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医療分野での半導体応用、ノーベル賞熱気でさらに活性化の期待

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今年のノーベル生理学・医学賞の受賞者の1人に、様々な種類の細胞に変化できるiPS細胞(induced Pluripotent Stem cell)を作製した京都大学iPS細胞研究所長の山中伸弥教授が選ばれて、連日喜びの声で沸き上がっている。
半導体デバイスにおいても医療機器での応用に微細化プロセス、システム小型化技術を最大限活用する取り組みが続いているが、難病に苦しむ人たちの痛み、不便さを少しでも和らげ取り除いていく同じ目標に向かって、これを機に開発・実用化のテンポにさらに拍車がかかる強い期待感がある。

≪現下の医療向け半導体応用例≫

ここ3ヶ月あまりの半導体業界関連記事について、医療分野での半導体応用に注目すると手前勝手ながら以下の通りである。まずは、米国が中心の動きが7件続いている。

◇Human Organ on a Chip! (7月26日付け EE Times India)
→人間の臓器の構造と機能を模写する生体細胞組織を含むengineering 3D半導体を目指すRs.382.51 crore($70M)の研究プロジェクトについて。3つの米国当局、National Institutes of Health(NIH), Food and Drugs Administration(FDA)およびDefence Advanced Research Projects Agency(Darpa)が出資する5年の'Tissue Chip for Drug Testing'プログラム。これら組織半導体は薬の安全性テストに用いられ、現在生きている動物を用いている薬のテストに置き換える支援となる可能性の旨。該プロジェクトの目標は、肺、心臓、肝臓および腎臓など人間の臓器の構造と機能を模写する人間の組織半導体を開発することである旨。

◇MEMS enable 'human body on a chip'-MIT joins research for "human body on a chip" with MEMS devices (8月6日付け EE Times)
→Massachusetts Institute of Technology(MIT)が、マイクロ流体MEMSデバイスで"human-body-on-a-chip"を開発するmultimillion dollarプロジェクトに参画、人に施さずに新薬の効果をテスト、該プロジェクトはDefense Advanced Research Projects Agency(DARPA)およびNational Institutes of Health(NIH)が出資する広範な活動の一環の旨。

◇Hybrid medical imaging to spot tumors earlier (9月13日付け EE Times)
→University of Southern CaliforniaおよびWashington University(St. Louis)の研究。医者がより素早く腫瘍を検出できるhybrid医療画像化技術を開発の旨。

◇Eye movements help diagnose neurological disorders (9月13日付け EE Times)
→University of Southern California(USC)の研究。目の動きの研究を通して神経学的障害を検出する低コストの方法を定義づけた旨。

◇Electronics that dissolve in the body!(9月28日付け EE Times India)
→Tufts University(Medford, MA)およびUniversity of Illinoisの研究。
身体の中で溶ける小型electronicデバイスを開発、医療目的に使える極薄electronics、"transient electronics"と呼ぶ新しいsilk-siliconデバイスは、外科的除去を必要としない医療implants世代の期待を孕む旨。

◇Mayo Clinic study confirms telemedicine with smartphones (10月2日付け EE Times)
→Mayo Clinic(Arizona)の調査。スマートフォンの医療画像が、離れた場所にいる脳卒中患者を遠隔治療を通して診断するのに十分に良いものである旨。

◇Maxim to demo vital signs monitoring shirt (10月8日付け EE Times)
→Maxim Integrated ProductsがClearbridge VitalSigns(Singapore)およびOrbital Research(Cleveland, OH)とコラボ、高度に統合されたtelehealth fitness('Fit')シャツ用reference設計をプロデュース、患者monitoringが可能になり、医療診断コストが下げられる旨。

本当に多彩なアプローチを感じているが、日を追うごとに医療関係半導体の取り組みを数多く感じるなかの今回のノーベル賞受賞という受け止めがある。日にちを揃えて欧州発の進展が以下の通りである。

◇Wearable monitoring system provides clinical support to patients at home (10月8日付け EE Times)
→STMicroelectronicsが、wearable bodyセンサ技術を発表、歩行患者について致命的な心臓不整脈を検出、モニターするPreventice(MINNEAPOLIS)製の新しいBodyGuardian Remote Monitoring System(RMS)を動かす旨。

◇Imec, Panasonic demo wireless EEG headset (10月8日付け EE Times India)
→Imec, Holst Centre(オランダのTNO[応用科学研究機構]とベルギーのIMECが共同で設立した研究開発所)およびPanasonicが、ワイヤレスEEG(脳波図:electroencephalogram) headsetの新しいprototypeを開発、passive電極をactive電極で置き換え、8 channel EEG信号を連続的に記録できる旨。

◇Semiconductors and healthcare converging (10月8日付け ELECTROIQ)
→最近のimec International Technology Forum Press Gathering(Leuven, Belgium)にて、imec CEOのLuc Van den hove氏。半導体技術が様々なヘルスケア応用でますます実施されてきており、血球sorting、個人医療用モバイル機器(例:脳波活動monitoring)および先端バイオ研究における使用を説明の旨。
・≪写真≫ smart health patches(バンドエイド)
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2012/October/imec%20bandaid.jpg
・≪写真≫ バイオ半導体(Alzheimer研究、新薬開発)
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2012/October/imec%20biochip.jpg
・≪写真≫ 先端半導体およびナノテク技術を用いて開発される"Guardian Angel Devices"
http://www.electroiq.com/content/dam/eiq/online-articles/2012/October/angels.jpg


≪市場実態PickUp≫

モバイル機器の活況を受けて非常に盛り上がっている台湾ファウンドリーの業績は、以下の前年同月比に表われているが、この9月販売高は8月に比べると低下するとともに本年の残る先行きも大きく下げる見方となっている。

【ファウンドリー9月業績】

◇TSMC September performance meets market expectations (10月9日付け DIGITIMES) 
→TSMCの連結ベース9月のnet販売高NT$43.35B、前月比12.4%減、前年同月比29.8%増。1月〜9月累計ではNT$374.94B($12.78B)、前年同期比16.3%増。
第四四半期は季節性並びにPCsおよびnotebooksのグローバル需要勢い不足から10%レンジの売上げ低下を見込む旨。

◇TSMC says Sept sales up 30.3 pct on year, down vs Aug (10月9日付け Reuters)

◇UMC sees revenues decline in September (10月11日付け DIGITIMES)
→UMCの9月売上げNT$9.11B($309.86M)、前月比7%減、前年同月比11.5%増。
第三四半期売上げNT$28.53B、前四半期比3.3%増。1月〜9月累計ではNT$79.91B、前年同期比1.9%減。

Globalfoundries社から14-nm FinFETへの取り組みが発表されているが、従来のscalingとは異なる'low-shrink'という見方が打ち出されている。

【'low-shrink'ノード】

◇Globalfoundries' 14-nm is 'low-shrink' node (10月8日付け EE Times)
→International Electronics Forum(IEF:BRATISLAVA, Slovakia)にて先週の木曜4日、Globalfoundries社の設計enablement、senior vice president、Mojy Chian氏によるプレゼン。同社が2014年に量産投入しようとしている14XM FinFET製造プロセスノードは、電力消費削減を目指しているが、前の20-nm planar bulk CMOSノードに対してほとんどあるいは全く寸法の減少は得られない旨。このような製造プロセスノード間の移行は、これまでのIC miniaturizationの歴史で初めてであるが、性能および動作電圧のscalingに強力に価値観の重点がシフト、物理的なscalingは2.5-Dおよび3-D packagingによる遂行に移っていく旨。

スマートフォン、タブレットの大流行を受けて、パソコンの世界出荷台数が前年割れという以下の状況となっている。ベンダー別でもLenovoが急伸して調査会社によってHPと1位が分かれる事態を伴なっている。

【PC市場の落ち込み】

◇レノボ、パソコン世界シェア初の首位、7〜9月:米ガートナー (10月11日付け 日経 電子版)
→7〜9月期のパソコン世界出荷台数シェア:

米Gartner:1. Lenovo 1376万7000台
前年同期比9.8%増
シェア15.7%
2.HP
16.4%減
15.5%
米IDC:1.HP
15.9%
2.Lenovo
15.7%


HPが「一部の統計は不完全」との声明を出す異例の展開になっている旨。
7〜9月期のパソコン世界出荷台数: …2四半期連続前年割れの旨。
 米Gartner:8750万4000台 前年同期比8.3%減
 米IDC:  8779万5000台      8.6%減

◇PC sales to decline for first time in 11 years (10月11日付け EE Times India)
→IHS発。2012年のPC市場全体が34.87 crore台(348.7M台)、2011年の35.28 crore台から1.2%減少する見込みの旨。2001年以降、世界PC業界はこのような減少に遭っていない旨。

米中間のさや当てがテレコム装置を巡って次の通り表われており、今後の波紋、動向に注目である。

【米中摩擦】

◇U.S. warns telcos not to buy gear from Chinese firms (10月9日付け EE Times)
→米国下院のIntelligence Committeeが、米国のテレコムoperatorsに対して中国のテレコム装置メーカー大手、Huawei Technologies Co. Ltd.およびZTE社から装置を買わないよう警告、米国国家セキュリティ権益へのリスクの可能性の旨。
・≪表≫ ワイヤレスインフラ装置サプライヤ・トップ5
    :2011年第一〜第三四半期
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/121008_IHS_telecom_equipment.jpg

◇Yoshida in China: Going public would demystify Huawei (10月11日付け EE Times)
→米国議会が中国のHuaweiおよびZTEをblacklistに載せた報道を受けた直後の北京の反応について。

◇Cisco, Huawei and trade wars (10月12日付け EE Times)
→中国のテレコム装置メーカー、Huaweiを相手取った米国lobbying活動の中心にいるのは、ほかならぬ米国ネットワーク装置大手、Cisco Systemsであり、その中国のパートナーにはHuaweiが入っている旨。


≪グローバル雑学王−223≫

我が国が世界に誇る"名人"ワザ、後半は保護・修復術、印刷技術、文房具そして蕎麦ちょこと、様々な分野・切り口について、

『世界がうらやむ日本の超・底力』 (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書)  
  …2012年 5月10日 初版発行

より理解を深めていく。修復した人物絵画がガラッと変貌、かえって人気を呼んでいるというニュースを最近目にしたばかりであるが、我が国の技術の世界の遺産への貢献ぶりを以下知らされている。偽造を許さない印刷技術には、半導体製造に通じる感じ方がある。


4.歴史と伝統が紡いできた世界に誇る"名人"ワザ ≪後半≫

◆劣化の危機に瀕した文化財を救う保護・修復術
・文化財保存に活かされる日本のノウハウ
 →エジプト政府が2010年から文化財の保護・修復プロジェクトをスタート
  →技術協力を求めたのが日本
 →我が国は、古くから文化財を修復・保護するノウハウが育まれ、継承
・「ミイラを食べる虫」を見事に退治
 →酸素濃度を濃くする薬品とともに約3週間密封、虫を完璧に退治するといった日本独自の技
 →また、膨大な数の文化財を輸送する方法も
・地道な作業で世界遺産の保全に貢献
 →カンボジアのアンコール遺跡、石造り
  →日本の知恵と経験が必要に
・モアイ像の修復作業にも力を尽くす
 →イースター島の倒れたモアイ像の修復、重さ10トンクラス
  →1980年代末からのプロジェクトに日本が技術協力
  →日本のタダノからの高度なクレーン操作のテクニック

◆芸術の域に達した紙幣・切手の印刷技術
・紙幣の偽造を許さない高度な印刷技術
 →現在の日本の紙幣に施されている技術:
 「すき入れパターン」
 「超細密画線」
 そのほか、特殊発光インキ、深凹印刷、・・・
 →偽造防止のためにさまざまな技術が幾重にも
・外国から基礎を学び、自国で改良
 →記念切手で見られる印刷技術の凄さ
 →外国から技術を学んで向上した印刷技術
・海外で「美術品」と評価される日本切手
 →1948年の大型記念切手『見返り美人』
 →1978年発行の『東照宮陽明門』

◆機能性で海外製品の追随を許さない文房具
・日本企業が開発した書きやすいボールペン
 →海外で暮らすとき、日本の文房具の優秀さを実感
 →1949年、ボールペン製造のパイオニアの日本企業、オート
・使い勝手の良さが最大の強み
 →シードという日本企業の前身、三木康作ゴム製作所が世界に送り出した通称「プラスチック消しゴム」
 →コクヨ、1959年「無線とじノート」、1975年「キャンパスノート」
・日本発の画びょうが、世界的な美術館の永久展示品に
 →プラスが開発、針無しホチキス「ペーパークリンチ」
 →パイロットコーポレーション、ボールペン文字を消せる「フリクション」
 →2004年、コクヨS&Tが開発、「カバー付きの画びょう(プニョプニョピン)」
  …ニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)が永久展示品として選定

◆江戸庶民の自由な気風が伝わる蕎麦ちょこ
・国内外にコレクターの多い器
 →歴史と伝統の工芸品、蕎麦のつけ汁用容器「蕎麦ちょこ」
  →18世紀初頭に誕生
  →湯のみ茶碗、酒を飲む「ぐい飲み」としても
・小さな器に秘められた日本人の知恵とは
 →機能面から見ても優れ、揺れに極めて強い形状
 →積み上げてどんなに高くなっても倒れそうで倒れない
 →全部を1ヶ所に収められる「入れ子」

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