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半導体販売高、モバイル機器活況の上半期、日本とアジアが戻す6月

米SIAより月次世界半導体販売高、今回は6月分が発表され、IC Insightsからは2012年4-6月および上半期のベンダーランキングが表わされている。
IHS iSuppliはワイヤレスICが引っ張り、産業用が続いて、他は鈍いとする本年の半導体市場分野別の見方となっているが、スマートフォン、タブレットはじめモバイル機器の抜きんでる活況を映し出すデータ内容となっている。史上最高を更新するかどうか、マクロ経済状況の安定度、売れ筋の生産キャパシティなど業界内外様々な要因の今後の推移にかかってくる。

≪本年前半の半導体業界≫

米SIAから6月の世界半導体販売高が次の通り発表されている。マクロ経済の安定、伸びに向けて、政府の努力を強く訴えかけるトーンが見られる。

☆☆☆↓↓↓↓↓ ○6月のグローバル半導体販売高は依然着実 …8月3日付けSIAプレスリリース

半導体製造&設計の米国のleadershipを代表するSemiconductor Industry Association(SIA)が本日、2012年6月の世界半導体販売高が$24.38 billionで、前月の$24.40 billionから僅かながら0.1%減少したと発表した。2012年6月の販売高は、2011年6月の$24.89 billionを2%下回っているが、前年同月 比の減少幅は2011年10月以降のものより小さくなっている。月次販売高の数値はすべて3ヶ月移動平均で表わされている。

「半導体業界はほとんどの分野より激動するグローバル経済に引き続き適応してきているが、マクロ経済の不安定さが全体的な回復と伸びを抑えている。日本およびAsia Pacificの前月比の増加は元気づけられる兆候であるが、欧州およびAmericasが引き続き弱含みで加減されている。」とSIA president & CEO、Brian Toohey氏は言う。「米議会は、アメリカの競争力を推進、経済伸長を刺激する実効的で頼りになる政策を制定することにより経済的不安定さを軽減できる。政策立案筋は、8月の議会休会中に前進する道筋を表わして、来月遂行に備えをしてWashington, D.C.に戻るべきである。」

市場地域別には以下に示すように、前月比で日本(2%)およびAsia Pacific(0.6%)で半導体販売高が増えたが、欧州(-0.7%)およびAmericas(-3.6%)で減っている。前年同月、2011年6月と比べると、6月販売高は日本(3.7%)とAsia Pacific(1.0%)で増加、しかしAmericas(-8.1%)と欧州(-12.1%)では大きく落としている。日本とAsia Pacificが、2010年9月以来のこと、前月比および前年同月比で同時に増加となっている。

【3ヶ月移動平均ベース】

市場地域
Jun 2011
May 2012
Jun 2012
前年同月比
前月比
========
Americas
4.70
4.48
4.32
-8.1
-3.6
Europe
3.21
2.84
2.82
-12.1
-0.7
Japan
3.30
3.36
3.43
3.7
2.0
Asia Pacific
13.67
13.72
13.81
1.0
0.6
$24.89 B
$24.40 B
$24.38 B
-2.0 %
-0.1 %

※6月の世界半導体販売高 地域別内訳および前年比伸び率推移の図、以下参照。
http://www.sia-online.org/clientuploads/June%202012%20GSR%20table%20and%20graph%20for%20press%20release.pdf
★★★↑↑↑↑↑

本年前半の各月販売高について、米SIA最初の発表時点での前月比および前年同月比を示すと次のようになる。今後の勢いで前年を上回れるかどうか、急激な盛り返しが必要になってくる。

2012年1月
2月
3月
4月
5月
6月
前月比
-2.7%
-1.3%
1.5%
3.4%
1.4%
-0.1%
前年同月比
-8.8%
-7.3%
-7.9%
-2.9%
-3.4%
-2.0%

IHS iSuppliの市場分野別の見方が、次の通りである。ファウンドリーの対応能力にかかる側面が指摘されている。

◇Semi industry starting new growth cycle-Growth in wireless ICs to pace semiconductor industry (7月27日付け Electronics Weekly (U.K.))
→IHS iSuppli発。半導体業界全体では今年3%の伸びが見込まれるのに対し、ワイヤレスIC市場は10%増の$72.6Bと数少ない伸びる分野に、2012年半導体市場の伸びは広範ではなく、ワイヤレスが引っ張っていく旨。また、ファウンドリーに依存するメーカーは苦しくなり始める旨。

◇Wireless is bright sector in slow chip market, says IHS (7月30日付け EE Times)
→IHS iSuppli(El Segundo, Calif.)発。2012年のグローバル半導体コンポーネント売上げが、3%増、$320.8Bの見込み、ワイヤレス市場の伸びが輝く一方、他は精彩を欠くと見る旨。2012年のワイヤレス通信分野の半導体コンポーネント売上げが、2011年の$65.8Bから10.4%増、$72.6Bに達する見込み、他ではただ一つ、産業用エレクトロニクスが7.7%伸びてワイヤレス分野の拡大速度に今年近づくと予想される旨。

半導体メーカーの株価からは、後半に向けて力強さを予想する見方も出され ている。

◇Chip stocks hanging tough, says analyst (8月2日付け EE Times)
→JP Morganアナリスト、Christopher Danely氏の水曜1日後半レポート。半導体メーカーおよびWall Streetによる業績低下の見込みが予想を下回ることから、半導体株が、困難なグローバルマクロ経済状況にも拘らず驚くほどの力強さを示している旨。Philadelphia Stock Exchange SOX指数が、7月17日の底打ち以来現在は9%上昇、S&P500での1%増との比較の旨。

IC Insightsの本年上半期、第二四半期のベンダーランキング・トップ20データ、次の通りである。足元の伸びはファウンドリーが独占しているとともに、本年上半期の前年同期比がなによりワイヤレス市場、モバイル機器の独り舞台の姿を表わしている。

◇Foundries take win, place, and show in H1 semiconductor company growth race (8月2日付け ELECTROIQ)
→IC Insightsが、半導体メーカー販売高トップ20ランキングの第二四半期データを更新、専業ファウンドリー3社を合わせた2012年第一四半期から第二四半期の増加率が20%となっている旨。ファブレスメーカーが引き続き活況、integrated device manufactures(IDMs)の多くがfab-liteビジネスモデルに移行して、ICファウンドリーが向こう数年力強い需要を受けると見る旨。

◇Foundries soar, Japanese IDMs slide in IC sales rankings (8月3日付け EE Times)
→IC Insights(Phoenix)による第二四半期半導体ベンダートップ20。
=2日XX
・IC Insightsの世界GDPおよび世界IC市場伸長率の予測
http://eetimes.com/ContentEETimes/Images/120802_icinsights_2_800.jpg
・2012年第二四半期 対 2012年第一四半期 伸長率ランキング
 TSMC       22%
 GLOBALFOUNDRIES 18%
 UMC       16%
 NXP       12%
 Freescale    8%
・2012年上半期 対 2011年上半期 伸長率

H1 2012
順位
2011
順位
1H 11
1Q 12
2Q 12
1H 12
1H 12
/1H 11 %
1 1 Intel
23809
11874
12422
24296
2
2 2 Samsung
16681
7067
7484
14551
-13
3 3 TSMC
7432
3568
4337
7905
6
4 4 TI
6399
2934
3135
6069
-5
5 7 Qualcomm
4156
3059
2869
5928
43
6 5 Toshiba
6344
3232
2382
5614
-12
7 6 Renesas
5575
2344
2099
4443
-20
8 9 SK Hynix
5048
2115
2291
4406
-13
9 10 Micron
4343
2102
2210
4312
-1
10 8 ST
5053
1997
2126
4123
-18
11 11 Broadcom
3494
1770
1917
3687
6
12 13 Sony
2991
1514
1560
3074
3
13 12 AMD
3187
1585
1413
2998
-6
14 14 Infineon
2863
1292
1272
2564
-10
15 15 Fujitsu
2182
1216
931
2147
-2
16 21 GLOBALFOUNDRIES
1720
945
1115
2060
20
17 17 NXP
2064
969
1084
2053
-1
18 18 Nvidia
1896
935
990
1925
2
19 16 Freescale
2363
912
988
1900
-20
20 20 UMC
2010
834
970
1804
-10
Top 20 Total
109610
52264
53595
105859
-3

≪市場実態PickUp≫

スマートフォン市場、そして特許侵害係争でのAppleとSamsung両社の攻防駆け引きについて、以下の日々の推移となっている。

【AppleとSamsungの攻防&応酬】

◇Samsung eating Apple's smartphone iLunch (7月30日付け EE Times)
→IHS-iSuppli(El Segundo, Calif.)発。Appleに後れをとって6ヶ月、Samsung Electronics Co. Ltd.が、2012年第二四半期スマートフォン市場で首位を取り戻した旨。

第一四半期
第二四半期
Samsung
34M台
36M台 (5%増)
Apple
35M台
26M台(26%減)

◇Apple v. Samsung kicks off innovation debates (7月31日付け EE Times)
→SAN JOSEで始まっているApple 対 Samsungの特許侵害係争、今朝の開始陳述でApple側弁護士は100ページ以上にわたる詳細なSamsungレポートを示して、現状のSamsung handsetsをfeature-by-featureベースでiPhoneと比較、SamsungがiPhone技法を採用していることを各ページで提言の旨。

◇A look inside Apple's kitchen table group (7月31日付け EE Times)
→Appleの小規模ながら精力的な産業用設計チームの17年のベテラン、Christopher Stringer氏が、同社のSamsungを相手取った特許侵害係争の最初の証言で、Appleにおける設計プロセスについて一目説明、Appleは、オリジナル設計に粉骨惜しまず専念する気風を喚起するようこの証言を利用しようとしたが、Samsungの弁護士はAppleが競合製品にしっかり従っていると明確化している旨。

◇Samsung lays out countersuit against Apple (8月1日付け EE Times)
→"Samsungはinnovatorであり、競争相手、なんら間違ったことはやっていない"と、米国San Jose地裁での公判にて、Samsung側筆頭弁護士、Charles Verhoeven氏。

◇Schiller 'shocked' at 'copycat' Samsung phones (8月3日付け EE Times)
→Appleのマーケティングsenior vice president、Phil Schiller氏。
SamsungのGalaxy S phoneの登場で、その外観およびAppleに引き起こす問題にかなり衝撃を受けた旨。

◇Court scrutinizes email from Steve Jobs (8月3日付け EE Times)
→Appleが特許侵害でSamsungから$2.5Bを求めている裁判で、Samsungの弁護士が、後期のSteve Jobs氏がSamsungの設計の中にiPhoneに有用となる可能性のあるアイデアを見ていると提示の旨。

上記のスマートフォンに対して、タブレットの市場データが次の通りとなっている。アップルの独壇場の様相である。

【タブレット出荷】

◇タブレット世界出荷、アップル独走続く、4〜6月−iPad好調、シェア68.2% (8月3日付け 日経 電子版)
→米IDC、2日発、4〜6月期のタブレット型多機能端末の世界出荷:

1 米・アップル
1704万台
前年同期比84%増
シェア68.2%
2 韓国・サムスン電子
239万台
2.2倍
9.6%
3 米・アマゾン・コム
125万台
4 台・アスース
85万台
2倍強
5 台・エイサー
38万台
4割近く減
≪全体≫
2499万台
66%増

今後の半導体メーカーのあり方を問う以下の内容と受け止めている。Time to Marketそして生産キャパシティともに敏感な反応、対応性が求められるとなると、顧客との設計開発→生産化に向けた架け橋の出来栄え如何にますますかかる情勢を感じている。

【"virtual IDM"モデル】

◇Firms Rethink Fabless-Foundry Model (7月31日付け Semiconductor Manufacturing & Design)
→半導体メーカーが20-nm designs, finFETsおよび3D stackedデバイスに動くにつれて、該業界はfabless-foundryモデルを改めて考え直し始めている旨。先端ファウンドリーは最終的に"virtual IDM"モデルに真剣に取り組んでおり、単に生産パートナーというのではなく一層integrated device manufacturers(IDMs)のように振舞うことになる旨。このモデルでは、ファウンドリーは製造パートナーに留まらず、顧客の設計チームとさらに深いコラボが見られる旨。


≪グローバル雑学王−213≫

つい先週のこと、中米でのサメ漁をめぐる危険航行容疑で、ドイツで逮捕され、保釈中の捕鯨団体「シー・シェパード」代表ポール・ワトソン容疑者(61)が、ドイツから逃亡した疑いがあることが24日分かった、との記事(7月25日付け 日経 電子版)が見られたばかりである。小学校の給食に出た鯨メニュー、会社に入って早々渋谷にあった鯨肉料理居酒屋などが、小生の場合頭に浮かんでくるが、なぜ近頃は非常に縁遠くなっているか、また我が国がなぜ鯨で国際的に反感を買う標的になっているか、

『日本はなぜ世界で認められないのか−「国際感覚」のズレを読み解く』  (柴山哲也/著:平凡社新書 636) …2012年 4月13日 初版第一刷

より、著者の以下に示す取材、見方を通して理解を深めてみる。ここでも高度成長経済の波に乗って世界一の経済大国に上り詰めた後の我が国の認識のあり方、そして小国なりとも国際的な支持を取り付ける振る舞い方が浮上している。

第四章鯨はなぜ食べられなくなったか…反捕鯨運動の隠された背景…

◆「鯨を食べるな」から「マグロも食べるな」へ
・シーシェパードなどの反捕鯨団体
 →鯨類は知能が高い哺乳類、減少傾向がある鯨類を保護するべき
 →海洋哺乳類虐待を禁止した欧米の法令に違反
 →日本政府が示すデータは信用できないと反論
・欧米の批判に対する反論の仕方
 →簡明かつストレートに本質をついた冷静な反論をする必要
 →「貴殿らは牛を食う。我々が鯨を食べてなぜ悪いのか。」(英紙ガーディアン)という冷静なディベート方式の反論が欠如
・日本人は鯨を食べるなという国際世論から、マグロも食べるな、という国際世論へと発展しかけている
 →日本の反論も説得力に乏しく、弱弱しい

◆縄文時代から鯨を食べていた日本人
・『古事記』などの古典、勇魚(いさな)取りという鯨漁や鯨を食する話
・仏教的な世界観に基づく殺生の禁止
 →日本人にとって鯨は哺乳類(四足動物)ではなかった
・戦後の日本人のタンパク源は鯨
 →ビキニ環礁の水爆実験でマグロ漁船が被曝
  →長い間、マグロを食べられない時代
   →家庭の食卓には鯨が並んでいた時期
・鯨は、古来から存在していた郷愁を誘う日本の伝統の食べ物
・1988年に日本の商業捕鯨が禁止
 →途絶えていたことに気がついた鯨の食文化

◆国際取材で見えた反捕鯨の真実
・(著者は、)1988年、反捕鯨の急先鋒、インド洋の島国の小国、セーシェルを訪問取材
 →元イギリスやフランスの植民地、公用語に英語やフランス語
・同国は、アフリカの小国やインド洋島嶼国などに影響力を行使、反捕鯨のIWCの票を取り付けていた
 →小国といえども国際会議の評決には大国と平等に一票が与えられていることをリアルに認識不足
・当時、イラン石油利権と結んだイギリス:英国の反日運動の中心的存在
 →国際反日運動と反捕鯨がイギリスを中継点としてリンクする構図
・元宗主国のイギリスがセーシェルを使ってIWCの反捕鯨の票をアフリカ諸国やインド洋島嶼国で集めていた
 →動物保護や環境保護運動の衣装をまとっている反捕鯨運動、その隠れた中身に反日の思想
・第二次世界大戦を巡る歴史認識の問題と戦時の遺恨が横たわっている

◆鯨を手放したのは日本外交の失敗
・日本政府や外交当局の失敗
 →面倒な歴史的経緯の分析を怠ったため
・捕鯨産業の衰退の一因が政府の外交能力にあることを捕鯨関係者は熟知

◆調査捕鯨は日本へのプレゼント
・IWC総会でセーシェルのリーダーシップを発揮していたファラーリ企画開発相
 →調査捕鯨の名で、ささやかに捕鯨を残し、日本人の鯨食を絶やさないように配慮
 →セーシェルのお蔭

◆鯨が不要になった欧米諸国の都合
・米国は、近代的な捕鯨産業を立ち上げた捕鯨先進国だった
 →1982年のフォークランド戦争は、米国の捕鯨船が太平洋に進出した過去の記憶を呼び覚ました
・並々ならぬフォークランド島への欧米諸国の執着ぶり

◆鯨油からスタートした米国の石油産業への固執
・米国のホンネのキーワード=油とエネルギー
 …鯨油から石油、原子力へと推移した米国の基幹産業
・ペリー提督、黒船4隻で日本来航
 →鎖国日本を開国させて、米国捕鯨船の補給、休憩地を求めるため
・米国は捕獲した鯨を海上で解体し、鯨油部分だけ抜き取って本国に持ち帰った
 →鯨を食文化とする日本の捕鯨とは根本的に異なる
・神仏習合の日本的な宗教の形、鯨を食したことへの惧れと感謝の念を表現
・高度成長と経済至上主義に陥っていた日本
 →鯨を大量捕獲するための近代的な捕鯨技術を駆使
 →かつての米国の商業捕鯨と日本の商業捕鯨は、鯨を大量に殺戮するという点で、同列に
 →鯨の食文化が守れなくなった日本の反省点のひとつがここに
・現状、日本の捕鯨禁止が解除される可能性は、残念ながらほとんどない
 →日本人に必要なのは、イメージとしてのシンボルを作り出して積極的に海外発信するcreativeな仕事

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