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一層鮮明化するグローバルなコラボおよびつばぜり合いの構図

グローバル市場での優位性、覇権を巡って、各プレーヤー、各経済圏の接近、駆け引きなど活発化してきている。Appleのプロセッサ製造受注についてTSMCとSamsungが真っ向から競合、また、新興経済圏の先進経済圏主導に対抗する外貨準備基金の創設というつばぜり合いの動きに対して、アジア企業と日本企業、そして日米の半導体メーカーが日本を舞台にした用途開発に取り組むというコラボの動きが見られている。"グローバルな協調と競争"が激動する市場のなかで新たな段階模様を帯びてきている。

≪グローバル市場の舞台での激動≫  

アジア企業の日本企業への接近については、本年1月時点で次のように表わされている。改めて承知する内容である。

○技術を「売る力」必要、日本企業にアジアが触手 (2013年1月22日付け 日経 電子版)
→中国など新興国の消費者が「質」を求め始めた今、アジア企業の目には技術を持つ日本企業が「宝の山」に見える旨。技術流出を恐れてプロポーズを断るか、手を携えて世界市場に飛び込むか、日本の経営者は決断を迫られる旨。日本企業の頭脳とアジア企業の体力、相性がいい組み合わせ事
例:
・シンガポールの塗料大手ウットラムグループが日本ペイントに事実上の買収を提案
・中国のレノボはNECの個人向けパソコン事業を買収
・台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープの堺工場に出資
・中国の家電大手、海爾集団(ハイアール)は三洋電機の白物家電をパナソニックから買収

そして現時点に引き続いて日本企業とアジア企業の連携・統合の動きが見られている。

◇NEC、レノボと携帯事業の統合交渉 (3月29日付け 日経 電子版)
→NECが中国のレノボ・グループと携帯電話事業の統合交渉を進めていることが29日、分かった旨。NECの携帯電話事業は苦戦が続いており、単独での生き残りが困難と判断、レノボとの統合が実現すれば携帯電話の国内生産を打ち切る可能性もある旨。

大きく世界の経済圏の間でも、対抗、コラボの動きの加速を受け止めている。新興5カ国(BRICs)が集まる場をもって先進経済圏に対する結束を確認、グローバル市場での影響力を高める動きをとっている。

◇BRICSが外貨準備基金9兆円、中国主導、先進国に対抗 (3月28日付け 日経 電子版)
→ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICs)は27日、南アフリカ東部ダーバンで首脳会議を閉幕、金融危機の際に資金を融通し合う外貨準備の共同積立基金を1千億ドル(約9兆4千億円)規模で創設することに合意した旨。中国などが先進国主導に対抗し、国際金融で影響力を強める狙いがある旨。

我が国の自動車、エネルギー分野への優位性に注目、米国半導体大手が日本市場での応用開拓を展開している。先進ユーザとのコラボということであるが、我が国半導体業界との凌ぎ合いが強まっていくのは必至である。

◇半導体、日本で用途開拓、車やエネ管理分野に重点、スマホの次の需要狙う (3月28日付け 日経産業)
→米半導体大手が日本で自動車やエネルギー管理分野の用途開拓に力を入れている旨。Freescale Semiconductorは日本法人の自動車向けの営業担当者を増員、Texas Instruments(TI)はスマートグリッド(次世代送電網)の実証実験に参加、安定した需要が期待できる分野で日米の半導体メーカーが主導権確保へ先陣争いを始めている旨。自動車やエネルギー管理、医療機器は日本が技術開発でまだ優位を保っている分野でもあり、インテルも含めスマホ需要の獲得に出遅れた日米の半導体メーカーが日本を舞台にした用途開発の取り組みを加速するのは必至の旨。

Appleのプロセッサ製造受注がまず浮かんでくるが、ファウンドリー領域にこの受注で大きく伸びて入ってきたSamsung Electronicsに対して、この領域で圧倒的首位のTSMCが対抗心をむきだしという以下の記事内容である。機器の方でのApple対Samsungの対抗関係があって、グローバル市場の今後の動向を見ていくうえで目が離せない半導体そして機器、それぞれのライバル関係である。

◇TSMC ready for challenge from Samsung, says Morris Chang (3月26日付け DIGITIMES)
→最近の台北でのイベントにて、TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏。ICファウンドリー領域でのSamsung Electronicsからの挑戦増大に受けて立つ用意がすでにある旨。科学技術の主導性、生産製造対応能力および徹底的な顧客関係を擁して、TSMCはどんな競争相手とも戦う備えが常にあり、自信がある旨。

◇Taiwan chip makers respond to Samsung threat-Chang ready to fight back (3月26日付け TechEye)

TSMCの総帥、Morris Chang氏からは、半導体ファウンドリーでの危機感に留まらず、台湾の産業界に対しても強いメッセージのハッパがかけられている。

◇High-tech companies need to focus on innovation, fostering talent:Chang (3月23日付け The Taipei Times (Taiwan))
→TSMCのchairman、Morris Chang氏。台湾の革新および価値創造に欠けるハイテクメーカーが、中国および米国からの競合増大に直面、利益を確保するのに苦しんでいる旨。グローバルに台湾のトップmanager、そして半導体業界に最も貢献度の高い重鎮である同氏は、ICメーカーおよび設計者を除く台湾の技術分野のすべてが不適当な革新および価値創造から不安定で厳しい状況に直面、としている旨。


≪市場実態PickUp≫

昨年、2012年のファウンドリーを含めた世界半導体メーカー販売高ランキング・トップ25が発表されている。モバイル機器の活況を受けた専業ファウンドリーおよびファブレスの躍進が大きく目立つ、という昨年の業況から推して知るべしの内容となっている。

【2012年世界半導体メーカー販売高ランキング】

◇Qualcomm, GloFo star in chip supplier ranking (3月28日付け EE Times)
→IC Insightsによる2012年世界半導体メーカー販売高ランキング・トップ25。Globalfoundriesが31%、Qualcommが30%の伸び、Qualcommはトップ5に入った旨。TSMCは3位のままで18%の伸び、ともに販売高が低下したIntelおよびSamsungとの差を詰めている旨。2012年の半導体メーカートップ25販売高は1%減、世界半導体市場全体の3%減より2ポイント小さい落ち幅の旨。
・≪表≫ 2012年世界半導体メーカー販売高ランキング・トップ25
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130328pcICinsightsRanking751.jpg
・≪表≫ 2012年世界半導体メーカートップ25伸び率ランキング
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130328pcICinsightsRanking752.jpg

◇Pure-play foundries and fabless suppliers star performers, says IC Insights (3月29日付け DIGITIMES)

グローバル市場の激動を端的に示す2013年の半導体設備投資の予測となっている。トップ2、Samsung ElectronicsおよびIntelが占める比率が増す一方、我が国と欧州勢合わせて全体の10%というデータである。

【2013年半導体設備投資】

◇Intel and Samsung Forecast to Represent 42% of Semiconductor Capital Spending in 2013-Combined Japanese and European outlays expected to be less than 10% of total semiconductor industry capital expenditures this year. (3月26日付け IC Insights)
→IC InsightsのThe 2013 McClean Report、3月更新版。2013年に少なくとも$3.0Bを投資する予定が5社、2012年および2011年と同じの旨。
・≪表≫ 2013年半導体capital spendersトップ10
http://www.icinsights.com/files/images/bulletin20130326Fig01.jpg

◇Intel and Samsung to represent 42% of total chip capex in 2013, says IC Insights (3月27日付け DIGITIMES)
→IC Insights発。Samsung ElectronicsおよびIntelのcapital spendingを合わせると、2013年の世界の半導体capital outlayの42%になると予測する旨。2012年の40%からの上昇となる旨。

◇Europe and Japan semi capex to be 10% of whole, says IC Insights.-IC Insights: Samsung, Intel to represent 42% of 2013 capex (3月27日付け Electronics Weekly (U.K.))

14-nmプロセス技術およびFinFETs技術という2つの最先端技術について、いろいろ良し悪し、課題が多いと、2つの会議の場で議論されている。

【課題多い最先端】

◇14-nm node brings host of design challenges (3月27日付け EE Times)
→annual International Symposium on Physical Design(ISPD)(3月24-27日:The Ridge Tahoe, Stateline, NV)、世界から次世代半導体設計者が毎年集まるこの場で講演するexperts発。14-nmプロセス技術ノード到達は、当初想像したよりも難しい旨。IBMのdistinguished engineer、James Warnock氏の論文、"Circuit and Physical-Design Challenges at the 14-nm Technology Node"の例。

◇FinFET race holds promises, perils (3月27日付け EE Times)
→annual Synopsys User Group meeting(3月25-27日:Santa Clara, CA)にて、FinFETs技術についての経験を話し合ったexpertsパネル発。FinFETsには見込みと危険の両方があり、まだprime timeには至っていない旨。


≪グローバル雑学王−247≫

熱帯から温帯モンスーン地域に移って、我が日本を中心にイネと米に纏わる 食文化、風土など、
『知ろう 食べよう 世界の米』  
  (佐藤 洋一郎 著:岩波ジュニア新書 720) …2012年 7月20日 第1刷発行

より歴史的、地域的に認識を深めていく。お米の旨さをますます感じるこの頃であるが、子供の頃まで振り返ってみて折々の原風景が表われてくる以下の内容である。調理法、作り方を改めて知らされるところ多々である。


4章 温帯モンスーンのイネと米

1 米を炊く文化

□アミロース含量の少ない米
・米のアミロース含量
 →モチ米        …0%
 浮稲など熱帯平地の米 …高いもので25%ほど −パサつく食感日本の米のほとんど …15%くらい
・たった1個の塩基の並びの違いが、アミロース生成量を減らしている←DNAの配列
・日本にも、古代から中世にかけて、「唐法師」とか「大唐米」などと呼ばれる、インディカのぱさぱさの米が栽培された時期
 →大唐米はうまくなく、年貢米にはならず
 →江戸時代に入ると、各地で「大唐米の栽培禁止令」
・ぱさぱさの米、ねばねばの米を入れたり拒否したり
 →人間の文化

□炊飯という調理法
・アミロース含量の少ない米には、「炊き干し」法(炊飯とも)
 →米とその1.2倍ほどの水を鍋に入れ、密封して調理する方法
・昔からの言い伝え:
 「はじめちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな」
 →現代の電気炊飯器にもこのプロセスを応用

□日本の多様な米食文化
・部首に「米」や「禾」がつく漢字
 →穂から取った状態の米…籾(もみ)
 →籾殻を外す作業…脱皮(だっぷ)
 →脱皮してできたのが玄米 …イネの種子
 →玄米を搗精(とうせい)して白米に
 →玄米を白米にする過程ででるのが糠(ぬか)
 →白米を炊いたのが飯
  →水を多めにすると粥
・普通は炊かずに蒸す糯米(もちごめ)
 →蒸し上がった糯米が「おこわ」
 →おこわを熱いうちに搗くと餅に
 →飯やおこわを乾燥させて保存食にしたものが糒(ほしい)
 →糯米を水につけておき、柔らかくなったところでつぶしてできたのが粢(しとぎ)
  →静かにおいておくと、デンプンだけが底のほうに、これを取り出して乾かしたものが白玉粉

□お粥
・粥にするには、水の分量は3から10くらい
・粥にはいろいろなものを加える様々なバリエーション 
 →芋粥
 →水の代わりに番茶やほうじ茶で炊いた粥…茶粥
・かつては米の代わりに野菜などをいれた「代用食」
 →飽食の今の我が国ではもはや死語
 →多くの日本人がこの代用食で命をつないでいた歴史

2 米とセットの魚たち

□温帯モンスーンの米と魚
・「米と魚」のセット…究極の姿が寿司
 →寿司の原型は、「なれずし」と呼ばれる食品では
  …琵琶湖岸に残る「ふなずし」、あるいは「鮒のなれずし」
  →いったんこの味にはまると止められなくなる…珍味、魚のチーズとも
・春になって琵琶湖の水位が上がるとフナが田に上がってそこで産卵
 →「米と魚の同所性」

□水田模型の米と魚
・中国の南西部の遺跡から出土した「水田模型」
 →当時の水田の様子をミニチュアのように再現…箱庭の感覚
 →田の畔を思わせる高まり、イネの切り株らしいもの
・古いものでは2000年ほど前のもの
 →田には魚や亀、昆虫などの動物、人間たちは米とともにそれらを食用
・6000年前には中国の長江下流域には水田らしいもの
 →江蘇省・蘇州の東にある陽澄湖という湖のほとり

□米と鶏、米と鳥
・村の中を鶏やアヒル…かつては日本の農村でもごく当たり前
・高度成長とともに米作りの構造が作り変え
 →化学肥料と農薬を多用
  →トキやコウノトリが日本列島から姿を消したのもこうした背景
・最近ちょっとブームになった稲作の方法、「合鴨農法」
 →「米と鳥」というセット、しかし今の日本ではすでに失われた食文化

□米とダイズ
・植物性のタンパク質の代表、ダイズ→「米とダイズ」というセット
・かつて日本の水田、その畔にダイズを植える「畔豆」の習慣が一般的
・実に多様な料理に使われるダイズ
 →枝豆、味噌、醤油
 →納豆、豆腐や揚げ、湯葉
・「米とダイズ」のメニュー
 →「黄粉もち」
 →静岡の「安倍川もち」
 →仙台の「ずんだもち」

3 風変わりなイネたち

□大黒さまと恵比寿さま
・長い稲作の間には、突然変異のもの
 →日本の東北地方、かつて「大黒」「恵比寿」と呼ばれる品種
 →昔の人びとにはこれらは田んぼにいる神様、田の水口(水の取り入れ口)付近に植え続けた

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