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前年を若干ながら下回る世界半導体販売高、米国のjobs創出重点化

米SIAから定例の月次世界半導体販売高の発表があり、今回は昨年、2012年の総括りのタイミングである。2011年の総販売高、$299.5 billionから2.7%減の$291.6 billionということで、この集計での$300 billionの壁の厚さをこの数年繰り返す感じ方となっている。半導体業界では最先端微細化技術、大きく世界経済では特に先進経済圏でのjobs創出・拡大に向かう大きな壁の打開・打破が喫緊の課題と思うが、米SIAそして間近のObama大統領一般教書演説でもjobs創出が最重点と極めて明確なスタンスが打ち出されている。

≪jobs創出への照準≫  

来る火曜12日に行われる米国Obama大統領の一般教書演説は、雇用浮揚を強調する内容が以下の通り予定されている。

◇Obama: State of the Union to focus on jobs (2月8日付け USA Today/The Oval blog)
→来週のObama大統領の一般教書は、1つの主要トピック、Jobsに照準を合わせる旨。Barack Obama大統領は今週、Democratic lawmakersと事前試演、雇用を高めるためにimmigrationおよび教育改革などの問題を該演説で強調する旨。

このタイミングに発表された米SIAの半導体販売高発表、次の通りである。

☆☆☆↓↓↓↓↓
○2012年の半導体業界、過去最高に近い総販売高−2011年からは僅かながら減少、業界予測は上回る …2月4日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年の世界半導体販売高が$291.6 billion、業界史上3番目となるが、2011年に記録した最高販売高、$299.5 billionからは2.7%の減少、と発表した。この2012年販売高は、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationの業界予測と細かく合っている。
2012年12月のグローバル販売高は$24.7 billion、前月の$25.5 billionからは3%の減少である。第四四半期の販売高、$74.2 billionは、2011年第四四半期の$71.5 billionからは3.8%増となっている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「マクロ経済の相当な難局にも拘らず、グローバル半導体業界は予想を上回って、2012年に最高の年次総販売高に入る1つを示している。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「Americas地域における力強さが引っ張る最近の推進力をもって、我々の業界は順調な2013年に向けて良い位置づけにある。」

2012年には市場分野のいくつかで力強い需要が見られている。ロジックが最大の半導体カテゴリーであり、2012年には$81.7 billionに達し、2011年比3.7%増である。トップ3分野として、MOS microprocessors($60.2 billion)およびメモリ($57 billion)が続くが、ともに2011年販売高総計からは後退している。Optoelectronicsが年間では最も伸びた市場であり、2012年は13.4%増の$26.2 billionに達している。Optoelectronic応用は、モバイル機器およびカメラなど広範囲の製品でエネルギー効率および低コストを発揮している。たくさんのモバイル機器、USBフラッシュdrives、メモリカードなどストレージおよびデータ転送製品で用いられるNANDフラッシュが、4.1%と2番目の伸びを示し、2012年に$25.4 billionに達している。

地域別には、Americasが引き続き力強さを示しており、2012年12月は2011年12月に比べて13.4%増、2012年第四四半期では2012年第三四半期に比べて12%増となっているが、進行中の経済および政策不安が短期的市場見通しに引き続きリスク要因となっている。12月のAsia Pacificの販売高も前年同月比6.7%増加したが、欧州および日本はそれぞれ前年同月比5.5%および11.2%の減少となった。4地域すべてで2012年の総販売高は2011年を下回ったが、Asia Pacificの0.6%減およびAmericasの1.5%減が少ない方の減り幅となっている。

  【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Dec 2011
Nov 2012
Dec 2012
前年同月比
前月比
========
Americas
4.36
5.02
4.94
13.4
-1.5
Europe
2.78
2.80
2.63
-5.5
-6.4
Japan
3.59
3.41
3.19
-11.2
-6.5
Asia Pacific
13.10
14.28
13.98
6.7
-2.1
$23.83 B
$25.51 B
$24.74 B
3.8 %
-3.0 %

--------------------------------------
市場地域
7- 9月平均
10-12月平均
change
Americas
4.42
4.94
12.0
Europe
2.79
2.63
-5.8
Japan
3.65
3.19
-12.5
Asia Pacific
13.96
13.98
0.1
$24.81B
$24.74
-0.3 %


「長引く経済および政策不安にも拘らず、米国半導体市場は引き続き力強さを発揮して、12月の強い印象を与える伸びとなっている。」とToohey氏は続ける。「すべての現代エレクトロニクスの基盤として、半導体はAmericaの力強い経済、国家安全およびグローバル競争力に肝要なものとなる。成長を促進して不安を取り除く施策を制定して、policymakersは我々の業界をさらに強化、2013年以降の可能性全開に向けた支援が行える。」

※12月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/GSR/December%202012%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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これを受けた関連記事、次の通りである。今年、2013年の世界半導体販売高見通しについては、以下のプラスの見方もあれば、後に出てくるマイナスの見方もあるという、入り混じったものとなっている。

◇December dip caps weak year for chip sales (2月4日付け DIGITIMES)

◇Semiconductor industry to recover this year-Mobile devices will drive semiconductor revenue this year after a rough 2012 (2月4日付け Computerworld/IDG News Service)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organization発。今年のグローバル半導体業界はモバイルelectronicsが伸びを支え、昨年の$290Bから4.5%増の販売高と見込む旨。PC市場が軟化、昨年、2012年の半導体販売高は2011年から3.2%減った旨。一方、Semiconductor Industry Association(SIA)の評価では12月の世界IC販売高は$24.74B、2012年全体は$291.6Bとなっている旨。

米SIAでは先立つ1月下旬に、2013年政策ロードマップと銘打って、半導体業界の強化策を以下の通り表わしている。jobs創出最優先で締める内容となっており、上記の大統領一般教書に通じる展開である。

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○米国半導体業界を強化、アメリカのイノベーションを高めるSIAの2013年政策ロードマップ

1月22日に、SIA President & CEO、Brian Toohey氏より以下の通り発表:

1. 半導体業界の伸びを焚きつけるよう市場開放を促進、intellectual property(IP)を保護
…Information Technology Agreement(ITA)更新、Trans-Pacific Partnership(TPP)交渉、World Semiconductor Council(WSC)の場

2. 次世代半導体技術を探求する大学リサーチへの連邦出資サポート
…National Science Foundation(NSF), National Institute of Standards and Technology(NIST), Defense Advanced Research Projects Agency(DARPA), およびDepartment of Energy(DOE) Office of Science

3. 国家安全を守る一方、グローバル市場で米国半導体メーカーが効果的に競えるよう、輸出管理規制を合理化

4. アメリカの競争力、米国の設計&製造およびアメリカの革新を促進する法人税制体系の改革

5. 産業界および政府の連携を通して半導体製品のセキュリティおよび認証を改善 …模造品対策

6. 半導体業界のニーズに合った法制化確保、持続可能practicesおよびイノベーション開発をサポート …環境規制

一生懸命働き、工夫を凝らして、半導体業界はAmerican jobsを作り出し、米国の経済成長を引っ張り、グローバル市場をリードしていく。SIAの2013年政策ロードマップを規定することにより、policymakersは我々の業界をさらに強化、その可能性全開を支援できる。 
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販売高発表にすぐ続くタイミングで、米SIAは次の通り、研究開発投資への支援を議会に強く働きかけている。先進経済圏、そして半導体業界において特に求められる現時点の訴求点ということと思う。

◇Semiconductor Industry Leader Urges Congress to Support Basic Scientific Research-Texas Instruments CEO and SIA board member Rich Templeton highlights the importance of R&D investments to America's future (2月6日付け SIA Press Release)
→米Semiconductor Industry Association(SIA)が本日、アメリカの力強い経済、国家安全およびグローバル競争力を持続するために基礎的科学研究への投資支援を議会に促した旨。Science, Space and Technologyの下院委員会聴聞会にて、Texas Instrumentsのchairman, president and CEOでSIA board of directorsメンバーのRich Templeton氏が証言、経済的な苦境にあっても半導体業界は研究開発に印象に残るような記録的な投資を行っており、議会もそうするよう強く求めた旨。


≪市場実態PickUp≫

弱含み、厳しい市場環境の2012年においても、半導体メーカーはR&D投資を増額しているという、上記の米SIAの主張を裏付ける以下のデータ内容である。

【半導体R&D投資】

◇Semiconductor R&D spending rises 7% despite weak market (2月5日付け ELECTROIQ)
→IC InsightsのMcClean Report、2013年版発。2012年の半導体市場は1%減の$317.6Bとなったが、半導体メーカーのR&D投資は7%増、$53.0Bと最高を記録の旨。半導体販売高総計に対する半導体メーカーR&D投資の比率は、2012年は16.7%になり、2008年および2009年の両年で記録した17.5%のピーク値以来の高水準となる旨。
・≪グラフ≫ Intel、Samsung、TSMCのR&D投資/販売高比率:1995〜2012年
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/02/1301SSTr&d.gif

IBMとGLOBALFOUNDRIES、Samsung Electronicsのシリコンファウンダリ3社による半導体製造の協業グループ、"Common Platform"のイベント、2013 Common Platform Technology Forum(2月5日:Santa Clara Convention Center)での注目点である。

【2013 Common Platform Technology Forum】

◇Chip market seen contracting again in 2013 (2月5日付け EE Times)
→Common Platform年次イベント(SANTA CLARA, Calif.)にて火曜5日、ベテラン市場watcher、Handel Jones氏。2013年の半導体業界は0.5%縮小すると見る旨。この苦境および整理統合にも拘らず、長期的な伸びの見通しは依然力強いものがある旨。

◇GloFo, Samsung in race to 14 nm (2月6日付け EE Times)
→GlobalfoundriesとSamsungが、ライバル、TSMCに1年ほどのリード差をつけようと、最初の14-nm生産ウェーハを年末前に出すデッドヒートを演じている旨。一方、New YorkのIBM buildingは、extreme ultraviolet(EUV)リソmachineが業界の長期的な今後を道案内するのを待って空いたままになっている旨。

パソコンとタブレットの出荷数量データをどのようにカウントするかがあるが、まとめてPC分類としている最新の2012年第四四半期データが次の通り表わされている。

【PCs & タブレット市場】

◇Tablets keep gaining on PCs (2月6日付け EE Times)
→タブレットを広くPC分類に入れてまとめているCanalys Ltd.(Palo Alto, Calif.)発。Apple社のiPadおよびその競合のようなmediaタブレットが、2012年第四四半期のパソコン出荷で3台に1台を占めている旨。従来のdesktopおよびnotebook PCsがこのところ出荷を落としてきている一方、タブレット出荷が印象的な速度で伸びている旨。第四四半期のタブレットを含めたPC出荷全体は134M台、前年同期比12%増、タブレットとPCを分けているGartner社によると、第四四半期の世界PC出荷は90.3M台、前年同期比5%減。Canalysの第四四半期PCベンダーランキング:

1 Apple
27M台
シェア20%以上
2 Hewlett-Packard Co.
15M台
約11%
3 Lenovo Group Ltd.
HPより20万台少
約11%

従来のパソコンの大手、デル社では次の動きが見られている。

◇米デル、2兆2700億円でMBO、マイクロソフトが資金 (2月6日付け 日経 電子版)
→米IT大手、デルが5日、創業者のマイケル・デル最高経営責任者(CEO)と米投資ファンドのシルバーレイク・パートナーズがデルの全株式を共同買収し、非公開会社にすると発表、買収総額は約244億ドル(約2兆2700億円)、主力のパソコン需要が伸び悩むなか、株価動向や株主らの意向に左右されずに、大胆な経営改革を進められる環境を整える旨。

◇Dell goes private! (2月7日付け EE Times India)
→NASDAQからDell社の名前が除かれる旨。

Apple社のタブレット・インパクトが上記に表われているが、2012年NANDフラッシュメモリ市場はiPhone・インパクトをパソコン低迷が打ち消している状況となっている。

【2012年NAND市場】

◇Despite surging demand from Apple, NAND market contracts in 2012 (2月5日付け ELECTROIQ)
→IHS iSuppli Data Flash Market Tracker Report発。2012年のグローバルNANDフラッシュメモリ市場売上げが$19.7B、2011年の$21.2Bから7%の減少、Ultrabook売上げ低迷がApple社iPhoneライン需要急増インパクトを帳消しにしている旨。
・≪グラフ≫ 世界NAND業界売上げ予測:2011〜2016年
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2013/02/NAND%20flash%20figure.png

Taiwan Intellectual Property Office(TIPO)発表の特許ランキングデータに改めて注目するところがある。

【台湾特許ランキング】

◇Foxconn obtains most patents among Taiwan-based firms in 2012, says TIPO (2月6日付け DIGITIMES)
→台湾Ministry of Economic Affairs傘下のTaiwan Intellectual Property Office(TIPO)、火曜5日発。2012年の特許取得ランキング:
[TIPO: 2012年特許取得トップ5 台湾のメーカー、機関]
 Foxconn Electronics(Hon Hai Precision Industry) 1,397
 Industrial Technology Research Institute(ITRI) 630
 U Optronics (AUO) 510
 Innolux 458
 Foxlink (Cheng Uei Precision Industry) 395
[TIPO: 2012年特許取得トップ5 海外 or multinational]
 Sony 426
 Qualcomm 369
 Panasonic 218
 Tokyo Electron 210
 Samsung Electronics 180
    [Source: TIPO, compiled by Digitimes, February 2013]


≪グローバル雑学王−240≫

観光立国へ向けて如何に取り組むか、具体的な例を、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

より見ていく。国民全体の幸福度を優先するブータン、そして国内の地方のそれぞれの立地を活かした町おこしの取り組みである。受け継がれている文化、自然、伝統の資産の重みに改めて注目である。


II部 新しい日本を創る
第7章 3K立国[その2]−−−観光       ≪後半≫

(2)日本に必要な観光立国の構図   [その2]

□国民総幸福(GNH)を掲げるブータン
・1972年にブータンの第4代国王に就任したワンチュク国王
 →「GNPよりGNH(Gross National Happiness)」の方が大切
・1999年に「ブータン2020」を策定
 →2020年を目標、4つの柱を推進
  1.持続可能で公正な経済開発
  2.環境保全
  3.文化の保護
  4.良い統治

□ツルの保護で電柱を敷かない地域も存在
・ブータンは、法律で森林面積を6割以下に削減してはいけないと定め
 →渡り鳥、オグロヅルの生息地の住民は、電柱を敷かず、太陽光発電やロウソクで生活

□伝統文化の保存・継承にも熱心
・男性は「ゴ」、女性は「キラ」と呼ばれる民族衣装をブータン政府のオフィスなどでは着用を義務付け
・一方、小学校では正規の授業として英語教育に力
 →小さな国、ブータンにいても世界の動向が分かる人材の育成が必要

□自然資本の価値は400兆ドルを超える
・自然資本は、山や川、高原や海などのように地域と一体化した存在
 →経済発展の過程で傷つき、破壊
 →今、時代は大きく変わり、自然資本が希少価値を持つように

(3)観光立国へ地域の挑戦

□岩手県・葛巻町、自然エネルギーの総合博物館
・かつて「日本のチベット」といわれた岩手県・東北部、北上高地にある酪農の町、岩手県・葛巻町
 →自然が貴重な財産(自然資本)になり、今生み出し始めた新しい価値
 →町全体が自然エネルギーの総合博物館

□自然エネルギーの博物館を回ってみる
・自然エネルギーの町・葛巻町の象徴
 →合計15基の風力発電
 →葛巻町全体の年間電力消費量の約2倍
 →余剰は東北電力に売電

□徳島県・上勝町、葉っぱビジネスで2億6000万円
・過疎の町、徳島県上勝町の葉っぱビジネスとゼロ・ウェイスト宣言
 →日本料理を美しく彩る季節の葉や花、山菜などを販売するビジネス
  ごみの34種類分別資源化

□山梨県・北杜市、メガソーラーに取り組む
・山梨県の北西部、北杜市
 →2006年に小淵沢町が合併、人口約5万人に
 →日照時間が全国最長、年間2081時間
・「人と自然と文化が躍動する環境創造都市」を目標に
 →その中心に、恵まれた太陽を利用した太陽光発電所

□北杜サイトの太陽光発電所
・北杜市、2006年度NEDO募集の「大規模電力供給用太陽光発電系統安定化等実証研究」にNTTファシリティーズと共同で応募、採択
 →発電出力2MW級の太陽光発電システムを構築
 →国内外9ヶ国、27種類の太陽電池モジュールを設置、その性能を具体的に比べる試みを導入
  ⇒全国一の太陽光発電の町づくり

□成功の日を夢見る
・今、日本各地で、それぞれの個性を生かした地域おこし
 →単に元の姿に戻す復旧ではなく、多くの人々が実際に住んでみたくなるような魅力的な地域の創造

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