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世界的株高・円安、半導体在庫、対する警戒、慎重な姿勢

デフレ脱却に向けて大きく前進するシナリオを進める我が国であるが、昨今の急速な円安・株高が国内エレクトロニクス業界はじめ各社業績に早速の急回復として見えてきている。世界的にも同時株高の様相となっており、当面本物の景気回復につながるかどうか、世界の経済情勢に注目ということと思う。モバイル機器の活況のなか昨年末にきて高水準の在庫となっている半導体市場では、今後本当に景気拡大となるかに警戒感、あるいは慎重な姿勢が強まる状況が見られている。

≪各国の状況、各社の反応≫  

ここにきて慌ただしい経済情勢の動き、まずは我が国の"アベノミクス"効果の急速な表われ方である。

◇急伸、アベ市場、電機・自動車…企業業績も急回復の兆し−12週連続の株価上昇、4〜12月期決算好転 (2月2日付け 朝日)
→昨年暮れからの円安・株高で、企業の業績に急回復の兆しが出てきた旨。
輸出が主体の製造業が復調、銀行や証券でも好決算が相次いで、景気の底打ちが鮮明になりつつある旨。

世界的にも最新の動きとして次の通りである。

◇NY最高値目前・日中も好調… 世界同時株高に (2月3日付け 日経 電子版)
→世界的に株価が上昇、先進国の金融緩和や米景気の回復期待で、ダウ工業株30種平均は1日、約5年4カ月ぶりに1万4000ドルの大台を回復した旨。
欧州の債務不安の後退もあり、マネーがリスク資産である株式に流れやすくなっている旨。日本や米国の株価が堅調な一方、景気がさえないブラジルやインド株は見劣りし、値動きの格差も目立ち始めた旨。

世界の各国から経済情勢に纏わるデータが出てきており、注目の中国は冷え込みが見られた昨年から回復するGDP伸び率を見込んでいる。

◇今年の経済成長率は8.4%前後、中国科学院予測 (1月28日付け 人民網日本語版)
→新華社発。中国科学院(科学アカデミー)予測科学研究センターが26日に発表した2013年の中国経済の予測報告によると、2013年の中国経済は冷え込みから回復して温度が上昇、国内総生産(GDP)の増加率は8.4%前後となって2012年を約0.6%上回ると見る旨。

韓国からは昨年のGDPデータが発表されているが、サムスン電子と現代自動車の2社で実質GDPの1/4以上という偏りに改めて注目させられている。

◇韓国の昨年実質GDP、前年比2%増=韓国銀行 (1月28日付け 韓国・中央日報)
→韓国銀行(中央銀行)が28日、韓国の2012年の実質国内総生産(GDP)速報値を1103兆4673億ウォン(約92兆7800億円)と発表、前年の1081兆5939億ウォンから2%増加した旨。
GDP伸び率が2%にとどまった一方で、大企業の成長が目立ち、サムスン電子と現代自動車の2社で実質GDPの26%を占めた旨。

欧州の半導体大手、STマイクロからは円、ユーロ、米ドルの急速な価値の変化に対して警戒感が表明されている。

◇STMicro CEO: Stronger Euro is "Heavy Challenge" for Exporters (1月31日付け The Wall Street Journal)
→STMicroelectronicsのCEO、Carlo Bozotti氏。円の価値が弱まって、ユーロがドルに対して強さを増し、欧州メーカーによる輸出に有害な効果を与えている旨。「我々は欧州メーカーが世界で戦える通貨をもつことが必要」と同氏。一方、同社は昨年MEMSセンサ販売高を19%増の約$800Mに伸ばし、総計30億個を市場に出荷している旨。

労働市場、すなわち有効job数の活性化が一番の指標と思うが、米国では年末からこの年初にかけて以下の通り力強いデータとなっており、市場に期待感を抱かせる主因と受け止めている。

◇Good news on jobs: Growth was steady to start the year, and 2012 was better than first thought (2月1日付け The Washington Post)
→米国経済で加わったjob数、次の通り:
 2012年11月  247,000 jobs
 2012年12月  196,000 jobs
 2013年 1月  157,000 jobs
堅実な年初のjob創出、労働市場が以前考えられていたよりも2012年末時点でずっと力強かった旨。

一方、半導体市場は以下の通り高水準の在庫を抱える状況となっている。

◇Chip inventory at semiconductor suppliers reaches worrisome high, says IHS (1月29日付け DIGITIMES)
→IHS iSuppli発。半導体サプライヤ保有の半導体在庫が、2012年第三四半期に驚くほどの高水準に達した旨。2012年第四四半期の全体半導体売上げは、前四半期比0.7%減少、この低迷する結果は在庫が第三四半期末までに過剰な高水準に達したことからきており、半導体売上げ全体の49.3%に上り、2006年第一四半期以来の高まりの旨。
・≪グラフ≫ 半導体市場売上げに対する半導体サプライヤ保有在庫:1Q11〜3Q12
http://www.digitimes.com/NewsShow/20130129PR201_files/1.gif

これに対する警戒感もあってか、韓国の半導体2大大手からは設備投資に慎重な姿勢が見られている。

◇Samsung, Hynix cautious about 2013 capex plans (2月1日付け DIGITIMES)
→業界観測筋発。メモリ半導体ベンダー、Samsung ElectronicsとSK Hynixがともに、2013年のcapital expenditure(capex)計画に慎重な姿勢、市場シェア拡大を追求するよりも安定利益確保に両社注目している旨。

今後のグローバル半導体市場はどうなるか、長期的な伸びが見込めるという以下1つの見方である。

◇Chip market ready for steady rebound (1月30日付け EE Times)
→Databeans社(Reno, Nevada)発。2010年から2018年にわたる期間のグローバル半導体市場について、compound annual growth rate(CAGR) 9%の長期的な伸びが見込める旨。地域によって度合いが異なり、AsiaPacと米国が引っ張り、欧州と日本は後れる形で、2013年は半導体業界の伸びが改善、この推進力が何年か引き続くと見る旨。
・≪表≫ 2010年〜2018年市場分野別半導体売上高 推移&予測
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130130pcDataBeans973.jpg


≪市場実態PickUp≫

モバイル機器の活況に乗って昨年の半導体メーカー・ランキングでごぼう抜き3位に躍進したQualcommであるが、記録的な四半期業績がこのほど発表されている。本年の売上げガイドが$23.4B〜$24.4Bに上方修正、これは2位三星電子の約$30B(2012年)に大きく迫るものになる。

【Qualcommの業績】

◇Qualcomm profit beats street, raises guidance; shares rise (1月30日付け Reuters)
→Qualcommの12月30日締め第一四半期売上げおよび利益が、アナリスト予測を上回った旨。年間売上げguidanceを、前回の$23B〜$24Bから今回$23.4B〜$24.4Bに上方修正の旨。

◇Qualcomm lifts sales target after record quarter (1月31日付け EE Times)
→Qualcomm社(San Diego)が四半期販売高$6.02Bと最高を記録、前四半期比24%増、前年同期比29%増。net incomeは$2.2B、前四半期比42%増、前年同期比32%増。これを受けて年間販売高目標を引き上げ、アナリスト予想を上回る旨。

2017年までの中国のICs市場展開予測データが、以下の通り表わされている。2017年には中国が世界半導体市場の4割近くに達するのではという見方である。

【中国のICs市場】

◇Chinese IC market boom predicted (1月28日付け EE Times)
→IC Insights社発。中国のICs市場が、2012年から2017年にわたってcompound annual growth rate(CAGR) 13%で伸びる見込み、同期間のグローバルIC市場についてのCAGR予測を5%ポイント上回る旨。該中国市場は2012年の$81Bから2017年には$148Bに達すると見ており、2017年の世界半導体市場は$389.3Bで中国がその38%を占める旨。
・≪グラフ≫ 中国のIC市場シェア予測 [Source: IC Insights]
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130128pcICinsightChina758.jpg
・≪グラフ≫ 中国のIC市場 vs 中国のIC生産 [Source: IC Insights]
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20130128pcICinsightChina715.jpg

◇China IC market to boom through 2017, says IC Insights (1月31日付け DIGITIMES)

活況のモバイル機器について、新興市場に向けた動き、社名も'Blackberry'と改めたResearch In Motion(RIM)からの新OS機種、とさらなる展開である。

【モバイル機器のさらなる展開】

◇NVIDIA Looking To Build Tegra Reference Devices Itself To Flood The Market, Report Claims (1月28日付け TechCrunch)
→Nvidiaが、モバイル機器用アプリプロセッサの市場シェア構築を目指して、中国およびロシアのメーカー向けにwhite-label reference設計を提示する計画、同社のグラフィックスカードでの同様な戦略に従っている旨。

◇Blackberry 10 launched! (1月31日付け EE Times India)
→Blackberry愛好家すべてに良いニュース。数ヶ月のお待たせがあって、Research In Motion(RIM)がついに同社最新operating system(OS)、Blackberry 10を披露、さらに、Research In Motionは'Blackberry'と社名変更の旨。

◇India's Dreamchip plans tablet SoCs (2月1日付け EE Times India)
→インドの半導体start-up、Dreamchip Electronicsが、タブレットcomputers用SoCsを打ち上げる計画を発表、独自のmulti-core 32bit RISCおよびDSPプロセッサアーキテクチャーおよび最適化direct connectアーキテクチャーを使用する旨。

DesignCon 2013(1月28-31日:Santa Clara Convention Center)で見られた本年早々のキーワード、"シリコンphotonics"に関する2件である。新たな光の時代へのアプローチである。

【シリコンphotonics】


◇DesignCon: Cisco packs silicon photonics on 3-D ICs (1月28日付け EE Times)
→Cisco Systemsのtransceiverおよびモジュールグループ、senior engineering executive、Bill Swift氏基調講演。同社は、2.5-Dシリコンインターポーザを用いるシリコンphotonicsを試作、同社はじめいくつかのメーカーが次世代ネットワークスのコストを下げるよう該技術を利用しようとしている旨。光および半導体ecosystemsのまとまりが、40-および100-Gbits/second以降でのネットワーキングに甚大なインパクトを与える旨。

◇Slideshow: DesignCon presages silicon photonics era (1月31日付け EE Times)
→シリコンphotonics時代の到来を予感させる今回の写真集、下記参照。
printed circuit boards(PCBs)および半導体がoptical時代に入るには、少なくとも1回、たぶん2回以上のcrank回しがある旨。
http://www.eetimes.com/electronics-news/4406169/Slideshow--Lessons-learned--fun-had-at-DesignCon


≪グローバル雑学王−239≫

3K立国第2要件に挙げている観光について、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』  
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

より、景観の素晴らしさ、食べ物の美味しさ、などひたすら高度成長に明け暮れた時代を経て、見失いがちになっていた我が国の誇るべき各種資産の活性化を今こそ図っていかなければならない、という主張である。小生の故郷(島根県)でも感じることであるが、海山の幸、伝統の舞、世界遺産など恵まれる一方で、活性化にはまだまだ取り組むべき課題が多々、ということと思う。


II部 新しい日本を創る
第7章 3K立国[その2]−−−観光       ≪前半≫

(1)なぜ観光立国を目指すのか

□景観と地方文化の衰退に歯止め
・戦後の高度成長時代に、地方が過疎化、多くの地方文化が衰退
・これからの日本は、地域社会を活性化、新しい社会づくりに観光立国の視点が大切に

□富士山の景観を損なう煙突群
・静岡県富士市周辺から見る富士山は、圧巻の景色
 →製紙工場の煙突で折角の景観が台無しに
・製紙業にとって、富士市周辺は最適な立地条件
 →バブルがはじけた直後の1991年の富士市周辺の煙突
  →20m以上が156本うち、60m以上が32本、100m以上が5本
 →今世紀に入ってから、煙突ゼロを目指して目下、煙突の取り壊し作戦に

□工業化の犠牲になった美しい自然
・高度成長時代の日本の考え方
 →ある程度の自然破壊や公害の発生はやむを得ない、必要悪として目をつぶろう
・日本は1960年代に年率10%の高度成長時代に
 →工業化と引き換えに美しい自然環境を犠牲にし、地方を過疎化

□景観と文化に磨きをかけよ
・大きく変わった時代
 →外貨を稼ぐ時代は終わり、成熟社会へ
・GDPの規模は2050年頃には、今よりもかなり縮小
・電力供給は、集中型供給体制から分散型供給体制の時代へ
・政治・行政スタイルは、東京一極集中型から地方分権、地方主権、地方自立型へ
・工業製品に代わって、自然や景観、地方文化が新しい資産に
 →これからの日本に必要な観光立国

□地方のお祭りも人気
・日本国内だけではなく最近では、近隣のアジア諸国から多くの観光客

□エンターテインメントとしての観光
・これまでの観光
 →団体旅行(マス観光)、レジャーランドやテーマパーク、ショッピング旅行
・これからは、地域社会や地域経済の活性化の手段として観光産業を育てていくという地域おこしの視点が大切に

(2)日本に必要な観光立国の構図   [その1]

・自然環境や景観の修復、復元
 地域経済の活性化
 観光基盤の整備、拡充
 ⇒「低炭素・資源循環・自然との共生を満たす社会」(持続可能な社会)の実現

□エコツーリズムがヒントに
・エコツーリズム…先祖から代々引き継いできたすばらしい自然環境や文化を維持しながら、一方で観光収入が得られるビジネス
 →地元の個性を最大限発揮することが成功のポイント
 →新しいタイプの観光客(エコツーリスト)のニーズに見合うサービスを提供
  →ガイドも地元の歴史や文化、自然環境に関するかなり専門的な知識が必要

□コスタリカのエコツーリズム
・ニカラグアとパナマに挟まれた国、中米のコスタリカ
 →1960年代から1980年代初め、ハンバーガー用の牛肉牧場を作るため、森林の大幅な伐採
 →エコツーリズムが1980年代後半から軌道に、観光(エコツーリズム)収入が1位に

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