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米国半導体業界、久々の販売高伸び率、leadershipの高まり

米国大統領選挙は、オバマ(Barack Hussein Obama, Jr.)大統領が再選されたが、その直前に前回の本欄で述べた米国の半導体雇用の伸びの実態が発表されたのに続いて、選挙日の前日に恒例の月次世界半導体販売高がSIA(米国半導体工業会)からリリースされている。9月の販売高について、米国が2年以上ぶりの前月比伸び率を示していて、雇用の伸びとともに半導体業界ここにありと、精一杯のアピール、働きかけが伝わってくる。選挙翌々日には、情報技術合意(ITA)の拡張促進を求める発表が冷めやらず行われている。

≪9月の世界半導体販売高≫  

米国SIAからの9月の世界半導体販売高についての発表は、以下の通りである。大統領選挙に向けたメッセージが盛り込まれている。

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○9月のグローバル半導体販売高、僅かに増加−第三四半期は第二四半期を上回る:Americasが2年以上ぶり最大の月次の伸び …11月5日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年9月の世界半導体販売高が$24.79 billionで、前月の$24.30 billionから2%の増加と発表した。2012年第三四半期の販売高総計は$74.4 billionとなり、前四半期からは1.8%の増加であるが、2012年の年初からこれまで全体販売高は前年同期比4.7%の減少となる。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「半導体販売高は8月から9月、そして第二四半期から第三四半期と増加しており、波乱含みのグローバル経済にあって当業界は比較的堅実な推移が続いているが、グローバルには長引く経済の逆風から昨年の販売高ペースには依然遅れをとっている」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。
「明日の選挙に続いて、新たに選ばれた政権および議会と経済不安を和らげinnovationに対する障害を取り除く政策の遂行に向けて協働する用意が我々にはある。」

地域別には、Americasの販売高が前月比5.8%増となり、同地域では2010年5月以来最大の増加となる。また8月から9月の販売高では、Asia Pacific (1.6%), Europe (0.7%)およびJapan (0.2%)ともに増加しているが、4地域すべてで2011年9月の販売高は下回っている。

  【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Sep 2011
Aug 2012
Sep 2012
前年同月比
前月比
========
Americas
4.61
4.19
4.43
-3.9
5.8
Europe
3.13
2.77
2.79
-11.1
0.7
Japan
3.80
3.64
3.64
-4.1
0.2
Asia Pacific
14.27
13.71
13.93
-2.4
1.6
$25.81 B
$24.30 B
$24.79 B
-3.9 %
2.0 %


「地域別では、Americasが2年以上ぶりとなる前月比最大の増加を示して、特に元気づかされている。」とToohey氏は言う。「該地域はまた先週、米国半導体業界が今や約a quarter of a millionのworkersを雇用してjobsを増やしている、とSIAが発表してプラスのニュースが伝わっている。」

※9月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/GSR/September%202012%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
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この発表を受けた業界各紙の見出し&概要である。今年は前年を数%下回る半導体販売高になりそうという見方が大勢となっている。

◇Chip sales on pace to decline 5% in 2012 (11月6日付け EE Times)

◇September IC sales bounce in Americas, tracking to -4% for FY2012 (11月6日付け ELECTROIQ)

◇世界の半導体売上高3.9%減、9月、欧州は2ケタ減 (11月6日付け 日経 電子版)
→全体では15ヶ月連続の前年同月比マイナス。半導体を搭載した製品では、スマートフォンや自動車の販売が比較的堅調だが、パソコンの売れ行きが鈍っており、IHSアイサプライによると、2012年のパソコン世界出荷台数は11年ぶりの前年割れになる見通しの旨。パソコンMPUのAMDは世界の従業員の15%、製造装置のApplied Materialsは最大9%、それぞれ削減する計画の旨。

Obama大統領の再選の翌々日に、情報技術合意(Information Technology Agreement:ITA)を今風に更新しようとアピールする発表が、米SIAから次の通り行われている。

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○半導体業界はTrade Agreementの拡張促進を求める−Information Technology Agreement(ITA)は新技術に歩調を合わせるべき …11月8日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、米国International Trade Commission(ITC)のメンバーに対し公聴会にて、うまくいっている通商協定、Information Technology Agreement(ITA)を最新の半導体製品&技術に歩調を合わせて拡大すべきと申し入れた。ITAは、半導体など情報技術製品のduty-freeの取り扱いを行う公正で開放的な通商を促進しているが、対象製品リストが1996年のITAの初め以来更新されていない。
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ネット事典で振り返ると、ITAは、1996年12月のWTOシンガポール会議で採択され、1997年3月から実施、コンピュータや情報通信機器等の輸入関税を段階的に引き下げて2000年1月1日までに完全撤廃することを内容としている。ITAの参加国は当初の29カ国から2000年3月1日現在で52カ国・地域に増え、世界のIT製品貿易額約6,000億ドル(1998年)の95%をカバーしている、となっている。

現在はさらに進展があるのかもしれないが、今の時代に合っていないという上記の米SIAのアピールと読み取れる。米国の意気込み、leadershipの高まりを感じるとともに、米国とともに半導体業界の大きなプレゼンスの一角を積んできている我が国のあり方、考え方を改めて固める必要を感じている。


≪市場実態PickUp≫

昨年を下回る見方が強くなっている本年、2012年の世界半導体販売高であるが、そのベンダーランキング・トップ20予想が次の通り1社から発表されている。PCの低迷のなかスマートフォン&タブレットの熱い活況を反映して、ファブレスおよびファウンドリーそれぞれ大手プレーヤーの躍進が際立つデータ内容となっている。

【2012年半導体ベンダー販売高ランキング】

◇Qualcomm, Globalfoundries gain in chip sales rankings (11月8日付け EE Times)
→IC Insights社(Scottsdale, Ariz.)の2012年半導体ベンダー販売高ランキングトップ20・November Update発。ファブレス半導体大手、Qualcomm社(San Diego)が$12.8B以上の売上げの勢い、昨年7位から4位に浮上する見込み、ファウンドリーベンダー、Globalfoundries社(Milpitas, Calif.)は$4.56Bの販売高見通しで昨年の21位から今年は15位に上がる予想、両社ともに少なくとも30%以上増える販売高見込みの旨。
・≪表≫ 2012年半導体販売高トップ20ベンダー予想
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/121107_icinsights_top20_423.jpg
・≪表≫ 2012年トップ20予想ベンダーの伸び率ランキング
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/121107_icinsights_top20_2_423.jpg

このデータも加勢材料となったか、ファブレス最大手、Qualcommの株式時価総額が半導体トップのIntelを上回る事態が見られている。

◇Qualcomm passes Intel in market value-In market capitalization, Qualcomm overtakes Intel (11月8日付け Financial Post (Canada)/Bloomberg)
→Qualcommの株が木曜朝の取引で7.1%上昇、約$106Bの市場capitalizationとなってIntelの$105Bを上回った旨。

◇米半導体クアルコム、時価総額でインテルを逆転−スマホ・タブレット時代を象徴 (11月10日付け 日経 電子版)
→米株式市場で9日、米半導体大手クアルコムの株価が上昇、終値ベースの時価総額が$105B(約8兆3475億円)と最大手インテルを上回った旨。時価総額の逆転は1991年にクアルコムが上場してから初めて、IT機器の主役が、パソコンからスマホなど携帯機器に移りつつあることを象徴する出来事といえそうな旨。ただインテルの7〜9月期の売上高はクアルコムの約2.8倍、純利益は約2.3倍の水準にある旨。

話変わって、こんどは知財関係。長きにわたりCPUアーキテクチャー&コアをリード、MIPSアーキテクチャと一連のRISC CPU開発で知られるMIPS Technologiesについて、特許はじめ以下の通り売却する動きが見られている。

【MIPS特許分け合いの様相】

◇Arm and Imagination Technologies in deal to carve up chipmaker MIPS-ARM, Imagination Technologies will divvy up MIPS (11月6日付け The Guardian (London)/Market Forces Live Blog)
→MIPS Technologiesが、ARM Holdings率いるコンソーシアムに580の特許portfolioを$350Mで売却、一方、別の特許82件およびoperating資産をImagination Technologiesに$60Mで投げ出す旨。アナリストの憶測として、該買収によりARMとImaginationの競合がさらに多くなる可能性の旨。

◇Imagination won't kill MIPS (11月6日付け EE Times)
→Imagination TechnologiesのCEO、Hossein Yassaie氏。大詰めは、ImaginationおよびMIPS Technologiesの社内CPU開発活動を合体すること、両社にはかなりの類似性がある旨。

相次ぐタブレットの打ち上げ発表を受けて、teardownによるbill of materials(BoM)コスト解析の方も忙しく行われている。下記の通りのまとめとなり、各社のビジネスモデル、収益の考え方が見て取れるところがある。

【BOMコスト比較】

◇Microsoft Surface RT more profitable than iPad (11月5日付け EE Times)
→IHS iSuppliが行ったteardown解析。Microsoft社のSurface RTタブレットは、Apple社のiPadの同等版よりも1台当たりの利益が高くなる旨。

◇Apple, Amazon squeeze costs out of latest tablets (11月6日付け EE Times)
→IHS iSuppliが行ったteardown解析。AppleのiPad MiniおよびAmazonのKindle Fire HDともに、AppleおよびAmazonからの前のタブレットofferingsと比べて初期の利益マージンをより高くできるbill of materials(BoM)コストになっている旨。

○BOMおよび製造コスト

流通価格
BOM
製造コスト
BOM+製造コスト
Microsoft社のSurface RT
599
271
13
284
AmazonのKindle Fire HD
199
165
9
174
AppleのiPad Mini
329
188
10
198
               
    
小生も目を通し始めて20年か、30年か、あるいはもっとか、今や検証が難しい感じ方があるが、エレクトロニクス業界紙のEE Timesが40周年を迎えるということで、特集記事が組まれており、今後に向けた見方の興味深い内容から目についた範囲で以下の通りである。分厚い紙の版を懐かしく思い浮かべるが、まさにライフワークのお付き合いという勝手ながらの思いがある。

【EE Times 40周年】

◇EE Times 40th Anniversary: From 3-D chips to cognitive computing (11月5日付け EE Times)
→40周年を迎えたEE Times、今日および今後に向けた代表的な技術の流れ10項目の特集記事。以下のタイトル内容:
 Someday My 3-D Princess Will Come
 Graphene to Supersede Silicon
 Stretchable Electronics Flexes Muscles
 Death of the Disk Drive
 Death of the PC
 Birth of Mobile Cloud Era
 Location as a Business
 Robotic Surgeons Obsolete Scalpel
 Cognitive Computers Think Like Us
 Air Gestures Control On-Screen Action

◇Moore's Law goes biotech (11月6日付け EE Times)
→EE Timesの40周年特集記事:
Gordon Moore氏は、半導体デバイスの密度が1〜2年ごとに倍増することを予言的に示して一世代を魅了、非常に信頼できるということでcommentatorsがMoore's Lawとして大事にしている予測である旨。
International Technology Roadmap for Semiconductors(ITRS)が終焉に近づいているにしても、bottom-up分子self-assemblyが今日のtop-down縮小化lithographyを継いでいくと考えられており、新しいデバイスの密度は依然数年ごとに倍増が予想され、Mooreから受け継ぐものはbiotechnologyのような新分野でも無期限に延ばされていく旨。  


≪グローバル雑学王−227≫

我が国を元気づけるとともに世界が認める日本の力というものを、

『世界がうらやむ日本の超・底力』 (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書)  
  …2012年 5月10日 初版発行

より改めて確認してきたが、今回で読み納めとなる。超テクノロジーの後半として、スーパーコン「京」、ハイテク自動車、宇宙開発「はやぶさ」、炭素繊維そしてヒートテックで締めとなっているが、今後ますます、New Entryが次々出現するとともに、融合して新たなカテゴリーを生み出す増殖サイクルの展開に期待ということと思う。


6.人類の未来を拓く日本発の超テクノロジー ≪後半≫

◆計算速度世界一を誇るスーパーコンピュータ「京」
・日本のスパコンが2期連続で世界一に!
 →スーパーコンピュータの性能を競う「TOP500」
  …1993年から毎年2回、世界規模の企画
 →2011年の6月と11月の2期連続、世界一の計算速度
  …日本のスーパーコンピュータ「京」
・性能の向上は私たちの生活に何をもたらすか
 →スーパーコンピュータの用途
  …モノづくりの現場
  …自動車の設計・開発−実験シミュレート
  …規模が大きな実験、危険を伴う実験、地球上では不可能な実験
・科学や医療の分野でも大活躍
 →スーパーコンピュータが命運を握る
  *宇宙の起源の解明
  *DNA解析、生命科学の謎解き
  *ガンや心臓病など目に見えなかった現象
  *治験に長い時間を要する新薬の開発、短期間での製造

◆自動での事故回避を実現する日本のハイテク自動車
・「ドライブセーフティ」から「ドライバーモニター」へ
 →自動車の安全関連技術で世界をリードしている日本
  →トヨタの「プリクラッシュセーフティシステム」
   …衝突予防および衝突安全システム
 →現在は、自動車自体が安全運転するようにドライバーを管理する「ドラ
    イバーモニター」に
・魚の群れからヒントを得た安全システム
 →日産自動車のロボットカー「EPORO」プロジェクト
  …魚群の動きを自然に行う:
   1.衝突を回避する、2.並走する、3.接近するという選択
  …魚の感覚機能を応用

◆「はやぶさ」の帰還成功でふくらむ宇宙開発の未来
・世界中の話題をさらった「はやぶさ」の偉業
 →2010年6月、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の「はやぶさ」による宇宙探査プロジェクト成功
  …世界中が技術力を称賛
・度重なる困難に立ち向かったJAXA
 →長距離移動を可能にした国産のイオンエンジン
  …キセノンをもとに放電するエンジン  
  …通常のロケットの10倍の燃費
・「太陽系誕生の謎」が解ける可能性も
 →小惑星イトカワの表面から物質サンプルを持ち帰る「サンプルリターン」の成功
 →世界の期待を背負った「はやぶさ2号」、2014年の打ち上げを目指す

◆「未来型素材」として注目される、頑丈で軽量な炭素繊維
・次世代型旅客機にも使われる「夢の素材」
 →2011年10月、ボーイング社の中型ジェット旅客機「ボーイング787」が世界に先駆けて日本でデビュー
 →ニックネーム「黒い飛行機」
  …機体重量の約50%に「夢の素材」、真っ黒な炭素繊維を使用
   →金属やセラミックよりも軽く、鉄の4分の1程度の重さ、なのに鉄の10倍の強度
 →日本が世界の最先端を行く炭素繊維
  →東レや三菱レイヨンなど世界で約7割のシェア
・コストと製造時間の長さが課題
 →2011年、東レとダイムラー社(ドイツ)が合弁会社、ベンツに炭素繊維を使用へ
 →風力発電設備、ノートPCの筐体、エックス線関連など医療機器への利用も

◆高機能・低価格で人気を誇るヒートテック
・世界的ヒット商品となった次世代肌着
 →ユニクロが東レの素材を使って共同開発、2003年に発売した機能性肌着「ヒートテック」
  …薄手ながら暖かい:水分を吸収して発熱:保湿性を高く保つ
  …デザインやカラーが豊富
 →日本だけでなく、世界を巻き込むヒット商品に
・終わらない技術革新への挑戦
 →機能を年々、充実
  …2007年発売のヒートテック、従来の機能に静電気防止と形状保持という2つの機能を新たに追加
 →ヒートテックは毎年、進化

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