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最先端への取り組み:欧州試作ライン、アブダビR&D、FinFET FPGAs

モバイル機器活況に大きく傾斜、パソコンが盛り返しを図る現時点の半導体を取り巻く市況のなか、欠かせないのは絶え間ない微細化、高性能化に向けた最先端技術への取り組みである。これは半導体の歴史でこれまで繰り返してきて当然のことではあるが、技術面、経済面ほかのますます高まる現状の障壁を打開するために、新たな地域、連携の取り組みが時を同じくして打ち上げられている。世界半導体業界として"グローバルな協調と競争"が謳われて約17年、今日まで進展してきた中でのひとつ新しい段階を感じている。

≪新たな地域、連携の取り組み≫   

欧州では、Europe Electronics戦略として5つの半導体製造試作ラインプロジェクトが以下の概要で打ち上げられている。政府が支援をして各メーカーの続く出資を期待するもので、450-mmはじめ従来の技術展開に加えて、欧州がリードするfully-depleted silicon-on-insulator(FDSOI)、MEMSといった新路線が含まれて打ち出されている。

◇Europe adds to chip pilot line support list-EU will support 4 more IC pilot lines (5月29日付け EE Times)
→European Commission(EC)が、以前発表のfully-depleted silicon-on-insulator(FDSOI)プロジェクトに加えて、LEDsから450-mm径ウェーハに?至る技術をカバーする4つの試作ラインプロジェクトを発表、これら5つの半導体製造は5月23日に発表されたEurope Electronics戦略の一環であり、20ヶ国128社が関わる旨。該試作ライン概要:
・AGATE試作ライン…Soitec SA(Bernin, France)主導。パワー半導体およびLEDs用gallium nitride on silicon substrates
・E450EDL試作ライン…IMEC(Leuven, Belgium)およびASML Holding (Veldhoven, The Netherlands)が拠点。450-mm径ウェーハ用装置、材料、最初の処理工程
・EPPL試作ライン…Infineon Technologies AG。パワーコンポーネント用thinnedウェーハ。
・Lab4MEMS試作ライン…STMicroelectronicの2拠点、Agrateの前工程およびMaltaの後工程
・Places2Be試作ライン…3年、約$465M。FDSOIのパイオニア、STMicroelectronics NVが主導。STのCrolles, FranceウェーハfabおよびGlobalfoundriesのDresden, GermanyのFab 1。

時を同じく、中東U.A.E.のアブダビからは、国際半導体リサーチセンターが打ち上げられ、米国Semiconductor Research Corporation(SRC)が支援を行うとしている。新しい半導体地域として今後の進捗、プレゼンスに注目である。

◇SRC sponsors chip research in Abu Dhabi-SRC will help fund Abu Dhabi-based IC R&D center (5月29日付け EE Times)
→Semiconductor Research Corporation(Research Triangle, N.C.)が、United Arab Emerites(UAE)の首都、Abu Dhabiに位置する初の国際半導体リサーチセンターに参画、Advanced Technology Investment Company LLC(ATIC), Khalifa University of Science, Technology and ResearchおよびMasdar Institute of Science and Technologyが創設するこの新しいATIC-SRC Center of Excellence for Energy Efficient Electronic Systems(ACE4S)は、最初の3年で$10Mの総初期予算の旨。ACE4Sの使命は、AMD, Applied Materials, Freescale, Globalfoundries, IBM, Intel, Mentor Graphics, Texas InstrumentsおよびTokyo ElectronなどSRCメンバーとの協力で定義されている旨。

◇Abu Dhabi doubles down on semiconductor research (5月29日付け ELECTROIQ)

これも時を同じくして、FPGAの米国Xilinxとファウンドリー最大手、台湾TSMCが、16-nm FinFET FPGAsに連携して取り組む発表を行っている。両社は、最高性能そして最大密度、三次元半導体技術を駆使したFPGA開発で今までも連携しており、本格的なvolumeビジネスに向けてさらに先に進む内容と受け止めている。

◇Xilinx, TSMC team up for 16nm FinFET FPGAs (5月29日付け DIGITIMES)
→XilinxとTSMCが、16-nm FinFETプロセス技術によるFPGAs連携を共同発表、XilinxのUltraScaleアーキテクチャーでのTSMCのFinFETプロセスのco-optimizeを一緒に行う旨。2013年後半に16FinFETテスト半導体、2014年に最初の製品を出していく旨。

◇TSMC turns to Xilinx partnership to maintain edge-TSMC will make 16nm chips for Xilinx in 2014 (5月30日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TSMCが、Xilinxに向けて16-nm featuresを擁する半導体の製造を来年開始する旨。TSMCのXilinxとの連携拡大は、3Dプロセス半導体の立ち上げの能力懸念を和らげ、商用volumeに達する支えになる、とCredit Suisseの見方。

◇新型半導体を共同開発、米ザイリンクス、台湾のTSMCと (5月31日付け 日経産業)
→米ザイリンクス社が、TSMCと共同で新型半導体の開発を進めると発表、現在よりも回路の微細化とチップの小型化を両立できる技術を確立し、2014年度の実用化を目指す旨。

日米半導体協議に端を発する世界半導体会議(World Semiconductor Council[WSC])が、このほど第17回を迎え以下の概要が米SIAから報告されている。
国際協力を強化する流れから、上記の新たな地域、連携の取り組みが、一層グローバルな場に発展していく期待感がある。

◇Global Semiconductor Leaders Reach Agreement on Plan to Strengthen Industry through International Cooperation-World Semiconductor Council achieves consensus on key trade policy initiatives; group will present plan to global governments/authorities for action(5月28日付け SIA Press Release)
→先週Lisbon, Portugalで開催された第17回World Semiconductor Council(WSC)のannual meetingについて。国際協力を通して半導体業界を強化する政策initiatives一式で合意に達した旨。


≪市場実態PickUp≫

苦境にあるSTMicroelectronicsとEricssonの合弁、ST-Ericssonが、Global Navigation Satellite System(GNSS)事業を売却という報道が表われている。

【ST-EricssonのGPS関連事業、インテルが買収】

◇ST-Ericsson Sells GNSS Business's Assets, Property Rights-ST-Ericsson to sell sat-nav business assets, IP (5月28日付け Fox Business/Dow Jones Newswires)
→ST-Ericssonが、グローバルnavigation衛星システム事業のassetsおよびintellectual property(IP)をある買い手に売却合意、8月の売却締結で約$90Mのcash収入を期待の旨。

◇STMicroelectronics announces sale of ST-Ericsson mobile connectivity GNSS business (5月28日付け ELECTROIQ)
→Global Navigation Satellite System(GNSS)事業について。

ここまでは売却先が不明であったが、同日中続いてIntelへの売却が以下の通り明らかになっている。

◇ST-Ericsson sells GPS business to Intel-Intel is identified as buyer of ST-Ericsson's GNSS business (5月28日付け Reuters)

◇Intel to Buy ST-Ericsson's GPS Chip Business-The deal is part of the larger breakup of ST-Ericsson, a failed joint venture between Ericsson and STMicroelectronics. (5月28日付け eWeek)

◇Updated: STMicroelectronics announces sale of ST-Ericsson mobile connectivity GNSS business to Intel (5月29日付け ELECTROIQ)
→ST-EricssonのGNSS事業の買い手がIntelと明らかになっている旨。該取引は、Intelが食い込みたいとしている領域、モバイル半導体事業での同社の位置を拡げるものである旨。

◇Intel buys GPS mobile unit from ST-Ericsson (5月30日付け EE Times India)

◇GPS関連事業を買収、米インテル、成長分野を強化 (5月31日付け 日経産業)
→米インテルが29日、スイスの半導体メーカー、STエリクソンから全地球測位システム(GPS)関連事業を買収することを明らかにした旨。GPS関連部品は市場拡大が見込まれており、インテルは買収により成長分野を強化する旨。今回の部門買収はインテル新体制の最初のM&A、インテルが出遅れたモバイル機器分野の強化を急ぐ方針を示している旨。

モバイル機器Supply ChainをリードしているAppleとFoxconnの間に方向のシフトが見られている。Appleは製造委託先を一部FoxconnからPegatronに切り替える動きがある一方、Foxconnの方は受託製造の枠を越えた事業多角化が進められている。

【Supply Chainでのシフト】

◇As Apple Feels Bite, Hon Hai Looks to Diversify-Analysis: Hon Hai looks beyond making iPads, iPhones (5月27日付け The Wall Street Journal)
→Hon Hai Precision Industry(商取引名Foxconn)が、Appleをはじめとする顧客に対して行っているcontract製造を超えて事業多角化を進めており、mediaコンテンツおよびソフトウェアに投資、自分のブランド名で製品販売を始める可能性の旨。

◇Apple Shifts Supply Chain Away From Foxconn to Pegatron-Pegatron said to get contract to assemble low-cost iPhone (5月29日付け The Wall Street Journal)
→今年投入が見込まれる低コストiPhoneについて、Appleが、組立作業のあるものを今まで大半のiPhonesを製造してきたFoxconnからPegatron(台北)に割り当てる方向の旨。Pegatronは、Appleの仕事に低めの利益マージンで臨むと見られる旨。Appleはこの報道にコメントしていない旨。

$200 PCへの動きに注目したばかりであるが、タブレットについては$100台という価格帯が中国で見られており、すでに売れ筋の1つになっているとのこと。中国市場の飽くなき追求がまたまた進んでいる。

【$100台タブレット】

◇China market: White-box tablet makers approaching MediaTek for quad-core solutions (5月27日付け DIGITIMES)
→業界筋発。中国のwhite-boxタブレットメーカーが、中国サプライヤからMediaTekの方にタブレット用integrated MT8125および8135 quad-coreアプリプロセッサを買おうとアプローチしている旨。背景には、中国および台湾のbrandedタブレットベンダーが、US$99-149分野に向けてタブレット用該MT8125および8135ソリューションを用い始めている旨。

◇China market: Lenovo prices the A1000 tablet at around CNY1,000 (5月27日付け DIGITIMES)
→Lenovoが、約CNY1,000(US$163)ほどの価格で、新しいLenovo A1000を中国で最近販売開始、該タブレットはすでに中国で最も売れている1つになっている旨。


≪グローバル雑学王−256≫

情報を伝達する神経、身体を動かす筋肉と、人類、生命体の極めて重要な機能が、ナトリウムとカリウムという2つの元素によって本質的に担われていることを、

 『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』  
  (吉田 たかよし 著:光文社新書) …2012年10月20日 初版1刷発行

より、元素周期表に照らしながら確認していく。高血圧、塩分取り過ぎ、耳に障る響きがあるが、生物が陸上生活を始めたときに遡る抑えがたい原因に辿り着く。食生活の見直しがここでもアドバイスとして目に入ってくる。

※元素周期表として、理化学研究所 仁科加速器研究センターからの次の例がある。
http://www.rarf.riken.jp/enjoy/images/genso.pdf


第4章 私たちはなぜ、動くことができるのか

□動物は2つの元素で動かされている
・本章では、38億年の生命の進化の謎に焦点
 →主に、生命の多様な機能の中でもきわめて重要な神経と筋肉
・神経とは、電気の刺激(インパルス)を使って、情報を伝達する組織
・筋肉は、縮んだり伸びたりして身体を動かす働き
・神経と筋肉は、ナトリウムとカリウムの2つの元素によって機能の本質的な部分が担われている
 →どちらの元素もグループ1
 →人の体内では、最も外側の1個の電子を失い、プラス1価のイオンの状態で存在
・周期表では、ナトリウムとカリウムは上下に隣接

□ナトリウムは不安定な金属
・純粋なナトリウムは、金属特有の光沢をもつ銀色のかたまり
 →ただし、最も外側の軌道に電子がポツンと1個、とても不安定
 →空気中に放置、酸素と反応、アッという間にイオンに変化
 →水と激しく反応、水素を発生、爆発を起こすことも
 →研究室ではナトリウムを石油の中につけて保存
・人体にあるナトリウムは、すべてプラス1価の安定したイオンとして存在

□体重60キロの人は、4000ベクレル保有している
・カリウムは、ドイツ語。植物の灰を意味するアラビア語が語源。
・人の体内、体重1キロあたり2グラムあまりのカリウム
 →うち1万分の1は放射性のカリウム
 →体重が60キロであれば、人体全体で4000ベクレルの放射能
  ⇒健康に影響があるとは考えられないレベル
・カリウムも、純粋に単独で存在している場合は、銀色に輝く金属のかたまり
 →他のアルカリ金属と同様、とても不安定

□幽霊ポーズはなぜ生まれた?
・神経は、興奮のオン/オフの組み合わせで情報を伝達可
・筋肉は、収縮した後に伸びて元の状態に戻ることができるため役に立つ
・死後硬直からくる幽霊のポーズ
・神経の細胞と筋肉の細胞、いずれも普段は、細胞の内側が電気的にマイナス、細胞の外側が電気的にプラス
 →オフの状態
 ⇒信号が伝わってくると、一時的に細胞の内側と外側のプラスとマイナスが逆転
  →オンの状態 …筋肉は縮み、神経は刺激を伝える

□「よく似ているけどちょっとだけ違う」元素同士の相性
・人間の細胞は全身で60兆個、すべてにカリウムがタップリ
 →細胞の外側にはリンパ液や血液、ナトリウムが豊富
・細胞を包む膜には、ナトリウムだけが通れる専用の穴と、カリウムだけが通れる専用の穴
・筋肉も神経も、信号が伝わってくると、まずナトリウム専用の穴が開く
 →細胞の内側と外側でプラスとマイナスが入れ替わる
 →筋肉は自動的に縮み、神経は刺激を伝える
・ナトリウムが細胞の中に入ってきて細胞の中がプラスになると、今度はカリウム専用の穴が開く
 →元のオフの状態にリセット、筋肉も神経も、次の刺激に備えられる
・筋肉も神経もナトリウムとカリウムが対照的に働くことによって機能を発揮

□単細胞生物が選択した元素
・人体の場合、細胞の外側にあるのは、リンパ液や血液
 →単細胞生物の時代まで遡れば、細胞の外側にあったのは海
  →プラスイオンの元素で圧倒的に多いのは、ナトリウム
・ナトリウムはじめアルカリ金属は、外側に1個だけ孤立した電子
 →放出してプラス1価のイオンに、ものすごく水に溶けやすい
 →海水に豊富に含まれることに
・ケイ素(Si)は、地球上にナトリウムより豊富に存在
 →水に溶けず、ほとんどが岩石の中に
・細胞の内側から外側に出ていく元素を選ぶ必要
 →海中では圧倒的に多いカリウム、生命はこちらを選んだ

□高血圧を招く食塩欲求
・「健康のため、食塩の取り過ぎはダメ、カリウムは豊富に」
 →この原因は、生物が陸上生活を始めたときに遡る
・陸上に進出した途端、ナトリウムが乏しい環境に直面
 →「食塩欲求」(医学用語)
・一方、カリウムは、食料としていた植物の細胞に豊富に含まれていた
・現代では、岩塩から取り出した塩化ナトリウムを安く入手可能に
 →欲望のまま飲食をしていると、ナトリウムを取り過ぎてしまう
・細胞の外側にあるリンパ液や血液のナトリウム濃度を一定の水準に維持する仕組みが発達
・ナトリウムを取り過ぎた場合、血液が増えて血管を内側から強力に押すので、血圧が上がる
・1日に捨てられるナトリウムの量を増やす方法がただ一つ
 →カリウムを豊富にとること
・腎臓は血液をこしとって、いったん尿の元になる原尿をつくる
 →この中からナトリウムやカリウム、それに糖分など人体に必要な成分を再吸収して血液に戻す
・人体が周期表の中で上下に隣接したナトリウムとカリウムをセットにして管理してきた歴史の名残り

□栄養摂取量は元素同士で調整し合っている
・我が国男女とも大幅にナトリウムの摂取量がオーバー
 →高血圧が国民に蔓延している原因
・まずやるべきこと、ナトリウムの摂取量を減らす努力
 →とはいえ、そう簡単には減ってくれない
 →推奨するカリウムの摂取量を一気に増やすことに
・野菜や果物、それに豆類、カリウムを取れる
 →特にお勧めは、コンブやヒジキなど海藻類
  →ナトリウムを減らす作用が二重に期待できる
・腎臓の機能が低下している人は、カリウムを捨てる能力が低下しているゆえ注意を要す

□大手ドラッグストアでカリウムのサプリメントは売られていない?
・カリウムは、健康の維持に不可欠であると同時に、取り過ぎると命にかかわる危険なもの
・常識的な範囲であれば、海藻や野菜をタップリ取っても心配はない。ぜひ食生活の見直しを!

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