昨年を上回る第一四半期半導体販売高、一方、刷新・再構築の動き
SIAから3月の世界半導体販売高が発表され、前月、前年同月をそれぞれ1.1%、0.9%増加するとともに、1-3月、すなわち第一四半期としても前年同期比0.9%増と、いずれも僅かながら上回る結果である。この1-3月ではタブレットの市場規模がPCの3分の2に迫るというデータも出ているが、このような激変が各社に体制の刷新、事業再構築を迫るということか、関連する大きな動きが相次いで見られている。インテルの新CEO、富士通のマイコン・アナログ事業譲渡に今回は特に注目している。
≪3月の世界半導体販売高≫
米SIAからの今回の発表は、以下の通りである。
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○グローバル半導体販売高、2013年第一四半期は昨年を上回る−2013年3月の販売高は前月および2012年3月に比べて僅かながら増加 …5月3日付けSIAプレスリリース
半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2013年3月の世界半導体販売高が$23.48 billion、前月、2013年2月の$23.23 billionから1.1%増加したと発表した。前年同月、2012年3月の$23.28 billionから0.9%増加しており、2013年第一四半期を通しての販売高総計は2012年第一四半期のそれを0.9%上回っている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。
「2013年第一四半期を通してグローバル半導体業界は、昨年に比べて控え目ながら首尾一貫した伸びを見せている。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「ほとんどの末端製品分類にわたって販売高が増えており、メモリが最も力強い伸びを示している。各社が在庫の補充にかかっている最近の動きがあり、向こう何ヶ月か伸びは続くものと期待している。
地域別には、力強い出だしとなったAmericasが3月は僅かに減少したが、Asia PacificおよびEuropeは最近印象的な伸びとなっている。」
前年比販売高が、Asia Pacific(+6.9%)およびEurope(+0.7%)で増加したが、Americas(-1.5%)は僅かに減少、日本の円安を部分的に反映してJapan(-18%)は急激な減少となっている。前月比ではEurope(+5.7%)が2010年3月以来の最大前月比増加を示している。Asia Pacific(+1.7%)も増加したが、Japan(-1.6%)およびAmericas(-1.9%)は減少となった。
【3ヶ月移動平均ベース】
市場地域 | Mar 2012 | Feb 2013 | Mar 2013 | 前年同月比 | 前月比 |
======== | |||||
Americas | 4.45 | 4.47 | 4.38 | -1.5 | -1.9 |
Europe | 2.83 | 2.69 | 2.84 | 0.7 | 5.7 |
Japan | 3.42 | 2.85 | 2.80 | -18.0 | -1.6 |
Asia Pacific | 12.58 | 13.22 | 13.45 | 6.9 | 1.7 |
計 | $23.28 B | $23.23 B | $23.48 B | 0.9 % | 1.1 % |
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市場地域 | 10-12月平均 | 1- 3月平均 | change |
Americas | 4.94 | 4.38 | -11.3 |
Europe | 2.63 | 2.84 | 8.3 |
Japan | 3.19 | 2.80 | -12.1 |
Asia Pacific | 13.98 | 13.45 | -3.8 |
$24.74B | $23.48 | -5.1 % |
※3月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
⇒http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/March%202013%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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週末金曜の今回の発表ということもあって、今回は各紙の反応が間に合っていない感じがあり、SIA関連のさらなる動きということで注目した内容、以下に示す。
SIAは、前月2月の販売高発表において、新規雇用に向けた税体系など実効的な政府政策を引き続き求め続けているが、正確な対応関係は分からないものの直近の米国の雇用統計はかなり良いデータとなっている。
◇米雇用統計、4月16万5千人増、市場予想上回る−3月分も上方修正、失業率は7.5%に低下 (5月3日付け 日経 電子版)
→米労働省が3日発表した4月の雇用統計。労働市場の動向を敏感に映す非農業部門の雇用者数が、前月比16万5千人増。3月の改定値も同13万8千人増(速報は8万8千人増)に上方修正。サービスなどの雇用が底堅く推移、ただ、政府部門は減少、回復が持続するか不透明さも残る旨。
また、不足が懸念される半導体などの製造に用いるヘリウムについて、SIAはこれを確保する政府の進展の動きを以下の通り歓迎している。下記の≪グローバル雑学王≫では、今回から元素周期表関連の興味深い内容を読み進めるが、ここでもヘリウムの位置づけにさらに注目するところである。
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○半導体業界、ヘリウム供給確保法案の下院承認を称賛−Federal Helium Reserveへの継続アクセス確保、グローバルなヘリウム不足に対応するH.R. 527 …4月26日付けSIAプレスリリース
半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、半導体製造プロセスはじめ先端製造および科学的研究で用いられる重要なガス、ヘリウムの供給を確保する超党派的法案を承認したことに米国下院メンバーを称賛した。H.R. 527、すなわちResponsible Helium Administration and Stewardship Actは、ほぼ全員一致の超党派支持を得て本日下院を通過した。
「H.R. 527の下院通過は、米国経済の力強さを維持する上で肝要な半導体などの製品の先端製造を害する恐れのあるグローバルなヘリウムの不足に対応する重要なステップとなる。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。
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≪市場実態PickUp≫
刷新・再構築を迫られる各社の引き続く動きを受け止めているが、半導体最大手、インテルの懸案の次期CEOなどトップ人事が以下の通り発表されている。社外からの招聘かとの見方があったが、内輪で収まる形になっている。
以下、同じタイミングでの各社の見出しにそれぞれの受け取りがよく表わされている。
【インテルの新CEO】
◇Intel board elects Brian Krzanich as CEO, Renee James as President (5月2日付け ELECTROIQ)
→Intel Corporation発表、board of directorsが満場一致でBrian Krzanich氏(52才)をPaul Otellini氏の後の次のchief executive officer(CEO)に選出、Krzanich氏は5月16日の同社年次株主総会で新職務に就く旨。board of directorsはまた、Renee James氏(Ms., 48才)を同社presidentに選んだ旨。2012年1月からIntelのchief operating officer(COO)を務めてきたKrzanich氏は、Intel史上6番目のCEOになる旨。以前発表の通り、Otellini氏は5月16日にCEOおよびboard of directorsから身を引く旨。
◇Intel names insider Brian Krzanich CEO (5月2日付け EE Times)
◇Intel's New CEO, President to Implement Undisclosed Strategy (5月2日付け EE Times)
→IntelのCEO-in-waiting、Brian Krzanich氏は、世界最大の半導体メーカーをlaptop microprocessorsへの過度な依存から結果として脱却を図らなければならず、そして敏速に。
◇Intel taps insider to serve as its CEO-Intel names chief operating officer to succeed Otellini as its CEO later this month (5月2日付け AP)
◇Intel appoints Brian Krzanich new chief executive officer-Intel fills CEO spot with COO Krzanich, appoints new president (5月2日付け The Washington Post)
◇Intel plays it safe with new CEO choice (5月2日付け Market Watch)
◇Chip off the old block (5月2日付け The Economist)
もう一つ、富士通のマイコンおよびアナログ事業の米国スパンションへの譲渡という動きが見られている。刷新・再構築の今後の進展成果に注目である。
【富士通のマイコン・アナログ事業譲渡】
◇富士通、マイコン事業を譲渡へ、米メーカーと最終交渉 (4月30日付け 朝日新聞デジタル)
→富士通が、「マイコン」の事業を米国の半導体メーカー、スパンションに譲渡する方向で最終的な交渉に入った旨。「システムLSI」の事業もパナソニックと統合する交渉を進めており、ともに交渉がまとまれば、不振が続く半導体事業からほぼ撤退することになる旨。
◇Fujitsu to dump microcontroller chips-Selling them to Spansion (4月30日付け TechEye)
◇Spansion to Buy Fujitsu Microcontroller Unit for $110 Million-Spansion agrees to acquire Fujitsu's MCU business for $110M (4月30日付け Bloomberg Businessweek)
→富士通がSpansionに対してMCU事業を、$110Mプラスinventoryにさらに$65Mで売却に合意の旨。該取引は第三四半期に終了する予定、富士通の従業員1000人が結果としてSpansionに移る旨。
◇Spansion buys Fujitsu's MCU, analog business(4月30日付け EE Times)
→フラッシュメモリ・サプライヤ、Spansion社(Sunnyvale, Calif.)が、Fujitsu SemiconductorのMCUおよびアナログ事業を約$175M相当の取引で買収する予定の旨。Spansionは富士通からassets, intellectual property(IP), 製品および従業員を引き受けるが、富士通の製造拠点は含まれない旨。
激変の市場をさらに裏付けるデータが続いてお目見えである。まずは、2012年PC市場について、中国が初めて米国を抜いて世界のトップ市場に躍り出ている。
【2012年PC市場】
◇China becomes world's leading PC market in 2012 (4月29日付け ELECTROIQ)
→IHS iSuppli PC Dynamics Market Brief発。中国が、初めてのこと、昨年年間ベースでPC市場のトップに上昇、3M台以上の差をつけて米国を2位に落としている旨。2012年の中国へのPC出荷は69M台に上り、米国への66M台を上回った旨。僅か1年前の2011年は、米国がPCsのグローバルdestination最大手であった旨。
・≪グラフ≫ 中国および世界の出荷台数ベース比率
⇒http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/04/1304SSTchina.gif
◇China became biggest PC market in 2012 (4月30日付け EE Times)
一方、PCを急激に追い上げるタブレットであるが、この1-3月では約5000万台と、PCの3分の2という水準になっている。消費者動向をしっかり捉えた商品開発の暇のない厳しさを殊更一層に感じる動きである。
【1〜3月タブレット市場】
◇タブレット市場規模、PCの3分の2に迫る、1〜3月 (5月2日付け 日経 電子版)
→米アップルの「iPad」などタブレットの市場が急拡大、米調査会社IDCが1日、1〜3月期の世界出荷台数が前年同期比2.4倍の4920万台に増えたと発表、同じ時期のパソコンの出荷台数は約7600万台の旨。タブレットはパソコンの3分の2に迫り、情報機器の新旧交代が加速している旨。
◇1〜3月の世界タブレット出荷、5千万台に近づく、サムスンがシェア18%に急伸 (5月2日付け SankeiBiz)
→米調査会社IDCが発表した1〜3月期のタブレット端末の世界出荷台数、ベンダー別次の通り:
1.アップル | 1950万台 | 市場シェア39.6% |
2.サムスン電子 | 880万台(前年同期比3.8倍) | 17.9% |
3.台湾エイスース | ||
4.米アマゾン・コム | ||
5.米マイクロソフト | 1.8% |
従来は年末商戦の後で需要が落ち込む時期だが、米アップルの「iPad mini」など小型画面の端末が市場を引っ張った旨。「ウィンドウズ8」搭載「サーフェス」の米マイクロソフトは初のトップ5入りの旨。
≪グローバル雑学王−252≫
"スイヘイリベボクノフネ"と、今も学校のころ暗記したフレーズが蘇ってくる化学の時間で学んだ元素の周期表であるが、今回からは、
『元素周期表で世界はすべて読み解ける 宇宙、地球、人体の成り立ち』
(吉田 たかよし 著:光文社新書) …2012年10月20日 初版1刷発行
より、この世に存在するすべてのものが、元素同士の化学反応によってできているという認識を深めていく。自然科学の摂理を凝縮した万能のこの道具と本著者が説明する元素周期表の世界をじっくり味わって楽しみたいものである。
元素周期表として、理化学研究所 仁科加速器研究センターからの次の例がある。
⇒http://www.rarf.riken.jp/enjoy/images/genso.pdf
≪はじめに≫
□周期表と京都の美しい関係?
・東西に走る通りと南北に走る通りが垂直に交差、碁盤の目のような都市、京都
・周期表で示された秩序が、京都の世界観と見事に共通しているよう
→京都の街並みと重ね合わせると、元素が織り成す均整のとれた秩序や、それを見事に表わした周期表が何とも愛おしく
・周期表がとても役立つものということ
→現状の教育、十分に伝える視点が大きく欠落
□難しくもシンプルな学問
・(著者は、)医学部に再入学
→栄養素や毒物の研究をするなか、初めて周期表が役立つものという実感
・周期表を学ぶとき、医学や健康にどのように役立つかという視点で元素を扱うことがとても重要
・周期表とは、量子化学の結論を、数式に頼らず表わすもの
・本書では、方程式で成り立つ量子化学の世界観を、周期表を工夫することで、できるだけ数式は使わず説明
・これより周期表という宝島の海図を手に、宇宙と人体の謎を探究する大冒険へ
第1章 周期表には何が書かれている? ≪前半≫
□元素周期表は両サイドから攻めろ!
・周期表の縦の列 →左から1族、2族、3族と順番に18族まで
→同じようなタイプが縦に集まっているという意味
・元素周期表を俯瞰して見る際の大鉄則
⇒周期表は、左からではなく両サイドから攻める。
→両サイドに近いほど、縦1列に並んだ元素の特徴がはっきりしている
・周期表の中央付近は、電子の配置が複雑になる傾向
→必ずしも元素の性質がよく似ているとは限らない
・英語では1族、2族、3族は、グループ1、グループ2、グループ3
→以降、周期表の縦の列を、グループという表現で通すことに
□縦に似る典型元素、横に似る遷移元素
・グループ1からグループ2、およびグループ12からグループ18は、「典型元素」
→元素の周期性が典型的に現れる
・グループ3からグループ11は、「遷移元素」
→典型元素に移り変わる「つなぎの元素」
→グループ3からグループ11までジワジワっとつないでくれる
・典型元素の中、どれくらい性質が似ているか、ランキング・ベスト4、(著者は)こう選ぶ
→(1)グループ18(希ガス)
(2)グループ1 (アルカリ金属)
(3)グループ17(ハロゲン)
(4)グループ2 (アルカリ土類金属)
・グループ18の元素は、すべて電子の軌道が定員いっぱいの満席状態
→他の原子と接触しても化学反応を起こすことはない
□予言が的中した未知の元素
・あらゆる原子は、中心部に原子核、その周りを回る電子
→原子全体では電気的に中性、原子核の陽子の数と原子核の周りを回る電子の数は等しい
・原子核の陽子の数は、原子番号
・1869年、元素は周期的に性質が似ることに気づいたロシアの化学者、メンデレーエフ、周期表が誕生
・一覧表にすることの利便性 →未知の元素の予言
→1875年、「エカアルミニウム」⇒ガリウム(Ga)
→1886年、「エカケイ素」⇒ゲルマニウム(Ge)
※「エカ」…サンスクリット語で「1」、ひとつ下の意
・本当の周期表の魅力を実感
→量子化学の理解が、ある程度不可欠
□量子化学とは何か
・人の体は、約10の28乗個の原子 …1穣個
・原子1個の世界は、時間と位置を同時に確定させることは不可能
…一方を決めると他方が決まらない
⇒「不確定性原理」
・アインシュタインでさえ、量子論は受け入れることができなかった
・量子化学は、確率を数式で分析すればよい、それで事足りる
□原子核をとりまく電子の「存在確率」
・原子核の周り、電子が存在する「確率」が雲のように広がる
⇒「電子雲」
・「シュレディンガー方程式」により元素の性質や化学反応を解き明かす
⇒運動エネルギー + 位置エネルギー =全体のエネルギー
→量子化学
・この解明には高性能コンピュータの力が不可欠
→「計算化学」
□電子は内側の軌道から埋まっていく
・コンピュータ性能が格段に向上した今でも、水素などごく一部の例外を除き、電子の軌道を完全に求めることはできない
・原子に関して「シュレディンガー方程式」を解く
→求まるのは電子の「軌道関数」と「軌道エネルギー」
…「軌道関数」とは、電子の運動状態を表わすもの
…「軌道エネルギー」とは、それぞれの軌道関数(電子の運動状態)が持つエネルギーの大きさ
・電子は、水の流れと同様、エネルギーの低い軌道から順に埋まっていく
→概ね内側の軌道から順番に電子が埋まっていく
□元素の性質を決める「残り物の電子」
・元素と周期表の関係で最も大切な2点:
→1.周期表の縦一列は、最も外側の電子がよく似た状態であることが多い
→2.最も外側の電子の数で、元素のおおよその性質が決まる
・人体は、その最も外側の電子の数で元素を判断、体内に取り込むかどうかを決めている場合が多い