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ISSCC 60周年、改めて見渡す業界激動模様・今後の方向性

この時期恒例のInternational Solid-State Circuits Conference(ISSCC)、本年で60周年を迎えるとのこと、最先端微細化技術の粋の競い合いから、アプリ主軸の当世風に色合いを変えるとともに、プレーヤーの顔ぶれもグローバル化、統合、変遷などいろいろ移り変わり、と改めて半導体業界の激動模様をISSCC時間軸で振り返っている。メインフレームからパソコン、携帯電話、そして今日のモバイル機器と、各社・各国・各地域のそれぞれの強みが発揮された経緯とともに今後の方向性に考え、思いを巡らすところがある。

≪ISSCC 60周年を巡って≫  

60周年を迎えたISSCCの今回のテーマは、「60 years of (em)powering the future」となっており、間断のない微細化、高速化、システム化など固体回路、すなわち半導体技術の未来志向性を表わすものと感じている。今回は応募論文629件から受理されたのが209件、以下の内訳とのことである。小生が出席した1970年代の終わりから1980年代との比較を思い浮かべている。

北米 74件 :業界 30件大学 43件研究機関  1件
Far East 84件 :業界 33件大学 50件研究機関  1件
欧州 51件 :業界 17件大学 22件研究機関 12件

ここにきて以下のような課題提起が表わされている。各社・各国・各地域でなんらか段階的に表われる飽和点、曲がり角という認識であるが、それこそ未来志向の大きな視点で打開を図らなければという思いが先に立っている。

◇「半導体技術の五輪」60周年、大手企業敬遠、曲がり角、国際学会、魅力向上に課題 (2月19日付け 日経)
→17日から米サンフランシスコで開催中の国際学会「ISSCC」は「半導体技術のオリンピック」と呼ばれる最高の舞台、トランジスタの回路設計技術の向上を目的に発足、年1回、世界中の研究者が最先端を競う場として貢献してきた旨。しかし、トップを走る米インテルや韓国サムスン電子がほとんど発表しないなど、60周年を迎え曲がり角にさしかっている旨。

今回の中身の注目点、1つとして以下のように項目が表わされている。かつてのデバイス世代軸から社会生活に包括的に入り込んだアプリ主軸への完全な変転を感じさせている。それほどに半導体そして関連技術が社会の基盤インフラとして融け込んでいる現状ということと思う。

◇ISSCC 2013 Slideshow: Highlights (2月19日付け ELECTROIQ)
→ISSCCの第60回を記念して、議論されている話題および傾向についての注目点のまとめ:
・現下のワイヤレス標準のデータレート
・新規途上ノンボラメモリの容量トレンド
・車載、産業用、モバイル市場などの需要からますます力強くなっているMEMSセンサ市場
・特にflexibleディスプレイなどactive-matrixディスプレイ用backplanesが薄膜トランジスタの主要な応用
・大規模cachesがMPUチップに統合される一般的な流れ
・向こう数年チップおよびパッケージレベルでの統合水準が引き続き大規模になるRFデバイス
・アナログトレンドの1つとしてSTマイクロの圧力センサ
・エネルギー効率化の流れ

以下の記事には実演セッションからの注目内容があって、現時点の取り組みを知る上で興味深く感じるが、米国のMIT、韓国のKAISTなど目立つアカデミー色の様相を受け止めている。

◇Slideshow: ISSCC spotlights nanotubes, wireless comms (2月22日付け EE Times)
→Stanfordの学生がcarbon nanotubesから作った初めての動作subsystem開発をリード、それが第60回annual ISSCCでの多様な分野からの約200の論文の1つ、ISSCCの重点はますますモバイルおよびインフラシステムに向けた通信および媒体に置かれている旨。多くは30の論文についての2つのeveningデモセッションからのハイライトselection、下記参照。
http://www.eetimes.com/electronics-news/4407387/Slideshow--Wireless--media--nano-at-60th-ISSCC

いかにもアプリ前面の現状を感じさせるが、GoogleがキラーアプリとアピールするGoogle Glasses発表が行われている。
  
◇App developers to be given Google Glasses (2月20日付け EE Times)
→2020年のキラーアプリ如何についてのevening ISSCC panelにて、Google Glassesの試作版をかけたBabak Parviz氏、下記の写真参照。Googleは、アプリ開発者に該試作版をリリースする準備を行っている旨。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/1%20Babak%20Parviz%20w%20Google%20Glasses%20x%20420.jpg

ISSCCに先立って、アップルからの腕時計型機器を巡る動きが以下の通り表わされており、これに対峙する感のある上記Google発表ではある。

◇アップル、スマホ超える?腕時計型機器を試作中 (2月12日付け 読売)
→米ウォール・ストリート・ジャーナル紙など11日発。米アップルが腕時計型の機器を試作していることが分かった旨。アップルは、腕時計のように身につけ、スマートフォンと同様の機能を持つ機器を開発中、「iPhone」の製造委託先で台湾の鴻海精密工業などと協議を進めており、関係者の一人は「スマホやタブレット型多機能情報端末を超える、大型商品になる可能性がある」と話している旨。

ISSCCというと最先端プロセスの動向如何が今なお注目と思うが、この世界は今や次の表わされ方がある。

◇Accelerating Moore's Law-Chipmakers pick up the pace in moving from the lab to the fab (2月21日付け SemiMD.com)
→Intel, TSMCおよびIBM, Samsung、Global FoundriesのCommon Platform 3人組は、先端IC製造技術の量産化速度を早めている旨。

Intelに及んでは以下の展開の動きとのこと。社内の競い合いがあってISSCC発表に至るかどうかという感じ方も出てくるところではある。
  
◇London Calling: Intel Israel lobbies to get 10-nm node (2月19日付け EE Times)
→Intel社はすでに、14-nm FinFETプロセス技術を米国のDX1およびFab 42ウェーハfabsおよびLeixlip, IrelandのFab 24で動かしており、次のプロセスノードがどこで展開されるかに思いが及ぶのは至極当然の旨。社内の直近の競い合いではIsraelがIrelandに屈しているが、Intel Israelのgeneral manager、Maxine Fassberg氏は、ほぼ確実に450-mm径ウェーハとなって巨額のインフラ投資が行われる10-nmノードで、Israelがやれることを示すチャンスを得るよう働きかけている旨。

現下の市場では、モバイル機器への急激な移行で窮地に立つ現状のPC業界を反映して、以下の動きが見られている。

◇Wintel camp mulls measures to rekindle weakening notebook industry (2月21日付け DIGITIMES)
→業界筋発。タブレット人気拡大により窮地に追い込まれているnotebook業界を再び元気づけるよう、Wintel陣営内サプライヤが2013年第二四半期において自分たちの製品価格低減など一連の対策打ち上げを考えている旨。
Windows 8登場が末端市場におけるnotebooks更新需要の焚きつけに失敗、supply chainでの在庫調整プロセスの間延びが2012年第三四半期以降続いている旨。

現時点の激動模様から今後の方向性についていろいろ思い巡らしが果てしないのは何処も同じか、インドでは業界団体の名称が以下の通り変更しているが、当たり外れはともかくなぜか共感を覚えるところがある。ISSCCを機に、我が国そしてグローバルな半導体業界のあり方を現時点に照らしてなかなかまとめ切らず考えるところがある。

India Semiconductor Association(ISA)
⇒India Electronics and Semiconductor Association(IESA)


≪市場実態PickUp≫

2012年の300-mmウェーハ生産capacityのメーカー別ランキングが発表されており、上位6社で74.4%を占めるとともに、メモリの比率の重みを改めて、そして意外なほどに感じている。特に、MicronのElpida買収が順調に進めば、Samsungに次ぐ2番目となりそう、という見方である。

【300-mmウェーハcapacity】

◇Five IC suppliers to hold one-third of 300mm wafer capacity in 2013 (2月20日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsの更新レポート、Global Wafer Capacity 2013。IC業界生産capacityがますます集中してきており、300-mmウェーハ技術で特に著しい旨。Samsungが、第2位のSK Hynixより約61%多い300-mm capacityを有し、2012年では圧倒的な首位、2012年末時点で二桁の300-mm capacityのシェアをもつのは残りIntelだけの旨。Micronが2013年前半にElpidaを順調に買収となると、両社の合わせた300-mmウェーハcapacityはSamsungに次いで2番目になると見る旨。

◇Six firms dominate 300-mm wafer fab capacity(2月20日付け EE Times)
→IC Insights発。300-mmウェーハ生産capacityによるICメーカーランキングでメモリおよびファウンドリー半導体メーカーが上位を席巻、2012年ではトップベンダー6社で74.4%を占めた旨。2013年は依然同様な席巻で74.0%が見込まれるが、より長期的には製造capacityがさらに集中すると見る旨。
・≪表≫ 300-mm径ウェーハ製造capacityによるICメーカー・ランキング
  :2012年ランキングおよび2013年予測 [Source: IC Insights]
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130220pcICinsightsCapacityRanking646.jpg

新しい据え置き型ゲーム機を投入するのは7年ぶりというソニーからの「プレステ4」発表である。以下の通り、巻き返しを図る新規な取り組みが見られている。

【プレステ4】

◇ソニー、「プレステ4」発表、ネットワーク機能拡充 (2月21日付け 日経 電子版)
→ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が20日、ニューヨーク市内で開いたイベントで、据え置き型家庭用ゲーム機の新製品「プレイステーション(PS)4」を発表、今年の年末商戦に合わせて発売する旨。自分のプレー映像をリアルタイムで友人と共有できるなどネットワーク機能を拡充、手軽にゲームが楽しめるスマートフォンの普及で、ゲーム機の市場環境は激変、ソニーは新型機の投入で、苦戦が続くゲーム事業で巻き返しを狙う旨。PS4の心臓部には、米AMD製の半導体を採用の旨。

◇8-core x86 AMD processor powers Sony's PlayStation 4 (2月21日付け TheNextWeb.com)
→ソニーが水曜20日、New Yorkで発表したPlayStation 4は、8個の"Jaguar"コア搭載のカスタムAdvanced Micro Devices(AMD) accelerated processing unit(APU)ベースの旨。

◇Sony PS4 sports 8-core AMD 'Jaguar' CPU (2月22日付け EE Times India)
→ソニーは、2000年にPlayStation 2用に自らのCELLプロセッサを開発、しかし、このほど発表のPlayStation 4では、CELL並びにPlayStation 3で使われたNvidiaグラフィックス半導体をやめることを決定の旨。

モバイル機器の世界的活況がここのところ市場の謳い文句として定着しているが、変調を起こすとそのインパクトも並大抵ではなくなる。以下のiPhone増産凍結の動きは、世界市場にも大きな衝撃を与える可能性があり、引き続き注目である。

【iPhoneショック】

◇iPhone増産凍結、鴻海の中国工場、関連産業に影響も(2月21日付け 日経)
→世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業が、米アップルのスマートフォン「iPhone」の主力生産拠点である鄭州(Zhengzhou:河南省)工場の生産拡大を凍結、従業員募集を停止、新工場の建設工事を延期した旨。iPhone5の販売の伸び悩みが改めて浮き彫りとなった格好、電子部品や製造機械を納入する日本企業にも影響が出そうな旨。鴻海は中国の輸出総額の約6%を占め、従業員数は約160万人、同社の失速は中国景気を下押しする可能性もある旨。

エルピーダ買収、ルネサス再建に向けた具体的な動きが、以下の通り進んでいる。もう1年、早くも1年、錯綜するところがある。

【エルピーダおよびルネサスの動き】

◇Micron-Elpida deal cleared by China Ministry of Commerce (2月20日付け DIGITIMES)
→中国・Ministry of Commerceが、Micron Technologyが以前に発表、提案しているElpida Memory買収について公正取引の認可を与えた旨。
pre-merger承認は、米国、チェコ、日本、韓国、シンガポールおよび台湾からこれまで得られており、中国の承認が最後に残っていた旨。

◇ルネサス臨時総会、増資へ株式の発行枠拡大を決議 (2月22日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスが22日、川崎市で臨時株主総会を開き、産業革新機構などに対する第三者割当増資を実施するため、株式の発行枠拡大を決議した旨。実際の増資には中国など海外の独禁当局からの許認可が必要で、今年9月末までに払い込みを完了する計画の旨。


≪グローバル雑学王−242≫

3K立国第3要件の環境の後半をもって本文の締めとなり、最後にこんな日本人が出てほしい、ということで、15回にわたって読み進めた

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』  
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

も完読となる。読んでいる間に、我が国の政権交代が行われて、まさに日本経済の復活を最優先課題とした"三本の矢"のアプローチが進められている。
思いに符合する展開の進捗に注目するとともに、しっかり支えて後退は許されないコンセンサスが求められると思う。


II部 新しい日本を創る
第8章 3K立国[その3]−−−環境       ≪後半≫

(4)ストックを活用する経済へ転換

□製造業はセル生産方式が主流になる
・リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)の徹底
 →注文に応じて生産するセル生産方式への切り替え:「小さな単位のモノづくり」

□SCM(サプライチェーン・マネジメント)を活用
・セル生産方式に転換して、コスト削減がなぜ可能?
 第1:成熟社会に入り、ストックが充実してきたため、消費者の需要構造が大きく変化
 第2:SCM(供給連鎖管理)によって製品の需要動向をかなり正確に把握できるように
・エネルギー、資源節約時代の経営手法として登場してきたセル生産方式

□流通・消費段階ではリユースにビジネスチャンス
・ストックの有効活用を軸に、経済全体のサービス化が大きく進む
 →脱物質化が促進

□自動車産業は立派なサービス産業
・自動車産業、現在の売上げ構成比
 →新車の売上げは11兆円、市場全体の約3割に留まる
 →残りの7割がサービス:修理などのアフターケア
                中古車販売
                保険・金融・リース
・日本の自動車保有台数(ストック)…2012年で約7500万台
 →フローの新車販売台数 約600万台
  推定廃車台数     約500万台/年

□買い替え需要に支えられる新車市場
・新車販売台数から廃車台数を差し引いた自動車の純増部分は、約100万台
 →ストック全体に占める純増台数(フロー)の割合は1.3%にすぎない
 ⇒新車がどんどん売れる時代ではない
  自動車の性能が向上、使用期間が長くなっている

□自動車ディーラーはサービスで稼げ
・一度生産された車を長く使いこなすために必要なサービス需要が拡大
 ⇒ビジネスとして成立しているのが日本の自動車産業の現状

(5)下流段階はリサイクルが柱

□静脈産業を大きく育てる
・廃棄物になる時期がきて、集め、解体し、再資源化するビジネスが必要に
 →静脈産業
・モノをつくり、消費する動脈産業と静脈産業が連結して発展
 →循環型社会は円滑に機能

□リサイクル産業としてよみがえる素材産業
・持続可能な社会
 →静脈産業が動脈産業と同じ程度の大きさの産業に発展することが必要
・静脈産業の担い手として最近注目されてきたのが素材産業

□廃棄物でつくるエコセメント
・様々な産業が排出する廃棄物や下水汚泥、焼却灰
 →必要な元素を取り出し、配合比率を調合
 ⇒エコセメントができる
・実際には廃棄物約50%、残りの約50%は自然界から採掘した石灰石などを混合

□「都市鉱山」を徹底利用
・製錬技術を使って純度の高い金属に再生する環境・リサイクル分野が急成長
 →非鉄金属のDOWAホールディングス(旧同和鉱業)
・廃棄物となった携帯電話やパソコンの山(都市鉱山)から金を精錬・回収した方がはるかに効率的
・製紙業界では、新聞や雑誌などの古紙を原料にして再生紙を生産

□環境立国への道
・静脈産業を動脈産業と肩を並べられる基幹産業に育てていく必要
・廃棄物ビジネスが欧米のように全国ベースで展開できれば、日本の静脈産業はもっと大きく育ってくる
 →そのための制度改革が必要

終章 こんな日本人、出でよ

□スピードが大事
・日本が進むべき方向、目標を明確化、戦略国家として長期的視点に立った国づくり
・変化をチャンスとして受け入れる気概
 世界標準に適応した企業戦略の追求
 節電革命による産業構造のスリム化
 経済発展の方向転換

□問題解決がやさしい時代
・戦後の日本は、量的拡大によって問題が解決
 →1960年代の日本は、年率10%の高度成長を10年以上も

□これからは解決の難しい問題が山積みだ
・過去の延長線上に将来の望ましい姿が存在しない
 →「言うはやすく、行うは難し」

□サッチャー流の政治手法が参考になる
・「小さな政府」を掲げて深刻なイギリス病を克服、同国の繁栄を取り戻したサッチャー元首相の政治手法が参考に
 →10年かけて同国の進むべき方向を変えた
・政治家は、なぜ負担が必要なのかをしっかり説明、納得してもらうまで国民を説得する努力を続けるべき

□文字通りのラストチャンス
・今、政治に最も欠けているのはスピード
 →典型例:東日本大震災後の対策
 →中央集権型政策決定や縦割り行政の弊害で、被災地で必要な緊急対策、機動的な行動が著しく制約されている
・これからの日本を支える主役の群像:
 1 強いリーダーシップと使命感をもった政治家!
 2 企業家精神に富んだ事業者!
 3 地域力を生かせる地域リーダー!
 4 変化をチャンスと受け止める自立心に富んだ国民!

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