本格始動、市場気分の高揚を本物に、新分野・市場地域への期待
本格的に動き始めた2013年、賀詞交歓会や新年挨拶の話し合いも、政権交代が行われて円高・デフレ脱却に向けた金融政策、そして財政政策、成長戦略という「3本の矢」が謳われ、まさに市場気分が高揚、盛り上がるなか、新しい市場分野、そして成長著しい市場地域が話題に上ってきて大きな期待感に包まれるところがある。この熱気が本当の本物の我が国の再生に向けて結実していくよう、特に昨年大変な苦境に見舞われた半導体・エレクトロニクス業界だからこそ一層強まる思いである。
≪賀詞交歓、新年会合&挨拶から≫
JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)の賀詞交歓会に出席、いつもの人波にもまれながらの手元メモで次の通りである。…以下は、JEITAのホームページより後で補足している。
○JEITA 平成25年新年賀詞交歓会
中鉢 JEITA会長
・円の動向、喜ばしい出だし。
・R&D促進税制など製造業の復活に向け、新政権への期待大。
・新たに戻していく契機の年に。
・成長領域シフト、イノベーションにかかる今後。
・80万人の雇用を支える当業界。
・全世界221.7兆円の売上げ規模。日系緩やかに回復。
…2013年の電子情報産業の世界生産は、222兆円、前年比5%増と2年連続で前年を上回る見込み。日系企業の世界生産も、2012年の37兆円、前年比5%減から、2013年には38兆円、前年比2%増と回復を見込んでいる。
・社会インフラのスマート化による新規ビジネス。
・ヘルスケアメディカル、センシングによるイノベーション
…IT・エレクトロニクス産業は自動車、エネルギー、医療・ヘルスケア、 農業、住宅など他産業との融合によってイノベーションを生み出し、利便性や効率の高い社会を実現し、今後の日本経済の再生・成長に貢献していく。
・ものづくり通商国家として我が国の今後
・巳年の本年、みのある年に
佐々木 JEITA副会長
・政権交代、明るい兆し
・イノベーション、コモディティ化の前の新たなパッケージサービス
市場気分の高まりを受けて我が国の伸びにぜひとも技術革新、新市場分野開拓をもって結びつけなければ、と誰しも共通するトーンと思う。
政府、経済産業省からは就任間もない茂木大臣が駆けつけて、簡潔な次のメッセージである。本当にこれに尽きるという思いであり、"グローバルな協調と競争"の中で我が国のプレゼンスを一刻も早く高めていかなければ、と半導体の世界では特に感じるところではある。
茂木 経済産業大臣
・経済の再生、景気の回復、設備投資・R&D・イノベーションの促進
・世界トップレベル、最も使われる部品・機器の開発
・予算、税、資金に向けて尽力
・今年は十二支で唯一脱皮する巳年、新たなスタートに
新年の挨拶に続く話し合いに出てくる話題として、東南アジアの市場の活況ぶりが何回かあって、現地の旺盛な購買欲を目にした実感が話として聞こえてくる。符合するように、安倍首相はベトナム、タイ、インドネシアを16日から4日間の日程で訪問すると発表されているし、NHK総合テレビのニュースウオッチ9でもミャンマー、中国、韓国、台湾の現況、そしてそれぞれの日本への見方を伝えている。伸びる市場地域への実効的な取り組みの必要性を改めて感じさせられている。
本欄で米国SIAのjobs、雇用への注目を取り上げたばかりであるが、安倍政権が一刻の猶予も許されない以下の取り組みの打ち上げである。"ものづくり通商国家"に向けて半導体そして関連業界においても、グローバルに引っ張っていける主導力の一層の充実が如何に図られるかが問われるところである。
◇緊急経済対策:閣議決定…60万人雇用創出、20兆円規模 (1月11日付け 毎日jp)
→政府が11日、安倍政権が掲げる経済再生の実現に向けた緊急経済対策を閣議決定、国の支出だけで10.3兆円、地方自治体の負担や民間分を合わせた事業規模は20.2兆円の大型対策となり、国の支出でリーマン・ショック後の2009年4月に麻生政権がまとめた経済対策(約15兆円)に迫る規模となった旨。政府は、日銀の金融緩和と併せデフレ脱却の起爆剤にしたい考え、実質国内総生産(GDP)を約2%押し上げ、60万人の雇用創出につながると見込んでいる旨。
≪市場実態PickUp≫
年始恒例のラスベガスで開催のCES(Consumer Electronics Show) (1月7-11日)、注目の話題を概観していく。
【2013 International CES】
4K x 2Kで表されることもあり、解像度3,840 × 2,160画素のUltra HDTV(UHDTV)が、開幕前から本当にヒットするかどうか、論議を呼んでいる。
◇CES: Three reasons why Ultra HDTV is a non-starter (1月6日付け EE Times)
→4K x 2Kで表されることもあり、解像度3,840 × 2,160画素のUltra HDTV(UHDTV)について。そのカメラおよびencoderシステムなど設計・開発されて、London Olympicsではいくつかの場所で注目を浴びた旨。にも拘らず、アナログからディジタルTVへの革命的な移行の歴史を指針とすれば、UHDTVは次の3つの領域で弾みに欠けるものがある旨。
−外形寸法
−政治的な意志
−純粋経済学
全米家電協会(CEA)による2013年のconsumer electronics市場の見方である。
◇世界の家電市場、2013年は4%成長を期待、スマホとタブレットが牽引 (1月7日付け 日経 電子版)
→全米家電協会(CEA)が6日、全世界の家電業界の動向分析「State of the Global CE Industry」を公開、該分析はCES開催に先立って発表される旨。スマホとタブレット、モバイルPCなど「モバイル機器」分野:
2012年 2013年
1兆580億ドル 1兆1050億ドル
110億ドル減
いよいよ開幕、次世代TVがまずはやはり中心ということと思う。
◇米でCES開幕−次世代TVに注目 (1月9日付け 日刊工業)
→世界最大の家電見本市「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)」が8日(日本時間9日)、米国ラスベガスで開幕、日本や韓国メーカーが開発にしのぎを削る次世代テレビを相次いで発表する旨。有機エレクトロ・ルミネッセンス(EL)テレビやフルハイビジョンの4倍の解像度を持つ4Kテレビなどを披露、各社が収益低迷に悩むテレビ事業、次世代テレビが打開策になるかが注目される旨。
韓国メーカーからのあの手この手のTVのアピールぶりであり。
◇<CES>サムスン・LG、曲面OLEDテレビ公開 (1月10日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子とLG電子が8日(現地時間)、画面が曲がった55インチのOLEDテレビを“サプライズ”公開、世界初となるこの製品は立体感が増し、生きた映像を楽しめる旨。両社はこの製品を今年上半期中に発売する計画の旨。
現在の市場を引っ張るスマートフォンにも4K表示が採用されている。市場の反応、TVとの相乗効果如何に注目と思う。
◇スマホも「4K動画」時代、半導体大手、新型MPU続々(1月10日付け 日経 電子版)
→米クアルコムや韓国・サムスン電子など世界の半導体大手がスマートフォンやタブレットに搭載する高性能MPUを相次いで発売する旨。フルハイビジョンの約4倍の解像度での動画撮影や3D映像によるゲームなどが可能になる旨。日本でも新型MPUを搭載した機種が今年相次ぎ登場する見通し、スマホなどの市場拡大に一段と弾みがつきそうな旨。
Broadcomの幹部からみた今回のCESのトレンドitemである。
◇Broadcom CTO on UHDTV and Wi-Fi in everything (1月10日付け EE Times)
→Broadcomのco-founder and CTO、Henry Samueli氏。Ultra HDTV, gigabitワイヤレスおよび"Wi-Fi in everything"が、今回の重要な流れと見ている旨。
半導体販売高に目を転じて、まず、TSMCの2012年第四四半期実績および2013年第一四半期の予想である。TSMCは好調な2012年業績であるが、季節要因が絡んでか年末年始の四半期は前四半期比減少の推移&予測となっている。
【TSMCの業績】
◇TSMC December sales down 16% (1月10日付け DIGITIMES)
→TSMCの12月連結売上げNT$37.11B($1.28B)、前月比16.1%減、前年同月比18.8%増。第四四半期総計はNT$131.31B、前四半期比約7%減。2012年間ではNT$506.25B、前年比18.5%増。
2013年は15-20%増と予想する(TSMCのchairman and CEO、Morris Chang氏)旨。
◇TSMC 1Q13 sales to drop 7-11% (1月11日付け DIGITIMES)
→業界watchers発。スマートフォンおよびタブレット用発注の季節的な落ち込みから、TSMCの2013年第一四半期連結売上げが前四半期比7-11%減少する見込みの旨。Qualcomm, Broadcom, NXPおよびTexas Instruments(TI)などTSMCの主要顧客が、在庫調整の渦中で最近発注を落とし始めており、TSMCが3月までマイナスインパクトを受ける様相の旨。
次に、2012年の半導体販売高は前年比2-3%減と予測されているが、その内訳について、ファブレスメーカーは6%増と伸びているとのこと。IDMsは4%減という対比である。
【ファブレスの伸び】
◇Fabless outgrowing IDMs-Fabless firms grew 6% in 2012 as global IC industry shrank (1月10日付け Electronics Weekly (U.K.))
→2012年のファブレス半導体メーカーは6%の伸びを謳歌する一方、integrated device manufacturers(IDMs)は売上げ4%減、世界半導体業界は2%減少の旨。1999年以降、半導体業界はcompound annual growth rate(CAGR) 5%の伸びとなっているが、ファブレスICメーカーはその期間CAGR 16%を示している旨。
2012年の米国特許メーカー別ランキングが示されている。韓国、台湾メーカーの進出ぶりを改めて知らされている。
【米国特許2012年ランキング】
◇Google edges Apple in 2012 U.S. patent race (1月10日付け EE Times)
→IFI Claims Patent Servicesまとめ、2012年Top 50米国特許winnersから、トップ10:
1 6478 International Business Machines Corp 米国
2 5081 Samsung Electronics Co Ltd 韓国
3 3174 Canon K K 日本
4 3032 Sony Corp 日本
5 2769 Panasonic Corp 日本
6 2613 Microsoft Corp 米国
7 2447 Toshiba Corp 日本
8 2013 Hon Hai Precision Industry Co Ltd 台湾
9 1652 General Electric Co 米国
10 1624 LG Electronics Inc 韓国
タイトルにあるGoogleとApple、次の通り:
21 1151 Google Inc
22 1136 Apple Inc
EE Times恒例の本年注目の技術領域である。大方フィットという感じ方、受け取りである。
【2013年活況技術領域】
◇EE Times' Top 15 Hot Technologies for 2013 (1月10日付け EE Times)
→向こう12ヶ月、ホットな領域となりそうな15項目:
3D Brain Tissue
FinFETS
Low power server processors
Soluble ICs
3-D printing
Solid-state lighting
Next generation non-volatile memory
Chip manufacturing gyrations
Bio sequencers
Organ ICs
Personal UAVs(Unmanned Aerial Vehicles)
Higgs boson and beyond
Black silicon
2.5-D chip stacks
Were we correct? …2012年の予想の当たり具合?
≪グローバル雑学王−236≫
我が国復活の条件としての3段階のステップの第2段階:望ましい価値観を共有、目指すべき将来像を描き出す、第3段階:大胆に挑戦する、について、
『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』
(三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行
より考え方に触れてみる。望ましい3つの価値観として、(1)多様な行動動機が厚みのある社会をつくる、(2)知識と知恵をフルに活用する、(3)一人当たりGDPを向上させる、を挙げている。また、知識産業への大胆な軸足の切り替えを提言している。
II部 新しい日本を創る
第5章 日本復活の条件 ≪後半≫
(2)望ましい三つの価値観の共有
□マネーゲームで破綻したカジノ資本主義
・拝金主義の思想
→バブルの崩壊、結局破綻したマネーゲーム
□価値観1−−−多様な行動動機が厚みのある社会をつくる
・人間行動を経済合理性だけで説明
→人間性を損ない、バランスの取れた健全な社会生活を壊す
・今度の大震災は、経済合理性中心で動いてきた日本社会を転換させる絶好の機会に
□価値観2−−−知識と知恵をフルに活用する
・これから日本に押し寄せてくる様々な問題
→科学技術の力を借りて解決しなければならない問題が山積
・ICTやバイオテクノロジーなどの先端技術部門で、日本はこれからもトップ水準を維持し続ける努力が必要
・日本人に限らず、世界の優秀な頭脳を日本に呼び寄せ、切磋琢磨する必要
→秋入学にする検討
□価値観3−−−一人当たりGDPを向上させる
・マイナス成長、経済規模が縮小
→一人当たりGDPの水準を維持・向上させること
□人口減少を逆手にとろう
・ヨーロッパ諸国の一人当たりGDPは、日本と同程度か上回る国が多い
→その国の国家理念、国家目標、文化、生活、科学技術、世界貢献などが優れる
→国としての品格
(3)新知識産業への地平を開く
・これからの日本は製造業から知識産業へ大胆に経済の軸足を切り替えていくことが必要
□60年代のアメリカで流行語に
・それまで製造業中心だったアメリカ経済に新しい変化
→人々の価値観にも変化 →"知識産業"が流行語に
□新知識産業が必要な理由
・これから日本が必要とする知識産業…"新知識産業"
→住みよい社会を目指すことを目的
・日本人の伝統的な徳性(きめ細かな思いやり、助け合い、もてなしの心など)を生かす
□科学技術、観光、環境の三つの立国へ挑戦
・日本を復活・再生していくため
→科学技術立国(新知識産業)、観光立国(コミュニティづくり)、環境立国(地球の限界と共存)の三つの立国を同時に達成すること