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明るい出だしの1月の世界半導体販売高、当面の経済安定性に注目

米SIAからの恒例の世界半導体販売高発表、2013年の出だし、1月分が発表されている。前月からは2.8%下回っているが、これは季節的パターンの範囲内として、前年同月比では3.8%上回っているというのは明るい材料という大方の受け取りとなっている。中国も7.5%と安定成長に入る経済成長率目標が打ち出すなか、雇用情勢、株高と世界の弾みを引っ張る米国の安定した舵取りに大きくかかるのは、我が国そして半導体業界も然りという状況と見る。この弾みから期待する消費動向など、当面の経済の成り行きに注目である。

≪1月の世界半導体販売高≫  
米SIAからの発表内容、次の通りである。

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○1月のグローバル半導体販売高は前年比増加
 −Americasはここ10年で最高の1月販売高;グローバル販売高は12月比わずかに減…3月4日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association (SIA) が本日、2013年1月の世界半導体販売高が$24.05 billion、前年同月、2012年1月の$23.16 billionから3.8%増加したと発表した。前月、2012年12月の$24.74 billionからは2.8%下回り、通常の季節的な流れを反映している。地域別には、Americasがここ10年で最高の1月販売高となっている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「Americasの引き続く力強さが引っ張って、グローバル半導体業界は2012年終わりからの弾みに乗り、2013年の元気づくスタートとなっているが、続く経済不安定性が一層力強い伸びを押し戻している。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「先週あった全面的な歳出削減および今月後半の政府一時閉鎖の恐れが、経済成長を脱線させる財政混乱のほんの最新の例である。議会と政権政府は、米国経済の自信を取り戻し成長を焚きつけるために、我々の国の財政の拠り所を固めるよう一緒に働かなければならない。」

地域別には、前年比販売高が、Americas(+10.5%)およびAsia Pacific(+7.8%)で増加したが、Europe(-4.9%)およびJapan(-12.3%)では減少した。前月比ではEurope(+0.4%)が控え目に増加したが、Asia Pacific(-2.5%), Americas(-3.5%)およびJapan(-5.5%)は減少となった。季節的な流れから、1月販売高は歴史的に12月を下回っている。

【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域       Jan 2012    Dec 2012     Jan 2013   前年同月比  前月比
========
Americas 4.32 4.94 4.77 10.5% -3.5%
Europe 2.77 2.63 2.64 -4.9% 0.4%
Japan 3.44 3.19 3.02 -12.3% -5.5%
Asia Pacific 12.63 13.98 13.62 7.8% -2.5%
計 $23.16 B $24.74 B $24.05 B 3.8% -2.8%
--------------------------------------
市場地域 8-10月平均 11-1月平均 change
Americas 4.77 4.77 -0.1%
Europe 2.79 2.64 -5.6%
Japan 3.53 3.02 -14.6%
Asia Pacific 14.14 13.62 -3.6%
$25.24B $24.05 -4.7 %

※1月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.semiconductors.org/clientuploads/GSR/January%202013%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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世界半導体市場を実質的に引っ張る米国の健在ぶりがますます鮮明になってきて、この発表を受けた記事のタイトルも以下の通り表わされている。

◇Chip market starts year brightly (3月4日付け EE Times)

◇Semiconductor sales rose in January (3月4日付け ELECTROIQ)

◇世界半導体売上高、1月3.8%増 (3月6日付け 日経)
→米国半導体工業会(SIA)が4日、1月の世界半導体売上高が前年同月比3.8%増の240億5000万ドル(約2兆2400億円)になったと発表、米州やアジア太平洋が好調、全体でも3カ月連続で前年実績を上回った旨。

依然と半導体市場指標の大きな一つであるDRAM価格であるが、スポットおよび契約価格とも需給状況が織り成す当然の帰結ながら目立つ上昇が見られている。

◇February DRAM contract prices up over 10% (3月4日付け DIGITIMES)
→PC DRAMsのcontract価格が先月10%以上上昇、4GB DDR3モジュールが約$20、2GB DDR3モジュールが$11以上となっている旨。
Samsung ElectronicsおよびSK Hynixが、モバイルRAMおよびサーバ用DRAMsの生産に一層傾斜、市場でPC DRAMが少なくなっている旨。

◇Spot prices for PC-use DRAM up 5% (3月5日付け DIGITIMES)

NANDフラッシュも上昇傾向で、出だし有望の見方を強めている。

◇January DRAM, NAND flash sales indicate a promising year (3月6日付け ELECTROIQ)
→IC Insights発。業界統合および設備投資低下から、1月のDRAM average selling prices(ASPs)が前年比13%上昇、2013年1月のメモリ全体市場19.9%増およびIC全体市場6.2%増に寄与している旨。
・≪グラフ≫ NANDフラッシュおよびDRAMのcapex and ASP trends:2010〜2013年
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/03/130trendsSSTreal.png

この記事と同時進行で株高、円安が我が国で以下の通り加速しているが、米国経済の動向に大きくかかる局面を映し出している。

◇円安加速、一時95円台 米景気への期待映す (3月8日付け 日経 電子版)
→8日午前の東京外国為替市場で、円相場は対ドルで下げ幅を拡大、8時45分過ぎに1ドル=95円06銭近辺まで下落した旨。米雇用情勢の改善期待や米株高を背景に投資家が運用リスクを積極的にとる動きが強まり、前日の海外市場で低金利で安全資産とされる円売りが強まった流れが継続している旨。8時50分に10〜12月期の国内総生産(GDP)改定値や1月の国際収支が発表されたが、これらに対する直後の反応は目立たない旨。

◇日経平均続伸、リーマン・ショック前の水準に (3月8日付け 読売)
→8日の東京株式市場は大幅に値上がり、日経平均株価(225種)は一時、1万2240円31銭まで上昇、約4年6か月ぶりにリーマン・ショック前の水準を回復した旨。世界的な金融緩和が続いている上、安倍政権の経済政策「アベノミクス」への根強い期待を背景に株式市場への資金流入が加速している旨。

≪市場実態PickUp≫

前回示したIntelの最先端プロセス技術ファウンドリー事業展開の波紋、いまだ収まらず、次の受け取り、今後の見方が表われている。

【ファウンドリー・Intelの波紋】

◇Samsung challenged by Intel's foundry biz (3月4日付け The Korea Times (Seoul))
→IntelのAlteraに対するファウンドリーサービス供給取引は、PCs用プロセッサ需要沈滞に直面するIntelの戦略シフト、ファウンドリー事業およびワイヤレス半導体へのIntelの急襲は、最大のライバル、Samsung Electronicsに脅威となる可能性の旨。

◇Analysis: Next Intel CEO to guide new business, maybe Apple deal (3月7日付け Orlando Sentinel (Fla.)/Reuters)
→Intelの次期CEOは同社を伸びるcontract-manufacturing事業に導く様相、Apple社との取引につながり得る戦略的シフト、モバイル領域に食い込んでいく挑戦の機会が得られる旨。

SEMIからの予測であるが、半導体前工程fab設備投資について今年は昨年並み、2014年に17-nm以降の最先端ノードが大きく伸びて24%増としている。

【前工程fab設備投資予測】

◇Fab Equipment Spending Remains Flat in 2013; Up 24% in 2014-Semiconductor industry investments coast with caution through 2013, accelerating in 2014 (3月3日付け SEMI)
→Front End拠点用fab装置spendingが、2013年はほぼフラットに留まり、2014年は24%増になると見る旨。下記の表参照:
http://www.semi.org/en/sites/semi.org/files/images/SGU_article_2013_03_table1.jpg
・≪グラフ≫ Front End拠点用プロセスノード別fab装置spending:2007〜2014年⇒http://www.semi.org/en/sites/semi.org/files/images/SGU_article_2013_03_figure_.jpg

◇Fab Spending Forecast: Equipment spending is expected to remain flat in 2013 (3月6日付け ELECTROIQ)

シリコンphotonicsが今年のキーワードとなる雰囲気をこのところ感じていたら、欧州および米国にて関連業界、産官学の結集を図る動きが見え始めている。

【photonics結集】

◇EPIC to develop industry database and interactive map (3月6日付け ELECTROIQ)
→European Photonics Industry Consortium(EPIC)が最近、3,000超に上る欧州でphotonics関連活動を行っているすべての会社を結びつけるという意欲的なプロジェクトに乗り出している旨。

◇Strategic approach to R&D is goal at National Photonics Initiative Event (3月7日付け ELECTROIQ)
→photonicsにおける米国主導を維持するよう障壁に対応する産官学コラボに向けて、national photonics initiative(NPI)の重点領域を定めるために、政府およびphotonics業界からの代表100人以上が集まって、2月28日、Washington, D.C.で開いた会合について。

欧州の特許filingsランキングの2012年データが発表され、地元のSiemens AGを上回ってSamsung Electronics Co. Ltd.が首位となっている。最高記録更新という件数とともに注目している。

【欧州特許ランキング】

◇Samsung ranked top filer of patents in Europe (3月7日付け EE Times)
→European Patent Office(EPO)の2012年報告。世界中から2012年は特許filingsが257,744件と記録更新、2011年(244,934件)から5.2%増。granted特許発行も65 687件、2011年(62,115件)比5.8%増。Samsung Electronics Co. Ltd.が、Siemens AGを上回って特許申請filerの第1位となっている旨。
・≪グラフ≫ 2012年EPO特許ランキング・トップ25
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130307pcEPOrank866.jpg・≪グラフ≫ 2012年EPO特許分野別内訳⇒http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130307pcEPOrank823.jpg

  ≪グローバル雑学王−244≫

普段食べているお米に辿り着くのに、まず稲穂はじめ方々で馴染んでいるイネとは何か、
『知ろう 食べよう 世界の米』  (佐藤 洋一郎 著:岩波ジュニア新書 720) …2012年 7月20日 第1刷発行

より入っていく。穀物のなかでのイネの位置づけが前回示されたが、野生のイネから栽培して食するイネ、すなわち我々が食べているお米にどのようにつながっていったか、世界各地に追っている研究成果が以下に表われている。

2章 イネとはなにか
・野生イネがどのようにして栽培イネという穀物になったのか

1 野生イネというイネ
□イネの種類
・イネはタケ亜科にあるイネ属
→英語圏の人びとも、オリザ(Oryza)という名称を使う
・イネ属には20ほどの種
→2つを除く残りの種は人間が栽培することのない野生種
→人間が栽培する2つの種 …オリザ・サティヴァ −普通にみているイネ
                …オリザ・グラベリマ−アフリカイネ
・野生種も、まれに栽培されることがある

□野生イネはどこに生えているか
・故岡彦一博士
→戦後すぐからイネを求めて世界の熱帯地域を旅し、イネの進化の研究に大きな貢献
・時速100キロで走る車の中からでも、たった1本の野生イネの穂を見つけることができる
→(著者の)数少ない自慢の一つ
→オリザ探しの旅は里山の旅

□ハイテクは使えない
・(著者が)盛んに調査をしていた1980年代
→GPSはなく、米軍が発行している地図を準備
・いかにハイテクとはいえ何万kmも上空からの情報で野生イネを見分けるのは極めて困難
→オリザの分布は、地を這って調べる以外方法はない

□オリザの生まれたところ
・オリザ誕生、今から何億年も前の時期か
→最初、森住まいの目立たない草
・モンスーン気候の登場
→雨季、乾季の存在: 一年生の植物が生きられる草原の環境
→進化したオリザの種

□野生イネを食べてみる
・野生イネを食べるという話
→(著者が)初めてタイを訪れた1983年、東北部の小さなドンデン村にて
→ルフィポゴンと思われる野生イネ
→硬くて芯が残り、何の味もない。食えたものではないという印象。
・野生イネを食べる習慣はミャンマーにも
→イラワジ川のデルタを横切ってその西の端にあるパセイン
→オフィシナリスという種類の野生イネ
→味のない、団子のような、それでいてぼそぼそした食感

□オフィシナリスを使う文化
・ベトナムのメコンデルタでの事例
→オフィシナリスは、水が溜まるような環境を必ずしも好まず、やや日陰を好む
→斜面にオフィシナリスを植えることを考えた

2 栽培イネ誕生

□野生イネから栽培イネへ
・栽培種 …人間による栽培によって生きることができる種
→グラベリマとサティヴァの二つ
・この両者の「共通項」
→成熟した種子は、いつまでも母株の穂についたままで落ちることはない→「成熟した種子が穂からはずれる」遺伝子が壊れた

□サティヴァはいつどこで生まれたか
・オリザ・サティヴァ、つまり私たちが食べている米の誕生
→定説になるにはまだまだ距離
・遺伝学的には、野生植物→栽培植物という変化はいくつもの劣性突然変異を集積すること
→このプロセスを、"栽培化"
・中国浙江省の田螺山遺跡からの出土
→穀物としてのイネが現れてから定着するまでに2000年もの時間

□研究者による分類−−−インディカとジャポニカ
・20世紀に入ると、研究者の中に世界中の米を集めようという人たちが学問の世界に登場
→1920年代、九州大学教授、加藤茂苞(しげもと)氏
…世界のイネの品種をごく大雑把に2つのグループ分け
→日本型をジャポニカ、印度型をインディカ
→分析の方法を変えてもこれから大きく崩れることはなかった

□二つのジャポニカ
・前出の岡 彦一博士 →「熱帯ジャポニカ」「温帯ジャポニカ」の2つに分ける
・2つのジャポニカを分ける基準は、籾の形や胚乳の化学的な性質などの3つ
→2つのジャポニカの分布の範囲は、必ずしも熱帯と温帯に限らない

□インディカの生まれ
・(著者が)立てている仮説
→中国で生まれたジャポニカのイネが人間によって南アジア一帯に広がり、そこにあったオリザ属の野生種(野生イネ)と交配して原始インディカのイネが誕生

□お米の品種とは何だろう
・フィリピン・マニラ郊外の国際稲研究所
→世界でもっともたくさんの品種の種子を保有:約9万
・いま世界の冷蔵庫に眠っている品種の総数はおそらく何10万か

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