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厳しい局面のパソコンおよび産業用市場、強みを前面に打開を図る動き

モバイル機器が活況を増す一方で、パソコンおよび産業用市場は厳しい局面が続いている。従来PCで容赦ない低下が続く一方、産業用エレクトロニクスの大手サプライヤ8社が、2012年は売上げが減少、取り巻く市場の弱含みの状況を反映している。これに対してスマートフォン、タブレットまで照準に入れた新アーキテクチャー、カスタムのファウンドリー製造対応、新規に顧客を開拓してのカスタム設計半導体事業対応、など各社の培った強みを前面にして打開を図る動きが見られている。

≪市場の現状と打開の対応≫  

厳しい環境の従来PCについての分析である。

◇4 Reasons PC Market Won't Rebound (5月6日付け EE Times)
→[評論記事]容赦ない低下が続く従来PC、なぜか?
 1. All-in-ones are nice -- but the multi-screen experience is here to stay.
 2. Tablets will continue to encroach on the PC's territory.
 3. Tablets are just the beginning.
 4. The tech powers have already conceded the future.

PC浮上については、touch技術の採用が欠かせないという見方である。

◇IHS discusses how PCs can survive the tablet invasion (5月7日付け ELECTROIQ)
→IHSのディスプレイコンポーネント&材料リサーチ、senior manager、Duke Yi氏が、Society for Information Displays(SID) 2013 Conference(5月19-24日:Vancouver Convention Centre, Vancouver, Canada)のSID Touch Gesture Motion Focus Conference(5月22日)で予定するプレゼン。
活況のタブレットおよびスマートフォンの猛攻撃を食い止めるためには、notebook PCsは、消費者の間ですでに人気が証明されているtouch技術を採用して進化する必要がある旨。

スマートフォン・アプリプロセッサ市場の昨年の総括である。

◇Qualcomm leads smartphone processor market (5月8日付け EE Times)
→Strategty Analytics発。2012年のスマートフォン・アプリプロセッサ市場は、60%増の$12.9B、ベンダー・トップ5次の通り:
 1. Qualcomm  シェア43%
 2. Apple
 3. Samsung
 4. MediaTek
 5. Broadcom
Intelはシェア0.2%に留まっており、同社次期Clover Trail dual-core x86 Atom半導体が2013年の助けとなる可能性の旨。

産業用エレクトロニクス市場の昨年である。

◇Top industrial electronics semiconductor suppliers suffer declining revenue in 2012 (5月9日付け ELECTROIQ)
→IHS iSuppli Industrial Electronics Market Tracker Report発。産業用エレクトロニクスの大手サプライヤ8社が、2012年は売上げが減少、取り巻く市場の弱含みの状況を反映している旨。トップ10サプライヤの売上げ合計が$12.19B、産業用エレクトロニクス半導体分野全体$30.15Bの40.4%となる旨。
・≪表≫ 2012年産業用エレクトロニクス半導体のトップ10サプライヤ
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/05/2012%20decline.jpg

このような厳しい環境に対して、各社の打開を図る動き、まずはインテルの次の発表である。

◇Intel unveils Silvermont SoC microarchitecture (5月6日付け EE Times)
→Intel社(Santa Clara, Calif.)が月曜6日、今年後半に出る予定の22-nm Atom SoCsの根底を形成する新しい低電力、高性能microarchitecture、Silvermontを披露、スマートフォンからデータセンターまでの市場での低電力の要請に照準の旨。今年後半に市場お目見えのSilvermont半導体は、tri-gatesすなわちFinFETsを擁するIntelの22-nmプロセス技術で作られる旨。

◇Intel's New Atom Chips Peak on Performance, Power Consumption-Intel says the Silvermont architecture will break the myth that ARM is more power efficient (5月6日付け CIO.com/IDG News Service)

◇Intel launches low-power, high-performance microarchitecture (5月7日付け ELECTROIQ)

◇米インテルのMPU、消費電力5分の1、スマホ向け処理能力3倍 (5月8日付け 日経産業)
→米インテルが6日、低消費電力半導体「アトム」の基本設計を刷新すると発表、回路線幅も現行の32-nmから22-nmに縮小する旨。処理能力を最大3倍に高め、消費電力は5分の1まで減らす旨。インテルはスマートフォンなどに搭載する半導体で出遅れており、新設計の採用で巻き返す旨。
新たな基本設計となる「シルバーモント」(開発名)を発表、最大8つのコアを搭載することができ、スマホやタブレット、小型サーバーなどに幅広く供給する旨。タブレット向けの「ベイトレイル」(開発名)を今秋に発売、スマホ向けの「メリーフィールド」(同)も年末までに追加する旨。

インテルでもtouch技術を取り入れた低コストnotebooksへのアプローチが見られている。

◇Intel VP to discuss low-cost computing initiative in IHS/SID 2013 (5月10日付け ELECTROIQ)
→来るIHS/SID 2013 Business Conference(5月20日:Vancouver, Canada)にて、IntelのGlobal Ecosystem Development、vice president and general manager、Zane Ball氏が、PC業界がtouch技術を取り入れた低コストnotebooksを生産するようもっていく計画を論じる基調講演を行う旨。

同じくインテルのファウンドリー製造対応を拡大する動きである。

◇Intel signs another foundry customer (5月6日付け DIGITIMES)
→Microsemiが、Intelのファウンドリー技術を利用、Intelの22-nm 3D tri-gateトランジスタ技術を用いて先端高性能ディジタルICsおよびsystem-on-chip(SoC)ソリューションを開発する旨。

AMDでは、customized半導体ビジネスへの取り組みである。

◇AMD focuses on finding new clients-AMD looks to custom chips to expand customer base (5月7日付け The Korea Times (Seoul))
→Advanced Micro Devices(AMD)が、再生に向けてカスタム設計半導体事業に注目、ソニーほかを新しい顧客としている旨。「市場は変化しており、今が進化するとき。AMDのcustomized半導体についてのビジネスチャンスが大きく増えてきている。」(AMDのGabe Gravning氏)


≪市場実態PickUp≫

前回示した米SIAの3月/第一四半期世界半導体販売高発表に対する各紙の反応、見方をまとめて示す。

【米SIAの3月/第一四半期世界半導体販売高発表に対する反応】

◇Global Semiconductor Sales Outpace Last Year through First Quarter of 2013 (5月3日付け The Wall Street Journal)

◇Chip sales up slightly in Q1-Memory leads the way (5月6日付け TechEye)

◇Chip sales up slightly in Q1 despite continued PC market decline-Sales in semiconductors are up month-on-month and year-on-year, but the balancing act between PCs and tablets is beginning to help the memory and chip making industry recover. (5月6日付け ZDNet)

◇Global chip sales up slightly in 1Q13, says SIA-SIA: Global chip sales trend slightly upward (5月6日付け DIGITIMES)

◇半導体世界売上高、3月0.9%増、欧州も復調の兆し (5月7日付け 日経 電子版)
→米国半導体工業会(SIA)は、3月の世界半導体売上高が前年同月比0.9%増の$23.48B(約2兆3300億円)になったと発表、アジア太平洋が前月に続いて好調だったほか、景気の先行きが不透明な欧州も復調の兆しが出ている旨。
世界全体では5カ月連続で前年実績を上回った旨。

◇2013年3月の半導体売上高、円安ドル高が響き、欧州に抜かれた日本が11年ぶりの最下位に (5月7日付け 日経Tech-On!)
→米SIA(Semiconductor Industry Association)発。2013年3月における半導体の世界売上高は$23.48B(3カ月の移動平均)、対前月比で1.1%増、前月比でプラスになったのは4カ月ぶりの旨。

モバイル機器用半導体の受注から絶好調のTSMCであるが、その業績と今後の最先端技術に向かう取り組みである。

【絶好調のTSMC】

◇TSMC's sales boom in April (5月10日付け EE Times)
→TSMCの4月net販売高NT$50.07B(約$1.69B)、前月比13.5%増、前年同月比23.5%増。本年1-4月累計ではNT$182.83B(約$6.16B)、前年同期比25.1%増。

◇TSMC to budget US$1.5 billion for R&D expenditure (5月10日付け DIGITIMES)
→TSMCが、2013年のR&Dに記録的な$1.5Bを投資する計画、TSMCの先端プロセス技術におけるleadershipを維持、モバイル半導体製造競争における競争力を高めることに依然重点を置いている旨。

◇TSMC reiterates plans for 18-inch wafer manufacturing (5月10日付け DIGITIMES)
→TSMCが、同社初の450-mm(18-インチ)試作生産ラインを建設する計画を繰り返し説明、2016-17年に10-nmおよび7-nmノードでのFinFETトランジスタ技術を出していく旨。

◇TSMC eyes R&D as mobile grows-TSMC allocates $1.5B for R&D on logic, specialty chips (5月10日付け The Taipei Times (Taiwan))
→R&Dスタッフに約300 positionsを追加、エンジニアおよびscientistsを約4,200人に増やす旨。

モバイル機器の活況は、メモリの安定して力強い需要を生み出している。

【メモリ需要】

◇Toshiba says demand for memory chips still strong in Q1-Toshiba: Flash memory demand robust in fiscal Q1 (5月8日付け Reuters)
→NANDフラッシュメモリデバイス生産世界第2位、東芝が、該半導体の需要およびpricingが依然力強く、第一四半期の間続いていく旨。

◇SanDisk CEO sees extended stability in NAND flash market-NAND flash market is seeing prices stabilize, SanDisk CEO says (5月8日付け Reuters)
→SanDiskのchief executive、Sanjay Mehrotra氏。スマートフォン、タブレットおよびsolid-state drives(SSDs)に用いられるフラッシュメモリ需要が伸びても、半導体メーカーはほとんど新しいcapacityを加えることはない旨。

solid state drives(SSDs)の急拡大がつぎのように見られている。PC市場へのインパクトに注目である。

【solid state drivesの増大】

◇SSDs to account for one-third of worldwide PC storage shipments by 2017 (5月7日付け ELECTROIQ)
→IHS iSuppli Storage Market Tracker Report発。PCsに入るグローバルsolid state drives(SSD)出荷が、2017年までに7倍に増大する見込み、PCストレージソリューション市場の1/3以上を占めることになる旨。PCsに入るSSD出荷が、2012年の31M台から2017年には600%以上増の227M台に増えていく一方、PC hard disk drives(HDD)出荷は2012年の475M台から2017年には14%減の410M台になると見る旨。
・≪グラフ≫ HDDおよびSSD出荷台数推移:2012年〜2017年
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/05/1304SSThddSsd.gif

◇Seagate goes solid state, unveils first SSD product line-Three series for consumers and pros-Seagate offers SSDs for consumers and enterprises (5月7日付け TechEye.net)
→Seagate Technologyが、同社初のsolid-state drive(SSD)製品を投入、600Seriesはconsumersおよびoriginal-designメーカー向け、一方、600 Proはデータセンターなどの応用向けentry-level enterprise driveである旨。Seagate 1200 SSDは、enterpriseサーバ&ストレージ向けとしている旨。

◇Demand for SSDs in PCs to boom through 2017, says IHS (5月8日付け DIGITIMES)

スーパーコンピュータについて2件、世界一奪還を目指す我が国の取り組み、そして米国Cray社の桁違いのコストダウンを図った製品ライン投入である。  

【スーパーコンピュータ】

◇スパコン世界一奪還へ、2020年稼働、「京」の100倍速く、文科省 (5月6日付け 日経)
→文部科学省が2014年春から、世界最高性能の次世代スーパーコンピュータの開発に着手する旨。2011年に世界一の計算速度を達成した理化学研究所のスパコン「京」を100倍ほど上回り、2020年ごろの稼働を目指す旨。スパコンは国の科学技術力の指標となるほか、産業競争力を左右するとされ、世界で開発競争が激化、世界一を奪還するため、1000億円規模の開発費を投じる旨。

◇Cray builds budget-minded supercomputer (5月7日付け EE Times)
→よく知られたスーパーコンピュータベンダー、Crayが火曜7日、たぶん初めてhigh-performance computing(HPC)を探求する新興途上の顧客を狙った"積極価格"製品ライン、Cray XC30-ACを投入の旨。大手産官学研究センターが使ったCrayのtop-endモデルは、raised-floorデータセンター, 液体冷却, 光networkingケーブルを要し、$10M〜$20Mの稼働コストであるが、該新スーパーコンは、従来と同じ部品およびソフトウェアの多くを用いているが、空冷で、光ケーブルを要せず、$500,000〜$3Mのコストの旨。


≪グローバル雑学王−253≫

元素周期表に書かれている内容を解きほぐしていく後半を、 

『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』  
  (吉田 たかよし 著:光文社新書) …2012年10月20日 初版1刷発行

より今回は見ていく。原発事故による内部被曝防止がまず取り上げられており、周期表の上での元素の配置の意味を受け止めている。我々の身体と元素の織り成す関係、間柄の重みである。

元素周期表として、理化学研究所 仁科加速器研究センターからの次の例がある。
http://www.rarf.riken.jp/enjoy/images/genso.pdf


第1章 周期表には何が書かれている?   ≪後半≫

□取り込む元素を勘違いする人体
・原発事故による内部被曝防止のため
 →「セシウムを体内に蓄積させないためには、カリウムをとること」
  「ストロンチウムを体内に蓄積させないためには、カルシウムをとるこ と」
・周期表で「同じ列の上下の位置にある」という関係がカギ
・もともとカリウムを十分に取っていると、人体はこれ以上カリウムは必要ないと判断

□アルカリ金属の仲間
・セシウムの原子番号は55
 →その電子配置で大切なただ一つ、電子1個だけが最も外側の軌道を回っている
・カリウムの原子番号は19
 →あまった電子1個だけが外側の軌道を回っている
・セシウム、カリウムともに周期表では最も左列、グループ1
・グループ1、軽い順に
 →H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr(フランシウム)
  …最も外側の軌道を回る電子は例外なくすべて1個
 →LiからFrまでを「アルカリ金属」…水に溶けてアルカリ性の溶液
・Hだけ気体、金属ではない
 →400万気圧ではHも金属に変化 …「金属水素」

□セシウムでできる悪性腫瘍
・カリウムは人体にとって大変重要な元素のひとつ
 →すべての細胞でさまざまな役割
・放射性セシウムは、胃がん、肺がん、大腸がん、白血病など、ありとあらゆる悪性腫瘍の原因に

□アルカリ土類金属の仲間
・ストロンチウムの原子番号は38
 →36個の電子で内側の軌道、あまった2個の電子が最も外側の軌道
・原子番号20のカルシウム
 →やはり2個の電子が最も外側の軌道

□放射性ストロンチウムがもたらすリスク
・放射性ストロンチウム、白血病のリスクだけが際立って高い
 →カルシウムと勘違いされて取り込まれたストロンチウム、骨に届けられてしまう
・放射性ストロンチウム →骨肉腫
              →白血病
・骨に取り込まれたストロンチウムから出る放射線
 →骨の細胞だけでなく、すぐ近くの骨髄の細胞にもダメージ

□細胞ががんに侵されるタイミング
・放射線が当たると細胞ががん化
 →特に細胞分裂をする瞬間
・1個の細胞が分裂して2個の細胞になるとき
 →遺伝子をほどいて、細長いひも状、いわば裸の状態に
 →このときに当たると、遺伝子は簡単に壊れてしまう
・原発事故の影響、まずは白血病への警戒が必要

□「周期」とは何か?
・周期表を読み解く上で重要なポイント
 →横1行あたりの元素の数
 →1行目 …2個
  2行目 …8個
  3行目 …8個
  4行目 …18個
  5行目 …18個
・最も内側の軌道は、電子が2個で定員がいっぱい
・行という言葉、正式には「周期」(period)

□電子の定員数が周期を決める
・周期ごとに電子の配置
 →1周期目の電子の定員は2個
  2周期目は8個、トータルが10個で2周期目は打ち止め
  3周期目、8個
  4周期目と5周期目がともに18個
・「2周期目と3周期目の元素は電子が8個ごとの周期がある」
 「4周期目と5周期目の元素は電子が18個ごとの周期がある」

【発展コラム】電子の軌道を決める4つの原則
・電子の軌道をすべて決める3つの数
 →「主量子数n」
  「方位量子数l」
  「磁気量子数m」
・原則1: 主量子数n=1、2、3……
 →n=1が最も内側の軌道、n=2がその次の軌道、……
 原則2: 方位量子数l=0〜n-1
 →電子軌道の形
 原則3: 磁気量子数m=-l〜+l
 →電子軌道が広がる向き
 原則4: ひとつの軌道に入る電子は2つまで
・主量子数n=1の場合
 →lは0。電子は最高で2個。
・主量子数n=2の場合
 →lは0か1。
  l=0は0のみ。l=1の場合は、-1、0、1の3つ。
  →それぞれの軌道に2つの電子。計8個の電子が入る。
・第2周期の元素も、第3周期の元素も、ともに8個で共通
 →方位量子数が0の場合の2個と方位量子数が1の場合の6個との足し合わせ
・第4周期と第5周期、18個の元素
 →方位量子数が0の場合の2個、方位量子数が1の場合の6個、方位量子数が2の場合の10個の足し合わせ
・第6周期と第7周期
 →どちらも合計で32個の元素
・周期表こそ宇宙の摂理が織りなす最高の芸術作品

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