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組込み技術、機能の創出・分化・高度化、新たなマーケティング

半導体が様々なシステムの中に入っていって、システム機能ごとにますます位置づけを考えざるを得ない、と足を運んでみたEmbedded Technology 2012展示会(11月14日〜16日:パシフィコ横浜)での率直な感じ方である。新たな機能が生まれるとともに、機能ごとにさらに細かく分化、高度化していく流れが見られて、全体の把握から入るのに大変さを感じるところがある。それぞれに今まで集積した成果の賜物であり、市場の理解を得て価値を精一杯プレゼンするマーケティングの凌ぎ合いの局面を受け止めている。

≪組込み機能の果てしない展開≫  

Embedded Technology 2012(ET展)では、次の6つの分野の製品、ソリューションという色分けであるが、それだけというのは少なく、出展社の大半が複数あるいは全部に関係する形に見受けられる。

□スマートエネルギー
□オートモティブ/交通システム
□ロボティクス
□スマートアグリ
□スマートヘルスケア
□モバイル/クラウド

個々の機能は枚挙に暇がなく、1例として以下のナビシステムの記事である。
 
◇Japan readies nav system to augment GPS (11月14日付け EE Times)
→株式会社コア(CORE CORPORATION)(東京)発。日本は地域ナビ技術、Quazi-Zenith Satellite System(QZSS)を運用する準備を行っており、同社のreceiver unitがQZSおよび現状のGPSシステムの両方で働く旨。日本は2010年に最初のQZSS衛星、“Michibiki”を打ち上げ、2020年までにさらに3つのQZSS衛星を加える計画の旨。
(注) QZSS(準天頂衛星システム)…日本版GPS。日本のほか東アジア・オセアニア地域をカバーする地域測位システム。

機能の展開となると、時を同じく世界的にも次々出てきていると感じる以下の内容である。位置に加えて今度は高さまで情報が分かるとなると、ますます逃げ場がなくなるという感じ方がある。

◇Cisco, Qualcomm go inside with location tracking (11月15日付け GigaOm)
→Cisco SystemsおよびQualcommが開発した技術をもって、Wi-Fiネットワークスにより建物の中での位置情報がさらによく得られる旨。Qualcomm製Snapdragon S4 chipsetは、接近した範囲でCisco製Wi-Fi Networkとつながるソフトウェアをもち、Qualcommのモバイルプロセッサで用いられるIZatシステムは、GPSおよびWi-Fiだけでなく、cellular triangulationおよびGlonass衛星ベース・ナビシステムとも動作できる旨。

◇Bosch shrinks MEMS altimeters (11月15日付け EE Times)
→スマートフォンのユーザが自分が今mallの何階にいるのか分かるような高度計として設計、BoschのBMP280は2 x 2.5mmの非常に小さな寸法ながら10cmの分解範囲まで高度が精確に読める旨。

ET展と同じタイミングとなったelectronica 2012(11月13日〜16日:
ドイツ・新ミュンヘン国際見本市会場)でも様々な機能の展開が見られている。

◇Wolfe's Den: Maxim's Heartbeat T-Shirt (11月13日付け EE Times)
→Maxim Integratedブースにて、センサ統合を駆使したシャツ、"Cardio Leaf"、心拍数をモニターする狙いの旨。

半導体と自動車の連携の深まりは、electronicaでも我が国と同様に進んでいる以下の動きである。

◇Electronica: Audi signs NXP, ST as strategic suppliers (11月14日付け EE Times)
→オランダの半導体ベンダー、NXPとドイツの自動車メーカー、Audiが、8つの応用分野に重点化するinnovation連携を発表、AudiとSTMicroelectronicsの間の同様な発表に続く動きの旨。対象応用分野は、in-vehicle networkingおよびin-car entertainmentからconnected carについての新規途上領域に及び、car-to-x通信, telematics, near-field communications(NFC)および電気自動車用高電圧制御が含まれる旨。

果てしない機能の展開に向けて、ARMからの今後に向けた見方である。

◇ARM CEO East on IoT, platforms (11月12日付け EE Times)
→ARM HoldingsのCEO、Warren East氏。MPUs、特にモバイルエレクトロニクス用についてはこのところ複数のコアが入っているが、その流れはMCUsにも広がっていく様相、それだけでARMにとって市場サイズが倍になると見る旨。


≪市場実態PickUp≫

市場要求の早さに付いていくのに余儀なくということか、プロセスノード世代を飛び越えて取り組む事例が重なって見られている。

【nodeスキップ】

◇Node Skipping Reaches New Heights-Top foundries push up, skip process nodes (11月15日付け SemiMD.com)
→Siファウンドリー大手が次のプロセスノードへの移行を加速しており、あるノードを全く飛び越えているケースも見られる旨。UMCは20-nm planarノードを全く迂回、IBMからライセンス供与を受けた技術で28-nm planarから14-nm finFETsに直接向かっている旨。

◇Electronica: Micron memory to skip a node (11月15日付け EE Times)
→Micron Technology社(Boise, Idaho)が、次世代phase-change memory(PCM)に向けていわゆる2X-nmプロセス製造ノード(20-nm〜29-nmの間)に注目、以下の経過で3X-nmを飛び越える形の旨。
 2008年12月 90-nmプロセス・128-Mbit
 2012年 6月 45-nmプロセス・ 1-Gbit PCM

Gartner社からは今年の半導体市場がマイナスに転じるという見方が出されている。$300 Billionの壁の大きさを感じるとともに、あらゆる分野に入っていって融合&進化している半導体であり、プレゼンスの表わし方に工夫、一考ということと思う。

【2012年世界半導体市場】

◇Chip market to shrink in 2012, says Gartner(11月14日付け EE Times)
→Gartnerが次の通り、グローバル半導体市場予測を下方修正の旨。

2011年
2012年
2013年
$307B
今回
$298B
$310B
3.0%減
4.2%増
2012年第三四半期時点
$309B
$330B
0.6%増
6.9%増
                                 このようなマイナスの見方は、以下の通り半導体製造装置業界の販売高、BB比データに通じるところがあると思うが、市場満足に向けた先端プロセスによるアプリ開拓がますます急務である。

【北米半導体製造装置メーカーBB比】

◇Semiconductor equipment sales continue to slow (11月16日付け EE Times)
→SEMI発。北米半導体製造装置メーカーBB比、10月まで次の通り。            

Billings
Bookings
Book-to-Bill
(3ヶ月移動平均)
May 2012
1,539.3
1,613.7
1.05
June 2012
1,535.7
1,424.3
0.93
July 2012
1,442.8
1,234.6
0.86
August 2012 (確定)
1,331.5
1,092.9
0.82
September 2012 (改定)
1,164.4
912.8
0.78
October 2012 (速報)
986.5
743.2
0.75

[Source: SEMI,November 2012; David Powell Inc.]

現下の市場の牽引役であるhandsetsの中でも、スマートフォンは大きく伸ばしているものの携帯電話全体ではこの第三四半期は、前年同期比で減少という結果となっている。

【第三四半期handset出荷】

◇Handset shipments declined 3% in Q3 (11月15日付け EE Times)
→Gartner社(Stamford, Conn.)発。第三四半期の世界cellular phone handsets販売が約428M台、前年同期比3.1%減。スマートフォンがmobile phone販売全体の39.6%を占め、前年同期比46.9%増となっている旨。
・≪表≫ 2012年第三四半期ベンダー別世界モバイル機器販売
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/121115_gartner_handsets1.png

恒例のスパコン・トップ500の発表が行われ、以下の結果となっている。米国勢の強さ、席巻ぶりを感じるなか、「京」は3位、初の韓国産スパコンが278位に登場している。

【世界のスパコンTOP500】

◇世界のスパコンTOP500、CrayがIBM抜き首位に――富士通の「京」は3位 (11月13日付け Computerworld)
→11月12日に発表されたスーパーコンピュータの世界ランキング「TOP500」の最新版(November 2012)発。40回目となる今回のランキング・トップ5:
1.「Titan」(Cray XK7、17.59PFlop/s)
 …米国エネルギー省(DOE)オークリッジ国立研究所に新たに設置
2.「Sequoia」(IBM BlueGene/Q、16.32PFlop/s)
 …米国ローレンス・リバモア国立研究所
3.「京」(富士通 SPARC64 VIIIfx、10.5PFlop/s)
 …理化学研究所
4.「Mira」(IBM BlueGene/Q、8.16PFlop/s)
 …米国アルゴンヌ国立研究所
5.「Juqueen」(IBM BlueGene/Q、4.14PFlop/s)
 …ドイツ・ユーリヒ総合研究機構

◇Intel's Xeon Phi cracks top 500 supercomputers (11月12日付け EE Times)
→IntelのXeon Phi co-processorが、世界Top 500スーパーコンの最新リストで力強い存在感を示している旨。Nvidiaのグラフィックス半導体が引き続きcoprocessorを席巻、Infiniband interconnectがトップinterconnectとしてEthernetに対するリードを広げている旨。ランキングトップのTitan, Cray XK7システムは、約30万個のAMD Opteronプロセッサおよび261,632個のNvidia K20xグラフィックス半導体を使っている旨。


≪グローバル雑学王−228≫

ついに衆院選が東京都知事選と同日実施突入の事態となったが、我が国の復活・再生に向けた提言の新書が目について、

『日本経済復活、最後のチャンス −変化恐怖症を脱して「3K立国」へ』
 (三橋 規宏 著:朝日新書 350) …2012年 5月30日 第1刷発行

を今回から目を通していく。なかなか変わらない、変えられない現状の是非、打開のアプローチが来る選挙での大きな論点、争点になることは必至であるが、本書では上記タイトルのアピールを行っており、先に示すとここでの3Kは、科学技術、観光および環境である。


≪はしがき≫

・明治維新以降、近代化を目指した日本、「欧米に追いつけ、追い越せ」という明確な国家目標
 →1980年代後半のバブルの時代に日本は念願の国家百年の計を達成
  →それは長期低迷の始まりでも
・高度成長の余韻にしがみつき、それを捨てることに抵抗する日本人の変化恐怖症が日本を衰退に
・日本が目指すべき国家目標は今や明確
 →世界に先駆け、「低炭素、資源循環、自然との共生を満たす社会」を基軸とした質の高い社会を築くこと
・本書、これからの時代を前向きに生きていくための一助に

I部 新しい日本に生まれ変わる
第1章 抜け出せ!変化恐怖症       ≪前半≫

□高度成長の恩恵が忘れられない
・高度成長の恩恵に浸っていたいとする守りの姿勢
・1990年に入る前後から日本を取り巻く内外の大きな変化
・日本流は、世界の潮流から大きく取り残され、衰退の坂道

□経済は生き物
・経済は、生き物のように刻々と姿を変える
 →S字型のロジスティク曲線:  生成期
                 ⇒ 発展期(指数関数的な伸び)
                 ⇒ 成熟期(横這い)

□栄枯盛衰を繰り返す
・経済の場合、守りの姿勢に陥ると、ずるずると衰退の道
 →新しいロジスティク曲線がスタートできる環境を整えなくては

□新しい時代を支えるロジスティク曲線の構築
・"日本丸"は、成熟期に入ると様々な制度疲労を起こし、度々エンスト
 →必要なのはガソリン(公共投資の拡大や低金利政策)ではなく、エンジン(古くなった制度や手法)を新しく取り換えるための対策
  →過去のしがらみと断絶する覚悟が必要

□新しい日本人のイメージとは
・高度成長期を支えた日本人
 →猛烈人間、企業戦士、エコノミックアニマル、ワーカホリック(仕事中毒)、・・・
 →心の支えがGDP信仰 …高い経済成長を実現することですべて解決できるという信念
・これからの時代を支えていく日本人のイメージ
 →経済的価値よりも、助け合い精神、自分が生まれ育った地域を愛するコミュニティ・スピリットに富んだ日本人

(1)GDP信仰から脱却できるか

・最も深刻な問題は、日本の人口がこれから急減
 →2048年には1億人を割る
 →2060年には8674万人程度に
・GDPの規模も2020〜2030年のどこかでピークアウト
・政府予測では、GDP縮小の姿を描くことは、ご法度

□GHG排出量削減のロードマップもGDP拡大が前提
・環境省、2050年へ向けたGHG(温室効果ガス)の排出量削減のロードマップづくりに取り組み
 →中間報告では、2050年までGDPは拡大を続けることが前提
・現実に即してエネルギー需要を予測すれば、無理のないエネルギー対策が可能なのに

□GDP信仰をめぐる新旧日本人の対話
・これからの日本は、独特の文化や生活スタイル、自然と共生してきた歴史、環境技術などの分野で世界に貢献、尊敬を得られる国を目指すべき
 →経済大国を達成した昭和は遠くなりにけり

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