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iPhone 5発売がもたらす活気、プロセス開発はじめ発揚の空気

iPhone 5が発売され、発表に続く余韻、反響が引き続いている感じ方である。アップルの株価も記録的な大台を突破した後の発売となり、即日に中身のteardown解析による概要データがいくつか記事に表われて、スピード溢れる展開に高揚感を覚えるところがある。直接結びつくかどうかはあるが、Globalfoundriesが、モバイル市場拡大に向けてFinFETベースで工夫を施した新14-nmプロセス技術を発表、今後への期待感をもたせている。活性化材料とそれによる意気発揚の空気拡大を期待する1つの表われと感じている。

≪iPhone 5インパクト≫

iPhone 5の発表を受けた市場の反応は、記録更新づくめの以下の通りである。

[株価]

◇米アップル株、上場来高値更新、iPhone5予約好調 (9月18日付け 朝日新聞デジタル)
→17日のニューヨーク株式市場で、米アップルの株価が一時、699.80ドルまで上昇、上場以来の最高値を更新した旨。スマートフォンの新機種「iPhone5」の予約が受け付け初日の14日だけで200万台を突破、収益拡大への期待が高まった旨。前機種「iPhone4S」の予約が昨年10月、初日に100万台だったのと比べると、今回の予約は2倍で、同社の製品としては過去最高になった旨。

◇アップル株、初の700ドル突破、米時間外取引(9月18日付け 日経 電子版)
→米東部時間17日夜(日本時間18日朝)の米株式市場の時間外取引でアップル株が上昇、節目の700ドルを初めて上回った旨。「iPhone5」の予約の好調を評価した買いが続いた旨。

注目のA6プロセッサはじめ発売前からの予想、そして発売日(21日)即日に実際の中身の解析記事がいくつか、順に以下の通りである。  

[A6はじめ中身]

◇A6 chip: More Apple, less ARM-The A6 used in the iPhone 5 may be more of an Apple creation than previous chips. (9月16日付け CNET)
→AnandTech website発。iPhone 5の中の新しいA6プロセッサは、ARM Holdingsからの最新プロセッサコア設計よりはApple社内の半導体設計expertiseに頼っている様相の旨。AppleはARM licenseeではあるけれども、A6はARMのCortex 15あるいはCortex 9設計を利用していない旨。A6パッケージ内にデータストレージ計1GバイトのSamsung Electronics製DRAM dieが2個見られる旨。

◇UPDATE 4-Apple's iPhone 5 uses chips from Qualcomm, Avago, Skyworks
* Chip suppliers also include SK Hynix, Triquint - iFixit
* Cirrus audio chip inside iPhone 5 -iFixit
* STMicroelectronics provided gyroscope -iFixit
* Controller chips from PMC-Sierra, Broadcom -iFixit
* Latest iPhone went on sale Friday morning (9月21日付け Reuters)
→開封調査を行ったiFixit発。金曜21日朝、まずAustraliaで売り出された最新のiPhoneは、これまでのモデルよりも大きくなって4-インチ画面、スリムでずっと軽い旨。

◇Teardown: Inside Apple's iPhone 5 (9月21日付け EE Times)
→UBM TechInsightsによるteardown解析。AT&TおよびCanadaのLTE networksに最適化されたA1428モデルが対象、大方従来のサプライヤが占めている旨。次の要点:
 Qualcomm MDM9615 die marking
 STMicroelectronics …paired accelerometers
 Dialog Semiconductor …Power Management IC
 SanDisk  …32 GB of NAND flash
 Elpida  …B8164B3PM 1 GB Low-Power DDR2(LPDDR2)
            SDRAM
 Broadcom BCM4334
 A6 processor 95.04mm2
    比較:162.54mm2 Apple A5X
        122.21mm2 A5プロセッサ45-nm版

◇Analyst says Apple designed core for iPhone 5 processor (9月21日付け EE Times)
→Linley Groupのprincipalアナリスト、Linley Gwennap氏。AppleのiPhone 5スマートフォンの心臓部にあるA6プロセッサは、ARM Holdings plcからライセンス供与を受けたCortex-A15プロセッサコアというよりはARM-compatibleプロセッサコアを用いている旨。A6はSamsungが32-nm HKMGプロセス技術でApple向けに製造したdual-core Cortex-A15プロセッサとする先行する見方を否定の旨。

このような市場の反応とフォローの活気、熱気は、前回触れた以下の節目をさらに鮮明に感じさせている。

[節目]

◇Tablets, smartphones knock out PCs as largest users of DRAM chips-Less than half of DRAMs went into PCs in Q2, IHS iSuppli says (9月16日付け VentureBeat)

発売タイミングに合わせるかのように、Globalfoundriesから市場の熱気をさらに焚きつけるプロセス開発の発表が行われている。相関の度合いはともかく、電池寿命を大きく改善する期待を孕んで余韻がさらに延びていく感じ方となる。

[プロセス開発]

◇Globalfoundries looks to leapfrog fab rivals(9月20日付け EE Times)
→予期しない動き、Globalfoundries社(Milpitas, Calif.)が木曜20日、2014年にFinFET三次元トランジスタを特色とする14-nmプロセス技術を提示する計画、同社の20-nmプロセスが量産に入るとする僅か1年後の旨。この動きにより同社は、ファウンドリーの競争相手を飛び越え、Intel社の半導体プロセス技術優位性に挑戦を突きつけられる旨。

◇Globalfoundries Moves to Match Intel's Transistors and Timing-For foundries, the focus is on FinFET architecture design (9月20日付け The Wall Street Journal/Digits blog)
→半導体トランジスタの性能を高め、モバイル機器電池寿命を延ばす競争が、GlobalFoundries, Intel, TSMCおよびUMCからのFinFETアーキテクチャーを巡る革新に駆り立てており、FinFET技術のパイオニア、Chenming Hu氏は、GlobalFoundriesのhybrid技術戦略が非常に競争力のあるelementとなる可能性があり、みんながそうすると見ている旨。

◇Globalfoundries intros 14nm process with FinFET transistors (9月21日付け DIGITIMES)
→Globalfoundriesが、モバイル市場拡大に向けて設計された新技術、14nm-XM("eXtreme Mobility")を発表、三次元"FinFET"トランジスタの性能とパワーの利点が顧客にもたらされる旨。14nm-XMは、14-nm FinFETデバイスをGlobalfoundriesの20-nm-LPMプロセスelementsとともに用いるmodular技術アーキテクチャーに基づき、今日の20-nmノード二次元プレーナトランジスタに比べて電池寿命が40-60%改善される見込みの旨。

この発売日には、長年米国の宇宙開発を牽引したスペースシャトル「エンデバー号」が、「ピギー・バックライド」と呼ばれる以下の写真の輸送方法によりボーイング747に載ってアメリカ大陸を横断、目にした人々の歓声を呼んでいるとのニュースが見られている。世界を引っ張る栄光、輝きへの期待感がここでも溢れており、iPhone 5とタイトルに並べたブログ記事も見られている。

※写真:
http://image.itmedia.co.jp/news/articles/1209/21/yuo_shuttle_07.jpg
http://image.itmedia.co.jp/news/articles/1209/21/yuo_shuttle_02.jpg


≪市場実態PickUp≫

苦境が続く我が国の半導体・エレクトロニクス業界であり、再建に向けた取り組みがそれぞれ図られているが、ルネサスの支援について以下の動きが見られている。

【ルネサス支援】

◇Japan Inc. reportedly moves to block KKR's Renesas takeover (9月21日付け EE Times)

◇ルネサスを官民で買収へ、トヨタ・パナソニックなど−年内に1000億円超出資 (9月22日付け 日経 電子版)
→ルネサスエレクトロニクスに対し、トヨタ自動車やパナソニックなどが政府系ファンドの産業革新機構と組み、1000億円超を共同出資する方向で調整に入った旨。すでに交渉中の米投資ファンドへの対抗案を作り、年内に過半数の株式取得を目指す旨。

節目を迎えている電子機器市場の感じ方が、半導体市場の長期予測の1つにも次の通り表われている。

【半導体市場長期予測】

◇IC units to shrink; ASPs to go up; market growth rate to rise.-IC Insights: Global chip market to grow 8% a year through 2021 (9月19日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IC Insightsの予測。世界半導体市場は、向こう9年を通して年率8%の伸び、ここ15年の平均年間成長5.2%を上回ると見る旨。IC数量については、ここ15年の平均9.5%に対して年当たり7%に伸びが鈍化、一方、1996年以降低下している半導体average selling prices(ASPs)は毎年1%上がると見る旨。

◇Fab lite, fewer startups could fuel IC growth rate (9月19日付け EE Times)
→IC Insights、9月18日発記事:
"Long-Term Forecast Improves for IC Market-Amid economic uncertainty and technology challenges, average selling prices seen trending up."について。
・≪表≫ IC市場 1996-2011 CAGR 対 2011-2021F CAGR
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/News/ic-market-growth-chart.jpg

小生も今となっては非常に懐かしく感じるBostonの古い街並みであるが、そこで開催のDESIGN East(9月17-20日:Hynes Convention Center, Boston)での議論の以下の内容は確実にアップデートされており、時間軸の対照の妙を感じるところがある。

【DESIGN East】

◇DESIGN East: IoT will be huge--maybe sooner than later (9月18日付け EE Times)
→パネル討議(3名)の結論。Internet of Things(IoT:ネットワーク接続されたモノとモノ、あるいは人とモノが情報交換を行い、お互いの制御を行う)の世界が現実となっているが、初期段階にあり、巨大で、標準およびセキュリティのクリアすべきいくつかの大きな障壁がある旨。
  
◇Slideshow: Vision, medtech in focus at DESIGN East (9月21日付け EE Times)
→建国の始祖たちの町、BOSTONは4日間、embeddedシステム技術の基本とともに、computer visionの最新のアイデア&デモ、パーソナルヘルスケアに及ぶ技術および設計のバイキングメニューでもてなされた旨。

もう何回投げては突き返しを目にしたかという感じがあるが、以下の買収劇にやっとの決着のようである。

【やっとの合意】

◇Cypress Semiconductor Corp And Ramtron International Corporation Reach Agreement On Merger-Cypress perseveres, signs a merger deal for Ramtron (9月19日付け Reuters)

◇Cypress grabs Ramtron, at last (9月19日付け EE Times)
→数回の拒絶を経て、Ramtron International社(Colorado Springs, Colorado)が、Cypress Semiconductor社(San Jose, Calif.)による買収に合意、$3.10/株 in cashで$109.8M相当の取引の旨。


≪グローバル雑学王−220≫

世界が見て垂涎の的、何としてでも手に入れたいと思うほどの貴重なものとなっている日本製のエンターテインメントを、

『世界がうらやむ日本の超・底力』  (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書)  
  …2012年 5月10日 初版発行

より2回にわたってみていく。日本人ならではの緻密さ、繊細さ、インパクトが十二分に発揮される分野として、まず模型、映画、花火に注目している。


3.外国人が憧れてやまない和製エンターテインメント ≪前半≫

・"和製エンタメ"は「かっこいい」=「クール」という認識が定着
 →「クール・ジャパン」と呼ばれるほどに
・アニメーション、マンガ、ゲーム、フィギュア(模型)
・世界に広がる「メイド喫茶」、「コスプレ」
・由紀さおりの『夜明けのスキャット』、花火、歌舞伎

◆クオリティーの高さで世界を圧倒する模型文化
・日本のニュースが海外で注目された意外な理由
 →震災関連のニュース映像で放送局が用意した模型
 →日本は世界屈指の模型文化国
 →古来から日本には、モノを小型にかたどる模型の文化
  …「箱庭」
   盆栽−「木が成長を続ける模型」
・精密で組み立てやすい部品づくりの秘密
 →精密を極めたプラモデル
  …集めた情報をもとに、数十から数百枚にのぼる図面を作成し、キット化
 →部品を精密に加工する金型技術

◆黒澤、溝口、北野……世界で称賛される映画監督
・スピルバーグに影響を与えた「世界のクロサワ」
 →世界中の映画監督に多大な影響を与えた黒澤明
 →スピルバーグの『未知との遭遇』(1977年)の冒頭シーンは、黒澤の『蜘蛛巣城』(1957年)に触発
・著名な監督が競うように黒澤作品を引用
 →『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカス
 →最近では『バベル』が日本でもヒット、メキシコ出身のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
・ヨーロッパで成功した日本の監督たち
 →ヨーロッパで黒澤を凌ぐほど高い人気を誇るのが溝口健二
  …3年連続受賞:『西鶴一代女』『雨月物語』『山椒大夫』
 →フランスとイタリアでの評価が高い北野武
  …『HANA-BI』

◆エンターテインメントから「芸術」に昇華した花火
・徳川家康も楽しんだ花火見物
 →花火の歴史は紀元前の中国、まずは兵器として重用
 →14世紀後半、イタリアのフィレンツェ、「花火」というエンタテインメントに活用
 →17世紀の江戸時代、花火が盛んに打ち上げ
 →江戸時代は赤橙色一色、明治時代になると赤、青、緑色の花火が登場
 →時代を経るごとに、"日本発"という形で世界に発信
・美しさと技術で外国産花火を圧倒
 →日本の花火は円く大きく花開く、対して外国産の花火は楕円形に開くのが一般的
・不断の努力が「世界一」の評価を生む
 →花火職人の努力と日本の繊細で精巧なものを好む国民性のマッチング
 →花火の生産量は中国が世界一
  …中国の花火関係者も日本の花火技術には一目

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