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サムスンを軸に半導体業界のいろいろな動き、景観模様

スマートフォン、タブレットの伸びが続く一方、パソコンは停滞基調が伝えられるなか、本年の半導体販売高が一桁の低いすれすれの伸びからマイナスになるとの見方も出始めている。アップルとの特許係争および現時点での半導体販売高データには、プラスそしてマイナス両方のインパクトが見えてくるものの、このスマートフォン、タブレットの伸びる勢いに大きく身を乗り出している韓国サムスン電子の振る舞いが浮き上がってくる。Ultrabook、Windows 8と巻き返しを図るパソコンと両にらみの今後の展開と思う。

≪特許係争およびランキング≫

10ヶ国に及んで繰り広げられているサムスンとアップルの特許係争は、大きなインパクトを孕む米国での陪審団評決がアップルに軍配を上げる結果となっている。旧型製品が対象でサムスンに大きなインパクトはないとか、サムスンがアップルに出荷しているアプリプロセッサの価格を5%上げれば済むこと、などなど外野席からはいろいろな反応が聞こえてくる。ソウルでの裁判では両成敗の裁定となっており、今後東京含めしばらくは喧噪に包まれそうである。それにしても米国での裁判経過で注目させられた外観デザインで攻めるアップル、ワイヤレス技術で対抗するサムスンの図式は、落とし所があるのか、価値観のベクトルの定義づけに今後とも注目と思う。

<アップルとの特許侵害係争>

◇特許紛争:サムスンVSアップル、終盤まで攻防 (8月23日付け 韓国・朝鮮日報)
→アップルとサムスン電子が米国で展開している訴訟は24日にも暫定的な評決が下される旨。21日に米国カリフォルニア州北部連邦地裁で開かれた最終審理で、双方は最後の攻勢をかけた旨。最終弁論の終了を受け、9人の陪審員は22日から評決のための協議に入り、評決では陪審員9人の見解が一致する必要がある旨。米国の裁判所は韓国や日本とは異なり、判事は裁判を進行し、証拠を採択するかどうかを決める「審判」または「進行役」としての役割のみを果たし、民間人で構成する陪審員が判断を下して判事は陪審員の評決にそのまま基づき、判決を言い渡す旨。
今回の裁判では、陪審員が24日にも評決を明らかにするが、訴訟内容が一般人には理解しにくい先端技術や複雑な論争を含んでいる上、陪審員の評決に双方が異議申し立てを行うことができるため、最終判決が下されるまでにはさらに時間がかかる見通しの旨。

◇アップル・サムスン、「双方が特許侵害」韓国地裁−スマホなど、両社に賠償命令 (8月24日付け 日経 電子版)
→ソウル中央地裁が24日、スマートフォンやタブレットの特許を巡り、アップルとサムスン電子が互いに相手を訴えていた訴訟で、アップルが2件、サムスンが1件の特許を侵害したとの判決を下し、両社に損害賠償を命じた旨。米国での訴訟の前哨戦と受け止められたソウルでの両社の激突は互いに一部勝訴で一審を終えた旨。アップルは販売の差し止めを命じられたが、「iPhone4」など旧型製品が対象、韓国では大きな影響は出ない見通しの旨。

◇Apple awarded $1.05B in Samsung patent case (8月24日付け EE Times)

◇サムスンの特許侵害認定、10億ドル賠償命じる (8月25日付け 読売)
→米アップルと韓国サムスン電子が、スマートフォンやタブレット型多機能端末の特許を巡り争っている訴訟で、米カリフォルニア州の連邦地方裁判所の陪審団が24日、サムスンがアップルの一部特許を侵害したと認め、サムスンに約10億5000万ドル(約826億円)の支払いを命じる評決を下した旨。サムスンは、米グーグル製の基本ソフト(OS)「アンドロイド」を携帯端末に採用、今回の訴訟は、アップルとグーグルの代理戦争としても注目を集めた旨。アップルの主張をほぼ全面的に認めた内容で、アップルの勝訴が確定すれば、世界のスマートフォン市場で約7割を占めるグーグル陣営に、打撃となる恐れがある旨。

スマートフォンやタブレットの伸びが、現時点の半導体ベンダーランキングに大きく影響を投げかけている。Qualcomm、Broadcomの急伸長がひと際目立つものの全体では前年同期比3.0%減というこの第二四半期の販売高となっている。そんな中、サムスンの健闘ぶりが見られ、世界シェアが初めて10%を超えたと特に韓国での取り上げ方である。

<第二四半期半導体売上げランキング>

◇Q2 semiconductor revenue may be "troubling" indicator of market health (8月23日付け ELECTROIQ)
→IHS iSuppli Competitive Landscaping Tool発。2012年第二四半期のグローバル半導体市場売上げが、前年同期比3%減の$75.2B、特に日本および欧州に本社を置く半導体サプライヤについての売上げ低下が拡がっている旨。
・第二四半期売上げ($M)世界半導体サプライヤトップ10・IHSランキング

Q2-11
順位
Q2-12
順位
Q2-11
売上げ
Q2-12
売上げ
Change
シェア
Cumulative
11Intel
11,645
12,010
3.1%
16.0%
16.0%
22Samsung Electronics
7,159
7,571
5.8%
10.1%
26.0%
33Texas Instruments
3,597
3,128
-13.0%
4.2%
30.2%
74Qualcomm
2,319
2,869
23.7%
3.8%
34.0%
45Toshiba
2,786
2,381
-14.5%
3.2%
37.2%
66SK Hynix
2,523
2,233
-11.5%
3.0%
40.1%
57STMicroelectronics
2,567
2,147
-16.4%
2.9%
43.0%
88Renesas Electronics
2,253
2,098
-6.9%
2.8%
45.8%
109Broadcom
1,742
1,917
10.0%
2.5%
48.3%
910Micron Technology
1,815
1,780
-1.9%
2.4%
50.7%
Other Companies
39,141
37,113
-5.2%
49.3%
100.0%
Total Semiconductor
77,547
75,247
-3.0%
100.0%

・第二四半期サプライヤ本社所在地別半導体売上げ変化

Company Headquarters
前年同期比
前四半期比
Worldwide
-3.0%
2.7%
Americas
-2.5%
3.6%
EMEA
-8.3%
5.0%
Japan
-4.6%
-7.5%
Asia-Pacific
-0.6%
8.4%

◇サムスン電子の半導体、初めて世界シェア10%超 (8月22日付け 韓国・中央日報)
→サムスン電子の半導体の世界シェアが初めて10%を超えたことが22日、分かった旨。半導体景気が低迷する中、サムスン電子が好調だったのは攻撃的な投資と、モバイル用のアプリケーションプロセッサなどシステムLSIで成果を上げたためと分析されている旨。

◇Samsung secures over 10% share of global chip market-Samsung's share of global IC market hits 10.1%, IHS iSuppli says (8月22日付け The Korea Times (Seoul))

このサムスンの健闘を支えているファウンドリー事業という背景を、次のデータが色濃く表わしている。アップル向けの半導体供給が大きな下支えとなっており、米国工場での製造ライン切り換えにもつながっていると理解している。

<2012年ICファウンドリーランキング>

◇Apple the driving force behind Samsung foundry business, says IC Insights (8月21日付け DIGITIMES)
→IC Insightsによる2012年ICファウンドリー(専業およびIDM)トップ12予測、次の通り:

2012(予) 順位2011 順位Foundry typeLocation2011 販売高2012(予) 販売高
11TSMC専業
14,600
10%
16,720
15%
23Globalfoundries専業
3,480
(1%)
4,285
23%
32UMC専業
3,760
(5%)
3,775
0%
44SamsungIDM
2,190
82%
3,375
54%
55SMIC専業中国
1,320
(15%)
1,625
23%
66TowerJazz専業Israel
611
20%
655
7%
77Grace/HHNEC*専業中国
565
(10%)
605
7%
88Vanguard専業
519
2%
590
14%
99Dongbu専業
500
5%
540
8%
1010IBMIDM
420
(2%)
435
4%
1113WIN**専業
298
35%
425
43%
1211MagnaChipIDM
350
(14%)
375
7%
(注) * Merged in 2012

   ** GaAs foundry
 [Source: IC Insights, compiled by Digitimes, August 2012]

◇Samsung to shift Texas fab from memories to logic chips (8月21日付け Bloomberg Businessweek)
→Samsung Electronicsが、Austin, Texasウェーハ製造fab工場でのアプリプロセッサなどロジック半導体の生産拡大に約$4Bを投資、DRAM fabラインをDRAM fab製造に切り換え、来年後半に完了予定の旨。Austinで生産されるロジック半導体の多くは、AppleのiPadおよびiPhoneモバイル機器に入る旨。


≪市場実態PickUp≫

苦境が続く我が国のエレクトロニクス業界、一方、世界経済全体の約1%規模を1社で担う形に見えているアップルの瞬間株式時価総額と、本当にダイナミックに動く世界経済を端的に示す下記の2件である。

【現時点インパクト2件】

◇台湾の対日投資急増、鴻海のシャープ出資影響−上半期、前年の4倍 (8月20日付け 日経 電子版)
→台湾・経済部集計。2012年上半期(1〜6月期)の台湾の対日投資額が、9億3600万ドル(約745億円)と前年同期比で約4倍に、内訳として6月単月に総額の約7割に当たる6億6700万ドルが発生、この大半が鴻海精密工業によるシャープの堺工場の運営子会社への出資とみられる旨。

◇アップル時価総額49兆円…上場企業で過去最高 (8月21日付け 読売)
→20日の米ナスダック市場で、米アップルの時価総額が終値換算で約6235億1560万ドル(約49兆5070億円)となり、米マイクロソフトが1999年12月の取引時間中につけた約6205億ドルを上回り、上場企業の過去最高を更新した旨。市場では、主力製品「iPhone」の新型機種や、多機能情報端末「iPad」の小型版を9月にも発表するとの観測が広がり、アップル株に買い注文が集まった旨。

"フラッシュメモリ元年"と業界で取り上げられた頃を思い起こしているが、あれから早25年の経過。DRAMとの比率が、フラッシュの急伸ぶりを物語っている現時点でもある。

【25周年】

◇SanDisk Celebrates 25th Anniversary of NAND Flash Memory.-SanDisk Marks 25 Years of NAND Flash (8月20日付け XBitLabs.com)
→フラッシュメモリストレージ・ソリューションのSanDisk社が月曜20日、フラッシュメモリ25周年を迎えた旨。

モバイル機器向けに供給が追いつかない事態となっている28-nm製造capacityについて、TSMCの奮起、挽回の取り組みぶりを示す台湾での記事である。

【TSMCの28-nm対応】

◇TSMC 28nm process yields break 80%, says report (8月21日付け DIGITIMES)
→中国語Commercial Times発。TSMCの28-nmプロセスの歩留まりが80%を上回ってきている一方、同社の新しい12-インチfab、Fab 15が2012年第四四半期には12-インチ換算100K枚以上のcapacityをもつ旨。28-nm技術によるウェーハ処理outputを高めていって、TSMCが第四四半期までにQualcomm, NvidiaおよびAMDなど主要顧客からの需要をすべて満たせるようになると見る旨。

◇TSMC Triples 28nm Process Capacity in Q3 (8月21日付け Taiwan Economic News)

その台湾では一方、UMCが千葉県館山の拠点を閉じる方向が打ち出されている。

【UMC Japan】

◇UMC to dissolve Japan subsidiary (8月22日付け DIGITIMES)
→UMCが、完全子会社、UMC Japanを解散、清算する計画、同社役員会が21日に該計画を承認の旨。

冒頭にも述べた本年の半導体販売高であるが、減少するという見方が次の通り出始めて表わされている。

【2012年半導体販売高予測】

◇Chip market now seen shrinking in '12 (8月23日付け EE Times)
→IHS iSuppli(Englewood, Colo.)が、弱含みの経済状況および対応してPCsはじめエレクトロニクス需要減から、2012年の半導体販売高が2011年比0.1%減少すると見る旨。この予測は、同社のIHS iSuppli Application Market Forecast Tool(AMFT)の速報データに基づく旨。
・2012年半導体市場予測データ一覧・アップデート
http://www.eetimes.com/ContentEETimes/Images/120823_analyst_forecast_chips.jpg


≪グローバル雑学王−216≫

世界の大勢に乗り切れず市場をリードできていない我が国という問題意識から、こんどは意識的に気分を明るく切り換えたいという思いもあって、我が国の素晴らしい財産、資産を改めて見直し、見い出していく観点から、

『世界がうらやむ日本の超・底力』
 (ロム・インターナショナル/著:KAWADE夢新書) …2012年 5月10日 初版発行

を手にしている。著者は、1983年に設立された書籍の企画制作集団であり、幅広い情報網と縦横無尽の機動性を活かし、数々の話題作に取り組んできているとのこと。以下、東日本大震災からの復旧、復興に取り組んで世界が驚き称賛した我が国の"底力"から入っていく。


≪まえがき≫

・暗く長いトンネルから抜けきれていない日本
・そう悲観しすぎることはない
 →世界が目を見張るような技術や文化、そして英知がたくさん
・本書は、日本の「素晴らしい財産」を多数紹介

1.自信が湧いてくる"日本復活"への底力 ≪前半≫

・2011年3月11日の東日本大震災
 →日本列島は、東南東に最大約5.3m移動
 →福島第一原子力発電所では、原子炉建屋の爆発、放射性物質の外部への放出
・いち早く歩み始めた復興への道
 →世界は、日本の復興の原動力を明らかにし、理解しようとしている

◆困難の中、組織力で迅速な救出活動を展開した自衛隊
・発災から3日で、1万8000人以上を救助
 →人命救助から物資の運搬、原発事故対応、あらゆる方面で活躍したのが自衛隊
 →全国の人々から称賛の声
・「放射能」という見えない敵との戦い
 →福島第一原発の大規模事故への対応
 →放射性物質の拡散防止、懸命な放水作業を実施
 →見えない敵に立ち向かった
・日本人の美徳を体現した『アンサング・ヒーロー』
 →「unsung hero」…称賛されることのない縁の下の力持ち
 →自衛隊はアンサング・ヒーローの集団として、日本が復興の道を歩んでいくうえでの原動力に

◆"超速ぶり"が海外で「神業」と報じられた土木技術
・震災翌日に主要幹線道路の仮復旧を実現
 →寸断された道路網を、驚異的なスピードで復旧させた日本の土木技術
 →地震発生から2週間もたたない24日には交通規制を解除、一般車両も主要道路を通行できるように
・作業スピードの速さに、海外では"フェイク説"まで登場
 →津波被害の大きかった太平洋沿岸一帯に、3段階のステップを経る「くしの歯」作戦
  第1ステップ:3月12日:「縦軸ライン」確保
  第2ステップ:3月15日:東西ルート(横軸)確保
  第3ステップ:3月18日:97%通行可能
 →素早い復旧状況、海外のメディアは驚嘆することに
・長大な線路を歩いて点検した鉄道マンたち
 →東北新幹線は震災発生から49日後、4月29日には全線開通
 →海外からは「日本の底力を見た思い」などの賛辞
・過去の教訓が実を結んだ新幹線の早期復旧
 →1995年の阪神・淡路大震災での甚大な被害
 →東北新幹線はこれを機に耐震対策の見直し
  →復旧に時間を要する落橋などはなかった
 →JR東海やJR西日本などのグループ企業からは、応援部隊の派遣
 →在来線でも、鉄道マンたちの奮闘ぶり
 ⇒日本人の志の高さを世界に示した動き

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