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スマートフォン係争および市場、改めて見る顧客満足、価値観

アップルとサムスンが真っ向からぶつかるスマートフォンなどの特許侵害を巡る係争で、世界が注目する米国ではアップル側に軍配が上がり市場の大きな反応を呼んで余韻冷めやらないなか、世界10ヶ国に及ぶこの係争はそれぞれの争点をよく理解する必要があるが、東京ではアップルの訴えに対しサムスンの侵害はなかったとの評決が下されている現時点である。知的財産の価値観というもの、新興市場がリードするなかでの顧客満足というもの、この両者のぶつかり合い、鬩ぎ合いを改めて考えている。

≪米国評決の余韻、中国市場での動き≫

両社の特許侵害係争について、米国での評決を受けた市場の反応は以下の通り注目度の高さ、インパクトの大きさを表わしている。

◇サムスン株急落、9500億円吹き飛ぶ…訴訟敗北 (8月28日付け 読売)
→米アップルと韓国サムスン電子によるスマートフォンなどの特許を巡る米国での訴訟で、アップル側がほぼ全面勝利の評決が下されたのを受け、27日のニューヨーク株式市場では、アップルの株価が一時、680ドルを超えて過去最高を更新した旨。
一方、ソウル株式市場でサムスン電子株は急落、同日の終値は前週末比7.45%安の118万ウォン(約8万3000円)だった旨。ロイター通信によると、時価総額が約9500億円吹き飛んだ計算の旨。もっとも、市場では「米国で今後、サムスン製品の販売差し止めの判決が出ても、対象は旧型機種で影響は限られる」との見方も出ている旨。

米国での評決は、裁判の当事者はじめ市場の関係者に今後に向けた知的財産というものの見方、考え方の問題提起を投げかけている。

◇7 reasons to file design patents, trade dresses (8月28日付け EE Times)
→Apple vs. Samsung係争が送り出すメッセージ2点:設計特許の申請を!
trade dressesの登録を!これらは米国特許システムの比較的新しくまだ十分に使われていない部分の旨。

新興市場をリードする中国では、この米国評決に対して目立たない反応となっているようである。

◇Yoshida in China: Fallout from Apple-Samsung lawsuit (8月28日付け EE Times)
→あのApple対Samsung特許訴訟におけるAppleの勝利が西側メディアの週末のニュースを席巻している一方、中国唯一の英字紙、China Daily(『中国日報』)では多かれ少なかれ控え目な取り扱い、ビジネス面に深く埋まった形の旨。

米国での評決で陪審長を務めた方は、ハードディスクはじめエンジニアの経験をお持ちと理解しているが、非常に気持ちの通じる裁判後のコメントとなっている。市場、製品そして顧客と、現時点の実態に触れてそれぞれのfeelingをよく理解する必要性というものを勝手な解釈ながら汲み取っている。

◇Foreman defends Apple vs. Samsung verdict in video (8月29日付け EE Times)
→Apple対Samsung特許侵害訴訟の陪審長を務めたVelvin Hogan氏。設計特許およびtrade dressesの役割について懐疑的であったが、今回のevidenceで考え方が変わった旨。また、米国特許システムについて特許2件獲得の自らの経験および自らの見解、そしてApple製品を用いる自らの経験不足を述べた旨。

余韻にいろいろな切り口で浸っているなか、今度は東京での評決が以下の通り下されている。争点をよく踏まえて、引き続き今後に注目である。

◇特許紛争:サムスン勝訴、アップルの請求棄却=東京地裁 (8月31日付け 韓国・朝鮮日報)
→米アップルがサムスン電子に対し損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が31日、サムスン側の特許侵害を認めず、アップル側の請求を棄却した旨。判決の対象は「メディア・プレーヤー・コンテンツとコンピュータの情報を同期化(シンクロナイゼーション)する方法」に関する技術、スマートフォンとパソコンをケーブルで接続し、音楽などのコンテンツを即座にやりとりできる機能で、アップルはこの機能に必要なソフトウエア技術をサムスンに侵害されたと主張していた旨。

◇スマホ:東京地裁はサムスンが勝訴…アップルとの特許訴訟 (8月31日付け 毎日)
→米アップルがスマートフォンの「iPhone」やタブレット端末「iPad」に使われている特許権を侵害されたなどとして、日本サムスンなどに1億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁が31日、サムスン側の特許権侵害を認めず、アップルの請求を棄却した旨。日本では初の司法判断、サムスン側を全面敗訴とした米カリフォルニア州連邦地裁の判断(24日)とは異なる結論となったことで、両社の競争は一層激化しそうな旨。

中国市場での評決に対する鈍い反応に触れたが、8月26日付け 日経にて以下の記事内容に注目している。

○中国スマホ市場で中国メーカーに存在感
10月発売予定 「MI2」 1999元(約2万4000円)
…中国人気メーカー小米科技(Xiaomi)が、クアッドコアプロセッサ搭載スマートフォン「Mi2 (MI-TWO)」発表、2012年10月発売予定

背景として、この7月に以下の動きとなっている。

…中国のスマートフォン市場で、シャオミ(Xiaomi:小米科技)という新興メーカー製のAndroid端末「MI-One」が高い人気を集めている。2010年4月に創業したシャオミではいまのところ、昨年秋に発売した「MI-One」1機種しか扱っていないが、同製品は1999人民元(約320ドル)という低価格と高性能が受け、現在では毎月50万台を出荷、1億5800万ドルの売上をあげるまでになっている。
「MI-One」は、クアルコム製デュアルコアプロセッサ「Snapdragon」や8メガピクセルのカメラを搭載。また、OSにはAndroidをカスタムした独自の「MIUI」を採用し、ユーザーがフォントや壁紙を自由に変えられる仕様となっている。現在「MIUI」は16カ国で23ヶ国語に翻訳されており、利用者数はおよそ100万人、そのうちの3分の1は中国国外の利用者だという。
アップル(Apple)の「iPhone」に比べて約半分程度の価格で販売される「MI-One」は、発売時に30万台を超える予約が殺到。現在でも高い人気が続いており、今月新たにオンラインストアで発売された15万台はわずか13分で完売したという。

評決も然りながら、低価格&高性能を徹底的に追い求める中国市場の顧客の熱気を、この小米科技(Xiaomi)の10月発売予定製品発表会のイベント映像で見て、知的財産の価値観というもの、新興市場がリードするなかでの顧客満足というものを改めてじっくり見つめ直そうという気分になっている。上記の米国での評決での陪審長のコメントに一端を受け止めるように、市場そして顧客の実態に実際に触れて理解する顧客満足および価値観でなければという必要性である。  


≪市場実態PickUp≫

需要に追いつかないスマホはじめ製品の供給という状況が伝えられているが、独占的製造供給を求めるアップルおよびQualcommとファウンドリー、TSMCとの間で次の現実的なやりとりが見られている。

【製造capacity独占】

◇Apple, Qualcomm Bids Spurned for Exclusive TSMC Supplies (8月29日付け Bloomberg)
→該事情通の人々からの引用。TSMCが、ICsの独占的供給チャネルを得ようというAppleおよびQualcommによる提案を拒否、各々が、スマートフォン用半導体の製造保証と交換にTSMCに$1B以上の出資の意向を示していた旨。

◇TSMC said to rebuff Apple, Qualcomm (8月29日付け EE Times)

◇TSMC has no good reason to accept investment from particular clients, says Digitimes Research (8月30日付け DIGITIMES)
→短期的利益は満足できても、長期的持続するメリットに符合しないと見る旨。

そのスマホの出荷数量が、新興経済圏での低コスト版および先進経済圏でのハイエンド版ともに伸びて、2013年にはhandset全体の半分を超えるという見方が出されている。

【スマホ急伸予測前倒し】

◇Smartphones projected to be majority of handsets shipped in 2013 (8月28日付け EE Times)
→IHS iSuppliが火曜28日リリースしたレポート。スマートフォンがこれまでの予想より2年早く、2013年に初めてcellular handset出荷の大多数を占めると今時点見る旨。2011年の35%および本年の見積もり46%から、2013年には54%を占めると予想される旨。新興経済圏からの低コストスマートフォンに対する思いがけない力強い引き合いとともに、先進地域でのハイエンド・スマートフォンに対する需要の高まりが挙げられる旨。
・≪グラフ≫ モバイルhandset型別市場シェア予測:2011〜2016年
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120828_ihs_smartphone_1_423.jpg

EUVおよび450-mmリソへの開発出資を求めるASMLの提案プログラムに対して、インテル、TSMCに続いてサムスンが応じる動きとなっている。

【SamsungもASMLに出資】

◇Samsung to take 3% stake in ASML (8月27日付け EE Times)
→Samsung Electronics Co. Ltd.(Seoul, South Korea)が、ASML Holding NV(Veldhoven, the Netherlands)のextreme ultraviolet(EUV)および450-mmリソ開発に$345.5M出資、およびASMLの3% stakeを503Mユーロ(約$629.5M)で買収することを決めた旨。

◇ASML says Samsung invests in its latest chip technology-ASML gets backing from Samsung for lithography tech (8月27日付け Reuters)
→Samsung Electronicsが、extreme-ultraviolet(EUV)リソ技術のR&D資金の支援、ASML Holdingへの$975M出資に合意の旨。該契約の一環として、SamsungはASMLにおける3%のequity stakeを得る旨。この夏、IntelおよびTSMCもASMLへの出資を約している旨。

この第二四半期の半導体販売高については前回も触れているが、追認する形で以下の発表である。

【第二四半期販売高】 

◇Top 10 chip vendors hurt by weak Q2 (8月29日付け EE Times)
→IHS iSuppli発。この第二四半期の半導体販売高トップ10サプライヤについて、6社が前年同期を下回り、6社中4社が二桁の落ち込みとなっている旨。
・≪グラフ≫ 地域別半導体売上げ変化率
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120828_ihs_q2_chip_sales.jpg


≪グローバル雑学王−217≫

復興への取り組みに続いて我が国の自信が湧きあがってくるものとして、

『世界がうらやむ日本の超・底力』 (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書)  
 …2012年 5月10日 初版発行

より、確かなものづくり技術、海洋国家としてのプレゼンス、アジアNo.1の受賞者数のノーベル賞、世界を主導する特許取得数に目を向けている。経験、ノウハウ、知的財産の今までの蓄積の活用および今後の着実な積み上げを図っていくことがますます重要になってきているのは、半導体・エレクトロニクスの世界における我が国の現状が強く示すところである。


1.自信が湧いてくる"日本復活"への底力 ≪後半≫

◆工場の被災を契機に再認識された製造技術
・モノづくりの最前線を襲った大震災
 →日本の企業を抜き去っていった海外の有力メーカーが、日本の被災によって悲鳴
・iPhoneの3分の1は「メイド・イン・ジャパン」
 →アップル社の「iPhone」、部品の34%が日本製
 →さまざまな分野の中間財や資本財で「メイド・イン・ジャパン」は優勢な市場を形成
・海外メーカーが「日本製」を支持する理由
 →たしかな技術に裏打ちされた日本のモノづくりが、他国を圧倒
 →耐久性や利便性などを考慮した場合、「メイド・イン・ジャパン」に寄せられる信頼の厚さが圧倒的

◆"資源大国"の可能性を秘めた広大な海域
・日本は世界屈指の「海洋国家」だった?!
 →日本の領海とEEZ(排他的経済水域)を足した面積は、国土の約12倍、447万km2
  …世界で第6位
 →海水の深さ、つまり体積比較では世界4位に
・次世代エネルギーとして期待される「燃える氷」
 →その広く深い海域には豊富な資源、「燃える氷」メタンハイドレート
 →今後の開発次第では、日本は「資源貧国」から、一躍「資源大国」へと躍り出ることも
・世界をリードする「メタンハイドレート開発」
 →日本は「深海での採掘」分野において世界をリードする実績
 →広大な日本海域に眠るメタンハイドレート
 →エネルギーの供給不安を解消するとともに、他国への採掘技術の輸出という派生した武器になる可能性

◆ノーベル賞の受賞者数が物語る知力と学術力
・「技術貿易輸出額」が意味するものとは
 →技術貿易 …研究・開発により生み出された特許や実用新案、技術上のノウハウなどを国家間で取引
 →世界一を誇るのはアメリカ …輸出額 約5兆7000億円
                    輸入額 約2兆6000億円
 →日本             …輸出額 約1兆7000億円
                    輸入額 約5700億円
  [2004年統計]
・アジアNo.1のノーベル賞受賞者数を誇る日本
 →ノーベル賞の候補者となるには英語の論文発表や英語による推薦文が必要
 →第二次世界大戦以降はアメリカ人が受賞者の約6割
 →日本人受賞者は、アジアではダントツ …2010年までに18人(南部氏を含む)
・国をあげての取り組みで「知」を創造
 →2001年から「科学技術基本計画」を推進している我が国
 →日本の知力・学術力はアジアでは最高レベル

◆日本を復活へと導く、欧米をも凌駕する特許取得数
・世界共通の権利「特許権」
 →日本が数多く保持している「特許」の活用による景気の底上げ
 →日本経済全体を押し上げる原動力
 →世界的に特許を含む知的財産の権利を保護しようという動きが活発に
  …1970年、「世界知的所有権機関(WIPO)」設立
  …1994年、「仲裁・調停センター」設置
 →中国でも、自国の企業に特許を申請させようとする政府の動き
・取得件数を見れば、国の将来が占える
 →近年、日本の企業や日本人が特許の登録権争いをリード
 →2010年、アメリカ特許商標局(USPTO)は企業に対して約22万件の特許を発行
  −1位 アメリカ 50.3%
  −2位 日本   21%
・先進のアイデアを生む「国民性」とは
 →さまざまな工夫をしたうえで、ひとつのモノを究極まで完成させようとする力
 →日本人はこの力に秀でた国民、多くの特許を獲得

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