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3年ぶりマイナスの世界半導体販売高予測、急激な情報機器への流れ

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本年も締める月に入って、グローバル半導体市場の本年販売高予測について、World Semiconductor Trade Statistics(WSTS)の恒例の会合のデータが発表されている。パソコン、テレビという大きな区分けの電子機器から、スマートフォン、タブレットなど情報機器への流れが鮮明化してきた本年という表わし方ができそうである、自動車の中でも情報機器化が進んでおり、通信、クラウドなどのキーワードが向こう数年引っ張っていく展開に、長く立ち塞がる$300 Billionの壁突破がかかっているという受け止めである。

≪本年のグローバル半導体市場予測≫  

WSTSの秋季meetingのデータが、以下の通りまとめの発表となっている。本年は3.2%減、$290 Billionに若干後退するグローバル半導体販売高となっており、来る2013年は4.5%増、2014年は5.2%増と、従来からすると控え目な見方で表わされている。

◇Chip market to fall in 2012, rise in 2013 (11月27日付け EE Times)
→World Semiconductor Trade Statistics(WSTS) organizationが、以前のグローバル半導体市場予測を下方修正、今や弱含みの本年の締めを予測の旨。
 2012年   2013年
 $290B
 3.2%減   4.5%増
・≪表≫ WSTSの2012 meeting(11月13-16日:神戸)から予測総括
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20121127pcWSTSchipMarket626.jpg

◇世界半導体3.2%減予測、今年、3年ぶりマイナス、電子機器向け販売落ち込む。(11月28日付け 日経産業)
→世界半導体市場統計(WSTS、米カリフォルニア州)が27日、2012年の世界の半導体市場が前年比3.2%減の2899億ドルになる見通しだと発表、マイナスは3年ぶり、欧米やアジアなど世界全体の経済減速で、パソコンや薄型テレビなど電子機器向けの販売が落ち込んだ旨。2012年は主要4地域の市場でいずれも減少する見通し。欧州が前年比10.7%減と最も減少率が高く、米国が同4.4%減、日本が同2.1%減、アジアも同1.4%減を見込む旨。2013年は世界経済の不確実さは残るが、スマホやタブレットなどの情報機器、自動車向けの需要などが伸び、4.5%増の3030億ドルの見通し、2014年は5.2%増の3187億ドルと緩やかながらも成長軌道に戻り2年連続で過去最高を更新すると予測している旨。

◇WSTS trims chip sales outlook for 2012, 2013 (11月28日付け ELECTROIQ)
→2012年〜2014年の総括データ:
・≪グラフ≫ デバイスSBU別半導体販売高伸び率
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2012/November/SST_WSTS_SalesGrowth.gif
・≪表≫ デバイスSBU別および地域別伸び率
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2012/November/WSTS_autumn2012_bigtable.jpg
・≪グラフ≫ 半導体販売高および伸び率
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2012/November/SST_WSTS_Optimism.gif

◇Chip market to rebound with 4.5% growth in 2013, says WSTS (11月28日付け DIGITIMES)

電子機器から情報機器への流れと総括表現が難しいところがあるが、パソコンが停滞する一方でスマートフォン、タブレットが急伸した本年という言い方が端的である。高年齢層から若者へ、ユーザ世代が移っていく流れを強く感じており、自然、健全な流れとして今後のグローバル市場の拡大につながっていく期待である。

◇Smartphones to pass feature phones in flash memory consumption (11月26日付け EE Times)
→IHS iSuppliのメモリ市場レポート。2013年に初めて、スマートフォンがfeature phonesを上回るNANDフラッシュメモリの使用比率になると見る旨。2013年にNORおよびNAND両方合わせてフラッシュメモリが約792M個、対してfeature phonesでは703M個の旨。
・≪グラフ≫ 世界フラッシュメモリのfeature phones対スマートフォン出荷推移&予測:2011〜2016年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/121126_ihs_smartphones_flash_423.jpg

◇Mobile communications equipment market set for double-digit growth in 2012, says IHS (11月29日付け DIGITIMES)
→IHS iSuppli発。モバイルhandsetsおよびタブレット、特に4G LTEワイヤレス標準をサポートする機器の出荷増大が引っ張って、2012年のモバイル通信装置市場が13%伸びると見る旨。以下の推移&予測:

2011年2012年2013年2012年−2016年
$334M$376M$444MCAGR 11%

◇Holiday tablet sales expected to rise 60% (11月30日付け EE Times)
→FBR Capital Marketsのアナリスト、Craig Berger氏による"タブレットtracker"レポート。このholiday seasonのmediaタブレットの売れ行きが、昨年比60%と"impressive"な伸び、また、non-Appleタブレットが市場の比率を上げ始めており、Qualcomm社, Broadcom社およびAtmel社がタブレット大流行から恩恵を得ている3大半導体ベンダーである旨。
・≪表≫ 四半期タブレット生産見積もり:2011〜2013年
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/121130_fbr_tablets1_900.jpg

世代交代の流れのなか、インドでは自国のハードウェア製造の立ち上げに向けての生々しい動きが見られている。

◇Govt urges Indian firms to buy Nokia, RIM (11月30日付け EE Times India)
→Hindu Business Line発。インドでのelectronic製造を促進する動き、インド政府が大手インド企業に対し今やResearch in Motion(RIM), NokiaおよびEricssonなど苦境にあるグローバルハイテク大手の買収を奨励している旨。多くのグローバルメーカーの市場価格上限が非常に低い水準にあるこのopportunitiesについてインドの会社に活を入れる考え方の旨。


≪市場実態PickUp≫

本年のモバイル機器では28-nmプロセスに成るプロセッサ生産がまだまだ売れると歩留り改善の注目を浴びたが、今後の市場拡大を図る上では10-nm台のFinFET製造プロセスがカギになるということで、ファウンドリー大手の立ち上げ推進の動きが見られている。

【FinFET製造ラインを巡る応酬】

◇TSMC breaks ground for FinFET fab (11月26日付け EE Times)
→TSMC(Hsinchu, Taiwan)が、South Taiwan Science Park(Tainan[台南])の同社Fab 14 gigafabでのfab moduleに向けた起工式を行い、該phase-six moduleはTSMCの2014年に16-nm FinFET回路を量産する最初のfabとなる予定の旨。このsixth-phase moduleの建設は、TSMCがphase-fiveを起工した僅か7ヶ月後の開始となる旨。

◇Globalfoundries' FinFET wafers set to roll (11月30日付け EE Times)
→Globalfoundries社(Milpitas, Calif.)の世界マーケティング&販売、executive vice president、Mike Noonen氏。同社14-nm FinFET製造プロセス技術について最初の顧客テストmultiprojectウェーハrunsが、2013年第一四半期にも始まる可能性の旨。

Appleのモバイル機器に向けた部品供給について、Apple対Samsung、そしてTSMCと、大手プレーヤーの錯綜する模様が表われている。

【Apple向け部品供給】

◇Apple Reportedly Changes Battery Suppliers As Samsung Walks (11月23日付け TechCrunch)
→China Business News発。中国のAmperex TechnologyおよびTianjin Lishen Batteryが、現在のサプライヤ、Samsung SDIに替わって、AppleのiPadsおよびMacBooks用電池を供給する旨。この通りであれば、AppleとSamsung Electronicsのビジネス関係悪化を反映する可能性の旨。

◇Apple CPU orders raise concerns over TSMC production capacity (11月28日付け DIGITIMES)
→業界筋の見方。TSMCが、Samsung Electronicsからその役割を引き継ぐべく来年Appleのモバイル機器用カスタムプロセッサ製造を始める様相、これに対して業界では、TSMCがAppleを満足させるに十分な生産能力があるのか、そしてAltera, NvidiaおよびQualcommなど長年の顧客に向けた半導体製造を続けられるのか、いぶかる向きがある旨。

台湾のProMOSがDRAMを作っている12-inch fabを巡る買収入札が、以下の動きとなっており、12月12日こそは決まるのかどうか注目である。

【ProMOSの12-インチ工場買収入札】

◇VIS in bid to acquire ProMOS 12-inch fab (11月26日付け DIGITIMES)
→業界筋発。LCDドライバーICファウンドリー分野でのPowerchip Technologyとの競合激化に直面、Vanguard International Semiconductor(VIS)が、台湾中部にあるProMOS Technologiesの12-インチ工場を買収する入札に積極的の旨。

◇Opening bids for ProMOS 12-inch fab delayed (11月29日付け DIGITIMES)
→ProMOS Technologiesが、同社12-インチfab(台湾中部Taichung[台中])について当初本日行った公開入札で買い手を決める予定であったが、入札者が要求のdeposit支払いが行えず、該競売は12月12日に延期の旨。アナログおよびmixed-signal ICファウンドリー、Vanguard International Semiconductor(VIS)が最もあり得る買い手と見られる旨。

◇Taiwan body to reopen DRAM asset tender after failed auction -Taiwan will try again to sell ProMOS DRAM fab (11月29日付け Reuters)
→Taiwan Financial Asset Service Corp.(TFASC)が、以前ProMOS Technologiesが動かしていた12-インチウェーハfab拠点をもう1回競売にかける試み、前はDRAM製造に使われていた該工場について当初入札が得られなかった経緯の旨。TFASCは入札価格下限を$660Mに維持、12月12日に競売を再開する旨。GlobalFoundries、TSMCおよびUMCが興味をもつ可能性との見方の旨。

本年の世界半導体市場の趨勢に触れてきているが、新興市場ならではの実態も見えてきている。自国のファウンドリーでは事足りなくて欧米に向かう中国のファブレス、そして従来のパソコンが売れ行き好調のインドネシア市場である。

【新興市場ゆえの動き】

◇China fabless firm looks West as mobile slumps (11月26日付け EE Times)
→Union Semiconductorが、欧米での市場展開に取り組む中国のファブレス半導体メーカーの稀な1つであり、1つには特にモバイル分野での中国のOEMsの間の最近の低迷が駆り立てている旨。中国の多くのファブレス半導体メーカーと同様、Unionは西欧の半導体大手が作ったコンポーネントの廉価版の設計から入っているが、Unionが水準以下と見ているファウンドリーなど中国のエレクトロニクス業界のすべての面に付きまとう設計スキル不足についての訓話となる今回の話の旨。

◇Intel Views Indonesia as a Lifeline (11月27日付け The Wall Street Journal)
→インドネシアの何百万もの初めてのコンピュータの買い手へのdesktopおよびlaptopの売れ行きが、Intel社の売上げを元気づけて、消費者がタブレットに向かっている成熟市場における地盤沈下を補っている様相の旨。


≪グローバル雑学王−230≫

世界をリードする経済大国の一角を占めて以降、バブル崩壊、そして失われた10年、20年と現在に立ち至るなか、豊かになって強まる一途の我が国の内向き志向を如何に抜け出すか、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』  
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

でもこの問題意識に注目している。バブル崩壊後の日本、日本人の技術過信と異常なまでの日本市場に対する愛着、そして根強かった一国繁栄主義の考え方、という3つの観点で入っている。本欄でも何回か繰り返す内容となっているが、"グローバルに通用する最先端技術の優位性"の重みはますます増している意味を反復反芻している。


I部 新しい日本に生まれ変わる
第2章 脱「ガラパゴスにっぽん」  ≪前半≫

□「井の中の蛙」の平成日本
・1990年以降の「失われた20年」の間、日本は内向き志向を強め、世界で起こっている大きな変化に対応できず、孤立化を深め、国際競争力を失い、急速に衰退の坂道
・東日本大震災後の日本の再生・復興に向けて、世界と日本が「Win−Winの関係」、共存できるように開かれた日本を創り出していかなければ

□若者が内向き志向に転じた理由
・第1:バブル崩壊後の日本 
 →成熟社会に入り、「物の豊かさ」よりも「心の豊かさ」へ
・豊かな社会で育った若者たちの価値観
 →高度成長期を支えてきた団塊の世代とは大きく異なる

□夢が持てず、ガッツを失った学生たち
・(著者が)常日頃、大学で学生と接していて感ずること
 →今の学生には将来の夢がない、未知の世界に挑戦しようという覇気がない
・豊かな社会で育った今の学生
 →卒業したら「ああしたい、こうしたい」という目標がなかなか探し出せない

□米国留学は急減、中国や韓国が台頭
・米国の大学・大学院の外国人留学生数(2009〜2010年)
 →日本の留学生、米国留学上位25ヶ国の中で最大の減少率
  →ピークの約4万7000人(1997〜1998年)から今や半分近くまで減少

□技術過信がガラパゴス化を生む不思議
・第2:日本人の技術過信と異常なまでの日本市場に対する愛着

□自信が高じて唯我独尊の世界へはまり込む
・1990年代以降、日本製ICT製品が、世界市場でなかなか人気が出ないという現実

□世界市場は完璧な製品を求めてはいない
・世界には、日本製品と比べ多少性能が悪くても、使い勝手がよく、価格が安ければ、それで満足する消費者の方が圧倒的に多い

□パソコンで敗北した理由
・NECが独自に規格・開発・販売したパソコン「PC-9800シリーズ」
 →全盛期には、シェア90%を超える勢い
・全くコンセプトの異なるIBMの開発したパソコン「PC/AT」の互換機が業界標準として普及
 →1990年代に入ると、ソフトによる日本語表示に成功
  →PC-9800シリーズは1997年に開発中止に

□特殊進化を続けた携帯電話
・日本の携帯電話、PDC(Personal Digital Cellular)方式で発展
・世界市場は、GSM(Global System for Mobile Communications)方式を採用
 →日本のPDC方式は、完全に世界市場から遊離

□カーナビも苦戦
・日本のカーナビ →高級車のオプションとして開発、高機能
・欧米では、単機能&安い携帯カーナビ(PND:Portable Navigation Device)が急速に普及

□自動車さえも……
・我が国開発の低公害車、ハイブリッド車
 →技術流出に対し日本側が慎重な姿勢、国内ほどに海外では売れていない
・発展途上国も日に日に豊かに、世界中から必要な情報収集
 →機敏に対応できなければ、日本の自動車メーカーでさえ敗者になってしまう時代

□一国繁栄主義が足かせに
・第3:根強かった一国繁栄主義の考え方
 →「輸出奨励、輸入規制」
 →欧米からの輸入規制批判を避けて、実質的に同じような効果をあげる方法が日本標準

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