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Intelの最先端プロセス技術ファウンドリー事業展開の波紋

Intel社がFPGA大手、Altera社に対して最先端の14-nm FinFETプロセス技術によるファウンドリー製造事業を行うことを発表、波紋を広げている。新進気鋭のFPGA開発会社に対する同様の対応がここ数年見られていたが、こんどはFPGA大手ということで、もう一方の雄、Xilinxに対して、そしてファウンドリー事業という意味では、最大手のTSMC、およびApple向けプロセッサを製造しているSamsungに対するインパクトが予想されてくる。パソコンからモバイル機器シフトが顕著な中、この展開が及ぼす成り行きに注目である。

≪最先端プロセスの相次ぐ開放≫  

Intel社の今回の最先端プロセス開放の動きは、少なくとも小生の捉えた範囲、22-nm FinFETから次のようにまず発表されている。

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○Intel becomes a foundry, offers up its 22nm process …2月22日付け ExtremeTech

Intelが、同社のbest-in-class 22-nm FinFETプロセスを多数のthird partiesに開放すると発表した。事実上、IntelはTSMC, GlobalFoundries, IBM, およびSamsungと同様に現在built-to-orderファウンドリーとして動いている。

次の大物のAMD, Nvidia, あるいはQualcomm半導体がIntelにより作られるということではなく、これまでのところIntelが発表しているパートナーは、AchronixおよびTabulaという2つの小さなFPGA developersだけとなっている。Intelが、TSMCが長年にわたって行っているファウンドリー事業に移行したいというのはありそうもない。

ここ数年ファウンドリー事業に入ってAppleのA4およびA5半導体で最も知られているSamsungと違って、Intelはファウンドリーにつきものの余分の資金あるいは稼働を必要としない。Samsungは半導体事業から資金捻出を必要とする一方、Intelは業界先端fabsゆえに利益性がやたらと高い。

ではIntelは何を思っているのか?最も当たっていそうな解釈は、現在はTSMCのようなファウンドリーを使っているQualcommあるいはTexas Instrumentsなどファブレスメーカーが生産している製品を、Intelがもっとよく目を入れたいとしているのではないか。これらのメーカーに自らの22-nmプロセスを提供して、Intelはライセンス供与を受けて自分の半導体に統合したい技術を選ぶのに最良の位置が得られよう。そうしてその新しい技術が十分にうまくいくとなると、Intelの買収の可能性が出てくる。
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あれこれよく読んだ内容となっているが、Altera社の名前が出てくるファウンドリー製造対応合意の動きは次の通りまず表わされている。

◇Intel takes big step in chip foundry business-Intel Corp has agreed to make chips on behalf of Altera, a significant step toward opening its prized manufacturing technology to customers on a larger scale, potentially including Apple. (2月25日付け Reuters)

◇Intel takes big step in custom chip foundry business (2月25日付け San Jose Mercury News)

さらに踏み込んで14-nm FinFETとなって、以下の発表記事となっている。ここにある通り、TSMCそしてXilinx、それぞれの反応が気になるところではある。

◇Intel to make 14-nm FPGAs for Altera (2月26日付け EE Times)
→Intel社が、同社14-nm FinFETプロセス技術を用いてAltera社(San Jose, Calif.)向けFPGAsを製造、ファウンドリーのTSMCおよびハイエンドFPGAsのXilinxを煽る取引となる旨。該取引は、Intelが今まで明らかにした一連のファウンドリー取引では最大のもの、14-nmでは最初になるが、製品として見込めるのは2014年以降の旨。

◇Altera to build FPGAs on Intel's 14nm tri-gate technology (2月27日付け ELECTROIQ)

◇With Intel grabbing Altera orders, can we now begin speculating about future Apple hookup? (2月27日付け DIGITIMES)
→Alteraが、次世代高性能製品シリーズの製造にIntelの14-nm FinFETプロセス技術を使用する計画を発表、TSMCがもはやAlteraが設計する半導体の唯一のサプライヤではなくなる旨。Intelが自らのfabsを他のファブレスICメーカーに開放、今後のAppleからの半導体受注などhigh-volume対応に至ると、TSMCには脅威となる旨。

タイミングの揃った感があるが、TSMCはSamsungの次期スマートフォンで受注獲得の様子、まさに最先端の凌ぎ合いの状況を感じさせている。

◇TSMC likely to gain from new Samsung products (2月27日付け Taipei Times)
→JPMorgan Securities、月曜25日発。TSMCが、Samsung Electronics Coの新世代Galaxyスマートフォンに用いられる新しいプロセッサ受注で潤いそうな様相の旨。Samsungは前のGalaxy S3と同様、その新しいGalaxy S4のアプリプロセッサおよびベースバンド半導体について複数のソリューションを採用する見込み、3月14日にNew Yorkで披露される旨。

Intelが、TSMC席巻の市場でのposition拡大、$30.7B規模のmade-to-order半導体事業に進撃、売上げ拡大を図るよう、factory networkをゆっくりと他社に開放してきている、と以下の記事にある。Altera-TSMC、Xilinx-UMCとそれぞれ昔からの長い関係にあるが、生産でIntelを活用、市場での最先端半導体販売が促進される、とAlteraのchief executive officer(CEO)、John Daane氏の今回の弁となっている。  

◇Talk of the Day -- TSMC, Intel flex foundry muscle (2月27日付け Focus Taiwan)
→Intel-Altera取引は、Alteraの唯一のファウンドリーとしてのTSMCの20年の席巻に終止符を打つことになる旨。

その後も台湾での反応が続いている。

◇TSMC shares grow after tumble (2月28日付け The China Post)
→Intel社がTSMCの主要顧客の1つ、Altera社からの受注獲得に成功したのを受けて株価が低落、その後昨日上昇している旨。Intelおよびphone-network装置で用いられるプロセッサ設計のAlteraが、14-nm生産技術への移行で協力すると、火曜に共同で発表している旨。

◇Altera and Intel team up in chip market (2月28日付け Taipei Times)


≪市場実態PickUp≫

恒例のMobile World Congress(MWC) 2013(2月25-28日:スペイン・バルセロナ)が開催され、ARMそしてここでもIntelの動きに注目するところがある。

【Mobile World Congress(MWC) 2013】

ARMプラットフォームの規模拡大の動き、今回は目についた範囲、次の通りである。  

◇MWC: ARM clocks up 75 Mali licences (2月25日付け Electronics Weekly (U.K.))
→ARMが今朝プレゼン、Mali graphics processing unit(GPU)を75 partiesにライセンス供与しており、現在graphics-enabledディジタルTVsの70%、Androidタブレットの50%そしてAndroidスマートフォンの20%に入っている旨。Mali GPUの数量はMali-enabled SoCs換算で、2011年の50M個以下から、2012年には150M個以上、そして2013年には240M個を上回ると見る旨。

◇ARM says its smartphone battery-saving technology has wide support-ARM's Big.Little technology will be used by seven companies in chips this year (2月26日付け Computerworld)
→ARMが今回の場で、同社のBig.Littleプロセッサ技術に基づく半導体を7社が今年リリースする見込み、Samsung, Fujitsu Semiconductor, MediaTek, Renesas MobileおよびCSRを挙げ、他2社は発表しなかった旨。

Intelもモバイル領域に向けた積極的な取り組みが以下の通りであり、当然ながらARMに対抗する動きがここでは鮮明である。

◇Intel talks new chips, partners at Mobile World Congress (2月24日付け CNET)
→Intelが、電池寿命を延ばせる3Dトランジスタを擁するAtomスマートフォン半導体、"Merrifield"の最終仕上げ、IntelがPCs用先端生産技術をモバイル機器に適用する初めてとなる旨。該新半導体は、AsustekのAndroidタブレット & phone、7-インチFonepadをサポートする旨。

◇Intel upgrades 32-nm SoC for smartphones (2月25日付け EE Times)
→Intelが今回、モバイルプロセッサ・サプライヤとしての活動進捗を示す目玉として格上げした32-nmスマートフォンプロセッサを持ち込み、また今年後半に当てている22-nm follow-on、Merrifieldも紹介する旨。現在出荷しているIntelのClover Trail+は、Imagination TechnologiesのSGX 544MP2 dual-coreグラフィックスを用いて、現下のAtom-ベースMedfieldスマートフォンプラットフォームのグラフィックスの3倍の性能を誇る旨。該dual-core, dual-threaded Atom半導体は、2-GHzまで動作、30-frames/secondで1080-progressiveビデオをデコードできる旨。

◇Intel takes on ARM in low-cost Android tablet market-Asus' Fonepad tablet priced at $249 is first low-cost Android tablet with x86 chip, and Intel says there are more tablets coming (2月27日付け Network World/IDG News Service)
→Asusが、IntelのAtom Z2420 "Lexington"プロセッサで構築、価格$249のAndroidタブレットcomputerを投入、低コストAndroidタブレットは、IntelがARM Holdings設計ベース半導体との競い合いを望むもう1つの市場となっている旨。

携帯電話用コア半導体のトップ10ベンダーの顔ぶれが、スマートフォンの登場、増大で大きく変わっている。以下に示す2012年トップ10ベンダーのうち、2.Samsung Electronics、4.Intel、9.Spreadtrumおよび10.Broadcomは2007年のトップ10に入っていない。

【cellphoneコアIC】 

◇Rise of smartphones reshapes competitive order in the cellphone chip market (2月25日付け ELECTROIQ)
→Qualcomm社とSamsungがスマートフォンおよび4Gの上昇気流に乗って、cellphoneコアIC事業の競合模様がここ5年で完全に形を変えている旨。
IHSのIHS iSuppli Wireless Competitive Landscape Toolによる2012年トップ10ベンダー、次の通り:
 1.Qualcomm       シェア31% …2007年以来首位
 2.Samsung Electronics シェア21%
 3.MediaTek     …3位から10位合わせたシェア34%
 4.Intel
 5.Skyworks
 6.Texas Instruments
 7.ST-Ericsson
 8.Renesas
 9.Spreadtrum
 10.Broadcom  …トップ10合わせたシェア86%

エルピーダメモリがMicron Technology傘下で再建を図る計画が認可されるとともに、前後してMicronのイタリアの工場を売却する動きが見られている。

【Micron Technologyの動き】

◇Micron sells Italian plant as it prepares to swallow Japanese chip maker (2月26日付け The Idaho Statesman)

◇LFoundry to take over Micron Italy fab (2月27日付け DIGITIMES)
→LFoundryがMicron Technology Italia, Srl.およびそのAvezzano, Italyでの半導体製造拠点assetsすべてを買収する合意に、Micron TechnologyおよびLFoundryが入った旨。該合意のもと、MicronはLFoundryにAptinaとの200-mm(8-inch) Avezzano拠点でのイメージセンサの4年供給合意を割り当て、MicronはまたLFoundryにある技術ライセンス供与を認める旨。

◇エルピーダの更生計画案認可、マイクロン傘下で再建 (3月1日付け 日経産業)
→会社更生手続き中のエルピーダメモリが28日、米マイクロン・テクノロジー傘下での再建を柱とした更生計画案が東京地裁に認可されたと発表、計画への賛否を問う債権者投票で認可に必要な同意を取り付けた旨。モバイル用に集中して早期再建を目指す旨。

今年こそ半導体工場建設をと強い意気込みを感じるインドであるが、本年度の国家予算遂行方針が次のようにプレゼンされている。

【インドの本年度取り組み】

◇Budget 2013: Highlights (2月28日付け EE Times India)
→インドFinance Minister、P. Chidambaram氏が本日、議会で'Union Budget 2013-14'を発表、税制改革、法人税政策、インドのelectronics分野など重点、半導体&エレクトロニクス関係以下の通り。
・インドでの半導体工場設立に要する装置類のゼロ関税
・Set-top box輸入税を5%から10%に引き上げ
・Rs. 2,000(〜3400円)以上のすべての携帯電話について6% tax値上げ


≪グローバル雑学王−243≫

日本の超・底力、日本経済復活のための要件を、長らく2冊の新書で目を通してきて、我が国の力強さというものに焦点を当てるトーンが続いたが、腹が減っては戦にならぬということで、今回からは

『知ろう 食べよう 世界の米』
  (佐藤 洋一郎 著:岩波ジュニア新書 720) …2012年 7月20日 第1刷発行

を読み進めていく。ご飯がますます美味しくなって、お米の有難さを改めて感じるのは年代のせいか。それはともかく、グローバル、世界各地のお米について種類、由来、食べ方、味など、理解を深めていく。まずは大きく穀物から入っている。


≪はじめに≫

・ひとりの日本人が1年間に食べる米の量
 →現在ざっと60キロ
 →1960年代の初めころは120キロ近く
・米は、世界の5大陸すべてで栽培され、食べられている穀物
 →世界中の人びとが摂取するデンプンの22%が米
 →トウモロコシに次いで2番目。3位のコムギもほぼ同率。
・米はイネの種子
 →人類が栽培、収穫した米を食べるようになって1万年
 →環境に応じて姿を柔軟に変えることができた
  →世界に広まる所以
・(著者は)遺伝学の研究者、イネなど作物の起こりや進化の研究
・米の種類、栽培や調理の方法、食べ方は、じつにいろいろ
 →本書での区分:熱帯モンスーン
            温帯モンスーン
            シルクロード(砂漠)
            欧州・米国 …アフリカも含む

1章 世界の穀物をみてみよう

・分類学上のイネ
 →イネ科のタケ亜科にあるイネ属
 →世界共通の学名:オリザ(Oryza)…ラテン語

□生きていくのに不可欠なデンプン
・人間は生きていくのに他の哺乳動物と同じく、糖質、タンパク質、脂質などの栄養分を体外から摂る必要
・糖質 …さまざまな糖類やデンプンなどの物質をひとくくりにした言い方
 →消化器官を進む間に、さまざまな消化液によってブドウ糖にまで分解
 →このブドウ糖を燃やすことですべての細胞のエネルギーに
・糖質を生産できるのは植物だけ
・農業を覚えてからの人間は、身体にとり入れる糖質のうちデンプンのウエイトを次第に高めてきた
・人びとは次第に、少数の精鋭たち−−穀物−−を選び出すように

□穀物とはなにか
・植物のうち、種子を食用とするために栽培されるものを穀物(穀類)
 →一般的にはイネ科やマメ科の植物の種子
・穀物の性質:
 1 どれも栽培植物、つまり人間が作った植物
   …人類が農業を始めたときに選び出した植物たち
 2 どれも一年生植物(一年草)
   …品種改良のスピードが速い
   →人間が改良しやすく、より多くの株を栽培できるのが、一年草

□穀物を整理してみよう
・植物分類学者、L・ワトソン 
 →イネ科には5つの亜科(科の下の分類の単位):
  イチゴツナギ亜科
  タケ亜科
  ダンチク亜科
  ヒゲシバ亜科
  キビ亜科
 →5つの亜科に全部で750ほどの属
 ・15種類の穀物は、イネ科の全体に及ぶ

□雑穀とはなにか
・国際連合食糧農業機関(FAO)が統計データとして公開している穀物10種類
 →生産量の多い順:トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ソルガム、ミレット、オートムギ、ライコムギ、ライムギ、フォニオ
・夏作物としての穀物が「雑穀」、冬作物としての穀物が「麦」といってよい

□世界三大穀物
・トウモロコシ …FAO統計食料全生産量の26%
 イネ(米)               22%
 コムギ                22%
 →世界三大穀物
・米は、食物として世界最大の穀物
・トウモロコシ …8000年ほど前には人間による改良の手
 コムギ    …8000年ほど前にカスピ海の南縁あたりで誕生
 イネ     …やはり8000年ほど前に中国の長江流域で栽培

□穀物の発祥地
・旧ソ連の遺伝・育種学者バビロフ
 →作物の生誕地(その種が生まれた場所)には(世界地図上)8つのホットスポット
・コムギを含めた冬作物はみな西南アジアのたった2つのスポット

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