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パソコン打開の早速の手:$200 PC、低電力プロセッサ、touch技術

昨年、2012年のmicroprocessor(MPU)販売高ランキングがIC Insights社から発表され、これまでのインテルおよびAMDのx86アーキテクチャー圧倒的2強にARMモバイル勢が迫っていたのが、ついにQualcommおよびApple向けを担うSamsungの2社がAMDを追い抜く結果となっている。とはいっても、依然桁違いに抜きん出ているインテルであり、AMDともども今後のパソコンの方向性に向けて新たな路線の打ち上げが見られている。長らく半導体の最大応用分野を維持しているパソコンに対する今後の市場の反応に注目である。

≪現状と今後の方向性≫   

このほど交代したインテルの前CEOからは、Appleとの過去のコンタクトについて以下のコメントとなっている。

◇Intel's Outgoing CEO Says He Passed On A Chance To Get Intel Chips Inside The First iPhone (5月17日付け Business Insider)
→Intelの前CEO、Otellini氏。Appleが最初のiPhone試作品に取りかかっていたとき、該機器用プロセッサ製造でIntelに打診があったが、経済的に合わないとしてその機会を通り過ごした経緯の旨。

パソコン市場の現状は、最大手、ヒューレット・パッカード(HP)の直近四半期業績に非常に厳しく表われている。

◇米HPの純利益32%減、2〜4月、パソコン不振 (5月23日付け 日経 電子版)
→米IT大手、ヒューレット・パッカード(HP)が22日発表した2〜4月期決算、売上高が前年同期比10%減の$27.582B(約2兆8400億円)、純利益が32%減の$1.077B。タブレット(多機能携帯端末)などとの競争激化により、パソコン部門の売上高が20%減少した旨。

この事態を強く反映するIC Insights社からの2012年MPU販売高ランキング・トップ10となっており、以下に示す内容および各紙の見出しタイトルである。

◇Qualcomm, Samsung pass AMD in microprocessor sales-IC Insights: AMD fell to fourth place in 2012 microprocessor sales (5月21日付け EE Times)
→IC Insights社発。PC販売低迷とスマートフォンおよびmediaタブレット販売の力強い伸びが合わさって、Qualcomm社とSamsung Electronics Co. Ltd.が各々2012年のmicroprocessor(MPU)販売でAdvanced Micro Devices(AMD)社を抜いた旨。MPUトップ10サプライヤのうち、首位のIntelおよび第4位のAMDだけがMicrosoft製Windows operating system(OS)ソフトウェア搭載の標準notebookおよびdesktop PCs向けx86 microarchitecturesで作られたプロセッサを販売している旨。残るトップ10サプライヤは、ARMからライセンス供与を受けたRISCプロセッサコア搭載のモバイルMPUsを販売している旨。

◇Qualcomm and Samsung pass AMD in MPU ranking (5月21日付け ELECTROIQ)

◇AMD falls to 4th rank MPU supplier in 2012, says IC Insights (5月21日付け DIGITIMES)

交代したばかりのインテル新CEOからは、"new devices"グループ創設が通達されている。

◇Intel CEO shakes up units, creates 'new devices' group-Intel CEO creates "new devices" group in reorganization (5月21日付け Reuters)
→IntelのCEO、Brian Krzanich氏が、同社operationsを再構築、"new devices"グループを作り出して、光り輝く技術およびビジネスモデル革新を、市場を形成、リードする製品に急速にもっていくようにする任務とする旨。 

具体的にどう取り組むか、消費者にアピールするキーワードとして、$200 PC、$200 Ultrabookそしてtouch技術導入が以下の通り挙がっている。 

◇How Intel can enable a successful $200 PC in the age of the media tablet (5月20日付け ELECTROIQ)
→IHSからのPC Dynamics Market Brief発。PCメーカーは消費者にアピールする$200の価格でultrathin, touch-screen PCsを作れるか?Intel社がPCメーカーに対する半導体コンポーネント価格を進んで下げれば、仰天の答え、yesとなりそうな旨。IHS/SID 2013 Business Conference(5月20日:Vancouver, Canada)でのIntelのGlobal Ecosystem Development、vice president and general manager、Zane Ball氏の講演。touch技術を取り入れた低コストnotebooksを作っていく計画をプレゼンの旨。

◇Could Intel enable $200 Ultrabook? (5月20日付け EE Times)

実際、touch-enabledモバイルPCsは、2016年までにnotebooks全体の1/4を占めるという見方が出されている。

◇One quarter of all notebooks to ship with touchscreens by 2016 (5月22日付け ELECTROIQ)
→IHSのNotebook Touch Panel Shipment Database発。価格低下およびIntel社からの大きなinitiativeが牽引、touch-enabledモバイルPCsの出荷が、2013年以降急速に伸びて、2016年までにすべてのnotebooksの約25%に増大すると見る旨。touchscreen-装備notebook PCsのグローバル出荷は、2012年の4.6M台から2016年には78M台に増大する旨。
・≪グラフ≫ touchscreens装備notebook PCsの浸透率:2011〜2016年
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/05/130SSTtouchnote.jpg

HPも早速に、touch技術そして以下に示す低電力プロセッサを活かしたパソコン製品展開に入っている。

◇HP unveils an army of PCs featuring Intel's new low-power processors-HP announces new PCs, focuses on touch tech (5月22日付け VentureBeat)
→Hewlett-Packard(HP)が、PC販売が減少、同社第二四半期の利益が32%減の渦中、顧客需要のために低電力プロセッサを搭載、touch技術への重点を高めたlaptop PCsをリリース、新しいdesktopシリーズも披露している旨。

基本的な切り札、低電力プロセッサについては、インテルおよびAMDからタイミングが揃った発表となっており、AMDからは3つのプロセッサ・ラインが以下の通りである。

◇AMD launches 3 mobile APUs (5月23日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)社(Sunnyvale, Calif.)が木曜23日、以前のコード名TemashおよびKabiniデバイスなど、同社モバイルaccelerated processing units(APUs)ラインアップに3つの追加、同社2013 A-SeriesおよびE-SeriesモバイルAPUsに加わる該新APUsは、性能およびパワー効率を劇的に高める旨。該新APUsは、AcerおよびHewlett-Packard Co.が木曜に発表予定の製品など、大手computer OEMsからの製品で木曜からお目見えの旨。

◇AMD Resets Its Chips for Changing Mobile Wars-AMD makes a power play in mobile processors (5月23日付け The Wall Street Journal/Digits blog)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、3つのプロセッサ・ライン展開:
 1.Temashライン →accelerated processing units(APUs)でタブレットcomputers向け、前世代の9Wattsに比べて3.9Wの動作パワー
 2.Kabiniライン  →lower-end laptops向けAPUs
 3.Richlandライン →higher-end notebooks向け

インテルからは、幅広い用途にわたって最適化を図ったという次世代x86プロセッサ、"Haswell"が発表されており、これら2社の盛り返しを図る動きに対する今後の市場の反応に注目である。

◇Intel Haswell packs integrated voltage regulator (5月23日付け EE Times)
→7Wタブレットから75Wサーバまですべてに適合された次世代x86プロセッサは、voltage regulatorを統合、7つの外部サードパーティ半導体を除いている旨。これは、宿命のライバル、Advanced Micro Devices(AMD)が3つのモバイルプロセッサを発表したのと同じ日のHaswell briefingにて、Intelが明らかにしたdetails数点の1つの旨。

◇Intel Discloses Power Savings of Next Chip Line-Intel: "Haswell" chips will sip on power in standby mode (5月23日付け The Wall Street Journal/Digits blog)
→Intelの"Haswell"プロセッサは、2年前のCore "Sandy Bridge"プロセッサよりstandby電力消費が20倍良く、現在のCore半導体より電池寿命が2-3倍になる旨。該プロセッサラインは、以前のCore最小10Wに比べて7Wほどで動作する旨。


≪市場実態PickUp≫

モバイルへの傾斜のなかでパソコンが如何に手を施して盛り返しを図るか、現状のアプローチを見てきたが、半導体の微細化の方はこれまでMoore則がいろいろ節目節目で議論がありながら大方の支持を得てきている。さて、今後はどうかということで、まずはMoore則しばらく支持派の見方である。

【Moore則の今後】

◇Moore's Law Will Survive Says TSMC-Future chips will be more than just number crunchers (5月16日付け CCL Online)
→TSMCのchief technology officer(CTO) & vice president of R&D、Jack Sun氏のEETimes web-siteインタビュー。Moore則は今後も有効と思うが、半導体設計者の多くには経済的feasibilityの1つになり始めている旨。半導体は、ますます強力になり続けるだけでなく、新しい能力および機能性を得ている旨。3つの基本的な重点:
1.従来のCMOSの継続       →CMOSはシステムの頭脳
2.目や耳のようなspecialty技術 →アナログ、mixed signal
3.TSVs[through silicon vias], インターポーザはじめwafer-level package(WLP) capabilitiesを擁する3-D技術
                   ⇒"system super-chips"

◇Shrinking chips challenge Moore's Law-Intel keeps up with Moore's Law (5月20日付け Computerworld)
→IntelのWilliam Holt氏。Intelは、半導体features縮小の絶え間のない探求にstrained siliconおよびhigh-K metal gate(HKMG)材料を向けてきており、IC製造プロセスの見通せる世代について1965年にco-founder、Gordon Moore氏が仮定したMoore's Lawに終わりが来ないことに自信をもっている旨。さらにクリアすべきstepsがあり、その各々には最適化する追加の努力が必要になる旨。

◇Intel pushes for more research beyond 10-nm (5月22日付け EE Times)
→IMEC Technology Forum(BRUSSELS, Belgium)にて、Intel社component research、director、Mike Mayberry氏基調講演。従来のシリコン開発の常道を見てきて、7-nmノードあたり先がぼやけているように推測する旨。
業界にこれまで供されてきたpre-competitiveコラボリサーチのやり方が、変わってさらに開かれなければならない旨。

この後にも示すように、Ethernet 40周年記念イベント(MOUNTAIN VIEW, Calif.)が開催された場で、雰囲気もあってか闊達な意見、コメントが出ているなかに、Moore則が終わりを迎えるという以下の見方である。

◇Broadcom: Time to prepare for the end of Moore's Law-The end of Moore's Law is nearing, Broadcom CTO predicts (5月23日付け EE Times)
→Ethernetの40周年を祝うイベント(MOUNTAIN VIEW, Calif.)にて、Broadcom社のchief technology officer(CTO)、Henry Samueli氏のたまげるほど率直なon-stageインタビュー。近い将来、科学技術者たちはCMOSトランジスタの縮小微細化が行えず、Moore's Lawの容赦のない進展がついに終焉に至ると予測する旨。標準CMOSシリコントランジスタは5-nmあたりでscalingが止まり、すべてが平坦域(一時的停滞)に達する旨。

さて、このEthernet 40周年記念イベントでのパネル討議では、半導体草創期の頃を思い浮かべて現在の米国での基礎研究の貧困ぶりを嘆くやりとりが見られている。現時点の最大手、Appleも槍玉に上がっている。

【基礎リサーチ欠如】

◇Research gap threatens innovation, experts warn (5月24日付け EE Times)
→expertsパネルにて。innovation pipelineが、基礎リサーチへの連邦出資の不足および大会社R&D labsの低下減少から枯渇する可能性の旨。トランジスタを誕生させたAT&T Bell Labsがなくなり、Ethernetの誕生地、Xerox PARCが低下していることを残念に思う旨。対照的に、今日のハイテク最大手の多く、今週納税問題で揺れるAppleなどは基礎リサーチを実質的には行っていない旨。

欧州では、半導体生産を倍増させようというキャンペーンがEuropean Commission(EC)より打ち上げられている。半導体メーカーの大きな追随投資を期待しているが、ここでも伸びる元の起爆剤が前提となる。

【欧州半導体倍増計画】

◇Europe launches $12 billion chip support campaign (5月23日付け EE Times)
→European Commission(EC)が、欧州での半導体生産を倍増、グローバル生産の約20%にもっていくことを目指すmicro-およびnanoelectronicsへの公的投資キャンペーンを打ち上げ、該計画は、支援対象のメーカーからの投資額に匹敵するよう、5Bユーロ(約$6.4B)以上の公的資金を向こう7年にわたってリサーチ、開発およびinnovationに向けていく旨。

◇EU Kroes: Eyeing EUR100 billion Private Investment for Chips, Semiconductors-EU announces European semiconductor initiative (5月23日付け The Wall Street Journal/Dow Jones Newswires)
→EUが、半導体技術への欧州の投資を奨励すべく約$13Bをつぎ込む計画、半導体メーカーによる約$130Bの投資を呼び込む期待の旨。該計画は、Cambridge, U.K.; Dresden, Germany; Eindhoven, Netherlands; Grenoble, France; およびLeuven, Belgiumのようなハイテクhubsにおける半導体設計&製造を育成することである旨。

台湾のファウンドリー、UMCが、今後の高密度化、高機能化に向けたシリコン貫通電極(TSV)をはじめとする研究開発センター、"Center of Excellence"をシンガポールにオープンしている。

【台湾UMCの"Center of Excellence"】

◇UMC Sets up Research & Development Facility in Singapore-UMC will hire 80+ engineers for new R&D center in Singapore (5月22日付け Fox Business/Dow Jones Newswires)

◇UMC Establishes its Specialty Technology Center of Excellence in Singapore (5月22日付け gnom.es)

◇台湾UMC、シリコン貫通電極など研究、シンガポールに拠点 (5月23日付け 日経産業)
→台湾の半導体受託生産大手、聯華電子(UMC)が22日、シンガポール工場内に半導体の特殊技術開発センターを開設したと発表、投資額は1.1億ドル(約113億円)、半導体を積み重ねて高機能化するシリコン貫通電極(TSV)の研究開発を実施、スマートフォン向けなどに活用し、受注量を増やす旨。
シンガポール工場は直径300ミリウェーハを使った主力工場で月産能力は4万5千枚、技術開発センターの設立を受け、年内に約80人の技術者を増員する旨。

インド出身の若い女性に成る技術発明2件が目について、以下の通り高評価の内容である。

【インド女性の発明】

◇Indian-American's invention charges phones in 20 secs (5月22日付け EE Times India)
→インド系アメリカ人の18才high school女学生、Eesha Khareさんが、わずか20秒でスマートフォンの充電が行える画期的な微小デバイス、supercapacitorを発明、今週のIntel International Science and Engineering Fair(ISEF)(Phoenix, Arizona)にてRs.27.17 lakh($50,000)を獲得、彼女の発明はIntel Foundation Young Scientist Awardsの2人の受賞者の1人となっている旨。

◇Goan girl invents touch-free technology for smartphones (5月24日付け EE Times India)
→Massachusetts Institute of Technology(MIT)在籍のインド人が、モバイル機器用touch-free, 身振り認識技術を開発、MITエンジニア3人が設立したstartup(うち2人はインド人)、3dimが、今年のMIT $100K Entrepreneurship Competitionのトップ賞金Rs.54.35 lakh($1,00,000)を獲得の旨。3dimのco-founder and CEO、Andrea Colaco氏は、インド西部・ゴア州出身の女性、3D身振り認識技術を発明、Nintendo WiiおよびMicrosoft Kinectで使われているもので、スマートフォン、タブレットあるいはGoogle Glassのような機器に手段となりそうな旨。該技術により、ユーザは画面に触れるよりは薄い空気を通して機器との相互作用が行える旨。


≪グローバル雑学王−255≫

我々の身体を構成する元素という視点で元素周期表に注目する機会を、

『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』  
  (吉田 たかよし 著:光文社新書) …2012年10月20日 初版1刷発行

より以下の通り得ている。宇宙から地球、地球から海、海から生命の誕生という流れのなか、38億年に及ぶ生命の進化の歴史を経た我々の身体の構成元素を、宇宙からの遠大な時間軸のもとに見ていく。周期表の上のほうの軽い元素ほど人体に多く使われる傾向があり、それぞれの元素の役割、人体との関係など改めての認識多々である。

※元素周期表として、理化学研究所 仁科加速器研究センターからの次の例がある。
http://www.rarf.riken.jp/enjoy/images/genso.pdf


第3章 化学反応を繰り返す人体

□38億年間繰り返されてきた選択と淘汰
・人体の中には宇宙の成り立ちの痕跡が残っているという興味深い真実
 ⇒宇宙の一部が地球になる
  →地球の一部が海になる
   →海から生命が誕生する
という一連の進化の流れが、元素の構成比率から見えてくる
・生命の進化の歴史は、電子の軌道による化学反応の可能性を試す38億年
 →宇宙にある元素と私たちの体を構成する元素は大きくつながっている

□人体は4つの元素から成る精密装置
・人体を構成している生体元素の割合
 →水素が62.7%、次いで酸素の23.8% 
  →人体の大部分が水ゆえ
・3位は炭素 …食事ごとに大量の炭素原子を体内に取り入れ
 →それでは炭素原子の排出は? →圧倒的に多いには吐く息
・4番目は窒素 
 →人体の構造の基礎、タンパク質を構成するアミノ酸に必ず
・以上4つの元素だけで、人体全体の99.5%
 …原子番号が小さい元素に集中

□体をつくる少量元素
・次の5位から11位 …人体に含まれる「少量元素」
・5位 リン(P)、6位 カルシウム(Ca)
 →マッチに使われるリン …260度という低い温度で発火
 →リンは骨や歯の材料にも
・7位 イオウ(S)
 →必須アミノ酸のひとつ、メチオニン、皮膚や髪、それに爪の成分であるケラチンにもイオウ
 →ちょっと引っ張ったくらいでは切れない髪の毛 …イオウの原子同士の結合
・8位 ナトリウム(Na)、9位 カリウム(K)
 →私たちの筋肉や神経が機能するもと
・10位 塩素(Cl)
 →脳を興奮させる神経の膜には、塩素イオンを通す小さな穴が存在
 →アルコールや睡眠薬でGABAニューロンの作用が強化されると穴がパカッと開き、細胞内に塩素イオンが一斉に入っていく
 →大脳の活動が沈静化されて眠くなる
・11位 マグネシウム(Mg)
 →人体の全マグネシウムの60%が、骨に
 →現代人はカルシウムを取るばかりで、マグネシウムが不足しがち
  →アーモンドや、コンブやワカメなどの海藻類

□重い元素は人体に少ない
・人体に多く使われる元素ほど周期表の上のほう
 少ししか使われない元素ほど周期表の下のほう
・第6周期以降については、人体に含まれる元素が基本的にない
・宇宙にも、周期表の上に位置している元素ほど多く存在、周期表の下にいくほど元素は少ない量しか存在しない
・人体を構成している元素はすべて、地球が誕生するよりも前に宇宙で誕生したもの

□錬金術師の無駄な努力で化学は発展した
・化学反応は、私たちの体内のそこらじゅうで、常に無数に生じている
 →元素と元素が結合する組み合わせを変えること
・元素が崩壊して別の元素に変わるということはある
 →放射性物質
 →例:原子炉の中では、ウラン235が崩壊して分裂、ヨウ素131、セシウム137、ストロンチウム90などが生成
 →福島原発事故では、これらが原子炉の外へ漏出
・中世ヨーロッパの錬金術師たち
 →様々な金属や薬品を混ぜ合わせて金を作り出そうとした
  →金は単体の元素、初めから失敗する運命
 →塩酸、硫酸、硝酸を発見する副産物
 →現代の化学は、錬金術の基盤の上に発展した学問

□なぜヘリウムは人の体内に存在しないのか
・すべて最も外側の軌道が電子で埋まっているグループ18の元素
 →いずれも人体にはまったくといっていいほど含まれていない

□化学反応とは何か
・水素と酸素が混ざった気体に点火、激しい反応から水が生成
 →水素爆発 …福島第一原発でもこの反応
・水素原子も酸素原子も、最も外側の軌道に電子の空席
 →H2もO2も安定、水(H2O)になるともっと安定
・原子と原子の組み合わせを変えることで、よりエネルギーが低い安定した状態に移行しようとする
・すべての生物は無数の化学反応を起こしながら、低いエネルギー状態を目指して原子の組み合わせを変えながら生きている

□ベリリウムは宇宙になぜ少ないのか
・宇宙にほんの少ししかないベリリウム
 →軽い元素ながら人体にも含まれていない
・ベリリウムの用途 …かなりニッチ
 →原子力発電で使う減速材
  人工衛星から宇宙を観測する望遠鏡の材料
・安定したヘリウムと不安定なベリリウム
 →ベリリウム8は、できあがってもすぐにヘリウム2個に分裂してしまう
 →3つのヘリウムが結合すると炭素が生成 …ヘリウムより安定
・豊富な炭素を特に重要な構成元素として誕生したのが、私たち地球上の生命
・人体では、リチウムはまったく含まれず、ホウ素もごくごく微量
 →リチウムは電池の材料、ホウ素は目薬のイメージ

□原子番号は偶数のほうが安定している
・原子番号が偶数の元素のほうが、原子番号が奇数の元素よりも多く存在しやすい
・原子番号が偶数の元素のほうが大量にできやすい
 →オド・ハーキンスの法則

□私たちは元素に依存して生きている
・大ざっぱ、宇宙にたくさんある金属は健康に役立ち、宇宙に少ししかない金属には毒性がある可能性が高い
・生命が使いこなせるようになると、今度は生きていくためにその元素に依存する

□酸素を運ぶ貴重な金属
・人体は酸素を運搬するために鉄を使っている
 →鉄は人間にとって生命線
・血液で二酸化炭素を運ぶのは実に簡単 →水に溶けて炭酸に
・ところが、酸素を運ぶのはひと苦労 →水にほんの少ししか溶けない
 →体内温度の37度まで上がると、溶解量はぐっと下がる
 →南国の海が透明なのはこのため
 →水温が低い北国の海、プランクトンが繁殖、水が濁って見える
・赤血球の中にあるヘモグロビン、その心臓部に鉄
 →酸素を効率よく運べる
・体内で鉄が不足 →酸素がうまく運べなくなって貧血を生じる
・多くの候補となる金属から鉄を選んで命を託したのは、存在量が多かったというひと言

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