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モバイル、高性能の競合の波間、TSMCとインテルの競演

大容量化、高速化、低消費電力化とそれぞれの軸で製品世代展開を行ってきた時代から、すべてが凝縮されてスマートフォン、タブレットに体現されている現時点という感じ方である。世界的なモバイル化の怒涛の流れのなか、半導体の次の時代を追い求める飽くなき高性能化が厳然と続いているという現在の半導体業界を受け止めている。タイミングを合わせて、TSMCとインテルの最新技術を紹介する場が見られるということで、現時点の競合モードでの両社の競演に注目している。

≪拡大と一歩先≫  

モバイルの流れに乗ってSamsungが利益を大きく伸ばす業績発表を行っている。

◇Samsung expects to post 53% profit rise in 1Q13 (4月8日付け DIGITIMES)

これに続いてTSMCからは総帥、Morris Chang氏から、売上げ拡大が今年も前年同様、モバイルの波に乗って続く、という打ち上げである。

◇TSMC to Post Double-Digit Sales Growth in 2013, Chang Says-TSMC CEO: We'll increase revenue 15% to 20% this year (4月9日付け Bloomberg)
→TSMCのChairman and CEO、Morris Chang氏が、今年の同社年間売上げが15%〜20%増えると予測、昨年、2012年は2011年から19%増であった旨。

その直後の同社四半期業績発表であるが、自らの予想そして前年同期を大きく上回る内容となっており、Samsungとともにモバイル化による業績拡大のほどを示している。

◇TSMC 1Q13 sales beat guidance (4月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの2013年第一四半期売上げがNT$132B($4.3B)を上回り、自らのガイド、NT$127-129Bを越えた旨。TSMCの3月売上げはNT$44.13B(約$1.47B)、前月比7.2%増、前年同期比18.9%増。1-3月売上げ累計はNT$132.76B、前年同期比25.7%増。

高性能化に向けた技術展開については、16-nm FinFETの次のコラボ・アプローチである。

◇Cadence and TSMC to collaborate on design infrastructure for 16nm FinFET process technology (4月8日付け ELECTROIQ)
→Cadence Design Systems社が本日、モバイル、networking、サーバおよびFPGA応用先端ノード設計向けに16-nm FinFET技術用設計インフラを開発するTSMCとのmulti-year合意継続を発表、この深いコラボは通常よりも設計プロセスの早くから始まって、FinFETsに特有な設計課題に効果的に対応、超低電力・高性能半導体を可能にするために必要なインフラを整える旨。

米国西海岸で恒例開催のTSMC技術シンポの場では、最先端への取り組みが次の通り説明されている。

◇TSMC starts FinFETs in 2013, tries EUV at 10 nm (4月11日付け EE Times)
→2013 TSMC Technology Symposium(4月9日:San Jose McEnery Convention Center)にて、同社executivesが新プロセスについてアプローチ詳細を説明の旨。GlobalfoundriesおよびSamsungとの競合過熱に直面、TSMCは、16-nm FinFETの初期生産を2013年末に計画、さらに、2015年後半から10-nm半導体を作るためにextreme ultraviolet(EUV) lithographyを採用の期待、しかし依然代替としてe-beamを研究している旨。また、3-D半導体stacksの取り組みアップデート、および今日の28-nmプロセスノードの継続立ち上げについても説明の旨。

一方の半導体最大手、インテルは、これも恒例、Intel developer forum(IDF) Beijing(4月10-11日:北京)が、ほぼ同じタイミングで開催されて、サーバ向けおよびnew Atomがキーワードの雰囲気を感じている。具体的には以下の内容である。

◇Atom Avoton processors move up to Intel's 22nm process (4月8日付け ITWorld.com/IDG News Service)
→Intelが、サーバ応用向けに22-nmプロセスで製造、新しい"Silvermont" microarchitectureが呼び物となる低電力AtomプロセッサのAvoton版を出荷しており、該プロセッサによりmicroserversの一層大きな性能&エネルギー効率が得られる旨。

◇Windows 8 tablets to go quad-core? Intel talks next chip-Will Windows 8.1 get a lift from quad-core tablets? It looks likely.-Intel touts quad-core "Bay Trail" processors for Windows 8 tablets (4月9日付け CNET/Business Tech blog)
→北京でのIntel Developer Forumにて火曜9日、IntelのTan Weng Kuan氏。
Intelのquad-core Atom "Bay Trail"プロセッサが今年、Windows 8およびWindows 8.1タブレットcomputersでお目見えする見込みの旨。全く新しいAtom microarchitectureにより、現在までで最も強力なAtomプロセッサが得られ、Intelの現世代タブレットofferingのcomputing性能が倍になる旨。

◇IDF Beijing 2013: Transforming computing experiences from the device to the cloud (4月11日付け DIGITIMES)
→Intelのexecutivesが今回の場で、デバイスからcloudに人びとが技術経験する在り様を一変させることを目指す新技術および連携を発表している旨。この中には、22-nmプロセス技術ベースの新しいデータセンター製品ライン詳細、および次期第4世代Intel Coreプロセッサファミリー詳細と並んで新しいIntel rack scaleアーキテクチャーがある旨。

モバイルそして高性能の競合の波のなか、企業向けおよび一般市場に向けて一歩先のソリューションを目指すアプローチをそれぞれに感じている。

それにしても、モバイルの拡大路線には現実的な絡み合いの話が別次元の世界で続いている。

◇Where will Apple get flash memory now? (4月11日付け EE Times)
→Apple向けプロセッサ製造で追い出されたとされているSamsungが、NANDフラッシュメモリの供給を制限してAppleを制御する可能性があるか?Appleはその事態には如何に反応すべきか?


≪市場実態PickUp≫

スマートフォン、タブレットの活況に追われるパソコンという現下の世界的な動きが、パソコン世界出荷四半期データに予想を大きく越えて史上最大の落ち込みという形でついに表われてきている。パソコン大手に戦略の修正を迫る情勢になっている。

【PC世界出荷の落ち込み】

◇パソコン世界出荷13.9%減、1〜3月、減少率最大 (4月11日付け 日経 電子版)
→米調査会社のIDC、10日発。1〜3月期のパソコン世界出荷台数が前年同期比13.9%減の7629万4000台と発表、同社は1994年からパソコンの出荷動向を調査しているが、減少率は過去最大になった旨。消費者がスマートフォンなどの出費を優先、パソコンの新製品が不発だったことも響いた旨。
IDCは当初、1〜3月期の出荷台数が7.7%減になると見込んでいたが、予想を大きく下回った旨。

◇Personal computer shipments post worst quarter on record, says IDC (4月11日付け ELECTROIQ)
→International Data Corporation(IDC) Worldwide Quarterly PC Tracker発。世界的にパーソナル機器の好み選択が移行するもう一つの兆候、PC出荷が、一四半期として史上最も険しい落ち込みを示している旨。

◇「脱パソコン」待ったなし、HPやデル (4月12日付け 日経 電子版)
→苦境が一段と鮮明になっているパソコン市場、最大手の米ヒューレット・パッカード(HP)などはタブレットやサーバーを強化、「脱パソコン」戦略は待ったなしの旨。

SEMIがまとめた2012年世界半導体材料市場が、3年ぶりの低下というデータである。台湾がトップを維持するとともに、大きく落としながらも第2位となっている我が日本である。中国が最も伸びた地域となっている。

【2012年半導体材料市場】

◇Global semiconductor materials market falls for first time in three years (4月9日付け DIGITIMES)
→SEMIまとめデータ。ウェーハ製造および実装の両方について半導体材料の2012年グローバル市場が3年ぶりの低下、2012年の世界半導体材料売上げが2%減の$47.11B、一方、グローバル半導体市場は3%減となった旨。
≪SEMI: 2012年地域別半導体材料市場規模[US$B]≫

地域
2011年
2012年
Y/Y
Taiwan
10.11
10.32
2%
Japan
9.21
8.53
(7%)
ROW*
8.21
8.09
(1%)
South Korea
7.27
7.33
1%
China
4.87
5.07
4%
North America
4.86
4.74
(2%)
Europe
3.31
3.03
(8%)
Total
47.84
47.11
(2%)

* Singapore, Malaysia, Philippinesなど東南アジアおよびさらに小さいグローバル市場
[Source: SEMI, compiled by Digitimes, April 2013]

◇Taiwan remains top semiconductor materials consumer in 2012 (4月10日付け Focus Taiwan)

重ね合わせて究極の小型化、高性能化を図る三次元半導体のアプローチであるが、数ある打開を要する問題の一つが放熱対策であり、一桁アップの冷却技術開発が次の通り進められている。

【三次元半導体冷却技術開発】

◇Researchers working on new 3-D chip cooling technology (4月5日付け domain-b)
→Georgia Institute of Technologyが、今日普通に用いられているシステムの10倍ほどのheat loadsが扱える三次元半導体冷却技術を開発するためのDefence Advanced Research Projects Agency(DARPA)契約を獲得の旨。

◇DARPA: 3-D chips to get cooler (4月8日付け EE Times)
→Georgia Institute of Technologyが、業界パートナー、Rockwell-Collinsとともに、Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA)のMicrosystems Technology OfficeにおけるIntrachip/Interchip Enhanced Cooling(ICECool)プログラムの一環として、DARPAから三次元半導体stacksに向けたliquid evaporation冷却技法を開発すために3年、$2.9M契約を獲得の旨。arithmetic-logic unitsのような半導体hot-spots冷却に特に注意を払って、今日の技法よりも10倍半導体を冷却するmicro-sized microfluidic channelsによるliquid冷却技法を開発する旨。

パソコン鈍化にさらされているAMDにビジネス運がついて好転の兆しか、Microsoft、任天堂、ソニーと採用されている同社最新プロセッサである。

【AMDの戻し】

◇AMD exec: We'll come back like Apple and IBM (4月5日付け Bit-Tech.net)
→Advanced Micro Devices(AMD)のworldwide componentチャネル販売、vice presidentのRoy Taylor氏。AMDは、AppleおよびIBMでの有名な回復に似たビジネス運が逆転、戻していく見込み、AMDのaccelerated processing units(APUs)最新世代が、任天堂のWii U consoleおよびソニーのPlayStation 4に入っている旨。

◇Microsoft Said to Adopt AMD Chips for Next Xbox Console-Report: Next Xbox to feature an AMD processor (4月8日付け Bloomberg)
→本件事情通筋を引用。Microsoftが今年投入予定の次世代Xbox consoleが、"Jaguar" central processing units(CPUs)およびgraphics processing units(GPUs)を擁するAdvanced Micro Devices(AMD) system-on-a-chip(SoC)プロセッサを採用する見込みの旨。AMDのプロセッサはまた、Sonyの次期PlayStation 4 consoleにも入る旨。


≪グローバル雑学王−249≫

熱帯モンスーン、温帯モンスーンのイネと米、そして米をつぶして食べる文化を見てきたが、こんどは、米はほんとにあるのか、どこまであるのか、というのが率直なところのシルクロードを通りながらのお米について、

『知ろう 食べよう 世界の米』  
  (佐藤 洋一郎 著:岩波ジュニア新書 720) …2012年 7月20日 第1刷発行

より、2回に分けて見ていくことにする。まずは、中央アジアでの稲作の史実、現状であるが、遊牧民と農耕民が補完、助け合いながらの生活というものを知らされている。


6章 シルクロードを通って   ≪前半≫     

1 変化する風土

□昔、そこは緑の大地だった
・ユーラシアの最奥部、そこは幾千年も前から人びとが暮らし、行き交ってきた土地
 →今そこは乾燥のさなか

□遊牧の暮らし
・遊牧…ヒツジ、ウマ、ヤギ、ウシ、ラクダなど群れをなして暮らす家畜たちを群れごと管理、家畜たちのミルクや肉を得て暮らしを支える文化
 →人びと自身が家族ごと移動
 →土地は、基本的に誰のものでもない…遊牧文化
・移動の間に農業を営む農耕民や他の交易者たちと交流、穀物はじめ必要な生活資材を入手
 →中でも遊牧民が提供する塩は、極めて重要な産品

□遊牧民の動きは「飛車角」
・遊牧文化の維持やその広まりにウマが果たした役割はとてつもなく大きい
 →チンギスハンのモンゴル帝国も、ウマによって支えられた

2 中央アジアのイネと米

□中央アジアの稲作
・中央アジアにも、じつは稲作
 →タリム盆地の北側、天山山脈のふもと、紀元2世紀ごろに稲作
 →楼蘭王国の栄えた時期、比較的湿潤な時代
・稲作や米も、遊牧民や商人たちによって運ばれた歴史あり?
 →そのようにして伝えられた可能性

□ダルベルジン・テパ遺跡
・1997年夏、(著者は、)喜び勇んで現地調査へ
 →ウズベキスタン南部のダルベルジンという村
 →ダルベルジン・テパという遺跡の中世ころの遺構から、多量の米が出ている
  …主に籾殻の部分
 →DNAの抽出を試み、ジャポニカに近いイネという結果
・この村では、少なくとも2世紀頃と中世頃にジャポニカのイネを栽培していたことに
 →2世紀頃からこのかた、今よりは恵まれた緑の環境の中でさまざまな作物を作る農業が広がっていた可能性

□ロシアの稲作
・イネは今のロシアでも栽培、東欧にも僅かながら稲作
 →その種子を日本に持ってきて栽培するとものすごい早生になる
 →短い夏の間に生育、花を咲かせて成熟に至る、極端な早生品種が成立
・ウズベキスタンの首都、タシケントでよく見かけるピラフ

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