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新たな時代のうねりを迎えて、グローバルに備える動き

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新興経済圏の台頭、パソコンと携帯電話の2大分野と、半導体の市場の世界を追っていきながらこの10年余りで経てきている時代のうねりであるが、ここにきてパソコン停滞、モバイル機器活況という新たなうねりを強く感じるところがある。身近にはパソコンで十分事足りるという感じ方であるが、若い世代を中心に目的地に辿り着くなどリアルタイム情報にスマホが急速に浸透している。直接、間接どの程度結びつくかはあるが、新しい時代の波に合わせた大手プレーヤーの動きというものを受け止めている。

≪方々、関連する動き≫  

半導体のトッププレーヤー、インテルのトップ、Paul Otellini氏が来年5月で退任するという発表があり、戦略シフトか、次のトップ選びは今までのように社内で整然とではなく外部から招聘か、など早速に各方面で波紋を呼んでいる。

◇Intel CEO Otellini to retire in May (11月19日付け EE Times)
→Intel社が月曜19日、Paul Otellini氏が同社年次株主総会のタイミングに符合、5月にCEOおよびdirectorを退任する旨。

◇Intel at a critical juncture as it searches for a new CEO (11月19日付け San Jose Mercury News (Calif.))

◇Intel CEO to retire as chipmaker struggles with mobile-Intel Corp's Chief Executive Officer Paul Otellini will retire sooner than expected and the top chipmaker said it may name an outsider for the position for the first time to steer a difficult transition toward mobile computing. (11月19日付け Reuters)

◇Otellini's legacy at Intel: Plentiful profits, mobile misfires (11月19日付け CNET)

◇Intel CEO Otellini retiring; is there a strategic shift? (11月19日付け ELECTROIQ)

◇Intel's CEO search begins, and the nominees are... (11月20日付け EE Times)
→Intel社の代替わりは45年間、整然として退屈なものであったが、今週の思いがけないPaul Otellini氏5月CEO辞任発表で、Otellini氏後任は広く開けており、初の社外からのchief executiveの可能性が強いところがある旨。

◇Intel CEO to step down (11月20日付け EE Times India)

同社のモバイルプロセッサへの対応について、挽回を図るニュアンスの次の記事が見られている。

◇Intel reportedly speeds up development of low-power processors (11月22日付け DIGITIMES)
→PC業界筋発。Intelが、次世代低電力モバイルプロセッサ開発を前倒し、2013年半ばあたりに大きく返り咲く準備を行っている旨。2012年以降いくつかのAtomプロセッサが展開されているにも拘らず、Intelはモバイル領域では今のところARMに追いつけていないが、次世代Haswell microarchitectureおよびAtomプロセッサ(Clover Trail)などIntelが計画している新プロセッサ打ち上げは、より新しいプロセス技術で作られ大きな低電力化が得られることからARMとの距離が狭まると見られている旨。

モバイルプロセッサの製造、生産対応でファウンドリー業界は非常に活況を呈している本年でもあるが、最大手、TSMCに対抗して2番手にのし上がってきた元AMDの製造部門、Globalfoundriesについて、財政支援するAbu Dhabi政府との間で次の動きが見られている。

◇London Calling: GloFo and the end of easy money (11月21日付け EE Times)
→Globalfoundriesは、まだできて3年の会社、しかしながら2012年の販売高が約$4.5Bですでに世界第2位の専業ファウンドリーに。将来の株式IPOの話で、Globalfoundriesは新しい存在フェーズに入っており、Abu Dhabi政府関係筋の心の大きな変化が読めるところがある旨。2015年までに黒字化、そしてIPOというGlobalfoundriesの目標の発表は、Globalfoundriesの親会社である投資vehicle、Advanced Technology Investment Co.(ATIC)がcash注入を止めたい気持ちがあり、実際に減らして漸次Globalfoundriesでの同社stakeを取り除いていこうとしていると見る旨。

一方、TSMCは米国の、しかもNew York州のGlobalfoundriesの拠点のすぐ近くに450-mmウェーハ最先端工場を建設しようとしている、という噂が、今月になって広まっているようである。インテル社のトップ辞任予定発表と同じタイミングで、UMCの新CEO指名が行われているが、トップ人事、拠点展開と現下の新しい市場の波に備えるこれら一連の動きという感じ方である。

◇London Calling: TSMC next for New York fab?(11月22日付け EE Times)
→TSMCがGlobalfoundries社に続いてNew York州北部にウェーハfabを建設しようとしているという証拠事実が高まり始めている旨。ある主要半導体メーカーが3.2M平方フィート生産拠点用の場所を見つけるために、コンサルティングのDeloitte Touche Tohmatsu Ltd.を雇っているという報道が、11月を通して駆け巡っている旨。このまま進むとすると、450-mm径ウェーハで製造する備えのある初の商用規模ウェーハfabの1つになるとともに、検討されている場所の1つ、Saratoga CountyのLuther Forest Technology CampusではGlobalfoundriesのFab 8と並ぶ形になる可能性の旨。

それではこのような動きを裏打ちする今後の市場展開の見方はどうなのか、ということになるが、IC Insightsからはタイミング良く以下が示されており、通信の伸びとともにここ5年の半導体市場より今後5年は倍のcompound annual growth rate(CAGR)になるとしている。

◇2013 Global GDP to Improve, Raising Electronic System and IC Markets-Though still below long-term average, 2013 GDP projected to rise 0.6 points to 3.2% next year. (11月20日付け IC Insights)
→IC Insightsが今月リリースした"IC Market Drivers-A Study of Emerging and Major End-Use Applications Fueling Demand for Integrated Circuits"の2013年版について。

◇Rising GDP to drive IC growth in 2013(11月22日付け EE Times India)
→IC Insights発。2013年はグローバルGDP改善が追い風になって、electronicシステムが5%伸びる見込み、2012年は3%の伸びと見ている旨。
2012年を通してグローバル経済伸長への期待は一貫して裏切られており、現時点2.6%の伸びの見込み、グローバル景気後退閾値の2.5%に非常に近く、長期の平均伸長率3.5%をかなり下回っている旨。2012年で6%を上回る伸びが見込まれる唯一の主要electronicシステム分野が通信であり、コンピュータは2012年は1%の伸びに留まる見込み、2010年の11%の伸びから大きく低下の旨。

◇Report: Rising GDP set to boost chip markets (11月23日付け EE Times)
→IC Insights発。経済活動のグローバルgross domestic product(GDP)尺度の改善を裏打ちに、2013年のIC市場は6%伸びると見る旨。長期的には半導体市場は、2011年から2016年にわたってcompound annual growth rate(CAGR) 7.4%を見込み、2006年から2011年の5年間でのIC業界のCAGR 3.3%の倍以上になると見ている旨。
・≪表≫ electronicシステム別販売高:2010年〜2013年
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/news/20121123pcICinsightsGDP739.jpg


≪市場実態PickUp≫

市場の大きなうねりを端的に表わすように、第四四半期の各社からの業績ガイドは、販売高が前四半期比二桁増あれば二桁減が見られるという非常に温度差の大きい展開模様となっている。

【第四四半期業績ガイド】

◇Chip firms ranked by Q4 guidance (11月19日付け EE Times)
→Semiconductor Intelligence発。2012年第四四半期の半導体市場は、前四半期比0.5%増、2012年の年間市場は前年比2.5%減と見る旨。
・≪表≫ 4Q12 対 3Q12の各社売上げ比率ガイド
   [Source: Semiconductor Intelligence]
 …TIおよびInfineonの二桁減(ともに-13%)からQualcommの20%増までの広がり
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/20121119pcSemiIntelligence418.jpg

半導体のオリンピックというと越し方の表現になろうかとも思うが、それもそのはずInternational Solid-State Circuits Conference(ISSCC)が発足60周年、別に表すれば還暦を迎えるとのこと。来るISSCC 2013は、2月17-21日にSan Franciscoでの開催。果てしない微細化の元気、新興勢力の引き続く台頭に加えて、今回は大きな節目のメニューと盛り沢山のようである。

【ISSCC 2013】

◇【ISSCCプレビュー】採択論文数は今回もアジアがトップ、日本勢は2位に返り咲き (11月19日付け Tech-On!)
→ISSCCは今回で発足60周年を迎え、会議テーマは「60th Year of (EM)Powering the Future(将来に力を与え続けて60周年)」。会期中の2月18日には「過去に発明され屋根裏にしまいこまれた骨董品」と題した60周年記念イブニング・パネルが開催される旨。

◇ISSCC preview: Revving ReRAMS, boosting memory bandwidth (11月19日付け EE Times)
→来るInternational Solid-State Circuits Conference(2013年2月17-21日、San Francisco)、メモリのとどまるところを知らないscaling進展について
・≪図面≫ 途上のノンボラメモリの容量トレンド:2001〜2013年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/ISSCC-flash-trends-chart-1.jpg

◇China prepares new processor for PCs, servers-The Godson-3B1500 is a step ahead in China's efforts to reduce its reliance on Intel, AMD and other chip makers (11月20日付け PCAdvisor.co.uk (U.K.)/IDG News Service)
→Loongson Technology(Chinese Academy of Scienceが部分出資)が今回の場で、Godson-3B1500プロセッサの詳細をプレゼン予定、PCs、サーバおよびスーパーコン用として32-nmプロセスで製造、1.14B個のトランジスタが入っている旨。

ISSCCの節目に合わせたかどうかは定かでないが、世界最古といわれるコンピュータが再起動されている。下記のイメージを思い浮かべながら、凄まじい進展のなかの我が人生と、改めて感慨を覚えるところである。

【世界最古のコンピュータ】

◇Oldest digital computer brought back to life (11月21日付け EE Times)
→世界最古のコンピュータといわれるHarwell DekatronあるいはWitchが、National Museum of Computing(TNMOC)(英国・Bletchley Park)にて再起動されている旨。元は1951年に作られ、高さ2m、重さ2.5トンで、3年の修復プロジェクトを経ての動作の旨。828個のflashing Dekatron valves(計数放電管), 480本のリレーおよび紙テープリーダーbankを備える外観、下記参照。
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/Embedded/EMB141121_crh_Harwell-Dekatron2.jpg

インドにおいてグローバルな市場環境に耐え得る知的財産の機関設立を推進する動きである。ソフトウェアに強く、ハードウェアはこれからという印象が強いが、今後の国際的な通商展開には必須と思われる。

【インドの知財】

◇ASSOCHAM suggests new IPR authority (11月19日付け EE Times India)
→インドのAssociated Chambers of Commerce and Industry(ASSOCHAM)が、同国Department of Industrial Policy & Promotion(DIPP)に対し、グローバル競争、innovationリスク、短い製品ライフサイクル、巨額のR&Dおよび人材投資を含む技術の急速な変化が引っ張る通商環境の早い変化に鑑みて、National Intellectual Property Right(IPR) Strategy Authorityの設立を推奨の旨。2010年のグローバル特許filings全体に占める各国の比率が次の通り、見劣りするインドの状況の旨。
 米国  24.8%
 中国  19.8%
 日本  17.4%
 インド 1.9%


≪グローバル雑学王−229≫

変化を恐れず生まれ変わらなければ我が国の再生はないという主張の後半を、  

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』  
  (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

より続けて見ていく。旧世代のAさんと新世代のBさんの考え方の対比が折り込んであるが、伸びた時代の結果としての成果、思いからの脱皮が如何に図れるか、今後の時代の趨勢に適合したjobの創出という受け皿がないと本当に難しい問題ではある。


I部 新しい日本に生まれ変わる
第1章 抜け出せ!変化恐怖症       ≪後半≫

(2)経済モデルの落とし穴

・2009年、政権に就いた民主党
 →GHGの25%削減がどの程度家計に負担を与えるか、を試算
・過去のトレンドを反映したマクロ経済モデルに依存、時代に合わなくなっている

□25%削減でも家計を豊かにできる
・消費者や企業が過去の行動様式と違う行動をとり、国の政策もそうした行動を支援する新しい枠組みを前提
 →当然違ってくる結果
・第1:経済合理性だけで行動せず、使命感や弱者に対する同情心を行動基準の上位に置く新しい消費者
 →大震災を機に急速に増加

□再生可能エネルギー法の成立
・第2:固定価格買取制度(FIT=Feed-in Tariff)、2011年8月、再生可能エネルギー法が成立
・再生可能エネルギー分野が大きく成長してくれば、売り上げが増え、設備投資が盛り上がるため、景気がよくなり雇用も増える

□地球温暖化対策税の導入
・「バッズ課税、グッズ減税」
 …環境に負荷を与える行為に課税、その税収を正当な労働で得た所得などに課せられる税金を軽減させるために振り向け、税収中立を目指す原則
 →2012年10月1日から実施
・環境税と再生可能エネルギーを促進させるインセンティブ税制のワンセット実施が望ましい

□再び新旧日本人の対話
・限られたヒト、モノ、カネ、そして情報を省エネルギー、再生可能エネルギー、節電革命分野に集中的に振り向け、新しい日本再生のチャンスに結びつけるべき

□新たなビジョン作りの手法
・これからの日本人は、放射能汚染と長い期間の付き合い
 →夢のある日本の将来像を描くこと
 →できなければ、日本の衰退はさらに加速

□フォアキャスティングによる将来像
・forecasting …現在を起点として将来の姿を描く手法
 →過去から現在までのトレンド(趨勢)を将来に引き伸ばす方法(外挿)

□2030年のエネルギー需給展望の破綻
・政府(総合資源エネルギー調査会)が2009年8月に発表、2030年のエネルギー需給展望
 →昨年3月の原発事故で30年度のエネルギー需給展望は白紙に

□バックキャスティング思考
・これから日本の将来像を考えるために必要なbackcasting手法
 →将来の望ましい社会の姿を想定、そこから現在を振り返り、望ましい社会に到達するために今から何をどのような手順で実施していくか

□エネルギーの長期需給展望をあてはめると…
・2050年頃の電力需要は現在よりもかなり減少
・北欧のスウェーデン、20年かけてエネルギー転換に成功

□新しい日本人に期待
・旧世代のAさんの発想 …過去の制度や今の常識
・新世代のBさんの考え方 …過去との断絶も辞さないという勇気
・今度の大震災や原発事故 →変化恐怖症から脱出するための好機

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