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減速、低成長基調の世界経済のなか、米国の半導体雇用の伸びの実態

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事業再構築の厳しい逆風のさなかにある我が国の半導体・エレクトロニクス業界であるが、米国半導体業界の声を政府に働きかけることが重要な使命の1つであるSIA(Semiconductor Industry Association)から、米国労働省労働統計局(BLS)の2011年データをもとに、米国の半導体雇用が他分野の伸びを上回って約250,000に達しているという発表が行われている。11月6日に迫った大統領選挙に照準を合わせたものと思われるが、先端技術を確保していくアピールとして身近に必要性、緊急性を感じている。

≪米SIAのアピール≫  

世界経済の減速、低成長基調が囁かれ続けている本年であるが、韓国でもいよいよ本物かと危惧のトーンが見られる。

◇韓国経済、“低成長”が現実化? (10月26日付け 韓国・中央日報)
→韓国銀行(韓銀)が26日発表した今年7−9月期の韓国経済成長率は前年同期比1.6%、これは2009年7−9月期(1%)以来3年ぶりの最低水準。 この傾向が続けば韓銀が予想した今年の成長率(2.4%)は厳しくなる見込みの旨。来年も大幅改善が期待されない状況で、韓国が本格的な低成長基調に入ったという懸念が強まっている旨。

世界が注目する中国経済も曇天から雨模様が懸念されているが、足元の指数では多分に慎重気分の中での好転が見られている。

◇中国の製造業景気指数が改善、10月、3ヶ月ぶり50超え (11月1日付け 日経 電子版)
→中国物流購入連合会が1日発表した10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が50.2、前月から0.4ポイント上昇、景気の拡大・悪化を判断する節目となる50を上回るのは3ヶ月ぶりの旨。中国経済の減速に歯止めがかかる兆しが出ていることから、景況感が好転、ただ国内外の需要はなお力強さを欠き、景況感の改善がこのまま続くかどうかは不透明の旨。

さて、大統領選挙を控える米国では、10月の失業率が上昇したものの8.0%は辛うじて下回って、経済指標が改善という見出しも出てきている。

◇米雇用統計、2カ月ぶり高い伸び、オバマ氏再選に追い風 (11月2日付け 朝日新聞デジタル)
→米労働省が2日発表した10月の米雇用統計。失業率は前月から0.1ポイント上昇して市場予想と同じ7.9%、景気の緩やかな回復に合わせ、就職活動を再開する人の数が増えたためとみられる旨。景気動向を敏感に映し出す指標として市場の関心が高い「非農業部門の就業者数」(季節調整済み)は、前月比で17万1千人の増加、2カ月ぶりの高い伸びで、再選を目指すオバマ大統領にとっては追い風といえる旨。

欧州発の金融危機から世界全体に暗雲基調が波及している感じ方の本年であるが、そんな中、米SIAから以下の米国半導体雇用についての発表である。

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○米国の半導体雇用が約250,000に到達−半導体製造jobsが前年比3.7%増、米国全体のjobの伸びを上回る …11月1日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、政府データの分析により、米国半導体業界が現在約a quarter of a million workersを雇用しており、米国経済の他分野より3倍の速さでjobsを加えている、と発表した。米国半導体の直接雇用総計は、244,800と見積もられる。

「a quarter of a millionの力強く伸びる半導体workersは、我々の生活を改善、我々の国を強化、そして我々の未来を作る技術ブレイクスルーを生み出している。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「彼らの一生懸命の仕事を通して、米国半導体業界は、難題の多い国家経済にも拘らずjobsを作り出して成長を焚き続けられている。」

米国Bureau of Labor Statistics(BLS)によると、半導体業界の製造workforceは前年比3.7%伸びている。比較のため、もっと広範囲の米国経済で見るとjobs増加は同1.2%となっている。

雇用figuresはすべて、最近リリースされた2011 BLSデータを反映している。半導体雇用の全体データは、BLSが報告している米国製造分野での半導体従業員数に、BLSが現在はwholesale取引分野でカウントしている半導体ファブレスメーカーが雇用する半導体workers数の見積もりを、プラスしている。さらに詳細な情報は、SIAのEmployment Issue Paperに掲載されている。

「半導体jobの伸びは、我々の業界および米国経済にとって励みになる兆候である。」とToohey氏は言う。「成長を促進してinnovationに対する障壁を取り除く効果的な政府政策をもって、半導体業界はAmericaの経済の力強さ、国家安全そしてグローバル競争力を引き続き牽引していく。」
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米BLSの2011年データをさらに見ると、半導体はじめ電子コンポーネントの製造に携わる雇用として以下の内訳となっている。

≪2011年Electronic Component業界の雇用内訳≫

Semiconductors and related device manfacturing     188,358
Other electronic component manufacturing         67,915
Printed circuit assembley manufacturing         52,238
Bare printed circuit board manufacturing         36,715
Capacitor, resistor, and inductor manufacturing     19,252
Electronic connector manufacturing            19,035
         計                       383,513 

このデータについて、次の説明が付されている。

;半導体製造雇用総計は188,358であり、該データ全体の49%を占めて米国electronic component製造業界では格段の最大シェアとなっている。この総計には、半導体を設計しているが製造はやっていないファブレス半導体メーカーの従業員は含んでいない。また、BLSデータによると、2011年の米国半導体業界の製造workforceは3.7%伸びたのに対し、もっと広く米国経済を見渡したjobsは1.2%増となっている。米国半導体業界の製造分野での雇用だけで188,358に達し、前年から6,690 jobs増えている。広範な米国経済における失業率が高止まりのままのなか、これはかなり意味のある増加である。;

米国半導体業界のタイミングの良い先端リーダーシップのアピールを強く感じるところである。逆風のさなかにあって関連業界の幅の広い我が国の半導体業界であり、最先端技術を確保、リードしていく我が国としてのスタンスを改めてアピールする必要性、緊急性を感じざるを得ない。


≪市場実態PickUp≫

マイクロソフトからWindows Phone 8の発表が行われているが、今までのようにDRAM出荷ビット数の大きな伸びを喚起しないという読みも同時に出てきている。

【Windows Phone 8】

◇Windows Phone 8 targets everyone but business users (10月29日付け EE Times)
→マイクロソフトが月曜29日に発表したWindows Phone 8についての最も記憶すべきキャッチフレーズ:"We reinvented smartphones around YOU."

◇Windows 8 won't help DRAM makers (10月29日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。これまでのWindows operating systems(OSs)発表と違って、MicrosoftのWindows 8展開は、DRAM出荷が大きな増大とならない見込みの旨。第四四半期のグローバルDRAM出荷ビット数が、前四半期比8%増との読み、今までのWindows発表では四半期DRAM出荷で常に二桁増となっている旨。
・≪グラフ≫ Windows発表によるDRAM出荷ビット数伸び率推移
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/121029_ihs_dram_bit_shipments_423.png

◇Microsoft Windows 8 Will Not Spur Demand for Computer Memory.-Release of Windows 8 Will Not Catalyze Demand for Higher-Performance Hardware (10月31日付け XBitLabs.com)

AMDが、ずっと続けてきたx86一辺倒から転換して、ARM-ベースサーバCPUsを2014年に出すと発表を行っている。

【AMDの大きな転換】

◇AMD to ship ARM-based server SoCs in 2014 (10月29日付け EE Times)
→Advanced Micro Devices(AMD)が、x86 PC半導体メーカーとしての長い歴史を打破、ARMサーバ半導体メーカーへの参画を正式に発表している旨。
ARM自身のV8-compliantコアベース64-ビットARM SoCを設計する旨。

◇Advanced Micro Devices to build server chips with ARM technology (10月29日付け Reuters)

◇The x86 is dead. Long live the x86 (10月30日付け EE Times)
→長きにわたってカスタムx86プロセッサコアを作り続けたいと希望するなか、Advanced Micro Devices(AMD)のCEO、Rory Read氏が、月曜29日、San FranciscoのBank of America buildingの根元にあるホテルの小会議室にて、AMDは2014年からARM-ベースサーバCPUsを出荷すると発表、急速に拡大するmegaデータセンター市場を目標とする旨。

時あたかもARM TechCon exhibition and conference(10月30日〜11月1日:Santa Clara Convention Center)が近くして開催されているさなか、ハリケーンが邪魔をして以下の顛末が見られている。

◇Video: Stranded by Sandy, ARM CEO videos from taxi (10月31日付け EE Times)
→LondonからNew York経由で今回の会場に向かったARMのCEO、Warren East氏、ハリケーンSandy通過で立ち往生になった旨。歴史的なAMDイベントに向けて、Heathrow空港の外のタクシー後部座席からのビデオメッセージ。

新型タブレットの発表に暇がない感じ方があるが、Texas Instruments(TI)から部材コストが$70に収まるというreference設計が発表されている。爆発的な拡大が見込める市場に向けて、低コスト化も暇なしの感である。

【TIの低価格タブレット対応】

◇TI shows embedded tablet with $70 BoM (10月31日付け EE Times)
→Texas Instrumentsが、広範囲のembedded市場に向けてタブレットのコスト削減、bill of materials(BoMs)コストが僅か$70のreference設計、そのTIのElectronic Tablet(eTab)は、Apple iPad MiniあるいはKindle Fireの半分の価格となる可能性、病院から流通まで長々としたリストの垂直市場を目指す旨。該7-インチタブレットに入るTI製の主要コンポーネント:
Sitara AM335x SoC(単一ARM Cortex-A8コア、720MHzまでの動作)
 …量産時コスト〜$5
TIアナログ半導体、TI Wi-Fi/Bluetooth comboデバイスで計〜$13

現実的な話、内容が続いたが、ここでIBMからcarbon nanotube半導体についてのブレイクスルーである。

【IBMによるブレイクスルー】

◇I.B.M. Reports Nanotube Chip Breakthrough-IBM touts carbon nanotube chip with 10,000 transistors (10月28日付け The New York Times (tiered subscription model)/Bits blog)
→I.B.M.のT.J. Watson Research Center(Yorktown Heights, N.Y.)の研究。標準半導体プロセスにより10,000個以上の動作トランジスタを擁するself-assembling carbon nanotube半導体を開発、Nature Nanotechnologyの論文で、carbon nanotubesをアレイにパターン化するプロセスを述べている旨。

◇IBM claims carbon nanotube IC breakthrough (10月29日付け EE Times)
→今までは一度に高々数100のcarbon nanotubeデバイス止まりで、商用アプリに向けて対応するには十分でなかった旨。

◇IBM touts smaller, faster alternative to silicon (11月2日付け EE Times India)


≪グローバル雑学王−226≫

我が国の再生を図る切り札をいくつかの切り口から、

『世界がうらやむ日本の超・底力』 (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書)  
  …2012年 5月10日 初版発行

より確認してきたが、最後は、積み重ねてきた"負の遺産"を解消する"超テクノロジー"をやはり2回に分けて見ていく。今回は、放射線検知の新素材シンチレックス、発電装置となる燃料電池、来のモノづくりに向けた鉄系超電導体、そして自走式カプセル内視鏡である。


6.人類の未来を拓く日本発の超テクノロジー ≪前半≫

・21世紀に求められる"超テクノロジー"
 …人類が積み重ねてきた"負の遺産"を解消する技術
 →新素材、炭素繊維
 →衝突を避けるためにブレーキがかかる自動車
 →放射線を検知すると発光するプラスチック
 →世界一の計算能力を擁する強力なスーパーコンピュータ

◆廉価な放射線検知器を実現させる新素材シンチレックス
・原発事故で注目されたガイガー・カウンター
 →放射線量の測定器、ガイガー・カウンターが、事故からしばらくの間品薄状態に
・放射線を検知すると青く発光する新素材
 →特殊なプラスチック素材「シンチレックス」を、京都大学原子炉研究所が開発
 →ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が放射線検出のセンサになることを突きとめる
  …センサそのものにかかる費用は従来の10分の1程度

◆次世代の発電システムとして期待を集める燃料電池
・燃料電池とは、どんなシステムなのか
 →燃料電池はむしろ「発電装置」という形容がふさわしい
 →水素と酸素を結ぶつけて電気化学反応を引き起こし、電気を発生
・欧米を逆転し、燃料電池先進国になった日本
 →19世紀初頭、デービー卿(イギリス)が、基本的な原理を発明
 →1960年代のアポロ計画でも燃料電池が採用
 →1980年代から日本が、世界の燃料電池先進国にまで成長
・今後、どのように活用されていくのか
 →燃料電池の特許出願数、上位3社…日産、トヨタ、ホンダ
  →燃料電池自動車(FCカー)の開発
 →東京ガスとパナソニックは、燃料電池「エネファーム」を開発
  →2009年、世界初、一般販売をスタート

◆論文の引用回数で世界一を誇る鉄系超電導研究
・なぜ「論文を引用される」ことが名誉なのか
 →科学誌の論文掲載には厳しい審査基準
 →2008年の世界の論文引用回数第1位…東工大の細野教授グループ「鉄系超電導体」についての研究
・物理学会の常識を覆した大発見
 →「鉄系超電導」…鉄の元素の組み合わせを微妙に変え、鉄でも超電導を起こすことを発見
 →未来のモノづくりに不可欠な研究内容との評価

◆検査の苦痛を消し去る自走式カプセル内視鏡
・胃腸の病は、日本人の国民病
 →日本人がかかりやすい胃腸の病気
  …食生活の変化
  …精神的なストレスの影響
・従来のカプセル型内視鏡の問題点とは
 →Given Imaging社(イスラエル)、超小型のカプセル型内視鏡を開発
  →2つの点で改良の必要:
   *内視鏡カプセルを自由自在に操作することができない
   *空間の大きな臓器については、その内部を自在に観察することができない
・世界の医療現場が劇的に変わる?!
 →大阪医科大学、龍谷大学、(株)ミューが、胃腸内を自在に動いて検査できる未来型の自走式カプセル内視鏡を開発
  …技術立国、日本だからこそ可能な世界貢献

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