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昨年を上回るペースの一方、日本市場の縮小が際立つ世界半導体販売高

米国Semiconductor Industry Association(SIA)より恒例の月次世界半導体販売高の発表、今回は2月分である。1-2月累計で昨年同期比2%上回っているのは良いデータではあるが、Asia Pacificそして米国地域が引っ張っており、特に我が日本市場の同15.7%減少が目立つ内容となっている。米国でも基礎研究および半導体研究開発への政府の一層の出資を求めるアピールが、産業界から引き続き打ち上げられている。ましてや我が国ということで、グローバルな半導体業界を見渡して、求められる応分の対応である。

≪2月の世界半導体販売高≫  

米SIAからの発表内容は次の通りであり、政府の政策対応を強く求める基調がこのところ続いている。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○2月のグローバル半導体販売高が昨年、2012年ペースに先行−より力強い伸びに必要となる実効的な政府政策 …4月1日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2013年2月の世界半導体販売高が$23.25 billion、前年同月、2012年2月の$22.93 billionから1.4%増加したと発表した。前月、2013年1月の$24.17 billionからは3.8%下回り、季節的な流れを反映しているが、2013年1-2月累計では昨年同期比2%上回っている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「持続する経済の不安定性にも拘らず、グローバル半導体業界は、メモリ販売高の力強さが引っ張って2013年の見込みあるスタートを切っており、昨年のペースに先行している。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「もっと力強い伸びを焚きつけて支えるために、議会および政権は、アメリカの革新を高めるよう基礎研究に出資し、世界中からトップの科学的知性の人材を受け入れるようhigh-skilled immigrationシステムを改革し、そしてビジネスが拡大し投資を行って新しいworkersを雇用できるよう税体系を修正すべきである。」

地域別には、前年比販売高が、Asia Pacific (+6.7%)およびAmericas(+1.6%)で増加したが、Europe(-1.5%)およびJapan(-15.7%)では減少した。
前月比ではEurope(+1.4%)が増加したが、Asia Pacific(-3.6%), Japan(-5.0%)およびAmericas(-6.2%)は減少となった。

                         【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Feb 2012
Jan 2013
Feb 2013
前年同月比
前月比
========
Americas
4.41
4.78
4.48
1.6
-6.2
Europe
2.72
2.65
2.68
-1.5
1.4
Japan
3.38
3.00
2.85
-15.7
-5.0
Asia Pacific
12.42
13.75
13.24
6.7
-3.6
$22.93 B
$24.17 B
$23.25 B
1.4 %
-3.8 %

--------------------------------------

市場地域
9-11月平均
12- 2月平均
change
Americas
5.02
4.48
-10.7
Europe
2.80
2.68
-4.4
Japan
3.41
2.85
-16.5
Asia Pacific
14.28
13.24
-7.2
$25.51B
$23.25
-8.9 %

※2月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/February%202013%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

これを受けた各紙の取り上げが以下の通りである。昨年の2月および1-2月累計について、本年は上回っているというトーンである。

◇Global semiconductor sales remain ahead of 2012 pace in February (4月1日付け ELECTROIQ)

◇Chip market growth limited to Americas, Asia-Pacific (4月2日付け EE Times)

◇Semiconductor sales in February up from a year earlier (4月2日付け Phoenix Business Journal)

◇Global chip sales up 1.4% in February, says SIA (4月2日付け DIGITIMES)

しかし、穏やかでないのは独り大きく落ち込んでいる我が日本市場、上記と並んで以下の表わし方である。

◇半導体売上高、2月国内前年同月比15.7%減、アジアは堅調。 (4月3日付け 日経)
→米国半導体工業会(SIA)発。2月の日本国内の半導体売上高は前年同月比15.7%減の28億5000万ドル(約2650億円)、テレビなど半導体が多く使われる家電製品の需要低迷などが響いた旨。世界の売上高はアジア太平洋地域が好調で同1.4%増となり、日本の半導体市場の縮小が鮮明になっている旨。日本国内の売上高の減少は7カ月連続、ソニーのテレビ事業が2013年3月期まで9期連続で営業赤字となるなど、これまで半導体需要をけん引した電機大手の不振が響く旨。ルネサスエレクトロニクスなど国内向けの出荷比率が高い日本の半導体大手も収益悪化に苦しむ旨。
一方、アジア太平洋地域の売上高は堅調、2月は同6.7%増、品目別ではスマートフォンなどに使うメモリ製品が堅調だった旨。

エレクトロニクス、あるいは電機業界としてみても、我が国のデータが以下の通り非常に厳しい内容となっている。特に我が国ならではの分野、切り口に焦点を当てて、上記の米SIAアピール以上の政府および業界による盛り上げ施策の緊急性である。

◇電機、かすむ「貿易黒字」、スマホ輸入増、生産移転も影響、携帯、赤字1兆円。 (4月4日付け 日経)
→日本の輸出を支えてきた電機産業の「貿易黒字」が急速に縮小している旨。1991年に9兆円を超えていた貿易黒字が2012年には16分の1以下になった旨。携帯電話では輸出額から輸入額を引いた「貿易赤字」が初めて1兆円を超え、海外製スマートフォンの人気に加え、日本メーカーの海外への生産移転が加速したための旨。電機・情報通信産業の国内での雇用維持が大きな課題に浮上しそうな旨。


≪市場実態PickUp≫

上に示した米国での動きのひとつとして、今後いろいろな新しい産業を生み出していく中枢としての半導体R&Dの重要性を、Sematechのトップが以下の通り強力なアピールを行っている。最先端技術で世界の産業界を引っ張る半導体ということでは、我が国も同じメッセージが発せられて然るべきであるし、先進経済圏の今後の進路、あり方を端的に表わしている。

【半導体R&Dの重み】

◇Sematech CEO Armbrust warns industry and government leaders -Semiconductor R&D needs funding, Sematech CEO says (4月4日付け American City Business Journals/Albany, N.Y./BizBlog)
→SematechのPresident and CEO、Daniel Armbrust氏。政府および産業界は、たくさんの製品において果たす半導体の重要な役割ゆえ、半導体R&Dへの出資を続ける必要がある旨。「問題は、政府がこの業界は成熟していると決めつけていること。それは良い考え方ではない。ほかの産業を生み出す権能を備えた業界である。」

ファウンドリー、Globalfoundriesの活発な動きについては最近触れてきているが、昨年の好業績・業容が高く評価されているとともに、三次元半導体、すなわちTSV(Through Silicon Via)、2.5D(Siインターポーザ)、3D IC関連においても先頭を引っ張る活動を行っている。

【Globalfoundriesの積極スタンス】

◇Globalfoundries quietly becoming a threat to competitors (4月1日付け DIGITIMES)
→IC Insightsが、2012年半導体業界のtop performerとして、ファブレス半導体大手、QualcommとともにGlobalfoundriesを指名、同社は2012年に売上げ31%増、STMicroelectronics, Freescale, Qualcommはじめ新しいICファウンドリー顧客を引きつけた成功が引っ張っている旨。

◇Industry Inches Towards 3D Chips (4月2日付け SemiMD)
→GlobalFoundriesが、2.5D/3D半導体領域におけるいくつかのmilestonesを発表、該技術を量産にワンステップ近づける一連のeventsの旨。3D前線では、GlobalFoundriesはthrough-silicon vias(TSVs)統合の最初の20-nm Siウェーハ動作品を作っており、同社Fab 8拠点(Saratoga County, N.Y.)にて同社20-nm-LPMプロセス技術によるTSVテストウェーハを製造の旨。

◇GLOBALFOUNDRIES demonstrates 3D TSV capabilities on 20nm technology (4月2日付け ELECTROIQ)

我が国とともに厳しい状況が伝えられる欧州半導体業界であるが、トッププレーヤーのSTマイクロは、今年は一味違って明るい見込みがあるという以下の内容である。MEMS関連の主導ぶりは最近よく取り上げられている。

【今年のSTマイクロ】

◇Back in the Chips?-The turnaround story at STMicroelectronics, Europe's largest semiconductor maker, has been helped by management's focus on markets well beyond the euro zone. -How STMicroelectronics survived, will prosper (3月30日付け Barron's)
→STMicroelectronicsは、Ericssonとのワイヤレス合弁は失敗したが、明るい見込みがある旨。STはアジアでの売上げが60%であり、ユーロ圏の経済の災いから切り離される助けになっている旨。車載用半導体およびMEMSセンサの利益の出る製品ラインを擁して、今年のSTは$8.7Bの売上げ、$85Mのnet incomeが見込まれる旨。

五感に訴えるエレクトロニクス機器が今後の焦点の1つになる動きを感じているが、香る、匂うスクリーンが発表されている。Virtual Realityの一段の進展という受け止めである。

【香りくるスクリーン】

◇New TV screen lets you smell food! (4月3日付け EE Times India)
→IEEE Virtual Reality conference(3月16-23日:Orlando, Florida)にて、東京農工大が、“smelling screen”、嗅覚ディスプレイシステムを披露、該ディスプレイでは画面に映る食べ物や飲み物などを視覚だけでなく、それらの写る位置から漂う"バーチャル香気"によってより多くの情報を得ることが出来る旨。


≪グローバル雑学王−248≫

年代のせいか、モチ系の和菓子の美味さをますます感じるこの頃、まして季節は春、桜餅から柏餅とバリエーション豊富である一方、米はお酒になって年中いろいろな場を盛り上げてくれる、といいとこづくめの米をつぶして食べる文化を、

『知ろう 食べよう 世界の米』  
  (佐藤 洋一郎 著:岩波ジュニア新書 720) …2012年 7月20日 第1刷発行

より、いろいろな種類、切り口で当たってみる。以下、我が国、そしてアジアの方々ですでに馴染みの食べ物、飲み物が一挙に現れており、米をつぶして食べる、飲むアプローチの幅広さを感じるところである。


5章 つぶして食べる米文化

・モンスーンの風土にある、米をつぶしたり、粉にしてから調理して食べる文化

1 粉にして食べる

□米粉の麺
・米を粉にして食べる
 →モンスーンアジアとアフリカにだけみられる文化
 →欧米では、コムギを粉にして食べる
・米の麺はインドシナでは朝食の素材として定着
 →ベトナムのフォー
 →ビーフン …「押し出し?」
 →食卓に置いてあるトウガラシ粉やトウガラシ味噌、さらには漁醤などで自分で味を調えて食べる。砂糖を入れて食べる人も。
・ライスペーパ …ベトナムで生春巻きを巻く材料
 →具としてドクダミの葉など、熱帯アジアの野菜は香りの強いものが多く、殺菌や除虫などの効果か

□米粉を食べる
・米にはウルチ米とモチ米
・ウルチ米を粉に挽いたものを新粉(目の細かいものは上新粉)
・モチ米に水を加えながら挽き、沈殿したデンプンを乾燥 →白玉粉
・和菓子の材料:上新粉→柏餅
            白玉粉→白玉団子
・白玉粉に砂糖や水あめなどを加える →求肥(ぎゅうひ)
・蒸した糯米(もちごめ)(おこわ状)を粗挽きにして保存 →道明寺粉
 →蒸したものを団子状にし、餡を入れ、塩をした桜葉で巻けば桜餅
 →同じ名称の菓子が東西で異なる作り方をするケース
  …関東の桜餅はクレープ状

□餅の文化
・モチ米を蒸し、熱いうちに搗いたものが餅
 →関東…角餅、のしもち
  関西…手でまるめた丸餅
 →文化の違い、合理性や説得性は二の次
・ヨモギの葉をよく蒸したものを混ぜ込んで搗く「草餅」
・わざとよく乾かし、薄く切って焼けば「おかき」
 薄く切った餅をさらに小さなサイコロ状に切って炒ったものが「あられ」

2 発酵させて食べる米

□穀物の酒
・酒は、糖を発酵させてできるアルコールがもと
 →穀物で酒を造ろうと思えば、デンプンをまず糖に
・デンプンを糖にする3つの方法
 →1.種子自身がもつ酵素を利用する方法 …ビール
 →2.麹を使う方法
   …炊いた米に麹を振りかけてしばらく置くと「甘酒」に

□噛み酒
・第三の方法−3.人体に備わった糖化酵素を使う方法
・このようにして得られた糖をアルコールにするのに用いる酵母
 →糖に酵母などを加えてできる「醸造酒」…日本酒、ビール、ワイン
 →醸造酒を蒸留して作った酒が蒸留酒  …焼酎、ウイスキー、ブランデー

□米の醸造酒
・日本 …清酒(日本酒)
 朝鮮半島 …清酒、白く濁ったマッコリ
 中国 …紹興酒−モチ米で作る醸造酒
・日本のみりん …モチ米で作る酒
 →米を原材料、麹で糖化、糖を酵母でアルコール発酵
・日本酒の製造
 →普通に食用にする米(白米)よりもずっとよく磨く
  →酒にする米は、最初から相当に大粒のものを選ぶ
・酒用の米のもう一つ大きな特徴
 →「心白」…米粒の中心に空間ができて白く見える部分
・酒用の米の品種改良 …粒が大きいこと、心白があること
 →現在、一番生産の多いのが「山田錦」という品種
・米を醸してできた酒は白く濁ったにごり酒の状態
 →搾ったものが清酒、搾り「かす」が酒粕

□モチ米の蒸留酒
・モチ米の酒 →日本ではみりんと、沖縄の焼酎、「泡盛」
・ラオスの首都、ビエンチャン市内で見かける飲み方
 →一つの器の中に何人もの人がストローを突っ込んで飲む
 →ラオスの蒸留酒、「ラオラーオ」
・タイでは「ライスウイスキー」…色がウイスキーに似ているからか

□沖縄のモチ米酒、泡盛
・ラオスのモチ米の蒸留酒と、造り方といい味わいといいそっくりな酒が、沖縄の泡盛
 →今は、原料のモチ米はタイから輸入
 →糖化のための麹も、タイやラオスのそれと同じ黒麹
・多数の島々の沖縄 →島によって、さまざまな種類の泡盛
 →アルコール濃度はだいたい50%前後、他の焼酎と比べるとだいぶ高め

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