStar is still on (6月24日付け The Taipei Times (Taiwan)/Chinese News Agency)
→MediaTekのChairman、Tsai Ming-kai氏。中国Ministry of Commerceの競合上の反対にも拘らず、IC設計のMediaTekは、遅れているMStar Semiconductorとの合併合意を追求している、と株主に説明の旨。
ministryとの話し合いが最終段階に入っている旨。

半導体市場の伸びを引っ張る中国であるが、中国だけで今後大丈夫か、という論調が見られている。以下に示す中国の製造水準であり、やむなしという見方で落ち着いている現時点のようである。

◇Can China Alone Drive Semiconductor Growth? (6月26日付け Design and Reuse)

◇Good for China; bad for everyone else-Electronics production soars in China as it ebbs elsewhere, firm says (6月27日付け Electronics Weekly (U.K.))
→Semiconductor Intelligence発。グローバルエレクトロニクス生産の半分以上が中国にあり、製造水準が2000年以降8倍以上に増大している旨。一方、台湾は、世紀が変わって以降エレクトロニクス生産の同じ比率をなんとか維持している旨。

ふた昔前の情勢とのあまりの変わりようにいろいろ抗弁もすべなしという風情であるが、中国インパクトに加えてもう一つ、DRAM市場もそれに当てはまってくる。まずはDRAM用ウェーハ水準の成熟感である。

◇DRAM market consolidates, gains in stability(6月24日付け EE Times)
→IHSのIHS DRAM Dynamics Market Brief発。DRAMグローバル市場がある成熟に達し、該業界が今年需給バランスが得られるようになる旨。DRAMウェーハoutputが2008年に300-mm換算で16.4M枚とピークに達した後、今年はそれから24%減少して13.0M枚になる見込みの旨。

DRAMの消費については、パソコンを今にも追い抜くモバイル機器という見方がいっそう前倒し基調に感じる以下のデータとなっている。現下の趨勢を反映する内容と受け止めている。

◇Post-PC shift: Mobile devices to consume more DRAM than PCs in 2015 (6月25日付け ELECTROIQ)
→IHSのDRAM Dynamics Brief発。post-PC時代の到来を言い当てる兆候、携帯電話並びにmedia-およびPC-型タブレット用のモバイルプラットフォームが、DRAMの最大consumerとしての従来のdesktops, notebooksおよびサーバを今にも追い抜くばかりになっている旨。2015年にはモバイル機器が$11.6B相当のDRAMを用いる一方、従来のPCsは$9.9Bと見る旨。モバイルプラットフォームがDRAM消費のmajorityを初めて占めることになるし、従来のPCsが先頭に立たないのは1980年代以来初めての旨。
・≪グラフ≫ PCsおよびモバイルhandsets & Media/PCタブレットのDRAM市場売上げグローバル予測:2012〜2017年
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/06/post%20pc.jpg


≪市場実態PickUp≫

Apple社のモバイル機器の中核、A-シリーズプロセッサのファウンドリー製造受託供給について、TSMCとAppleが3年契約を結んだという報道が以下の通り表われている。

【TSMCとAppleの3年契約】

◇TSMC signs up Apple for three-year FinFET deal (6月24日付け EE Times)

◇TSMC reaches deal with Apple to supply 20nm, 16nm and 10nm chips, sources claim (6月24日付け DIGITIMES)
→業界筋発。TSMCとそのIC設計サービスパートナー、Global UniChipが、Appleとの20-nm, 16-nmおよび10-nmプロセスノードで作る次のA-シリーズ半導体に向けてファウンドリーサービスを供給する3年合意を確保の旨。

◇TSMC signs 3-year chip deal with Apple(6月25日付け EE Times India)
→TSMCが、iPhone-メーカー、Apple社と3年の合意に入った旨。TSMCは、20-nm planar CMOSから始めて、16-および10-nmノードでのFinFETプロセスを用いるプロセッサをAppleに供給する運びの旨。TSMCのIC設計サービスパートナー、Global UniChipもこの合意に関係する旨。

このファウンドリー製造委託先をSamsungからTSMCに切り替えるという報道が出てきて久しいが、実際に具体的な解析写真からの見方が次の通りである。

【AppleのA7プロセッサ】

◇Photos hint at A7 chip being used in iPhone 5S-Early prototype could already be using TSMC-built chip-Photos show iPhone 5S with an A7 processor, reportedly made by TSMC (6月24日付け Electronista)
→新しい解析写真より、Appleの次世代flagship iPhone、iPhone 5Sが、A7プロセッサを使っている様相、該半導体はAPL0698のmodel number、A6のAPL0598あるいはA6XのAPL5598とは違っている旨。また"K1A0062" identifierに注目、Appleが半導体メーカーとしてSamsungを外してTSMCに替えるという報道に戻る旨。当初のA-シリーズ半導体は"N" identifiersをもち、Samsung品番を示していた旨。

なかなか道筋が見えてこないインドでの半導体工場建設であるが、イスラエルの半導体メーカー、TowerJazzをはじめとするグループが、以下の通り取り組む動きになっている。

【インド初の半導体工場】

◇TowerJazz group wins India contract to build chip plant -report (6月25日付け Reuters)

◇TowerJazz group to build chip fab in India (6月26日付け EE Times India)
→Calcalist financial news website発。イスラエルの半導体メーカー、TowerJazz, IBMおよびインドのインフラメーカー、Jaypee Associatesから成るコンソーシアムが、インドで最初の半導体工場建設に名乗りの旨。
ノウハウ、コンサルティングおよびサポートサービスを供給するTowerJazzは、該プロジェクトから6年にわたって$300Mの売上げ、その90%が利益になると見込む旨。

秀でた才能に光を当てて繁栄しているSamsungに習え、と台湾で以下の取り上げ方である。マネジメントのあり方、またまた考えるところである。

【Samsungからの教訓】

◇The lesson to be learned from Samsung: Q&A with Inotera chairman Charles Kau-Inotera chairman: Samsung prospered by grooming its own talent (6月27日付け DIGITIMES)
→Inotera MemoriesのchairmanでNanya Technologyのpresident、Charles Kau氏。Samsung Electronicsは、chairmanの指針指導のもと有能な従業員を認めることにより今世紀繁栄できている旨。しかし台湾では、大方のビジネスが如何に生産コストを減らすかに重点化、才能の価値を無視している旨。

ルネサスエレクトロニクスがノキアから買収した携帯電話用のシステムLSI事業からの撤退を発表している。我が国電機・エレクトロニクス業界の回復が焦点と現下の連日の紙面にある。

【ルネサスの携帯シスL撤退】

◇Renesas to Discontinue Wireless Modem Ops Bought From Nokia -Renesas will shutter former Nokia wireless-modem operations in China, Finland, India (6月27日付け The Wall Street Journal/Dow Jones Newswires)

◇携帯向けシステムLSI、ルネサスが撤退、海外1430人、従業員削減 (6月28日付け 日経)
→ルネサスエレクトロニクスが27日、携帯電話用のシステムLSI事業から撤退すると発表、今年12月末にフィンランドなど海外のグループ3社の事業を停止、約1430人の従業員を削減する旨。同事業は2010年にフィンランド・ノキアから買収したが赤字が続いてきた旨。富士通などへの売却交渉も頓挫、事業撤退で構造改革を急ぐ旨。


≪グローバル雑学王−260≫

元素周期表から読み取れる世界をいろいろ辿ってきたが、法則性の最も顕著なグループ12以外はどうなっているか、そして周期表で世界観が如何に見事に表れているかを見て、これまで読み通してきた

『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』  
  (吉田 たかよし 著:光文社新書) …2012年10月20日 初版1刷発行

も今回で締めとなる。アメリシウム(Am)、フランシウム(Fr)など国名がついた元素があるが、日本の国名はまだという理解である。日本の理化学研究所による原子量113の新元素、「ジャポニウム」(?)の認定が心待ちである。

※元素周期表として、理化学研究所 仁科加速器研究センターからの次の例がある。
http://www.rarf.riken.jp/enjoy/images/genso.pdf


第7章 周期表からリスクと健康を見きわめる  ≪後半≫

以上、グループ12について見てきたが、他について次の1、2を以下解説。

1.典型元素に見られる「よく使う元素の真下の元素は毒性がある」という法則
2.遷移元素に見られる「横一行でだいたい同じ性質」という法則

□ルビジウムの時計は10万年間狂わない
≪グループ1≫
・第5周期はルビジウム(Rb)
 →NHKの時報には、ルビジウムを用いた原子時計
 →医療にも。PET(陽電子放射断層撮影)の検査用、心筋梗塞の診断で力を発揮。
・ルビジウムは微量なら問題ないが、大量に摂取するとカリウムの代謝が異常をきたし、深刻な毒性

□世界の標準時間はセシウムで決められている
・グループ1の第6周期の元素はセシウム
 →世界の標準となる時間は、セシウムを用いた原子時計を基準に決められている
 →最も精度の高い時計、さすがに高価
・安定している同位体、セシウム133 →原子時計
 放射能を持っているセシウム137 →医療の世界では以前から広く利用 
                   →白血球を不活性化:がんの治療にも

□バリウムは実は猛毒
≪グループ2≫
・第3周期のマグネシウム、第4周期のカルシウム →人体で積極的に利用
・第5周期のストロンチウム →骨の中に存在
・第6周期のバリウム(Ba) →人体にはほとんど存在しない 
              →体内に入るとバリウム中毒を起こす
 →周期表で人体がよく使う元素の下に毒性元素があるという法則に当てはまる
 →医療の検査で使うのは硫酸バリウムという化合物

≪グループ3〜グループ11≫ ⇒遷移元素
≪グループ12≫ →本章前半で既述

≪グループ13≫
・第2周期のホウ素(B) →宇宙ではそもそも少量しか存在しない
・第3周期のアルミニウム以降 →人体はほとんど使っていない
⇒上記法則1の対象外

≪グループ14≫
⇒上記法則1の対象外

≪グループ15≫
・第2周期の窒素、第3周期のリンは、人体に豊富に存在
・第4周期のヒ素(As) →毒性
・第5周期のアンチモン(Sb) →猛毒
⇒上記法則1がきれいに当てはまる

≪グループ16≫
・第4周期のセレン(Se) →人体に必須の元素
 →人体に有益な元素と有害な元素の境目が、セレンにある
 →第5周期のテルル(Te)には毒性

≪グループ17≫
⇒上記法則1について、判定の対象外

≪グループ18≫
⇒希ガスゆえ、上記法則1の対象外

□遷移元素は、横一行でだいたい同じ性質
・≪グループ3≫から≪グループ11≫までを占める遷移元素
 →上下ではなく横方向の共通性に注目すべき
・第4周期の遷移元素 …いずれについても人体はおおむね微量を必要 
 →人体に最も重要なのは鉄
 →次に重要なのが銅、欠乏するとやはり貧血に
 →コバルトはビタミンB12を構成している元素、不足するとやはり貧血に
・第5周期の遷移元素 …すべての元素が人体に対して弱い毒性を持っていると考えられる
・第6周期の遷移元素 …レアアースのランタノイドを含み、全部で23個も
 →いずれの元素も宇宙での存在量がごく微量、人体には要しないし、ほぼ素通り

【あとがき】
・国名がついた元素
 →アメリシウム(Am)、フランシウム(Fr)、ルテニウム(Ru)[…ロシア]、ゲルマニウム(Ge)[…ドイツ]、ポロニウム(Po)[…ポーランド]
 →日本の国名がついた元素は、今のところひとつもない
・2012年9月、日本の理化学研究所による原子量113の新元素の発見
 →国際的に認められる可能性
 →「ジャポニウム」が有力か
・宇宙が存在する限り、元素は元素であり続ける
 →元素のスケールの大きさ
・周期表の本質は、科学が到達した曼荼羅
 →曼荼羅…調和のとれた宇宙の有り様が描かれている
 →世界観が、周期表と見事なまでに共通している

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