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熱いアピール&議論:雇用/最先端微細化/事業戦略

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我が国はじめ各国の政治の世界では経済が依然とトップ争点の1つとなっているが、半導体業界もそれを強く照らして低迷基調の打開、再生を図るよう、各国・地域の業界、各社で様々な取り組み、真剣な議論が続いているこの1年であり、しばらく続いていく現時点の情勢であると思う。今回は、米SIAからまたまた発表された雇用データ、そしてInternational Electron Devices Meeting(IEDM)(San Francisco)からの最先端微細化に向けた選択肢および市場サバイバルを目指す事業戦略の熱いやりとりに注目している。

≪市場サバイバルに向けて≫  

SIAからの半導体雇用についての発表は次の通り。この11月1日に発表された内容を州別にさらに砕いたデータが示されており、ほとんどすべてに行き渡っている状況が示されている。ファブレスなど設計関連のjobs数データは、自ら見積もったとしている。半導体業界の重みについて強いアピールを受け止めるとともに、非常に厳しい状況にある我が国でも改めて把握する必要性を感じている。

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○米国全土に広がる半導体雇用−CaliforniaからNew Yorkまで力強い業界雇用 …12月11日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、政府データの分析によると米国半導体業界jobsが米国のほとんどすべての地域および大多数の州の中に広がっていると発表した。トップ10は次の通りである。

 California    47,100 半導体jobs
 Texas       28,800
 Oregon       23,400
 Arizona      18,800
 Massachusetts   10,100
 New York      7,600
 Idaho        7,400
 Florida       7,100
 Vermont      5,100
 New Mexico     4,500

「成長と革新を推進する実効的な政府政策をもって、米国半導体業界は引き続きAmericaの経済の力強さ、国家安全およびグローバル競争力を高めていく。」とSIAのpresident and CEO、Brian Toohey氏は言う。

すべての雇用figuresは、最近リリースされた米国Bureau of Labor Statistics(BLS)からの2011年データを反映している。BLSによると、米国半導体業界の労働人口は前年を3.7%上回ったが、もっと広げた米国経済のそれは同期間について1.2%増となっている。

この11月にSIAは、米国における直接半導体雇用全体が244,800と見積もられると発表したが、このfigureにはBLSが報告している半導体job全体に、BLSが現在は半導体業界データに含めていないファブレス半導体設計分野のjobsを見積もって加えている。加えて、先端技術のbackboneとして半導体業界は、米国経済全体の他の分野におけるjob創出に実質的なプラスの効果を与えている。

SIAの州ごとの半導体製造雇用mapは下記参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/slideshow/Employment%20-%2012042012.pdf
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第58回annual IEEE International Electron Devices Meeting(IEDM)(12月10-12日:San Francisco)関連で、最先端微細化そして事業戦略につながる熱い議論、取り組みを受け止めている。まずは、STMicroelectronicsの次の現状がある。

◇STMicroelectronics Plans to Exit Chip Venture With Ericsson (12月10日付け Bloomberg)
→STMicroelectronicsが、事業再構築の一環としてEricssonとの50/50合弁、ST-Ericssonにおける自らのstakeを投げ出し、昨年$841M、本年$900Mの赤字が見込まれるST-Ericssonにおける役割を解くようEricssonと話し合っている旨。

モバイル半導体事業合弁を脱退する一方、今後の最先端に向けたfully-depleted silicon on insulator(FDSOI)製造プロセスはしっかり守ってやっていくとしている。

◇ST voices new strategy, recommits to fully depleted SOI (12月10日付け EE Times)
→ST-Ericssonを売却あるいは閉鎖する計画にも拘らず、fully-depleted silicon on insulator(FDSOI)製造プロセスのユーザであるSTMicroelectronicsが、該技術を守って、Grenoble, France近くのCrollesにあるウェーハfabで作り続ける意向の旨。Crollesで製造するプロセス技術は3つ、FDSOI、embeddedノンボラメモリ付きCMOS、およびimagingセンサ用CMOSである旨。

◇ST exiting mobile chip JV with Ericsson, but still committed to FD-SOI (12月10日付け ELECTROIQ)

IEDMでもSTMicroelectronicsは、次の宣言を行っている。

◇28-nm FDSOI is production ready, says ST (12月11日付け EE Times)
→STMicroelectronicsが、同社Crolles 300-mmウェーハ拠点にて28-nm fully depleted silicon-on-insulator(FDSOI)のpre-productionが行えていると発表、この発表はIEDMと併催でSan Franciscoで行われているFDSOIワークショップと一致している旨。

このFDSOIは今後に向けた最先端の選択肢として、Intelが主導するFinFETsと並び称されている状況がある。

◇FinFETs or FD-SOI? (12月11日付け SemiMD)
→STMicroelectronicsが昨日、fully depleted silicon on insulator(FD-SOI)技術を用いた同社28-nm生産Si半導体の結果を披露、bulk CMOSに対して少ない電力で速度が30%改善されるとしている。ここ数ヶ月にわたってFD-SOIかFinFETsかの議論が行われてきている。FinFETsとFD-SOIはともにleakage電流の制御について改善が見込まれるが、FinFETsは設計がより難しい。FD-SOIは、bulk CMOSで使われたものより特性の良い異なるSPICEモデルを用いるけれども、設計フローは同じである。

事業戦略の鍵の1つとして最先端をFDSOIに賭けるSTMicroelectronicsのスタンスが窺えている。 

◇London Calling: Whither ST? (12月12日付け EE Times)
→STMicroelectronicsの若返り回復に向けて依然カギとなりそうなのが、モバイルデバイス市場でST-Ericssonの競合力を高めるようSTが多かれ少なかれ仕立てた製造プロセス技術、FD-SOIである旨。FD-SOIは、特に低消費電力の点で28-および20-nmではbulk CMOSおよびFinFET CMOSプロセスに本当に勝てそうな兆候がある旨。STは先端CMOS製造からは多少外れているが、少なくともFD-SOIが同社にとって今後の有望な選択肢となる旨。

かたやIntelのFinFETsについてもIEDMでは、熱い議論が行われた状況が見られている。

◇Intel's FinFETs approach draws fire from rivals (12月13日付け EE Times)
→新しい構造および材料の配列の渦中、半導体技術の今後を議論するexpertsパネルにて、Intelが広めているFinFETsを酷評する向きも、単純な道のりではなくむしろ各々トレードオフのある不安定な道筋一式であることが明確にされた旨。

最先端技術による市場展開について、Intelからは450-mmウェーハになると生き残るプレーヤーはまた半分になると次の見方を出している。 

◇Intel: Transition to 450mm Will Terminate Half of Semiconductor Market Players. -Numerous Transitions Incoming This Decade Will Reduce the Number of Semiconductor Companies - Paul Otellini (12月10日付け XBitLabs.com)
→IntelのCEO、Paul Otellini氏がSanford Bernstein技術conferenceにて。
450-mmウェーハ製造への必然の移行で、半導体メーカーの数は半分になると見る旨。一般にウェーハ寸法の変更が業界で起きると、設計および生産の市場プレーヤーで生き残るのは半分止まりの旨。

IEDMでは、Globalfoundriesが今後の事業戦略の考え方を次の通り説いている。28-nmより先の対応が行えるのは4社だけ、Intel、Samsung、TSMCそしてGlobalFoundriesであるとしている。

◇Foundries not dead, just evolving, says Globalfoundries CEO (12月13日付け EE Times)
→GlobalfoundriesのCEO、Ajit Manocha氏、火曜11日の講演。ファブレス/ファウンドリーモデルは自体の問題はあるかもしれないが、消滅からは程遠い旨。ファブレスモデルは終焉に向かっているという批判を却下、代わりにファウンドリーモデルが非常に大きな伸びを示していて引き続き他の半導体業界分野を上回っていくと見る旨。実際、今後に慎重であるべきはintegrated device manufacturers(IDMs)の方であり、統合モデルは行き止まりにあると強く主張の旨。特にエレクトロニクスにおいては進化し続けなければならず、新モデル、"Foundry 2.0"に移行するときではある旨。

以下、今後のデバイスメーカーのあり方についてもつべき考え方の1つであると思う。  

◇Device manufacturers' 'Holy Trinity' (12月12日付け EE Times)
→今日の市場はデバイスメーカーには厳しい状況がある旨。グローバル市場では最近、医療機器、テレコム装置から石油およびガスの機械装置および建築自動化まで広範囲に商品化活動を行っている新しいプレーヤーからの競合が高まっており、複雑なsupply chains、増大する商品、燃料および輸送価格が製造コストを上げ、マージンを下げている旨。今日の急激に進化する市場および変化する顧客ニーズには、大方の旧型メーカーがもっていない高水準の柔軟性および敏捷性が必要になる旨。


≪市場実態PickUp≫

上記のGlobalFoundriesからは、欧州の半導体製造支援の不足を非常に率直に訴えるメッセージが出されている。国際社会での押しというものを感じている。

【ダイレクトなアピール】

◇GlobalFoundries CEO urges Europe to support chip manufacturing (12月11日付け Reuters)
→San Franciscoでのイベントにて、GlobalFoundriesのCEO、Ajit Manocha氏。欧州での半導体メーカーのウェーハfab工場建設を望むのなら、欧州政府はもっと財政支援を供給しなければならない旨。「自分がアジアに行くと、赤じゅうたんを広げ、たくさんの助成が用意される。New York州は非常によく動いてもらっている。欧州はその役割を適格に果たしていない。」

IEDMについて事業戦略に絡む内容はすでに取り上げたが、従来の最先端アプローチのアップデートは目についた範囲で以下の通り。

【International Electron Devices Meeting(IEDM)】

◇IBM, Intel face off in 22 nm process at IEDM (12月10日付け EE Times)
→IntelとIBMが今回、立て続けのpapersで最新22-nm技術で直接対決、それとは別にIntelのトップfab executiveが、ウェーハコストの増大および同社のファウンドリー事業に言及の旨。
IBMの新しい3-D ready, 22-nmプロセス技術でのサーバプロセッサprototypingは、同社32-nmノードに対し25-35%性能アップの期待の旨。
Intelはすでにいくつかの22-nm半導体で量産先行しており、広範囲の応用に向けたSoCsプロセス展開を披露の旨。

◇IEDM: Moore's Law seen hitting big bump at 14 nm (12月11日付け EE Times)
→月曜10日の基調講演にて、ImecのCEO、Luc Van den hove氏。14-nmプロセスでの半導体生産は、extreme-ultraviolet(EUV)リソ使用を計算に入れても、28-nm半導体より少なくとも60%以上高価になる見込み、14-nmでの設計基準のいくつかはいくぶん緩めなければならない様相の旨。

◇FDSOI roadmap renames next node as 14-nm (12月12日付け EE Times)
→今週併催のfully depleted silicon on insulator(FDSOI) workshopで示されたドキュメントでは、今回のFDSOIロードマップで20-nmが省かれ、直接14-nm、それから10-nmとなっている旨。

台湾のMediaTekが、活況のスマートフォンの波に最も乗っているプレーヤーになっているとのこと。以下の状況である。

【快調MediaTek】

◇MediaTek targets Qualcomm with quad-core/modem SoC (12月11日付け EE Times)
→世界で最も急速に伸びているスマートフォン半導体サプライヤ、MediaTekが今週、"業界初、multimode modem統合の商用quad-coreスマートフォン半導体"をサンプル配布している旨。

◇Yoshida in China: Will MediaTek's luck hold in 2013? (12月13日付け EE Times)
→ほとんどのモバイル半導体ベンダーが顧客基盤を劇的に減らし、市場シェアを落としている年に、安楽に2012年の同社スマートフォン半導体出荷10倍増を話題にしている台湾のMediaTek。同社は2011年の間はスマートフォン市場では存在感は小さかったが、それからのこと、AndroidアプリおよびAndroid phonesの拡がり、China MobileのTD-SCDMA footprint増大そして消費者の間の飽くことを知らないスマートフォンへの欲望が、グローバルなスマートフォン急増に寄与している旨。

ロシアにおける半導体関連の近況が以下の通りである。出資、誘致など件数が増えているが、推移が一般にはつかみにくいところがあると思う。

【ロシアの近況】

◇London Calling: Russia must deliver on tech investment (12月10日付け EE Times)
→エレクトロニクスにおけるロシアの信用性は長らく低く、多すぎる政府計画が発表され、遂行されていない旨。ロシアは石油、ガスなどエネルギー資源によるたなぼたが得られると、ハイテク投資に向けた重要な資金獲得となる旨。契約数が増えて、高額になっている近況:
 2008: ロシアのOneximがLED照明合弁を設立 (Optogan)
 2010: RusnanoがPlastic Logicに出資 (短期$300M、長期$700M)
 2011: ロシアがMRAM startup、Crocusを支援 ($250M)
 2011: Rusnanoが、MEMSのSiTimeをロシアへ ($15M)
 2012: Rusnanoが$79M Quantenna dealを支援
 2012: NeoPhotonicsがRusnanoと取引, ロシアに拠点を計画 ($40M)
 2012: Aquantiaが$35M Series F funding round完了
 2012: ロシアがMapper e-beamリソメーカーを支援 (約$50M)


≪グローバル雑学王−232≫

大震災、原発事故を受けて大きく変わらざるを得なくなったエネルギーの見方であるが、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

より改めて元には戻れなくなった状況を確認する。耐省エネ性、耐節電性に富んだ製品、サービスしかこれからは生き残れないし、通用しなくなる今後であり、我が国の今後の取り組みに向けて今まで積み上げた効果を発揮する技術の見せ所となる。


I部 新しい日本に生まれ変わる
第3章 節電革命が生むスリムな産業構造  

□石油文明は崩壊した
・石油と電気のお蔭で、豊かな生活を送ることが可能に
・その石油文明も、地球温暖化問題の発生でもろくも破綻
・原子力発電も、危険性が厳しく問われるように

□忘れられていた需要面からの削減
・これまで、エネルギー問題は、もっぱら供給面からの対策

□石油をジャブジャブが豊かな生活の象徴
・電力需要がピークに達する数日間、数時間に対応できるように供給力体制を整えておくことが電力会社の最大の仕事
 →非常に非効率で、割高な電気料金を産業界や消費者に負担させる結果に

□赤字にならない総括原価方式を採用
・日本の電力会社は地域独占企業
 →総費用(設備費、人件費、維持費など)、すなわち総括原価に一定率を掛けて利益を算出、それを加算した合計
 …総括原価方式

□節電革命が始まった
・東京電力では、大震災発生後の3月14日から計画停電に
 →電気事業法に基づく措置
 →1回の停電時間は3時間程度、区域によっては1日に2回、計6時間になるところも

□一時的に大混乱が発生
・突然の計画停電は大混乱、日常生活や企業活動の隅々まで

□15%削減でピーク需要を乗り切る
・4月いっぱい実施の予定だった計画停電が短期間で回避できた
 →国民や企業の目を見張るような節電への取り組みが奏功
 →東扇島火力発電1号機(川崎市、出力100万KW)の運転再開など、供給力の回復も

□様々な節電への取り組み
・鉄道各社は間引き運転などで対応
 →間引き運転、LED照明への切り替えなど
・自動車の土日操業
・サマータイム
・積極的だった個人の取り組み
 →家庭で使う電力使用量の約4割がエアコンと冷蔵庫
 →家庭電球に占めるLED電球の割合:
  2011年5月末 37%程度 → 秋以降 50%超

□もう元の状態に戻れない
・実際の節電効果として、7〜8月2ヶ月間の電力消費:[資源エネルギー庁資料]
  東京電力管内 平日ベース、前年夏比 21.9%減
  東北電力管内            21.3%減
 →使用制限令の15%を大幅に上回る
・原発事故で、日本の電力供給事情は大きく変化
 →「3・11」以前の状態に戻ることはもはや不可能

□電力供給力不足の時代が長期化する
・今後5〜10年ほどの近未来を想定
 →日本は否応なく電力不足時代、需要抑制が決め手に
・15%程度の節電に耐えられない企業は、事業継続が難しくなる覚悟が必要

□省エネ型産業構造への転換のチャンス
・節電革命は、日本の電力多消費型の産業構造をスリム化させるまたとないチャンス
 →温暖化対策にも大きな貢献が期待

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